【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「こちらが本堂、御神体が飾ってあります。道の両脇に鎮座しているのは狛犬と呼ばれる守り神で、邪悪なものが入ってこないか見守っているのです」
「…………」
何度見直しても、どう考えても、見覚えがありすぎた。
これってそうだよな……という感想を4人ともが抱き、視線が釘付けになる。
その様子を見て上山も目を細めた。
「皆様はコマちゃんを知っているのですね? ──いえ、知っているのでしょう」
「そりゃ知ってるでしょ。俺んちにいるんだから」
「ははは、お静かに」
「!?」
「……皆様、どうかコマちゃんのことをよろしくおねがいいたします」
「あ、い、いえ! 僕たちこそお世話になってます!」
「ふふ、お互い様ですね。そして……加賀美様のこともよろしくお願いいたします」
「俺ここ、ここにいるよー。よろしくしてるのも俺だよー。ご飯の準備とか家事は任せることあるけど、基本的に俺だよー」
「加賀美様」
「はい」
「お静かに」
参拝者は多くいた。
列に並び、順番がくれば手を合わせて祈っている。
鈴や賽銭箱は無いが、それでも在り方としては神社に間違いない。
『どうか、縁が結ばれますように……』
「あのようにして皆、祈りを捧げるのです」
「ウチとは違うな」
「ヒナタ様の神社ではどのように祈りを受けるのですか?」
興味深そうに、異なる信仰の祭祀として。
「勝手に。あんな感じの建物は無かったです」
「そうなのですね」
「だって、わざわざあんな風にしなくてもみんな心の中で思ってるじゃないですか」
「……おお、それはそうですね」
「だから勝手に受け取っているはずです」
それが正しかったのか。
自分達は本当にそうあるべきだったのか。
日向にも分からなかった。
ただ、そうだったという過去の話だ。
「どちらが正しいというのは無いですが、ヒナタ様の信奉する御柱は広く全体を見られるお方なのですね」
「……さあ、どうなんでしょうか」
「きっとそうなのですよ」
「…………」
狛犬の佇まいをぼんやりと眺める。そこまで細かい衣装があるわけではないし、色もついていない。それでも、これを見てあの犬の真の姿を思い浮かべないのはおかしいというほどに似ていた。
ヒナタの家にはこのような偶像はない。強いて言うならば、早苗という生命そのものが偶像としての役割を帯びていたか。
「皆様も何か祈られてはいかがですか?」
「俺はやめときます」
ハシュアーは流石に、と離れた。
「それはまた…………念の為、加賀美様も遠慮していただいてもよろしいですか?」
「そうですね」
ハシュアーとアキヒロ以外は、前客の見様見真似で手を合わせた。各々が願うことを心の中で呟き、列を離れる。
──やっぱり早苗ちゃんも連れてきてあげればよかったかもな。彼女のミニマムな身体が元に戻れば、色々とやりやすいだろうに。
アキヒロは参拝の列を眺めながら往生際悪く、というか微妙に失礼なことを考えていた。
「──ちなみに、祈ると叶うんですか?」
それは素朴な質問であり、大事な質問でもあり、そしてやや失礼な質問でもあった。
「ほほほ、そこはまあ運否天賦と申しましょうか。私には何とも……ただ、祈ったからといって何もしない者に与えられるほど無秩序な幸福もございますまい」
含蓄のこもった言葉だった。
「さて、神社も良いものですが街を見て回るのもどうでしょう」
「行ってみます」
「夕食まではまだ時間がございますので、ゆっくりと参りましょうか」
案内をしてくれるということで、ありがたく先導を任せることに。この街に精通しきった人間がいれば、良いところを存分に見ることができるだろう。しかし明宏は散々見慣れていると裏庭へ。1人で何をするつもりなのか。
「ノリわりーなアイツ」
「加賀美様は裏庭を大変気に入られてらっしゃいますからね」
「へー……」
「ふふ、見るのは最後のお楽しみにでもいたしましょうか」
街へ繰り出すと、最初は気付かなかったものが見えるようになった。なにかというと視界の端に必ず狛犬の像がある。歩いている人も、写真を撮ったり撫でたり拝んだりしているようだ。
「うーん?」
なんだろうと疑問が持ち上がったタイミングで上山とロイスが解説を挟む。
『像は街の中に適当な配置で置かれていまして、このように好きなタイミングで撫でることができます』
『そうそう! みんな狛犬の像に触れて育つからな! もう何つーか、生活とは切っても切り離せねーんだ!』
店に寄ると、ドッグフードが前面的に売り出されているところもしばしば。ご婦人だけでなく、小学校帰りの子らも吟味している。
『なんでか犬好きが多いからな!』
『なんで、と疑問を呈すには少々分かりやすすぎるかと』
『ははっ! こまけーこたいいんだよ!』
『お察しの通り、秋川家の方々の努力の賜物です』
先導するロイスと上山は誇らしげだった。
街ゆく人々も彼らに会うと挨拶を欠かさず、軽い世間話も。街とどのように関わっているか、どのように扱われているかが浮き彫りだった。
『秋川家は第一期から続く家系で、大厄災の前から神様と親交があったって言われてるんだ。山田先輩のところは?』
「うちは……知らねえ」
『自分の家のルーツ知っとくのって結構面白いぜ。わざわざ残してなきゃ探りようもないけど……俺ん家は残ってたんだよな』
「マウントお疲れ」
『ちげーって!』
とにかく、街を周るほどに彼らがいかにこの土地と馴染んでいるかがわかる。ヒナタも自分達だって負けていないと言いたかったが、流石に後輩の一家がこれほど都市の生活に溶け込んでいるとは思わなかった。
「ふーん……やるじゃん」
おもしれーやつ、と言い出しそうな顔で評価したのはハシュアーだ。
『お眼鏡にかなったか』
「結構好きだよ、この街」
『ははっ! そいつぁ嬉しいね! まあ、この街が嫌いなんて奴はいないだろうけどな!』
「…………」
『あんれえー!? シエルはあんま好きじゃない感じ!?』
「暑苦しい」
『うおっ、思った通りだ! こいつやっぱりヤンチャだぞ!』
ロイスは手を叩いて喜んだ。
『先輩が好きそー!』
「…………」
『絶対に気に入られてる! 俺が言うんだから間違いない! 先輩はぜっったいにもう、お前のことが大好きだ!』
「全然嬉しくない」
『うわあ! そうじゃん! 100点満点じゃん! 吹雪と一緒だ!』
「…………違う」
『無理無理! 先輩そういうの意味無いから! 人の話マジで聞いてないから!』
ひーひーと、人の店先で笑い転げる。
『ロイス様、はしたないですよ。それにお客人のことを笑うのは性格も悪いです』
『ごめんごめん、だって…………あんまりにも懐かしくてさ。なあ、ソフィア』
「そうだね」
『お二人ともまだ若いので、懐かしいというほど昔の話でも無いでしょう』
『じじくせー』
『ロイス様の本日のご夕食はドッグフード……っと』
『うぇああああ! 嘘だよ! 許してくれよお!』
「…………神様に守られた土地、かあ」
「レイト……」
「ううん大丈夫だよ」
「なら、いい」
「…………うわっ!」
『なーに暗い顔してんだよ! お兄ちゃんに相談してみろ!』
「あはは……」
『遠慮すんな! お前らも──シエルもこの街にいる間は俺のことをお兄ちゃんだと思って接してくれよな!』
「きもちわる」
『反抗期か! なはははは!』
街は綺麗な円形を描くように作られている。
それに道の通りも碁盤の目のようにまっすぐ通り、いわゆる計画都市としての要素が強く感じられた。
彼らはその目を縫っていくように街を散策する。メインの通りまではみんなでまとまって、一時解散で思い思いのところへ散らばっていった。
日向と一緒に行くというシエル。
レイトはなんとなく1人になりたかったので、都合よく別れる。
探索者らしき格好の人もいない。
変なことにはならないだろう。
「……川だ」
山から下ってきた清水が形成する小川には小魚が生息し、雪解けの中でも元気に泳いでいるところを見ることができた。沿道を歩いていくと、橋桁から脚を下ろして釣りを嗜む老人がいる。
バケツすら持っておらず、何のためにそこにいるのか聞いてみるとただの暇つぶしだそうだ。冬になると温泉が沸いてくるので、いくらでもいられるとか。
「すごい場所だな……」
そして、犬が多い。
レイトの知識では犬の種類などわからないが、とにかく多様な種類の飼い犬がいた。多くのセクターに行ったわけではない彼でも、これだけ多くの犬がいるのはこの街ぐらいだろうと分かるほどに。
「コマちゃんは何で来なかったんだろう」
こんなに歓迎されるところに何故やってこないのか、疑問でならなかった。いつだって、あの犬が帰ってくれば歓迎の宴でも開かれそうなものだ。
『──それなあ』
『私たちもなるべく盛大に歓迎しようといつでも準備はしてあるのですが、なかなか気まぐれですからね』
兎にも角にも、感情ある生命というものは人の思い通りにはいかぬものなのだと、2人は残念そうに頷いていた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない