【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「えっ……?」
「嘘でしょ……」
「マジで言ってんのか?」
「オリハルコンかよ」
総ツッコミが1人の男に向けて飛んでいた。
その男というのは当然加賀美明弘。
なぜ、こんなにも白い目を向けられているのかというと――
「先輩……流石に半日ここでボーッとしてるだけは時間の使い方が空虚すぎません?」
そう。彼が一行の町探訪から離れて何をしていたかといえば、お茶を片手に縁側から裏庭を眺めていた。
彼らが屋敷に戻ってくるまでの半日中ずっと。
「先輩……」
「会長……」
集まる視線も呆れが強い。こんな植物みたいなことをしているくらいなら友達が街を散策しているのに付き合えよ。そう思われて当然だった。
「別に良いだろ……俺の好きにさせてくれよ」
「座ってても何も明らかにならないっすよ!」
「そもそも動き回るだけがワークじゃないというか、考えることなんていくらでもあるし……ボーッとすると勝手に思考が整理されて良い案を思いつくことだってある」
囲んでまで言われる筋合いはないと、視線はあくまで前を向いていた。神樹が浮かび、空の雷雲に影響されてか微妙に静電気を帯びている。この時期は電気が溜まりやすいとはいえ、人間の体ではこうも露骨にはならない。
「なんか、ダンジョンみたいですね……」
レイトはポツリと漏らした。
「木が浮くなんて」
木は宙に浮かない。
当たり前の話だが、地面のミネラルや水分を吸い上げて栄養とするのが植物だ。空中に浮いていたら、どこから栄養を得るというのか。
そもそも、木どころか動物だって基本的には浮かない。単独の惑星の地表面上に生息する生物は、その惑星の重力に根ざした活動をするものだ。
「何で浮いてるんですか?」
「霊領だからっしょ」
「……霊領だと何で浮くんですか?」
「知らん!そういうのは偉い学者さんに聞いてくれ!」
理由などわからない。
ただ、浮くから浮くのだ。
神様がいる土地で木が浮いてたら、それは神様が何かしまに決まっている。そこにさらなる理由など求める方がおかしい。
「それこそ先輩なら詳しいんじゃね?」
「……!」
レイトは期待の面持ちでアキヒロを見た。
「ど、どうですか?」
「うーん……」
アキヒロは曲がっていた背を反らして、両腕を後ろについた。
「……魔素の濃度が高くなると質量が増すんじゃないかとは言われてるけど、だからといって星の重力と釣り合うほどの力を生み出すとは思えないな……そもそも重力なんだから、間にいる物体が浮くことはあっても、木そのものが浮くことはない、はずだよなあ……」
「へ?」
「見えない高質量の物体があるなら俺たちも影響を受けてるはずだもんな」
会話というより、思考がそのまま漏れ出ているかのような独り言。そもそも何を言っているか理解できないので、横顔を見つめるばかり。
「そんなこと言ったらモンスターが飛べるのだって意味わかんねえし、マスモンスターとか呼吸どうなってんのって感じだし」
「……は、はい」
「つまり分からないってことだ」
「えー」
「あの木だけが俺たちと区別されて浮く理由なんて全く分からん。ワイヤーで吊ってるか透明な翼で羽ばたいてんじゃね?」
もはや適当だった。
「先輩!」
抗議の声が入る。
「もうちょっと盛り上げてくださいよ!なんで結論がそこに落ち着くんすか!」
「仕方ないだろ、分からねえもんは分からねえんだから」
「はあー!」
「うおい」
ロイスは呆れなのか怒りなのか分からない声色でしがみつき、そのまま引きずっていこうと試みた。しかしアキヒロはなんなく耐える。
「お茶がこぼれるよー」
耐えはするが、衝撃が身体を伝って湯呑みを揺らした。
「風呂行こうぜ!レイトも!温泉だからさ!」
「温泉?」
「そう!」
――――――
「……臭いですね」
「そんなのすぐ慣れる。それより、そろそろ時期も終わるから入っといて損はないぜ」
この町では寒い季節になると山に温泉が湧く。
何とも都合がいいが、そうなのだから仕方ない。この町では冬の寒さで死ぬことなど稀だ。
「昔からそうだぜ」
「うわあ……!なにこれ……!」
「温泉知らないか?」
レイトは激しく首を縦に振った。先ほどの木を見る目などよりもよほど輝いている。湯気がたちのぼり、石畳で整えられたこの空間の方が気に入ったようだ。
「とりあえず……入りますか!」
「一瞬で!?えっと、お風呂なんだよね……」
「畳めえ、服を」
目にも止まらぬ早さで服を脱ぎ捨てたロイス。
いそいそと服を脱ぎ捨てたレイト。
2人の服を畳むアキヒロ。
性格がモロに出ていた。
「あつっ!」
「最初はちょっと熱いかもしれないけど、すぐ慣れるぜ」
先に浸かってもったりしているロイスは、経験者特有のイキりを見せつつレイトにも浸かるように促した。しかし、湯の温度は45℃。
「結構熱い……」
「ほら、入れよ。勢いよく入ったほうが熱くないぜ」
「………あつっ」
足先をつけては離してを繰り返す。
流石に温泉初心者が入るにしては熱すぎた。
「三船くん、ここら辺はもう少し温いぞ」
「本当ですか?………あ、本当だ」
腰を下ろすと、顔が歪んでいく。
「あ゛ぁ゛……!あ゛つ゛い゛……!」
「最初だけ最初だけ」
誰しも通る道を通過したレイトをニヤニヤと見る2人は、自然と目を見合わせた。これで空が晴れていたら満点の星空+温泉で最高だっただろう。
「うぅ〜……ふぅ。なんか、変な匂いですよね」
「慣れたらこの匂いも悪くないぜ」
「ロイスさんは温泉に何度も入ったことがあるんですか?」
「そりゃあ実家だし、子供の頃からな」
「へー、お金持ちだとそういうのもあるんですね」
「お金持ちあんま関係ないような……」
「そうなんですか?」
「………あるかも」
「???」
どっちなんだい。
「ま、まあいいんだよ!とにかく、温泉は最高ってことだ!……ね、先輩」
「そうだな。温泉は魂の洗濯機だからな」
「なんすかそれ――なんすかそれ!?」
「え?」
「身体そんなんだったっけ!?」
ロイスが最後に彼の身体をまじまじと見たのは、まだアキヒロが高校生の時だ。その時も割と傷はついていたが、ここまでメタメタではなかった。
人によってはショックを受けるような身体だ。
「カッケェけど……痛そうだなあ……」
「コレでも回復薬ぶっかけてるからマシにしてるほうだけどな」
千切れた部位を取り戻し回復薬をかけると、魔法のようにくっついて治る。そこまでは常識だ。だが逆説的に、何も残っていなければ大きな欠損は治せない場合もある。
「レイトはこんな風になっちゃダメだぞ」
「アホなこと言ってんじゃねえ。探索者やってるんだから怪我するのなんて当たり前だろ」
「怪我しないに越したことはないっしょ」
「あのなあ……ちょっといいか?」
レイトの許可を取ると、そっと左手を取った。
「えっ……な、なにしてんの……ちょっと、そういうのはここでは……!アキヒロくん!」
「何を言うとるんだお前は」
おもむろに義手の接合を解除するアキヒロ。
するりと抜け落ち、切断面が露わになる。
大気にさらされた部分は既に完治してはいるものの、当然失われていた。
「右に傾いていく」
「レ、レイト……お前……!」
「あはは……隠してたわけじゃないんですけど」
「………」
「大丈夫です、痛みはもうないですから」
「あ、おお……」
ロイスは明らかに動揺していた。
「なんかくすぐったいかも……」
熱いお湯に触れたためか、断面部分を掻痒感が覆った。隣にいたアキヒロにもその呟きはノータイムで耳に入っている。
「――ここ?」
「うひゃっ!?」
「お、おいやめろよ……」
何となしに触れただけでそんな声を出されてしまったら、ドキドキしてしまう。今の声を他人に聞かれたら普通に勘違いされてもおかしくないのでやめて欲しかった。
「やめろって……加賀美さんのせいじゃないですか」
「神経が過敏になってるのか?」
「そうじゃなくてもいきなり触られたらビックリします!」
義手を奪い返すと、再び装着した。
「そんなすぐ嵌めなくても……」
「こっちの方が落ち着くんです」
「そうなんだ」
「はい、最近は」
黙って2人のやりとりを見るロイスの目には、複雑な色浮かんでいた。
「何でそんな微妙な顔してんだよ」
「……腕、失くなったのに探索者続けるんだなって」
「男の生き様ってやつだよ」
レイトの頭にポンと手を載せる。
「見た目は弱っちいかもしれないけど、探索者はそういうので必ずしも決まらないんだ。だから面白いんだ」
「……見た目が強そうな人が言うと説得力が違うっすね」
憎まれ口を叩くと、もうレイトの腕に言及することはやめたのか、黙って温泉の熱を楽しみ始めた。身体の芯まで温まり、レイトがのぼせたタイミングで風呂から出ると女子2人が恨めしげに見ている。
「ロイス君……私たちも入りたかったのに入りすぎ」
「ごめんごめん」
そこら辺を全く考えずに温泉に来ていた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない