【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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38_大事なお話を始めよう

 

「女ってのはそうまでして風呂に入りたいかね」

 

 ロイスはそんな、ブーメラン極まることを言った。

 今、三船君が何で俺の背中の上にいるか忘れたのか? 

 

「お前……イケメンじゃなかったら酷いことになってたかもな」

 

「なんすか酷いことって」

 

「いいよもう。どうせソフィアとラブラブハリケーンなんだからここから酷いことになりようもないだろうし」

 

「ラッ……せ、先輩だって山田先輩とデキんだろ! 裏ではイチャイチャチュッチュなんだろ!」

 

「そうですが?」

 

 イチャラブだが、何か? 

 

「くっ……! どうせ山田先輩に襲われるまで手も出せなかったくせに!」

 

「お前はアイツのことを何だと思ってるんだ」

 

「肉食獣」

 

 間違ってないけど間違ってるというか、肉食獣がみんな積極的とは限らないというか。少なくも性的に襲われたことは一度もない。むしろみつき達の方が……

 

「あれが肉食獣じゃなかったらなんなんですか」

 

「……優しい肉食獣だぞ」

 

「なんすかそれ」

 

「少なくも暴力的な意味以外で襲われたことはないな、うん」

 

「それもそれでどうなんすかね……高校の時はクラスのみんな、日向先輩が一番怖いって言ってましたね」

 

「言ってたっけ……」

 

「もう言っちゃいますけど、生徒会のメンバーは先輩のことが一番怖かったですからね」

 

「なんでだよ。今の流れは人類みんなが日向のことを怖がってるって流れだっただろ。……そもそも俺の怖い要素どこだよ」

 

「全部」

 

「全部かあ……いや待てよ、全部はおかしい。そんな暴力的な生徒会長演じたことなんかないからな」

 

 むしろ穏やかで誰にでも優しい生徒会長として人気だったような気がする。普段──普通の高校生として授業を受けている時もそんな視線は感じた記憶ないぞ。

 

「そもそも山田先輩のことボコボコにしてる時点でおかしいじゃん。一応先輩女の子じゃん、怖いけど。何でそれをボコボコにできる? ……怖い怖い怖い、やっぱ怖いわ。しかも探索部とかいういかれた部活を立ち上げてるんだから。俺たちのことなんか一切考えずに、反省もせずに」

 

「でもやることはちゃんとやってたし……」

 

「やることやるのは当たり前じゃん」

 

 こいつ、なかなか弁が立つようになったな。昔はアーとかウーしか言わなかったくせに。

 

「そんな赤ん坊の頃に出会ってねえだろ! 確かに悪いことはしてなかったけど…………女の子殴ったらどんな理由があっても悪いに決まってんだろ!」

 

 そこを突き詰めていくとよくないので話題を変えよう。

 

「三船君、そろそろ気分治った?」

 

「はい……ごめんなさい倒れちゃって」

 

 実際のところは立ち上がるのも辛い状態になっていただけで倒れてはいない。いないけど……初めての子を長々と温泉に浸からせるべきじゃなかったな、うん。シエル達の視線が冷たかった。

 

「でも……温泉……気持ちよかったです」

 

「また入ろうな」

 

「はい」

 

 つっても、温泉が沸いてなきゃ入れないんだけど。ここ以外だと温泉なんて調べたこともないから、よくわかんねえな。火山は調べてるけど、大抵はレベルの高いダンジョンになってるから近寄ろうとすら思わんかった。

 

「……お風呂とは全然違いました」

 

 やっぱ温泉が至高なんだよな、程よい匂いまで含めて。

 

 縁側、再び。

 三船君を横たえさせると、気持ちよさそうに板に頬ずりしている。

 

「冷たくて気持ちいいです」

 

「のぼせるまで浸かったからちょうどいいのかもな。でも湯冷めしないように気をつけろよ。風邪ひくから」

 

「はーい……」

 

「寝そうになってるけど、まだご飯食べてないからな?」

 

「むにゃ……」

 

「おーい、おーい」

 

 ロイスが軽く頬を叩いても目を瞑ったまま。これはダメかもしれんね。

 

「…………」

 

「いつまで触ってんだよ」

 

 こいつ、いつの間にこんな気持ち悪い趣味を見つけたんだ? 

 

「先輩よりはキモくないからセーフです。っていうかめっちゃ柔らかいっすよ!」

 

「マジで? …………おお」

 

 もちもちもちもちもちもち

 すべすべすべすべすべすべ

 

「先輩も触っていいすか? ……まあ、柔らかいか」

 

「お前が一番硬いな。ジジイじゃん」

 

「はあー? 全然やわらけえし、温泉ですべすべだから」

 

 そうは言っても実際に触った感覚としてこの中で一番硬いのはお前なんだから仕方ないじゃん? 俺だって悲しいよ。後輩がまさか、ダンジョンに行って酷い目に遭ってる俺よりも肌ガサガサだなんて。

 

「ガサガサまではいかねえだろ! 逆にアレだから! ガサガサな方が男らしくてかっこいいっつーか、柔らかかったら女だから! やーい! 女!」

 

 何と言おうとお前が肌艶順位で最下位なのには変わらないんだよなあ。

 なあ? 秋川・ガサガサ・ロイスくん。

 

「なんだよそのクソみてーなミドルネーム!」

 

 いいじゃん、語感がちょっと車みたいで。

 

「どこも車じゃねえ!」

 

 

 ──────

 

 

「お前ら、うるさかったぞ。温泉まで声響いてたからな」

 

「俺っていうかロイスだろ」

 

「ロイスがうるさいってことはお前が原因じゃん」

 

「信頼が厚くて嬉しいねえ」

 

「アホか」

 

「あだっ」

 

 ──! 

 

 見ましたかみなさん! この人、手出しましたよ! 僕はただ喋ってただけなのに、見てましたか!? 

 

「…………」

 

 ロイス! 見てたな! 

 

「……じゃあ食べようか」

 

 秋川家に来ると夕飯が豪華ですごい。俺も努めて質素な食事をしようとはしてないのに、自然とステーキとか出てくる。俺の周りって金持ちか貧乏のどっちかしかいねえんだ……

 

 

 ──────

 

 

「はー、食った食った! 美味かった!」

 

「山田先輩」

 

「ん? ……ああロイス、なんだよ」

 

「ちょっといいすか?」

 

「…………わかった」

 

 ペタペタと2人の足音のみが響く廊下。

 宴会の間からわざわざ連れてこられたのは書斎だった。それもひとえに、ロイスが真剣な目つきをしていたからだ。ロイスが開けて待つ扉を潜ると、なんとなく想像していた通りの人間がいた。

 

「──日向ちゃん、こんばんわ」

 

「ええと……こんばんわ?」

 

 そこにいたのはロイスの母親だった。

 

「うん、わざわざ1人で呼び出してごめんね」

 

「良いですけど……コマちゃんのことですか?」

 

「それもあるけど、どちらかと言えば今回はアキヒロ君のことかな?」

 

「……」

 

 事情が事情なだけに、それならば直接本人に聞けば良いとも言えなかった。

 

「まあお守りのことがメインではあるんだけど……それも結局明宏くんに話が収束するんだろうしね」

 

「……そうですね」

 

 お守りという概念に関しては何となくしか把握していないが、災厄を肩代わりするのだろうとなんとなしにイメージしていた。山田家はそういう小金稼ぎみたいなことは基本的にしていないのだ。

 

「何となくはわかってると思うから省くけど、私たちが知りたいのはどうしてあのお守りがあんなに汚れてるかってことなの」

 

「あー……」

 

「これ私が言うとすっごい厚かましいかもしれないけど、お互い霊領に住んでるじゃない? だから、情報共有してもらえるとすごい助かるなって。もしも私たちの街で同じようなことが起こったら、結局何とかしなきゃいけないのは私たちだからさ」

 

 そりゃそうだろうけど、と内心でぼやく。

 

 日向とてアレに何か加勢できていたかと言われると、これっぽっちもしていない。それどころか、いるだけ邪魔だったくらいだろう。アキヒロを持っているという役割を果たしていたぐらいで、それも個人的に大事な役割でしかない。コマちゃんならば1匹でも何とかしただろうと想像できた。

 

「ダメ?」

 

「ダメっつーか……私もよく分かってないんですよね。あのお守りに関しては何にも知らないっていうか……親父さんから貰ったっつってたくらいで」

 

「そこも聞きたかったのよね。あんなのどこで手に入れたのかなって」

 

「?」

 

 そんなの、父親がどこかで買ってきたからだろう。

 

「…………別に悪気はないんだけど、日向ちゃんってもしかしてあんまりお家の仕事に関わってなかった?」

 

「仕事? ……道場の仕事なら手伝ってましたよ」

 

 言いたいことはわかる。秋川家に来た目的でもある、浄化のうんたらがどーとかという話だろう。

 

「そうじゃなくて──」

 

「言いたいことはわかるんすけど……ウチはそういうの無いんすよね」

 

「ええっ!? 無いの!? じゃあどうやって祝福を得てるの!?」

 

「祝福……?」

 

 すいません、初見一丁入ります。

 

「……色々と、違うところから聞いてかないといけないのかもしれないわね」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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