【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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「はぁ〜……」

 

 ほとほと呆れた、と身体全体を使っての表現は確かに心まで届いた。ああ、呆れてるんだなって俺も分かるよ。

 だけど、これに関しては俺も被害者なのでそんな風にあからさまな態度を見せつけられる謂れもない。

 

「先輩さあ…………ほんま、そういうところやぞ?」

 

「何でいきなり関西弁なんだよ」

 

「は? わけわからない事言ってないでチャキチャキ反省してください」

 

 俺がおかしいのだろうか。

 これって、俺がおかしいのだろうか。

 

「…………」

 

「…………」

 

 いつもこうだ。

 俺が何かをすると味方をしてくれる人間はいない。俺が本当の少年だったら心壊して入院中だぞ? 

 

「先輩がダンジョンに潜るのはこの際いいんですけど……」

 

「だろ?」

 

「いいんですけど! なんか普通じゃないことをやる時はまず相談してください! 山田先輩や四門先輩に! それが無理なら俺でもいいんで!」

 

「なんでだよ……いや、本当に」

 

「な、なんでって……」

 

「俺は成人の男性だ。自分で何かをやるときに誰かの許可を得る必要はない」

 

 たとえそれが友達でも家族でも、誰かの行動を縛ることは絶対的な話としてできない。もちろん、話を聞くかどうかとは別問題だ。相互的な話として、俺たちは他者を本当に思い通りにさせるなんてできない。

 

「会長」

 

「ソフィア?」

 

 シエル達と談笑していたはずのソフィアは、悲しげな笑顔を浮かべていた。

 

「そんな寂しいことを言わないでください」

 

「…………」

 

「ロイス君は、会長が1人でどこかへ行くんじゃないかって不安なんです」

 

 誤魔化すのにも限界はある。

 彼女達が言っていることはつまり、俺が彼女達にかつて言い放ったことと同じなのだろう。

 

「もちろん私も……」

 

 ソフィアは、大事なものがそこに仕舞われているのだと心臓のあたりを両手で抑えた。

 

 氷の心臓。

 あちらとこちらを繋ぐ鍵であり、あるだけでその肉体そのものを蝕む彼女の臓器。彼女自身の心臓として血液を送る役割と同時に、発される冷えついた魔素が彼女の心を苦しめていた。

 

「そうだぜ先輩!」

 

「……心配してるにしちゃあ、随分明るいな」

 

「そりゃあよ? 先輩を止められるなんて思ってないけど……一応可愛い後輩が心配してるってことは覚えていてくれればいいかな」

 

 ガキが一丁前に男の顔しやがって。

 

「何つーか……寂しいなあ」

 

「なにが」

 

「昔はさ……こういうことする時は俺たちも引っ張り回されたのに、今じゃあ1人で全部行っちゃうんだろ?」

 

「そりゃそうだろ」

 

 あの頃は同じ高校だから必然的に顔を合わせていたけど、今となっては元後輩と元先輩だ。

 距離が離れているからそんなに頻繁に集まることもできない。それに、探索者の俺が行くところってのは必然的に危ないところだ。

 個人的な探索に人を付き合わせるのは良くない。

 

「自分は勝手に首を突っ込んできたくせに、俺たちが関わろうとするとそうやってまともに戻るのマジで狡いぞ!」

 

「うん! うん!」

 

「そうだばーか!」

 

 これが気心の知れた友人の賑わいってやつです、か。

 

「──だいたい! あの黒モヤはなんだ! そんでお前は何なんだよ!」

 

「それは俺じゃなくてプロに聞いてくれ」

 

 細かい事情はともかくとして、大事なのは俺があいつらを倒せるってことだ。

 

「危険なのか危険じゃないのかはっきりしろ! お前、触って消してただろ! 実は私にもできて、お前ら全員で私のこと騙そうとしてるんじゃねえだろうな!?」

 

「日向先輩、あの穢れは本当に危ないので近付かないでください」

 

「お、おう……お前もアイツらとなんかしたことあるのか?」

 

「いいえ、私は秋川家の血を引いてないから何も出来ないんです」

 

「ソフィアには絶対にやらせません!」

 

 両手で大きくバッテンを作る。ロイスは真剣そのものの表情でそんなことを言うので、くだらんほっぺたを抓った。

 

「いててててて!」

 

「どの口でそんなこと言ってんだお前は……?」

 

「そ、そふぃあにもおなじようにみさせてまふ!」

 

「ますます何を考えてんだ?」

 

 頬袋がさらに3割ぐらい伸びるよう心を込めて引っ張った。

 

「ぢぎれるぅぅぅぅぅううう!」

 

「お前達は一族揃って反省しろ。自衛手段がない奴を連れて行くなんて頭終わってんのか?」

 

「しぇ、しぇんぱいだって同じようにゃあああああ!」

 

 

 ──────

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……俺のほっぺ、ついてる?」

 

「うん、大丈夫。いつもよりも少し膨らんでくるけど」

 

「痛い……」

 

 かこつけていちゃつき出したアホはともかく、美花さんはまっすぐにこちらを見ている。

 

「あなたを見ていると……私たちが普通の人間に過ぎないって分からされる気分だわ」

 

「そういうのは心の中にしまっておくのが吉ですよ。あんまり褒められると踊り出して何をするかわかりませんからね」

 

「異能を横取りしたいとかそういうのじゃないんだけど……何か心当たりってないのよね?」

 

「ええ」

 

 過去に散々聞かれたことでもある。どんなカラクリであのモヤモヤ達に触れても無事なのか。何がきっかけでそんな力を手に入れたのか。

 思いつくことは限りなく絞られた。

 俺が転生者であることだ。

 あの頃は探索者になる前だった。

 レベルだって一般人より少し高いくらいだ。

 ダンジョン由来の力だとは思えない。

 何だろうね、全然わからん。

 

「神様も、私たちにそれくらい強力な力を宿してくれればもう少し安全に仕事ができるのだけれど……」

 

「何ちゅう恐ろしいことを……」

 

 恐らく、霊領内である以上はここで起こっていることをある程度把握できるのだろう。それこそ喋っている内容くらいは。

 掌中でそいつの愚痴を吐くなんて、あまりにも豪胆すぎる。

 

「でも、そうすれば加賀美君だっていちいちここに来なくても良いのよ?」

 

「俺がここに来てるのは、仕事があるからじゃなくてロイスとソフィアがいるからですよ」

 

 そうでもなければ、わざわざこんな事をするわけがない。所謂『可哀想な人』ってのはこの世に溢れている。搾取する悪い人間と過酷な自然環境が合わさってるんだから、それくらいは当たり前だ。

 その全てにいちいち反応なんてするわけがない。できるわけでもない。

 そういうのはアベンジャーズとか仮面ライダーとかスーパーマンの仕事だ。

 

「幸運を喜ぶべきなのかしら……」

 

「息子さんの縁と、息子さんを褒めてあげるべきですね」

 

「どうしてこう……歳、一つしか変わらないわよね?」

 

「もちろん」

 

「ちょいちょ。俺、そんなにガキじゃないぞ? 街のみんなからは大人びてるって言われるんだから」

 

 ガキといえば……

 

「シエル達、大丈夫かな」

 

 あの2人は、俺が外に駆け出す前に震えて話にならなかった。

 

「あー……」

 

「なんか知ってるのか?」

 

 気まずげに頭に手をやるヒナタの様子からして、何かよくない思い出があるのかもしれない。

 

「いや、あの2人は……まあ良いんだよ」

 

「はあ? …………とりあえず様子見てくるわ」

 

 2人は布団の中でくっついていた。暖かいオフトゥンの魔力には恐怖すら並び立つことはできないのか、すでに瞼が落ちている。もう夕飯を終えている以上、起こす必要もない。心配は杞憂だったか。

 

「こいつら、付き合ってんだよな?」

 

「聞いたことはないな」

 

 基本的に職場恋愛はやめておいた方がいいというのが俺の考えだ。寿退職ならともかく、シエルはそういうのじゃないだろう。何より、愛する人間が目の前で死んだりしたら、一生の傷になる。

『また』ということだ。

 それは最早、三船君の心が取り返しのつかないほどに破壊される危険性を秘めている。

 

「…………」

 

「レイトもシエルも、他の仕事があればな……」

 

「あんまりそういう甘ったれたことは言わないほうがいいぞ」

 

「そう……だな、ごめん」

 

「怒ってはいない」

 

 

 ──────

 

 

「──はぁ、疲れた」

 

「そもそも、風呂入った後に何で森に入るかね」

 

「しょうがねえじゃん……」

 

 ロイスの話によれば、日向の身体からモヤモヤが出てきたらしい。何でそんなことが起こるのか本当に1ミリも理解できない。

 

「うーん……肌に変なことはないな」

 

 背中も、腕も、腹も、脚も、黒いシミができてたりなんてことはない。大変だからな、女の子の体に傷が出来たら。あのお守りぐらい全身黒くなってたらそれはそれで逆にアリだけど。

 

「よしよし」

 

 程よく引き締まった体を抱きしめると、身を捩った。

 

「くすぐってえよ……」

 

「馬鹿なことをした罰だと思ってください」

 

「……スケベ」

 

「変なことしてねえじゃん」

 

「手つきがいやらしい」

 

「2人きりなんだからいいだろ、これくらいは」

 

 こうして2人で風呂に入ることってほぼ無いので、ふとイタズラ心が湧くのも仕方ない。

 うなじが目に入ったからな。

 

「っ…………」

 

 赤い痕が一つ首筋に。

 

「よし」

 

「…………だろ」

 

「え?」

 

「よし、じゃねえだろ…………!」

 

 お返しと言わんばかりの猛攻。止めようとするたびに牙が剥き出しなので、結果的に数倍のお返しをされてしまった。

 

「こんなにされたら隠せないんだけど……」

 

「お、お前が悪いんだ!」

 

 意味不明な言い訳を並べながら離れないのがとても愛おしい。さっきは後ろからだったけど、正面から腕に中に収めると肉感がたっぷりと。

 触れ合っていると自然と反応しそうになるので、そこは理性で抑えつつ。

 …………だから、そんな目で見てもダメだって。

 

「ちょっとだけ……」

 

「ダメだって」

 

「ほんとにちょっと」

 

 この世にちょっとだけ()なんて概念はないんだよ。

 

「来た時に約束しただろ? そもそもココ人の家のおふろだし……」

 

「…………ちぇっ」

 

「ほら、星が綺麗だぞ」

 

「……星なんか出てねえよ」

 

 こういうのんびりした時間を過ごすのが一番良いんだよ。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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