【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「レベルが8も上なんだよ? いくらなんでも……」
「それなら死んでおしまいだろ」
「女の子を遺して死ぬとか最悪だよ」
「探索者って分かってて付き合ってるんだからそこは仕方ないかな」
「うわ、マジで最悪だ……」
人のこと言う前にまずは自分の彼氏作れよ。あと、俺に色々とやらせておいてこの程度のことで躊躇するな。
「最近キミの周りって人増えてるし、レイトくんのこともあるじゃん? 前とは事情が……」
「そんなこと言われても俺は俺のやりたいようにやるので」
「こ、濃ゆい……濃度で負ける……!」
「何の話?」
「女の子を不幸にするような男の子に育てた覚えはありません!」
楽しそうだな。
「知り合いの女の子のためだけにダンジョンに行くとか……控えめに言ってどうかしてるよね」
「牛にもつながるかもしれませんから」
「怪しい…………もしかして」
「浮気じゃないですよ」
そういう関係では全くない。
ミツキがお世話になっていて、お餅サークルのサークルリーダーであるという程度のものだ。
「まだちょっと早いんじゃないかねえ」
「?」
知っている探索者が話しかけてきた。
──とはいっても話すのは初めてだ。ここの支部に属する二級探索者は少ないからな。
派手に羽を飾りつけた鎧は、歩いても風に揺れずかっちりとしている。見た目に反して固い素材のようだ。
「この間ドラゴンの討伐に失敗したばかりだってのに、急ぎすぎなんじゃないかい?」
話し方はおばさん感があるが、見た目に関しては妙齢の美女と言って差し支えなかった。やや嘲るような表情──というのは穿ち過ぎか。
どちらかというと呆れたような笑い方だ。
「盗み聞きしちゃって悪いね。でもほら、ここで飲んでると聞こえてきちゃうんだよ」
「近いですからね」
「そうそう! ……んで、あのダンジョンのことなんだろ?」
「はい」
『腐り果てた村』
名前からして終わった感の強い名前だが、情報はほぼ出回っていない。とりあえず腐っているんだろうということだけはわかるあそこについて、何か知っているのだろうか。
「これは善意からだよ。ドラゴンも倒せないんじゃ、あそこは絶対に無理だ」
「行ったことあるんですか」
「あるよ、あるある。その時はくっついてっただけだけど地獄だったよ」
「へー……地獄か」
大焦熱地獄的な話だろうか。
「だからやめときな」
「やめろって言われてやめるなら、あなたは探索者になってました?」
「…………はっ」
ポカンと口を開けたまま硬直すること数秒。
「はっはっはっはっは! 確かになあ! あっはっはっは! アンタの言う通りだね! そうだそうだ!」
俺の回答はお気に召したようだった。少しだけ笑いすぎなキライはあるけど、陰湿なのよりは万倍マシだ。それにしても快活な笑い声で、聴いているこっちまでつられて笑みが溢れるような響きだった。腹から笑っているというのがよくわかる。
「なんつーか……評判通りだな! 加賀美明宏!」
「最近はあんまり良い評判を聞かないですけど」
「自分で言うのかい!」
「良いツッコミですね」
「なんだそりゃ、ははっ!」
言葉や仕草の端々から性格が滲み出ている。これまで絡んだことがなかったけど、この人こんな感じなんだな。視線も変な感じはないし、案外まともだ。
「アンタ、それにアレだね。気負いが無い」
「知らんところに行くからっていちいち緊張してたら身が保たないでしょう?」
「まあね」
「それじゃ」
今日きたのは仕事の受注をするためじゃない。一応方目さんには報告しておこうと思っただけだ。その目的は達成したので、今日はもうお暇。
「いやいや、まあまあ」
そうは問屋が卸さないらしい。
肩を掴まれ、予想通りの力強さで座らされた。予想外だったのはむしろ向こうのほうだったようだ。
「まだ名乗ってもないじゃないか。少し話してハイさようならなんて寂しいだろ」
「俺もそう思ってるんですけどね。なかなかみんな俺とはお酒を飲んでくれないんですよ。仕方なく幼馴染と飲むばかりで……」
よよよ。
「それならまさにじゃない! 一緒に飲もうやー!」
「そうしますか」
飲み会は嫌いじゃない。
嫌いじゃないけどみんなは俺のことがあんまり好きじゃないのでこの世界だと予想以上にやる機会が少なかった。悲しい……!
「私はフロスト」
「良い名前ですね」
「そうだろう? 親父がありきたりな名前じゃ可哀想だってんでこれにしてくれたのさ」
和名ではない。
しかし髪の白さとよくマッチしていた。
「アンタは加賀美明宏だね?」
「自己紹介させてくれないなんてひどいなあ」
「あははっ! いいだろ、こっちは知ってたんだから」
「形式は大事でしょうよ」
「お固いこと気にすんなって! ……お、やっぱりカチカチだ」
豪快な笑い方。
背中を叩く手の細さと力強さはお互いに全く相関性を見出せないが、探索者とはこういうものだった。あくまで自分の肉体を鍛えることはせず、あるがまま。
自然派ってやつだな。
「うわ〜……」
他の探索者と俺の体を見比べて声を漏らす。
そんなにマジマジとみられると筋肉がピクピクしちゃうっ! 筋肉は見られると嬉しくて大きくなっていくからな。
「なにか?」
「……なんかエロいなって」
「まさか初っ端から下ネタとは……」
「だってアイツらは引き締まってたり太ってたりはするけど、アンタだけギュッ! ガッ! ブン! みたいな身体してるじゃん」
「わからん」
表現の意味するところはともかく、下ネタに関しては歳取ってるからそこら辺がオープンになってるのかもしれない。
「モテるだろ?」
「モテないな」
「うっそだあ!」
「探索者がまずモテないし、探索者の中でも避けられてるからな。そういう縁がないんだ」
「へー」
方目さんが何故かコチラを見ているが、俺は無視が得意なので関係ないね。
「レベル50超えてもモテないなんて、よっぽどアレなんだな」
「アレなのは俺以外の全てだ。俺だけが健全で普通で常識的だからな」
「し、思想強いねアンタ……」
「普段はこれでも抑えてるんだ」
「というか、さっきまでは敬語だったのに」
「酒の席でそんな野暮なこと言うのか?」
「うわ、なんか素が出始めてる気がする」
「そうかもしれない…………やっぱり人と呑む酒は楽しいな」
「めっちゃ良い笑顔……!」
一期一会は大事だ。時には殺意に満ちたものもあるけど、こういう出会いなら大歓迎。
暗殺者を送ってきた例の一家は既にダンジョンに投棄されているだろうな。
「フロスト、アンタはなんで探索者になろうと思ったんだ」
「…………まあ、普通の話だよ。金が無かったんだ」
「そうか」
誰にだって傷はある。
「アンタは? 噂だと牛がどうとか……牛がいっぱい食べたいんだったけど」
「その噂は完全に正解ですねえ」
「誤解じゃないんだ!? あはははは! バカじゃん! バカなんだ!」
「こっちは真面目なんだけどな」
「真w面w目wにwうwしw」
「笑いすぎだろ」
「はぁ……はぁ……探索者やってて、なんか進展あったのかい?」
「ある」
「へえ! まあ金なら集まるからね!」
「それは進展とは呼ばないカナ」
「ううん? どういうことだい、金意外になんかあるのかい?」
「俺は牛の養殖がしたいのであって、牛肉を食べるのはその後だ」
「どういうこと?」
「犬みたいな感じで牛を飼って、人間が餌を食べさせて増やすんだよ」
「…………どういうこと?」
「今すぐに食べる気はないってこと」
「あ! そういうことか! なんだよ、最初からそう言ってくれよな!」
「ははっ! わりい!」
「なんかやたら小難しい言葉を使ってたけど……あんたアレだね? 頭良いんだね?」
「それほどでも」
フロスト
38歳
二級探索者
レベル55
パーティー名『氷花月』:3人パーティー
異能『氷結』『羽化』『再生(弱)』
どこかで聞いたことのある異能もあったけど、そもそもの由来が違うだろうな。異能じゃない方の同名のやつとは関係ない。羽化は俺が聞いたことのない個性だったけど、その内容を聞いて驚いた。
羽化を発動すると一定時間はその場に適応した姿になることができて、怪我や欠損なんかも完治するんだそうだ。
…………つ、強い!
「い、いくらなら売ってくれるんだ! 言い値で買う!」
「いや、異能は売れないでしょ…………」
「それでもいい! 売ってくれ!」
「売れねえって! 外せねえって!」
「羽化の異能だけで良いから!」
「うがあああ! 鬱陶しい!」
地面に放り捨てられた。
まるで紙屑のように。
俺はこんなにも本気なのに…………気持ちを誰かに伝えるには背景が必要なんだ……!
「ううっ、ひどい……」
「やめろって」
「──真面目な話をすると、とても強力な異能だ。キミは探索者として天性の才能を持っているんだな」
「うわあっ、なんだその口調」
「羨ましいね。俺もそんな異能が欲しい」
「どんな異能なんだいアンタのは。まあ、1人であたしらの領域までくるんだから、強力なのを──」
「何もない」
「はあ?」
「異能なんかねえよ」
「いやいや…………え?」
俺の肩幅を見て、言っていることが本当だと気付いたらしい。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「いやいやいやいやいや! そんなのあり得ないって! ………………あり得ないよね?」
「残念ながら……」
もう手遅れみたいなんです。
中間成長分の20レベルは全部すっ飛ばしちゃったので、成長のベクトルを自分で決めることはできませんでした。ツリーが全部肉体強化に振られてポイントも勝手に割り振られてます。
技量もレベル30前の時とほぼ変わってないし、本当に肉体性能だけがグンと上がった感じだ。
「異能も無いのに1人で探索者やってんのか? ただでさえ正気じゃねえのに、重ねがけじゃねえか……」
方目さんにもミツキにも散々言われている。
仲間を作れ、と。
できるならしてるんだよ。
「……どうやって戦ってんの?」
「観察して戦ってる」
「それでどうにか……まあ、なってんのか」
「割となってない。ほら」
長袖を捲るとすぐに傷がお目見えする。
「ああ……」
「ツノダさん、酒と串揚げ追加でお願いできる?」
『はーい!』
いつまでもダラダラと飲んでいたかったけど、連絡したらすぐ帰ってこいって言われたから切り上げる羽目になった。
「ただいま〜」
「おかえり──でおさまるかあ〜!」
収めてくれ……頼む……!
「なんで楽しく飲み会なんかしてんの!」
「良いだろ飲み会くらい。俺には娯楽を享受する権利もないのか」
「ない!」
無かったんだ、俺にはそんな権利。
ミツキが言うんだから間違いない。
「…………ダンジョンに行くんでしょ?」
「うん、今回は偵察メインだよ」
「一日で帰ってくる?」
「3日間くらいかな」
偵察メインの場合の話で、行けると判断したらもう少し長くなる可能性もある。
「そっかー……」
「……ん? 何かしたい事でもあるのか?」
ミツキはソファーに腰を下ろすと、モジモジと指を動かした。
「ううん……でも、最近あんまり顔合わせられてないなって」
「…………詰めろ」
「あ……」
おら、俺の座るスペースをつくりやがれ!
ソファーはみんなで座る場所なんだ! 1人が座ってちゃやってけねえだろ!
「アキ?」
「たまには2人でのんびりしようか」
「──うん!」
隣に座ったところで何かをするわけじゃない。
子供同士がそうするように肩を寄せ合って。
ただ、昔そうしたように。
一緒に座っていた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない