【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
背中を預けると言っても、本当に背中を合わせて戦うわけじゃない。ひと所にとどまっていたらあっという間に囲まれてしまう。それを防ぐ為にも常に動き、先手を打つ必要がある。特にこういう集団戦においては。
『──』
『おああ──』
「あおおおおおん!」
『!』
「よくやった──疾風迅雷とはこのこと!」
『ぎっ』
コマちゃんが咆哮を相殺した隙にコマちゃんが接近し、コマちゃんが角度を整えて俺が武器を振る。
完璧な連携だ。
『あぎっ、あぎっ、ぎいい』
「なんっ、だっ、そりゃっ!」
「無いなりの戦い方さ」
コマちゃんは大きさもちょうどで、騎馬兵になったような気分だ。炎に巻かれた腐人どもは苦しんで最終的には逃げていく。有効なようだ。
「よくもまあモンスターに載って戦えるもんだな……」
「俺の努力の成果ってやつだ」
しかし俺が持つ武器は薄刃の剣。腕よりは長いが、所詮は一度に一体を攻撃するのが関の山だ。モンスターは後から後から湧いてくる。チマチマと一体ずつ撫で切りにするだけではまるで追いつかない。
「使えるんだろ異能。見せてくれよ」
「……」
そこで役に立つのが広範囲殲滅型の力です。
「──はああっ!」
「おおっ!?」
掛け声と共に小さな爆発が巻き起こった。
シンプルながらあまり見ない爆発の異能。どんな生活を送っていたら爆発の異能なんて手に入るのかが気になるけど、間違いなく高威力広範囲の殲滅特化型能力だ。
「まだまだあ!」
ヒューイの正面を爆炎が覆い、建物や赤い水ごと飲み込んで見えなくなる。今の熱量からして、腐敗や建物ごと吹き飛んでいるかもしれない。レベルの高いダンジョンの地面や物質ってのは通常の物質よりもはるかに高い強度を持っている。だからこそ俺たちは安心して戦えるし、踏み込んだ瞬間に地面が豆腐みたいに粉砕されていくなんてこともあまりない。
だけど異能は本人のだから膂力なんかよりも上なことが多いから、そこだけが不安だった。
「おい、ひいおばあちゃんの家があったらどうすんだ! 抑え目で頼む!」
「はあ!? そんな余裕ねえよ! ……見ろ!」
「……マジか」
煙の中から姿を現した世界はなんとも無惨なことに、大した変化を表していなかった。所々かけた屋根や吹き飛んだ水も、すぐに侵食が元通りにしていく。
『──シャッ!』
ユラユラと現れた腐人は、倒れこむような体勢でヒューイに突っ込んだ。なんというか……肉弾ロケット! って感じだった。
「うおあぶねえっ!」
それをヒューイが回避すると、バシャンと水面下にまた身を隠す。
「ず、ずりいんだよさっきから!」
さっきからという言葉が示しているところは、おそらく俺と出会う前の初遭遇時から同様に水面下に逃げられていたのだろう。厄介だ。
「キリがねえか……爆発じゃ殺せないんだな?」
「せいぜいが吹っ飛ばすぐらいしか出来ねえ! それよりお前のあの炎はなんだ! あんな異能、初めて見たぞ」
「秘密」
「ちっ……邪魔だあ!」
秒間10撃は容易く超えているだろう。接触した瞬間、腐人どもが爆風で吹き飛ばされていく。
「まだまだまだまだあ!」
こんな空間で、爽快感すら一筋の風となって吹き込みそうな気持ちいい攻撃。
いいなあ……俺も爆発させたいし芸術を花開かせたいなあ。爆発を背後に振り向くことすらせずニヒルに立ち去りたい。
「お前もっとやれんだろ! 1人でやってきたんだから!」
「いや、あんなかっこいい範囲攻撃は持ってないから……俺みたいな小物にできるのはこうやって小火で燃やすことくらいで、とてもとても……」
「めっちゃ燃えてるじゃねえか!」
「え? …………うおっ」
見たことないくらい燃え上がっていた。
これが嫉妬の炎ってやつか。
「燃え尽きろー」
「テンションひっく……」
叫びながらやって結果が変わるならいくらでも叫びますよ。でも生憎とそういうテンションじゃない。こちとら真面目なんですよ。
『あぎいいいい』
『ジャアアア!』
「おお! いいぞ!」
「……いなくなったか」
腐人が全ていなくなった──というよりも、炎に恐れをなして逃げたような雰囲気を感じる。小休止だ。
「今のうちに移動だな」
「ああ……」
「そんな見ても教えないから」
俺が知らないのに教えられるわけもないし、突っ込むのはやめてよね。
『──』
何かが聞こえた。
「!」
『──』
バッ、と勢いよく振り向いたヒューイが視線を巡らせると、何かがさらに聞こえてくる。俺たちのことなど置いて駆け出したので、一応ついていくことにした。目的の家はもう少し先だけど、そのお仲間とやらがどんな奴らかは見て行っても大丈夫だろう。
「──ヒューイ!」
「2人とも! 無事だった……あ?」
「あはは……失くなっちゃった」
現れたのは女2人組。背負い背負われでやってきた。
俺と同じで水面を歩けないのかと思ったが、もっと酷い。
足の欠損。
機動力に対して致命的なデバフが入る。普段の生活であれば探索者ならば問題なく生活できるだろうが、ことダンジョンにおいては紛れもなく足手纏いにしかならない。
幸運だったのは仲間がちゃんといたことか。人間1人背負ったところでどうこうなるほど探索者はやわではないし、弓なんかのように両手でしっかりと扱う武器でなければ影響も少ない。見たところ彼女は二刀流のようなので片手が生きていれば大丈夫だったのだろう。なんか持ち方微妙に変だけど。
「お前ら……」
「……ごめんなさい」
「……ごめん」
ヒューイはワナワナと震えている。そんな様子に仲間は気まずそうに顔を伏せると素直に謝罪をした。
驚きだ。おそらく実年齢で言えば40代(適当)だろうにこんな素直に謝れるとは。
……脳みそが若いからか?
「無事でよかった……」
それどころか2人を抱きしめ、膝から崩れ落ちた。大切な仲間、ということだろう。みんなこれくらい仲間を大事にすればいいのに、竜の谷で出会した奴らは酷かったな。
「──ところであいつは?」
「あー……カガミだ」
「カガミ? なんでこんなところに?」
「成り行きというか、その場のノリで?」
「何してんだよお前は……」
「俺のことはいいんだよ。とにかくここから脱出するぞ」
じゃあもう良いね。
「ほら、ミライ」
「ありがと」
ミライと呼ばれた女はヒューイの背中へと移り、ついでに剣と弓を交換した。
……ん?
「……背中に乗られてると弓なんか使えねえんだよ」
「これは失礼」
背負っていた方の──名前は知らん女が聞いてもないのに言い訳をし始めた。どうやらこっちの女が弓使いだったようだ。
「お前……どうなってんだ?」
「え?」
「ナイフしか持ってないのか? 他に武器ないのか?」
ナイフ。
確かに今はナイフに戻してしまってあるからそう勘違いされても仕方ないか。
「ほら」
「──!」
ナイフ形態と魔剣形態を行ったり来たり。
「どうなってんだそりゃ」
「さあね」
もう、いいだろう。
俺の目的であるひいおばあちゃんちは30分も歩けば着くはずだ。村であったことを考えると異様なまでの遠さだが、ここはダンジョンだ。物理的な距離感覚が狂っていても仕方ない。
「正直助かった。あのままだったら……正気を失ってたかもしれない」
「助けられたならよかった。気をつけてな」
「……いいやつだなお前」
「はは……ここはまだダンジョンだ。感じ入るよりも先に索敵をした方がいいと思うぞ」
「──なるほどね、1人でやるためには常に気を抜けないか」
「1人じゃないさ。何せ俺にはコマちゃんがいるからな」
「……突っ込まないぞ」
突っ込むところじゃねえよ。
「なんにせよ本当に助かった。またどこかで会ったらよろしくな」
「生きてたらな」
結局はそういう話に尽きた。
みじかっ
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
-
いる
-
いらない