【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
俺は実はただの人間じゃなくて長い夢の中で死ぬまで生きたという記憶を持った人間で生まれた時から自分が何者なのか分かっていて焼肉を食べたいのは昔食べていたものが食べたいからで前世の記憶があるって事からも分かる通り既に一度人生を終えていたんだけど死ぬ前は妻子持ちの孫持ち腰痛持ち頭痛持ち柏餅だったんだよ!
「何言ってんだ?」
「信じないんだ〜。ヒロさん、私はもちろん信じてますからね!」
「嘘こけ。意味もよく分かってねえくせに」
「分かってるに決まってんじゃん。だって私の方が頭いいんだから!」
「アキヒロに手取り足取りで全部教えてもらったくせに偉そうなこと言ってんじゃねえよ。1人じゃなんもできねえんだから」
「でも努力は私のものですよね! ヒロさん!」
そうだよ。
「ほら!」
「ちっ……」
喧嘩はやめてね。
「…………ん? ちょっと待て」
「確かに……なんか今、変なこと言ってませんでした?」
言ってないよ。
「こ、子供!?」
「ヒロさん!?」
「てめえ、妻子持ちとか言って……孫も!?」
「ヒロさん!?」
「既に死んでた!?」
「ヒロさん!?」
「お前誰だ!?」
「ヒロさん!?」
「どういうことだ!」
「どういうことですか!」
死者は嗤う。
骸が作れる表情など笑みだけなのだから。
「笑ってねえで答えろ! おらっ!」
「あんま舐めてるとやっちゃいますよ!」
なんでそんなに滑らかに暴力が繰り出せるんだい……?
「冗談じゃねえのは分かってんだよ!」
「素知らぬ顔で本当のこと言うのやめてください! パワハラですよ!」
ハラスメント要素、どこ?
「私たちが何にも知らねえと思って良い気になってんじゃねえ!」
「もう子供じゃないんですからね! ヒロさんの背中の黒子の位置だって分かってますし!」
「そうだ! いつまでもガキに向けるのと同じ眼で私たちのこと見やがって!」
「あの眼、クセになるけど複雑な気持ちにもなるんですからね!」
どの眼だよ。
「気付いてないと思ったら大間違いだからな! お前がちょっと遠巻きに私たちのこと見てる時、ずっとあの眼なんだよ!」
「だよ!」
「悔い改めろ!」
「ろ!」
会話が通じない。
どうやら2人は今の話を聞いて正気度をだいぶ失ってしまったようだ。変な物を食べる前に気絶させた方がいいのだろうか。締め落とすのとヘッドシェイク、どっちが良いだろう。2人の電源を一旦オフにするのはとても心苦しいけど、錯乱状態で放置したら大変なことになるかもしれないからやむを得ん。
「ぼ、暴力反対!」
「反対!」
そのデモクラシーは俺をボコボコにする前に発動されるべきものなんじゃないか?
「レベル50のやつが女に手あげて良いと思ってんのか!」
「のかー!」
アリサ、実はたのしんでない?
「そんなわけないですから! 至極真面目にヒロさんの身を案じてるんです!」
何言ってるかよくわからない。
「妻子持ちの件について説明をヨーキューします!」
妻子持ちの剣『ヴェンデッタ』
大量の魔素を浴びたことによって意思を獲得した剣。
リヴァイアサンの鱗に刺さっていた剣を抜いた時に意思ある剣であることが判明し、繁殖能力によって妻子を獲得した。妻なのか夫なのかよくわからないが、本剣が生殖器を持っているので雄とされている。
永井文俊と喧嘩をしたことで有名。
「そんなの聞いてねーよ!」
痛い!
「痛くねーだろ! ふざけんな! 殴った私の方が痛えんだよ!」
本当にそれ言う人いるんだ……
「ヒロさん真面目に」
あ、はい。
──────
どうなっても、どう言われても仕方がないと思った。
これは裏切りであり、欺瞞であり、自己満足だ。ミツキはああ言っていたが……他者からは大きく見えているだろう俺の人間性も能力も全てが偽りのもの。
アリサもヒナタも加賀美明宏という名の虚像に飛びついていたに過ぎない。
『悪い大人の男の人』に騙されていたということが真実だ。
「はああああああああ…………」
深いため息。
どこまでも沈み込んでいきそうな勢いで放たれたため息が床に溜まり、足元へじわじわと押し寄せてくる。灼熱と極寒が同時に感じられた。
「お前はさあ……」
「悪かったな、2人とも。お前達が見ていたのは所詮、経験を積んでそのまま人生を続けているだけのジジイのガワの部分に過ぎないんだ」
「はあ……」
日向はどうしようもないと首を振る。
それも仕方ないことだろう。
綺麗で純粋な乙女を3人も騙して純潔を奪った。それはユニコーンのツノで何度刺し貫かれても許されぬ大罪だ。目を逸らしていた自分の罪の重さというものを直視した気分は最悪だった。
楽しいからこうしてきた。
人生を退屈にしない為にこうしてきた。
独りよがりだ。
「はあ……」
再三のため息。俺と近く接してきたという
「そんな眼してんじゃねーよ」
「すまん」
「別になんも思ってねー」
「…………は?」
それはおかしい。
人の気持ちというのは簡単に変わってしまう。
明るみになったものが大きければ大きいほど、それまでに抱いていたものを容易く打ち砕いてしまう。ミツキの時は良い方向に作用したけど、それがいつもそうであるとは限らないと分かっていた。
事実とは何よりも残酷な刃なのだから。
というか──目の前の男の中身は実はジジイですなんて言われたとしよう。正気を疑うか、信じたとしたら気持ち悪くて離れたいと思うのが普通じゃなかろうか。
「深刻そうな眼してっけどさ……納得しかねえからな?」
「うんうん!」
…………?
「だからお前は路地裏になんてやってきて私のことを見つけ出したんだな」
「ずーっと……不思議に思ってたんです。ヒロさんみたいな人がなんで私達みたいな不良のことなんか気にしてくれたのかなって。その謎が解けました!」
「だから子供が好きなんだな」
「時々フツーのことに文句言ってる理由もわかりました!」
アホが2人もいた。
その程度のことで納得などできるものか。
思考のプロセスを理解することができなかった。
「お前、それを話して私たちが離れてくと思ってたんだろ」
「あー……あっ! ミツキさんの入れ知恵だ!」
「そういうことか! うわーっ、昔からそうだけどアイツマジで根が暗いよな」
ミツキはそういう意図で俺にその話をしろと言ったわけではない──と思う。
「あのなあ……そんなのに騙されないからな?」
どちらかというと今までが騙していたと言うべきではなかろうか。
「そもそもお前がソウイウつもりで近付いてきたわけじゃないってことくらい分かるわ」
何故?
「だって、目が違う」
「そうだね」
目。
なぜ彼女たちは目を強調するんだ。
「裏にいるとキメエおっさんどもが近寄ってくんだよ」
「そうそう、いくら〜? とか初めて? とか」
「全員金玉蹴り上げてやったけど、あーいう奴らの目って……ううっ、気持ち悪いんだ」
2人は同時に身震いをした。身の毛もよだつ思いだったと、思い出すだけで気分が悪いと顔色にも出ていた。
まあ、そんなキモい奴らは生殖機能を失って当然なのでよくやった。
「お前は違うじゃん?」
「ヒロさんはなんて言えばいいかな〜……ガンギマリ?」
そういう輩とは間違いなく違うと自信があるけど、ガンギマリの目はしてない。
「今思い返せば、純粋な狂気だけが瞳に満ちてたからな」
「自分がしていることは全て正しくて、全てが自分の道の先に繋がってるんだって疑ってない目でしたね」
そんなことはない。
俺は常に自分の道が正しいか振り返って確認しているし、間違っていることを確認した上で進んでいるだけだ。
「ふぅ……安心しました!」
「正直、別れ話切り出されんのかと思ってたからな」
「なんで俺が……そんなことする訳ないだろ。むしろいつそっちから切り出してくるのかと思ってたんだぞ」
俺がいない間に男とどこかで会って新しい恋に落ちていてもおかしくない。悪く言いたいわけじゃなくて、人間ってそういうものだから。
「てめー! 私たちのこと信じてないってか!」
「3人も女の子囲ってるんだから他にも見つけてくるって思われて当然なんですからね!」
突きつけられた指先と揺れる瞳に納得せざるを得なかった。ふざけたような態度であっても、肉体の振る舞いが嘘をつくわけがないのだから。
「……ごめん、心配になるようなことして」
「別に謝って欲しいわけじゃないです! そういう人だとは分かってますから!」
「というか、そうじゃなきゃ私達のことなんてどーせ相手にもしねえんだろ?」
「それは無い」
俺が俺である以上、同じことをどれだけ繰り返しても同じ選択を選び取る。
「出会ったのは偶然かもしれないけど……一緒にいてほしかったのは、2人が俺の運命を切り拓いてくれると思ったからだ」
「な、なんだよそれ……」
「はわわわ……」
「俺の力なんて所詮カスみたいなもんだ。だけど、人とのつながりを見つけていけばきっと……その先には何かがある。まだ若いやつには自分の力に気付けていない奴が多いから、先に関わっておけば未来できっと俺の力になってくれると思ったんだよ」
「未来って……どんだけ壮大なこと考えて生きてきたんだよ」
「──ヒロさん!」
飛びついてきたアリサを受け止めた。
「私、力になります!」
見上げる瞳にはやはり、強い意志が宿っていた。
「ヒロさんが私に何をして欲しいのか正直よく分かってないけど……言ってくれれば何でもやります!」
「いや、そういうのは良い」
「え?」
「俺が方向性を示して腕を引っ張っても、それは俺のやることの延長線上にしかならない」
「えんちょーせん」
「それぞれがそれぞれの思う道を行くことこそが人類の特徴、多様性の強みだ」
「たよーせい」
「やりたいことをやってくれ」
「でも……」
「アリサ、ヒナタ、お前達だけじゃない。俺が縁を結んできたみんなが自分の意思で行き着いた果てのどこかにこそ、答えを得るための鍵がある筈なんだ」
「と、遠回りすぎんだろ……」
「いいだよ、それでも」
キザったらしいセリフになってしまったが、本心だった。多様な人間が集まるほど、答えからの誤差がバラついているほど、真実は近くなる。
それは
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない