【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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60_ワームを倒そう!2

 

 音爆弾を確保できなかった。

 あの商人には2度と関わらないとリーダーから宣言も出ている。

 そうなると別の商人から見つけ出さないといけない。しかしポピュラーなアイテム故に、入荷されたからと言って必ず買えるとも限らない。世の中には情報をいち早く掴んで朝日が昇る前から待っている探索者もいるのだ。

 この調子では次にあのアイテムを目にできるのはだいぶ先になりそうだという予感があった。

 故に──

 

「ちゃーっす!」

 

「ようハシュアー、こんな朝からどうしたんだ?」

 

「困ってます!」

 

「はいはい」

 

 自分を地上世界に連れてきたヒューマンに頼るのが早いと考えるのは自然だった。パーティーリーダーのお目付けみたいな役を担っており、探索者としてもよほど上位に位置する。

 

「……音爆弾が欲しい?」

 

「シエルと一緒に出かけるみたいな商人から買えなくてさ」

 

「すみません、よくわかりません」

 

「だから! 俺たちは音爆弾が欲しくて見つけたんだけど、持ってたのがシエルのことが……す、す、好きなやつで! 一緒に出かけろよみたいなこと言ってレイトさんがイヤだって言ったんだよ!」

 

「……なんとなく言いたいことはわかった」

 

「ったく……大人ならこんぐらい分かれよな」

 

 鼻息荒く説明をしたハシュアーは、大人ってホント馬鹿とでも言いたげな視線を向けていた。そんなこと言われても……と微妙な笑顔を作るアキヒロは今の情報を受けて回答を作る。

 

「音爆弾売ってるところ知らないかってことだろ?」

 

「そう!」

 

 なんで頼らないのかがハシュアーには不思議で仕方がなかった。レイト達にそれを言っても、曖昧な顔で誤魔化すだけ。

 

「あ〜……お前そりゃ、あれだよ」

 

「あれ?」

 

「おう、寂しいけどな」

 

「あれって何?」

 

「あれはあれ。とにかく音爆弾なんて市場で探してこいよ」

 

「無かったから言ってんじゃん!」

 

「みんな一生懸命探してんだよ」

 

「ないの!? なんかこう、いい感じに隙間に隠れてる人!」

 

「何言ってんだお前は……そういう抜け穴が見つけたいならちゃんと基本を身につけてからだろ。邪道を先に知ると実力が身に付かないぞ」

 

「ケチ! ハゲ! エロバカ!」

 

「ハゲてない」

 

「おしえてよー!」

 

 グイグイと服を引っ張る。

 

「んなこと言われたって、俺もそんな都合よく欲しいものを届けてくれるサービスがあったら利用してるわ」

 

「えー!」

 

「お前がおこせよ、物流革命」

 

「もー……師匠も弟子も揃ってポンコツじゃーん!」

 

「弟子をとった記憶はないね」

 

「嘘つけ! 先生が言ってたぞ! レイトとアキヒロみたいなのは師弟って言うんだって!」

 

 隠しても無駄だぞ、と指を突きつけた。

 それに辟易するのはアキヒロ。

 大袈裟に肩をすくめた。

 

「いやいや……まさか……俺たちはそんな間柄じゃねーよ。そうだな……従兄弟ぐらいの距離感だ」

 

「従兄弟ぉ? 従兄弟にあんな風に相手しないよ」

 

「なんだ、従兄弟いんのか」

 

「15人いるよ」

 

「じゅ、じゅうごにん!!??」

 

 どんだけ子作りしてんだ、と自分のことは棚に上げてビックリしていた。

 

「うん」

 

「……ドワーフって進んでるのね」

 

「きもっ」

 

「キモいとか言うな」

 

「きもー!」

 

「……こらー!」

 

 ギャハハと走り回っていると、痺れを切らしたような声が。

 

「おい! いつまでガキンチョの相手してんだ! 早く戻ってこい!」

 

「はーい! ──というわけで悪いな、ハシュアー。今日はちょっとやることがあるんだ」

 

「あ、うん……今のってヒナタさん?」

 

「そう。こわ〜い日向お姉ちゃんが来てるんだ」

 

「…………誰がほんめーなの?」

 

「は?」

 

「ヒナタさん、耳の女、ミツキ、あとアカネだっけ? ここに来るたびに違う女の人がいる気がするんだけど、誰の彼氏なの?」

 

「アカネは妹だ」

 

「うん」

 

「…………?」

 

 少なくともその選択肢だけはないということを直球に伝えただけだったが、何故か反応が鈍かった。

 

「だから、少なくともアカネだけはねーって」

 

「そうなの? 仲良いのに」

 

「何だ何だ、変なこと言い出すんじゃ──」

 

『アキヒロォ!!』

 

「あーもう……また今度な!」

 

 

 ──────

 

 

「どーしよ」

 

 1人、ぽつねんと外に放り出されたハシュアーはつぶやいた。アキヒロがダメならもう頼れるのはレイジ、アオイ、ナナオ(一応)ぐらいなものだ。あとは屋台の店主などが顔見知りだが、正直そこまで親密ではない。ヒューマンは背が高く、話す為に首を上げなければならない。一番背が近いのはアオイで、辛うじて同じくらい。

 背の話はともかく、地底から来て半年も経っていないハシュアーが頼れる人間は少ないのだ。

 

「まずは先生か〜」

 

 なんだかんだでレイジとの関係は上手くいっていた。パーティーを組んで探索者をやっていただけあって複数人での戦い方に慣れている。それに斧槍使いではあるが、同じ前衛として過去に活動していた彼から学ぶことは多かった。

 特に、モンスターからのヘイトの買い方や立ち回りなど広範に使える知識は値千金というやつだ。

 

 そんな彼は、仕事がない時は娼館に行っていることが多い。こんな街でやる事もなければそうなろうというものだが、ハシュアーとしてはなるべく近づきたくなかったら。

 興味なんて無いのに、レイジを待ってウロウロしていたらまるで入りたいけど入れなくてそこにいるみたいではないか。

 

「くっそー……いつ出てくんだよー……」

 

 周囲から見られている気がする。

 いいや、気のせいではない。

 きっと見ているのだ。

 ハシュアーは燃え上がりそうなほどに顔が熱くなるのを自覚しながら必死に耐えた。

 

「──んで、入り口の前で待ってたわけか」

 

「そうだよ!」

 

 出てきた頃にはキレていた。

 なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。

 理不尽な状況とレイジに対して怒りが収まらない。

 

「次からはせめて酒場で待っててくんね? 前でお前が待ってると思うと集中できねえから」

 

「こんなとこ来なきゃいいだろ!」

 

「入った事もねえくせに良いも悪いもわかんねえだろ」

 

「う、うううるさい!」

 

「そもそも何の用だよ」

 

「…………」

 

「え?」

 

「音爆弾が見つからねえから探すの手伝ってって言ってんの!」

 

「売ってんだろ、そこらへんに」

 

「それはもう聞いた! 探してもなかったの!」

 

「みんな使うから仕方ないんじゃね?」

 

「無かったら俺たちが死んじゃうの!」

 

 実際、あるのとないのとではワームに対するやりやすさがまるで違う。

 

「じゃあどうすんだよ。無い物ねだりはできねえだろ」

 

「先生なんだから教えてよ!」

 

「教えただろ」

 

「教えてもらってないよ!」

 

「前に言ったぞ。どうしても買えない時は自分で作れって」

 

「そんな簡単に作れるわけないじゃん……」

 

「だから練習すんだろ」

 

 それはその通りだが、だからと言って今この段階でやるべきかという事に関しては反論できた。

 

「今欲しいの!」

 

「腹減ったから飯行くぞ〜」

 

 しかしレイジもこれしきのことで聴く耳など持たぬ。

 動いた後に腹を満たすのは当然のこととハシュアーの横を通り抜けた。

 

「こ、このっ!」

 

「あーもう……跳ねんな、掴もうとすんな」

 

 ピョンピョンとレイジの長髪を掴もうとするも、体捌きによって軸ごとずらされてしまう。

 

「あっ!」

 

 それどころか、首根っこを掴まれて持ち上げられてしまった。

 

「ぐるじい」

 

「アホなことすんな」

 

「あ゛い」

 

 ストンと落とされ、尻餅をつく。

 

「いてて……」

 

「ほら、早く行くぞ」

 

 

 ──────

 

 

 口いっぱいに肉を入れた男が、説教じみた声音で少年に話していた。

 

「そんなに欲しいならよ。自分で作りゃいいじゃねえか」

 

 酒も入って少し赤くなった顔。

 対する少年はチビチビとジュースを飲みながら首を傾げた。

 

「そもそもどうやって作んのさ」

 

「んなの簡単だ、音虫を閉じ込めさえすりゃいいんだから」

 

「ネムシ?」

 

「死ぬ時に馬鹿でかい音出すんだよ」

 

「どこにいるの?」

 

「草原」

 

 草原で足音がやけに大きく聞こえたら気を付けろ。

 そこにはネムシがいる。

 やつらは周囲の音を喰らい、身に溜め込むのだ。溜め込んだ音を身に纏い、放出し、活用する。故に、彼らの生息域において聴覚というのは五感の一つとして有用とは言えない。

 ひっきりなしの雷鳴が空を貫いていくこの時期だからこそ、逆にちょうど良いというのはあった。そもそも耳が上手く機能しねえ! 

 

 

 ──────

 

 

「初めて来た……」

 

「本当に大丈夫なのかなあ」

 

 セクターの外側に広がる自然地帯。

 人の干渉が及ばぬ地帯でもあるそこは、ダンジョンではない故に危険度が高いということは基本的に無い。ダンジョンと比較してモンスターに遭遇する確率は相当に低い筈だが、やはりいないわけではない。

 

「あれって……」

 

「うん、ウサギだ」

 

 3人はコソコソと草陰に隠れた。

 雪の後の雷ということでぺんぺん草も残らなさそうではあるが、雷を吸収して育つ植物がこの時期は活発に増えるのだ。そのせいで草むらに入ると常に肌がピリピリとするが、隠れ場所として機能してくれている。

 

「群れだね」

 

「無理だね」

 

 ウサギの群れを討伐可能である最低ラインはレベル20と言われている。

 プロアスリートが死ぬほど足掻いてもアッサリやられる程度の強さを持つ彼らは基本的に群れで活動する生き物なので、パーティーレベルが15である彼らではなすすべもなく食われておしまいだ。今倒そうと画策しているワーム一体がレベル15であることを考えると、群れとはいえ、いかに見た目からかけ離れているかということがよく分かる。

 

「何か食べてる?」

 

「──っ!」

 

「…………うぷ」

 

 口元を赤くするウサギ達の足元を注視すると見えた肌色。散らばった金属片、そして飛び出た白いものを目にした途端にハシュアーは後ろへ回った。レイトはかろうじて抑え、ウサギ達がこちらを見つけないかということに気を回した。

 

「レイト、周って行こう」

 

 シエルの進言そのまま、草原をあてもなく彷徨う。

 ダンジョンでは無いにも関わらず、その緊張感はダンジョンにいる時と大差無い。こんな危険な場所に採取に来ているというのだから、そりゃあ音爆弾だって高くなるだろう。

 

「何でワームを倒す為にあぶない場所に来てるんだろう……」

 

「さ、さっきのはきっとたまたまだよ。ウサギだってアレ以降見てないじゃん」

 

 ワームを倒す為に必要な音爆弾を作る為に草原に来てネムシを捕まえる──ハシュアー達は、採取依頼というものが存在する意味を初めて実感した。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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