【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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61_ワームを倒そう!3

「や、やっと捕まえた……」

 

「もう真っ暗だね」

 

 籠の中にいるネムシはチロチロと触覚を動かしている。

 群れでいる時は3人の平衡感覚を狂わせたり、連携を取るために発した言葉を食い散らかして何言ってるかわからなくさせたりと好き勝手していた。

 しかし1匹とらえて離れたところ、先程の騒がしさはどこへ行ったのかと思うほどに大人しくしている。

 

「踏んづけちゃった時は頭割れるかと思ったけど……意外と何とかなったね」

 

「俺は片っぽ聞こえなくなったけどね」

 

「それは本当にごめんね」

 

 すでに回復薬を中耳にぶっかけて治してあるが、ハシュアーの鼓膜が破れていた。

 

「──ここら辺」

 

 シエルの言った場所に野営地を作る。彼女がこうして良い感じの場所を見つけてくれるから、2人も安心して休息を取ることができる。斥候としての能力はまさに2人の比にならないレベルだった。

 

「何でシエルって良いとこ見つけるのがそんなに得意なの?」

 

「…………才能?」

 

「そういう話じゃねーよ! そもそも才能なんかねーだろこんなのに!」

 

「じゃあ出来るようになって」

 

「うぐっ……」

 

「出来もしないクセに吠えないで」

 

 相変わらず手厳しい。

 しかし、ハシュアーもこのシエルの毒舌には良い加減慣れた──わけもなく。

 

「俺は犬かなんかかよ!」

 

「無意味に吠えるんだから犬以下だよ」

 

「ぬううううう……!」

 

 心中に獅子を秘めた虫たるハシュアーは、いつか吠え面をかかせてやろうとシエルの横顔を睨んだ。シエルもシエルで、路傍の石を見やる程度の意味しか視線に持たせずハシュアーを見返す。

 

「まあまあ、落ち着いてよ2人とも。ほら、焼けたよ?」

 

 焚き火では道中で死んでいた昆虫型モンスターの肉を焼いていた。

 

「……」

 

「…………」

 

「…………」

 

 Now loadingなシエル。

 苦笑いのレイト。

 真顔のハシュアー。

 肉を見つめる3人はそれぞれがそれぞれの反応をしていたが、最初に手に取ったのはハシュアーだった。

 この中で食べ物に対する偏見が最も無いのが地底世界で生きていたハシュアーなのは、ある意味で当然だった。

 

「…………」

 

 しかし口に入れた瞬間から唇をへの字に曲げ、クッチャクッチャと音を鳴らし、タンタンと貧乏ゆすりまでしながらいつまでも噛み続ける。飲み込もうとするたびに何かが邪魔をするように顔を顰め、噛み締める音がさらに強くなった。

 そんな様子のまま、引き気味の2人へ顔を向けた。

 

「まっず!」

 

 吐き出した。

 

「や、やっぱりそっかあ……」

 

「青臭いし、ネバネバしてるし、舌がヒリヒリするし、なんだこれ!」

 

 すぐに口をゆすぐ。

 

「毒だろこれ!」

 

「あーん……」

 

「あーんじゃないから! こんなの食べたら絶対お腹壊すから!」

 

「やっぱりよくわからない肉を食べるのって良くないよね……」

 

「分かってないのに持ってきたの!?」

 

「カガミさんが言ってたんだもん。男探索? ってやつ」

 

「意味分かんないけど、それってこういうことなの……?」

 

「わかんない」

 

 そんなものを食って腹が膨れるわけないので、当初の予定通り乾燥させた肉を取り出した。ガジガジと齧ると唾液でほぐされ、ちょうど良い硬さになっていく。

 最悪の後味に夢見が悪くなりそうだと顔を顰めていたハシュアーは顔を和らげた。

 

「あー……最悪の味が塗りつぶされてくのイイ……!」

 

「このお肉も美味しいけど、加賀美さんが食べたいっていう牛はもっと美味しいのかなあ……」

 

「アキヒロさんってお金持ってるのに、食べたい食べたい言う割には全然食べようとしないよね」

 

「まあ……うん」

 

 そこはあんまり触れても良いことないことは承知しつつも、内心に抱えている思いに対して嘘をつくことが出来るわけではない。

 

「シエルは何でだと思う?」

 

「…………どうでも良い」

 

「うわ、ひっでー」

 

「ひどくない」

 

「レイトさん、シエルって何でこんなにアキヒロさんに酷いの?」

 

「うーん……」

 

 それを知りたいのはレイトの方だった。しかしシエルは相変わらずそっぽを向いており、その頑とした様子からして答える気はさらさら無いようだ。

 しょうがないので話題を逸らすことに。

 

「そういえばさ、ハシュアーはなんでアキヒロさんって呼んだりカガミさんって呼んだりするの?」

 

 兼ねてより安定しないのが、ハシュアーがアキヒロをどう呼ぶかということだ。

 カガミさん。

 アキヒロさん。

 連ねるとスケさんカクさん的な呼びやすさはあるものの、個人が個人に対して向けるには2種の呼び方を用いるのは違和感が強い。

 

「…………だって……どっちで呼ぶのが良いのかよくわかんないんだもん」

 

「そうなの?」

 

 好きな方で呼べば良いのにというレイトの内心が顔に出ていたので、ハシュアーは憤慨した。

 

「しょーがないじゃん! イルヴァの牙に招かれてやってきたヒューマンなんだぞ!」

 

「よくわかんないけど……それがどう関係あるの?」

 

「フツーじゃない! ……凄い人ってこと!」

 

「…………」

 

「神器を持ってるんだからね!」

 

「カガミさんの武器? ……確かに何か言ってたような……」

 

「はぁ〜……これだから素人は分かってないんだよ!」

 

 神器の素晴らしさについて語ろうとしたハシュアーの目の前に石ころが転がってきた。

 1人でにやってくるわけがない。投げたのは、テントから顔を出したシエルだ。

 

「なに」

 

「……うるさい」

 

 瞼が重そうにしている。

 雷雲のせいで昼夜がわかりづらいが、いつもなら寝る時間のようだ。続いてさらに石を投げようとしたシエルに慌てて火の前を陣取る。

 

「じゃあ俺が番ね」

 

「うん、ごめんね」

 

「こんなので謝んないでよ。パーティーメンバーなんだから」

 

「そうだね、ありがとう」

 

「…………」

 

 テントに向けて歩いて行ったレイトのことは気にせず、メイスを手に取った。2人を暗殺するのかと思えばそうではない。石突に始まり、柄、槌部分へと優しい手つきが移動していく。

 すでに手入れを終えた綺麗な状態。

 ナイフも同様だ。

 

「このメイスもいつかは神器に…………なるのかなあ……」

 

 ポツネンと呟いた。

 

 ドワーフの悲願。

 神器を自らの手で作り出す。

 方法は二つ。

 第一は鍛治で直接に。

 第二は作った武器が神器に至ること。

 今、ハシュアーが手にしているのはそのどちらでもない。市販のメイスだ。ヒューマンが作ったにしては悪くないが、それでも13歳のハシュアーが作った方が良いものが作れる。

 鍛治を行える環境など整っていないので当たり前か。

 

「はぁ……」

 

 拙い武器でも、使っていれば愛着は湧いてくる。それがダメな子であるほどに強く。

 炉と材料があればすぐにでもエンチャントを施した武器を作れるが、そうする気は実際のところなかった。するとしたら、単純にこっちに来て新鮮な空気を味わっている自分がどんな武器を作れるのかを試すぐらいだ。

 

「武器を使うって、こういうことなんだな……」

 

 イルヴァの牙を飛び出す前は色々考えていたことがあった。最初は剣で、次は斧で、その次は槍で──色々な武器を使えるかっこいい探索者ってやつになろうと考えていた。

 だけど、違う。

 武器を使うのはそんなに簡単じゃない。

 作った武器の試しで木的を攻撃するのとは違って、基本的には相手が動いている想定での体の動かし方を覚えなければならない。しかも武器は種類ごとに重心が異なった位置にあるので、武器を変えれば当然のように身体の動かし方も変わる。

 体の動かし方が変われば必要な筋肉も変わり、また一からの鍛錬になる。そして人間の身体はそこまで強くなく、時間もそこまで多くはない。

 やることを絞らなければならないのだ。

 

「──どうやったんだろう」

 

 聞いた。

 レベル50に到達するというのは並大抵のことではない。そもそも到達できない人間の方が多いし、到達できるとしても時間がかかるものだ。

 レベルの壁にぶち当たり、壁を打ち砕く為に試練を達成する(苦難を乗り越える)。それを人によっては数度繰り返してたどり着くのがレベル50。

 100までの数字の中で折り返し地点。

 半分ということを考えると道のりはまだまだのように思えるが、すでに人類トップに至る道筋にいる──少なくとも、彼らの通う第32セクター支部の職員はそう考えていた。

 

「俺もなれるかな」

 

 探索者になるという夢は叶った。

 だけどそれで終わりじゃなかった。むしろ、自分が今いるところは始まりに過ぎない。

 自分が想像していたよりもずっと厳しい道が続いていくのだろうと、言語化はできずともなんとなしに理解した。

 

「イーヴァ様……見ていてください」

 

 踊る影が元気をなくしていたので、火に薪を追加した。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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