【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
魔素が──とかそんなわけもなく、暫くしたらポツポツと理由を語り始めた。
「……いきなり……病院にいるとか、言われたら……ビックリ、するじゃん」
確かに、あの時は聴取までの短い間に軽く電話を入れただけだったから詳細は話さなかった。
「でも……俺は大丈夫って言わなかったか?」
「アキの言葉は、信用、してないし」
「そ、そうですか」
「ばが」
「いで、いで」
振り回す拳が重力に従って胸元やら顔面やらにぶち当たる。
結構痛い。
威力よりも、気持ちが。
「わん」
大人しく怒られろ、だそうだ。
言われなくても、幼馴染の可愛い意思表示くらい受け入れる。
「心配させてごめんな」
「ばか」
「バカでごめん」
「ばーか」
「はい」
こうしてミツキに怒られると、とても満たされた気持ちになる。
他者に求められるというのは気持ちが良い。
それが、子供の頃から付き合いのあるこの子ならば尚更。
可愛いなあ
そんな気持ちだって当然湧いてくる。
だけど、俺は帰ってきたばかりで色々と汚い。
「そろそろ手を洗っても良いですか?」
「……だめ」
「え」
「だめ」
ジッと、目を見つめてくる。
黄金の瞳からは強い意志を感じる。
絶対に通さないという意志。
「そこをなんとか」
「暫くこのままじゃないとダメ」
「そうか……」
しっかり者なのに寂しがり屋なのは、相変わらずだ。
こんなに大きく育ったのに。
「アキは、ちっとも変わらないね」
「そうだな」
「ぜーんぜん成長しない」
「そうだな」
「昔のまんま、身体だけ大きくなっちゃった」
「うんうん」
その通りだ。
俺はもう成長しない。
人間として俺がこれ以上変化することは……相当な事がなければ無いだろう。
異世界に転生するような、荒唐無稽なことでも起きない限り。
そう、俺という人間は固定されている。
この世界に生を受けた瞬間から感じていたことだ。
俺は俺。
加賀美明宏とは記号であり、俺では無い。
焼肉を追い求める俺こそが本物だ。
「……ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ」
そんな不満げな顔されても困る。
「言い返すとか無いの?」
「無いよ」
ミツキの言う通りでしか無いから、言い返す必要もない。
俺は何も変わっちゃいない。
ただ、やる事は変わった。
焼肉を追い求め、探索者になった。
そこには、ただひたすらに欲がある。
社会貢献したいとか、立派な人間になりたいとか、そういうのはどうでも良い。
というか、社会人としては立派に勤めていた筈だ。
その末がアレならば、俺に後悔は──
「あいでででで」
思考を中断する痛み。
頬に走る灼熱。
「──きーてないでしょ!」
「いぢぢぢぢ! ほっぺたはやめろ!」
「は! な! し! を! き! け!」
「わかった! わかったから!」
「こんにゃろ! こんにゃろ!」
「引っ掻くな! 猿かお前は!」
いつのまにかミツキの顔には笑顔が。
俺の頬を引っ張るのがそんなに楽しいか!
……懐かしいなあ。
「うりゃああああ!」
「──ははは」
じゃれつくミツキを見ると、数十年前の光景が蘇ってくるようだ。
小川で着の身着のまま、疲れて倒れるまで友と遊んだあの日々。
二度と戻ることはできず、降り積もった記憶の中で擦れながらも、決して消える事は無い。
「風呂入ってこーい!」
「はいよ」
風呂上がり。
用意されてたジュースを飲みながら、ミツキの料理している姿をのんびりと見る。
……このジュース、結構美味いな。
「わふ」
「コマちゃんは飲んじゃダメだぞ、歯が無い無いになっちゃうからな」
「わふ……」
「んにゅあああ、かわひいいにぇえええ」
「わふ、ぼふっ」
明日はモートーリの分を取り返さないとな。
今は金を稼ぐフェーズの真っ只中。
結構倹約してるんだぜ俺だって。
「ぷはあああ」
「おっさんくさ」
「はっはっは!気分だけだな!」
ビールに世界で一番合う食べ物。
コウキさんよりも余程、俺の方が焼肉に詳しいんだから。
絶対に掴んでみせるぜ、俺の一番星。
ビールだけに。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない