【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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65_お仕事ないめう……

「お仕事がない」

 

「無いね」

 

「…………」

 

『妖精のとまり木』はワーム討伐で勢いに乗った! かと思ったら仕事がそもそも無かった。依頼が来たらすぐに受ければ良い──というのは誰もが思いつくことで、支部にいつ行っても探索者で埋まっている。先ほどもレイトが伸ばした手の先で掻っ攫われたので、諦めて外のベンチに座った。

 

『天罰が降ったんだ!』

 

『ざまーみろー!』

 

 教えに導かれた信者たちがデモを行っているし、控えめに言って混沌としている。

 

「なんか、ハシュアー変な時に来ちゃったね」

 

「いーじゃん面白くて」

 

「えー……」

 

「見てる分にはお祭りみたいだよ」

 

 何もわからぬ無邪気さ。

 大声を出して集まっている本人たちは満足感があるし、先入観無しに見ていれば楽しそうというのが偽りないハシュアーの感想だった。

 

「ほら」

 

『!』

 

 手を振れば、笑顔で振り返す幼子もいる。親に連れられて一緒に来ているようだ。

 

「良い子じゃん」

 

「そうだね……」

 

 ハシュアーに言われた通り、ただ単に見ているだけならばそこまで害はないのかもしれない。しかし、彼らは探索者だ。『エリュシオン』を名乗る彼らが明確に敵として排除しようとしている、相容れない関係性。

 

「あっ」

 

 先ほどの子供が、屈みこんだ親の手によって視界を隠された。まるで、見てはいけないものを覗き込んでしまった子を守るためとでも言うように。しかも親は非難の目すら向けてきている。

 

「……商工会が無くなっちゃったら、困るよ」

 

「別に商工会じゃなくても探索者の活動はできるんじゃないの? 新しくできたらそこに行けば良いじゃん」

 

「加賀美さんみたいに仕事関係なくダンジョン行く人もいるだろうけど……お金稼ぐのは難しいんじゃないかな。あんま聞かないし」

 

「…………ん? どういうこと?」

 

「え?」

 

「商工会がなくなった時の話してるんだけど」

 

「あ、そうなの? 僕はてっきり別の商工会ができた時の話かと……」

 

「いやいや……そんな組織ができそうになったら潰されるでしょ。ぐじゃあ〜って」

 

「こ、怖いこと言わないでよ……」

 

「だってドワーフはそうしてきたよ?」

 

「…………嘘だよね?」

 

「俺たちのワザを盗もうとする奴って多いんだよ。だからアルス様たちがいつもいろいろ頑張ってるんだってさ」

 

「アルス様?」

 

「うん、今代の『牙』だよ」

 

「牙……」

 

「俺たちのリーダーだよ」

 

 レイトには理解できない単語が次々と出てくる。しかし理解できないだろうことを長々と聞いていると眠くなるのが人間だ。それよりは、身近な人間の話をしよう。

 

「ハシュアーはどうして鍛治師にならなかったんだっけ」

 

「え? 何いきなり」

 

「ほら、ちゃんと聞いてなかったなって思って」

 

「なんでって……かっこいいと思ったからだけど」

 

「かっこいい? 何が?」

 

「探索者」

 

「…………?」

 

「武器を振ってさ。つえーモンスターと戦うんじゃん。それってカッケェじゃん」

 

「…………」

 

「あれ、違うの?」

 

 理解できない価値観の違いというやつだった。ハシュアーは瞳を柔く輝かせて、とある探索者を指差した。

 丁度支部から出てきたところで、デモ隊の人間たちを見て顔を顰めている。

 顔は30代前半。仲間たちは放っておけと肩を叩くが、突っかかろうと向かっていった。

 

「あそこの探索者いるじゃん」

 

「…………うん」

 

「持ってる剣はイネッサの涙って銘で、あの人が初めて握ってから12年と4ヶ月。剣自体が作られてからは16年」

 

「シエルちゃんとほぼ同年齢……っていうか何をいきなり……どうしたの?」

 

「接触部を液体に変える能力を持ってて1日に三回使うことができるけど、夕方に一緒にご飯を食べないと拗ねて次の日は力を貸してくれないんだ。嫉妬深いんだな。いるんだよああいうのが。癖は強いけど、しっかりと手入れしてやれば答えてくれる。自由意志型の武器だね」

 

「ハシュアー?」

 

「探索者はみんな武器を持ってる。俺たちには過ごしてきた武器たちとの絆が見えるんだ、キラキラ輝いてさ」

 

「…………分かるの?」

 

「うん。全部が全部光ってるってわけじゃないけどね? わかんないやつもいるって最近知った」

 

「鍛治師だから?」

 

「そう、これが俺たちの祝福」

 

「……祝福ってなに?」

 

「イルファーレ様からの贈り物さ。俺たちをアンタらヒューマンと分けるスゴイモノで、鍛治師に必須の力。これが無いのに鍛治なんかやったって効率悪いだけだよ」

 

「そんな大事なこと教えちゃってよかったの?」

 

「…………いいのかな」

 

「え」

 

「わかんない。ヒューマンに教えるとか教えないとか、そんな話聞いたことなかった……ダメなのかな」

 

 生きてきて一度も聞いたことのない話だ。少なくとも一般レベルで出回っている話ではないのだろう、とレイトにも当たりはつく。学校で習うことなら全く対応できないが、そうだとしたらナナオ達が慎重に扱っている理由もわからない。

 聞いて良い話じゃないと考えるのも当然だった。

 

「ぼ、僕、消されたりしない?」

 

「消す? 髪を?」

 

「真面目な話!」

 

「だから消すってなに?」

 

「命だよ!」

 

「命を消す!? なんでそんな怖いこと言うの!?」

 

「ハシュアーが言っちゃいけないこと言ったからでしょ!」

 

「言っちゃいけないの!?」

 

 レイトの中ではすでにハシュアーはドワーフの秘奥を部外者に話した大罪人であり、それを聞いてしまった自分自身も同じく罪人として命を奪われるという図式が成り立っていた。レイトは半ばパニックになり、そんな感情はそばにいるハシュアーにも伝わった。二人して息を呑み、顔を見合わせる。

 

「ど、どうするんだよ!」

 

「分かんないよ!」

 

 さっさと話を打ち切って家に帰れば良いものを、二人してアワアワと狼狽えるだけだった。

 

 

 ──────

 

 

「ドワーフの秘密が!」

 

「鍛治師が!」

 

「……何を言ってるんだキミ達は」

 

 明宏は困惑した。

 

「は、ハシュアーがなんかブワーって一気に言うから!」

 

「レイトさんが言えって言ったんです!」

 

「言ってないよ!」

 

「言った!」

 

 わざわざ人の家までやってきて言った言ってない論争(まるで意味のない口論)が始まってしまった。これでアキヒロが家にいなかったらこの二人はどうしていたのだろうか。

 

 ──柏手が打たれた。

 

「ストップストップ。言ったとか言ってないとかはなんでも良いけど、何しにきたの?」

 

「ぼ、僕たち消されちゃうんです!」

 

「消される? ……まさかエリュシオンか?」

 

 熱波のようなジワリとした怒気が瞬時にして展開された。

 

「ち、ちがいます……そうかもしれないけど……」

 

「どういうこと?」

 

「うーんと……」

 

 アキヒロは、ますます混迷の中に突き落とされた気分だった。

 子供の説明というのは、間違った形に組み合わされたパズルのようなものになることが多い。そのまま受け取ってしまうと誤った事実認識をもたらすことがある。

 しかし、そのままの事実の時もあるのが厄介で、繰り返し聞くことを大事にしていた。

 

「ハシュアーが鍛治師の秘密を教えてくれて……でも、秘密だから人に話したら殺されるんじゃないかって思ったんです」

 

「陰謀論的な話?」

 

「だ、だって人の秘密なんて勝手に知ったらどうなるかわからないじゃないですか!」

 

「いきなりは殺さんでしょ……そもそも秘密ってなんだ? 名前か? イルヴァの牙の場所か?」

 

「なんかその……武器を見たら分かる、みたいな……」

 

「…………ああ、なんかあったねそんなのも」

 

「知ってたんですか!?」

 

「聞いたからな」

 

 その上で、興味があるようには見えなかった。武器の状態がわかるというのは凄まじいものだ。単純に手入れのしやすさが変わるだけにとどまらず、武器のくクセを把握すればより上手く活用できるだろう。

 何故そんなに真顔なのか。

 

「だってほら……俺の武器見てもよくわからないって話だし、俺にとってあんまりメリットないんだもん。三船くん達はハシュアーに見てもらうと良いと思うけど……コレ、わからないんだろ?」

 

「……うん」

 

 ハシュアーは悔しそうに頷いた。

 

「しかも武器限定だからなあ……もっと魔素濃度を直接観測できるような力だったら俺も欲しかったけど──ミクロ的なところで役に立つ力を手に入れても応用力が低いからさ、マクロの力が欲しいんだ」

 

「? ……でも加賀美さんって異能持ってないんですよね? どんな力でも欲しいんじゃないですか?」

 

「はは、流石に選ばせてくれよ。というかハシュアー、コレ知ったら殺されちゃうなんてないだろ?」

 

「……わかんない」

 

「知り合いの鍛治師にも確認してみるけど多分無いぞ」

 

 もしもそれで殺されてしまうならば、アキヒロなど何回殺されればいいのかわかったものではない。

 

「そんな事どうでもいいんだよ。三人とも、ワーム討伐頑張ったって聞いたぞ」

 

「!」

 

「三船くんもワーム倒せるようになったんだな」

 

「うん!」

 

「そっか……ナナオさんはなんか言ってたか?褒めてもらった?」

 

「え? …………褒められてはなかった……と思います」

 

「あんだよ、ちゃんと褒めてねえのかあの姉ちゃんは。土壇場で照れてんのか?」

 

 やれやれ、と首を振る。

 どういう属性でいきたいんだ、だの、メガネかお姉さんかトンチキかハッキリしろ、だの暫くはぶつぶつと呟いていた。しかし、やや上目遣いの少年二人を見てピタリと動きを止めた。

 

「……うん」

 

 二人を交互に見ると、一つ頷く。

 

「…………?」

 

「ーー代わりに俺が目一杯褒めてあげよう!」

 

「わっ!」

 

「ぬわっ!?」

 

 むんずと確保された二人は両肩に配置された。

 

「まずは山田家からだ!」

 

「!?」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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