【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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67_弾圧反対!

 

「はぁ〜……妖精のとまり木に入って2人を侍らせてぇなあ」

 

「ハシュアーとかいうチビを追い出せばできるんじゃね?」

 

「やってみっかー? レイト君だまくらかしてなんとかなんねえかな」

 

「ゆうてさあ、レイト君とシエルちゃんどっち取るっつったらシエルちゃんだべ?」

 

「はあ〜? お前まじ分かってねーな。レイトきゅんがいてこそあのチームは成り立ってんだろ? 可憐でほっそりしててか弱いのに、頑張って2人引っ張ってんだぞ」

 

「分かってねーのはお前だ。シエルちゃんとレイト君のやりとり見たことねーんか? レイト君が尻に敷かれてヘコヘコしてんだべ」

 

「……レイトきゅんもヘコヘコしてんのかな」

 

「それはお前だろ、昨日は当たりの風俗引いたんか?」

 

「うーん……まあ、顔は可愛かったかな」

 

「じゃあいいじゃん」

 

「でも暗かったんだわ〜……せっかく楽しいことするんだからもっと明るい顔して欲しいってもんじゃね?」

 

「楽しいのお前だけだ」

 

「ギャハハ! その通り過ぎる! ……あー、レイト君も風俗行ってくんねーかなー」

 

「まあなあ」

 

 一行は最悪な奴らの後ろにたどり着いてしまっていた。避けようにもお下品な話を撒き散らしながらドヤサドヤサと露天の前をのんびり歩いているので、下手に動くと彼らと顔を合わせる羽目になってしまう。語り出しから最悪だったし、ハシュアーとレイトは聞きたくないとアキヒロの後ろで耳を塞いでいた。

 

「勧誘したら入ってくれたりしねえのかね」

 

「みんな断られてっけどな」

 

「……まあ、顔面があまりにもご無体すぎるからな」

 

 レベルが高いほど容姿が優れたものに変わっていき、高くなりすぎると人外に変貌していくというのが一般的な探索者達の認識だ。しかし、探索者としては低レベルも低レベルなレイトとシエルは高レベル帯の探索者から見ても羨望の眼差しを得るほどに顔が整っている。そばにいるハシュアーのことなど路傍の石程度にしか気に留めないほどには、見たものを魅了するだけの容姿を保有していた。

 

 しかし、本人達にしてみればこれほど気持ち悪いこともない。

 

「お前があんくらいのご尊顔だったら抱けたのになぁ」

 

「俺がレイト君ぐらいの顔だったらお前なんかほっといて女食い散らかすに決まってんだろバカか。相手にするしないじゃなくて出会わねえよ」

 

 こんな会話を、こんな良い日に、これ以上続けられるのは宜しくない。

 

「そこの2人」

 

「え?」

 

「あん? ……げっ!?」

 

「人前でそういう話をするのはどうかと思うぞ」

 

「や、焼肉の加賀美……」

 

「なんでこんなとこにいやがる……!」

 

「探索者が街中にいちゃおかしいか?」

 

「…………話してただけなのにイチャモンつけてくんのはおかしくねーのか? 別に悪いことなんかしてねーぞ!」

 

「そーだそーだ! 俺たちには自由に会話する権利すらねーってか!? レベルがちょっと高くなったからって調子乗んなよ!」

 

「……」

 

 チラリ。

 

「れ、レイトきゅん!?」

 

「やべえ、聞かれてたか!?」

 

 2人は、耳を塞いでいたレイトと目がバッチリ合う。

 彼らは、少年がやや怒り眉なのを見て何がどう不味かったかを理解できないほどの愚図ではなかった。慌てて下手くそな笑みを浮かべ、ヒクヒクと頬を痙攣させながら懐柔に取り掛かる。

 

「ち、ちがうんだよ……アレは冗談っつーかさ」

 

「誤解されたままだとアレだし、一度うちのパーティーでやってみねーか?」

 

「そうだな! それがいい!」

 

 2人はまさかの、このタイミングでの勧誘を敢行した。メンタルが相当強くないとできない芸当だろう。これはこれで探索者に適性ありということに他ならない。

 

「ふんっ……」

 

「──だそうだ!」

 

 ぷいと顔を背けると、彼らの顔も見たくないと言わんばかりにアキヒロの背中に再度隠れる。

 

「がーん……」

 

「ダメか……」

 

 1ミリくらいは成功する確率があると思っていたようで、肩を大きく落とす。しかし、そこから粘るようなことはせずにあっさりと引き下がった。

 

「…………」

 

 いなくなっても暫く、レイトは頬を膨らませたままでハシュアーとアキヒロを置いてズンズンと進んでしまう。ハシュアーは一瞬だけ矛先が向いたが大してダメージは無かった。むしろ、レイトのことを憐れみの目で見ている。

 

「顔が良いって……大変なんだね」

 

「過ぎたるは猶及ばざるが如しって言うもんだからな。何事もほどほどが一番ってことだ」

 

「いっそのこと仮面でも被った方がいいんじゃない? 俺、作るよ」

 

「それ、まずいぞ」

 

「え?」

 

「本当の自分がどこにいるのか見失う可能性があるからな」

 

「んん〜?」

 

 むじゅかちいこと、わかんにゃい! 

 

 

 ──────

 

 

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

 

「食べてる……めっちゃ食べてるよ……レイトさんめっちゃ食べてるよ……」

 

 露店で買った串焼きやらジュースやら飴やらをひたすらに頬張っている。誰も寄せ付けないつもりなのか威嚇するように目を細めているが、ベンチにちょこんと座ってる姿には恐ろしさなど1ミリもない。むしろ衆目を集めていた。

 

『あら可愛い、何してるのかしら』

 

『あっちにお兄さんがいるじゃない。きっと喧嘩したのね』

 

 お兄さんだのお姉ちゃんだのと今日はそういう単語に触れる機会が多いな……という顔をしながら隣に腰を下ろした。レイトは少しだけ気まずそうに口元をモニョらせたが、すぐに眉をキリッとさせて口に詰め込んでいく。そのままバクバクと音がしそうなほどに勢いよく食べる。以前に比べると、食べる量はだいぶ増えていた。

 

『お兄さんの方は食べないのかしらね』

 

『兄弟にしては顔が似てないけど……兄弟じゃないんじゃない?』

 

「──弟よ、もっと食べるんだぞ」

 

「ぶふっ!」

 

『ほら、弟って言ってるし兄弟なのよ』

 

『そうみたいね──あ! 司祭様が来たわ!』

 

『お話聞かなきゃ……!』

 

「げほっ、げほっ……お、おとうとって……兄弟ってそんなふうに呼びあわないんじゃないですか?」

 

「世紀末ならむしろ標準かな」

 

「茜ちゃんのこと、普通にアカネって呼んでますよね」

 

「それはそれ、これはこれ。兄弟と兄妹じゃ色々違うんだ」

 

「…………」

 

「もうお腹いっぱいなら貰おうかな」

 

 残っていたサンドイッチを頬張る。

 

「うん、わからん」

 

 美味しいでもまずいでもない。

 良し悪しというものが判断つかない味だった。アキヒロの言語感覚では表現しきれない食事というものがこの世界には多くある。珍味を人類が常食しているような感じだ。

 

「変ですか?」

 

 アキヒロの手からサンドイッチを引き剥がすと、同じようにかじり取る。ぐるりと一周。瞳が世界を巡った。

 頷いて笑顔になる。

 

「美味しいですよ」

 

「そか」

 

「でも……ちょっとお腹厳しいかもです」

 

「良いよ、俺が食べるからさ」

 

「ごめんなさい」

 

「腹は減ってるから大丈夫」

 

 ちまちまと齧る男の横顔を無意味に見つめる時間だった。

 

「さっきのは気にすんなよ」

 

「……」

 

「探索者やってたら誹謗中傷なんて当たり前だからな。パワーで押し返すか無視できるメンタルを手に入れるのが前提だ」

 

「加賀美さんも……あーいうこと言われるんですか?」

 

「俺? 俺はシモの話よりはシンプルにレベルの話されるっしょそりゃ」

 

「…………」

 

「俺が知りたいことを俺に聞くんじゃねえって話だよな」

 

「はい……」

 

「三船君は知ってるんだろ?」

 

「…………」

 

「まあいいさ、なんとなく察しはついてるしな」

 

「!」

 

 そこで立ち上がる。

 パンパンと手を払うと、ゴミを指差した。

 

「捨てに行こっか」

 

「はい」

 

「ところでハシュアーどこいった?」

 

「え?」

 

 

 ──────

 

 

『この世界こそ、救いの手の中にある最後の御伽噺』

 

 響き渡る声は、周辺に集まった民衆の蝸牛を心地よく打ち鳴らしていた。

 

『我らがアーキタイプたる旧人類は世界を食い荒らし、蝕み、もはや取り返しのつかないところまで腐敗をもたらしていた! 仮に世界が新生しなかったならば、瞬きのうちに滅びの道を最後まで進んでいたことでしょう!』

 

 拳を握り、大きく身振りを示して、感情のままに心の器そのものを外にさらけ出しているようなダイナミックな語り口。聴衆は聞き入り、最初の頃にあったような侮蔑の表情は──少なくともここに集まった人間達の中には存在しなかった。仮にそんな感情を向けた人間がいれば敏感に見つけ出され、群衆から弾き出される。

 

『商工会が今やっていることはイタズラに世界を歪め、過去と同じ過ちを繰り返すという意思表示に他なりません! なればこそ、商工会はこの世にあってはならないのです!』

 

 そこにハシュアーはいた。小さな体躯を生かして紛れ込み、女達が言っていることを必死に聞き取っていた。

 

『探索者という職業は、無理な発展をすれば破滅するという自然の摂理に抗い、際限なく湧き上がる破壊的な欲望を尊重するという最悪の選択肢なのです! 彼らがいなければ方向性を違えた発展をここまで続けるということもなかった!』

 

『──司祭様、探索者がいなくなったらモンスターから身を守る術が無くなっちゃいませんか?』

 

『それがそもそもの誤りなのです。モンスター達が人里にやってくるというのは、ただの防衛反応にすぎません。科学──旧い力を捨てて世界の摂理に身を委ねれば、モンスターもたちどころにあなた達の味方となることでしょう』

 

『へー! 学校では習わなかったなあ!』

 

 多くは若者。

 

『先生にも教えてあげよっかな』

 

 老人は皆、心の底から嫌悪するような表情で彼らを遠巻きに睨みつける。

 若者はそんな老人達を軽蔑の目で見下す。

 

 世代間の分断というものは容易く起こる。

 かつてを知らぬもの。

 新しい時代に適応できないもの。

 知識と柔軟性のどちらかが欠けてしまえば人の認識というものは容易く分化し、そうなればもはや社会の崩壊への舵取りを行ったも同然なのだ。

 

『そうですね。古い価値観に縛られた方々を解放するのも我らの使命。お手伝いいただけるならば喜ばしい限りです』

 

 だが、そんな彼らをいつまでも野放しにしておくわけがない。

 

「──直ちに解散してください」

 

 誰が? 

 

「商工会はセクター内に於けるエリュシオンの集会を禁じました」

 

『な、なんだそれ!? 横暴だろ!』

 

『力で押さえつけるのかよ!』

 

 ──稲光に照らされて、眉間に刻まれた深い皺が目立つ。やってきた初老の男は、このセクターを管理する支部長だった。集まってきた民衆を一瞥するのみで反応は浅い。男の特徴的に尖った瞳を正視するには意思力が要された。

 

「さて──」

 

 本題はこちらだと、フードの2人に歩み寄って一枚の紙を見せた。

 

「これ以降、あなた方の活動は禁じられます」

 

『……横暴ではありませんか?』

 

「今すぐに捕まりたいならばどうぞ」

 

 背後から現れたのは複数の探索者パーティー。それも、レベル40近いパーティーが3つ。

 暴れることも想定していたようだ。彼らがいては、民衆が仮に暴動を起こしても一方的に鎮圧されるだろう。

 

『民と訣別するのですか?』

 

「仮に──彼らがエリュシオンという思想に心の底から迎合して、我々商工会と探索者を敵だとみなすならばそれは仕方がないことです」

 

『仕方がない、ですか』

 

「ですが……まだ判断能力の定まっていない若人を騙し、美しい言葉で瞳を曇らせ、無為な道を歩ませようとしているならば正すのが道理」

 

『我々が詐欺師だというのですか?』

 

『おいおっさん! 騙されねーぞー!』

 

『子供がダンジョンで死ぬなんて、いいわけねーだろ!』

 

『──彼らが世界を思う気持ちこそ真実でしょう』

 

 輝きを放っているようにすら見える笑顔。だが、男はまるで関心を持たなかった。

 

「ならば、モンスターが味方になるなどという戯言を撤回してください」

 

『おや? 嘘ではないでしょう? ほら、1人いるではないですか。正しくモンスターと触れ合うことによって従えている探索者が』

 

「極端な例を一般に当てはめるのは無理がありますね。ならばあなたはドラゴンを従えることができますか」

 

『できると言ったら?』

 

「大嘘つきが1人、私の前にいるということになります」

 

『…………まあ、ドラゴンはできませんね。ですが、できるモンスターもいますよ。エリュシオンの力はそれすら可能にしますから』

 

「それが本当なのだとしたら、凄まじい力です。是非とも商工会に所属してお力を貸していただきたい」

 

『残念ながら……』

 

「では、やはりお引き取り願いましょう」

 

 民衆の前で、男は一歩も引かずにフードの2人に向かい合っていた。もちろん背後の探索者ありきではあるだろうが、相手も暴力を持ち合わせている以上はそれを持ってきてやっとイーブンというものだ。

 

「なんにせよ……この土地は我々商工会が切り開き、管理し、保全している場所です。新たな思想を広めたいのならば別の土地を自分たちで開拓し、そこに人を招くのが筋というものでしょう」

 

『…………』

 

「では」

 

 男は踵を返した。

 

『──皆さん、申し訳ありませんが今日のところはこれまでにしておきましょう』

 

『これからは……どうするんですか?』

 

『奇跡とは、信じたもののみの目の前に現れるものです』

 

『!』

 

 興奮をそれぞれの胸中に押し留めながら解散した場で、少年は2人を睨みつけていた。

 

「……やっぱりそうだ」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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