【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「う……?」
真っ暗な視界の中で、どこまでも痛みだけが身体を支配していた。何が起こったのかをはっきりと思い出すことができない。自分が今どこで何をしているのか、なんで寝ていたのか。
開けた視界は暗いが、どこかから差し込んだ光がほのかに差し込んでくる。
──確か、直前はリヴァイアサンと一級探索者達の戦いを見ていたはず。
顕現した時のあまりの近さに本部内は大騒ぎだった。いつもならばもっと離れた位置で現れる。戦闘音や衝撃は届くが、それも遠くからのもの。
生で姿を見る機会などというのは商工会の人間でも極めて稀で、近海──沿岸も沿岸に現れたので気になって仕事など全く進まなかった。
その後は……?
「なんだっけ……何かが光って……うっ!」
痛みで思考が中断された。
「なんで、体が……」
動かせない。
仮にもレベル30ほどはあるはずの自分が身体を全く動かせない。上に巨大なモンスターがのしかかっているようだった。
「誰かいないの……」
恐ろしいことに、周囲からは啜り泣きや喘鳴、呻き声が聞こえてきた。自分だけじゃないという安心感などない。このまま皆、この暗がりの中で一歩も動けずに死ぬのかという絶望が足元から湧き上がってくる。
「だれか……だれか……!」
息苦しさに耐えかねて、掠れた声で助けを求めた。
「だれか、たすけ──」
ゴトンと音がすると、体が一気に軽くなった。
「大丈夫か!」
「う──」
屋内にいたはずなのに空が見える。そこに疑問を抱くよりも先に、いつも懐に忍ばせていた回復薬の小瓶を飲み干す。痛みが和らいで、ひとまず動くことはできるようになった。周囲の様子を確認するために身をおこすと、瓦礫を退けてくれた探索者はすでに次の瓦礫を移動させに行っていた。
だが、そんなことはどうでも良かった。
「な、なに……これ……」
自分が立ち上がれたかどうか定かでなかった。
蒼連郷という地域に作り上げられた基盤。人類の生存権を確保して確かな安全地帯とするために、自分もその一部として邁進してきた。
今日の仕事が終わったら、明日は非番でお買い物のはずだった。
「なにが……」
言葉が形にならない。心の中で多くの想いが浮かんでは消えていくのは、瞳を通して入ってくる情報がソレらを塗りつぶしてしまうからか。
「街が…………あ──」
呆然と立ち尽くしていた手鞠は、倒れている人間の顔を見た。胴体が瓦礫に潰され、顔に生気は無い。
「!」
見開かれた眼は、瞳孔が激しく収縮拡大を繰り返している。震える指先でドッグタグに触れると、ソッと首から外した。
「ああ…………ああ…………」
口先の喧嘩はあったけど、なんだかんだで可愛い部下だと思っていた。同じ男に想いを寄せているのに、彼女は自分のことを嫌いだとは言わなかった。
「なんでよ」
笑顔が素敵で、激しいジェスチャーは少し奇妙にすら感じられて、そんなところも皆んなが彼女を好きになる理由だった。
「なんで……あの子が……なんで……!」
海を睨み付けた。
すでに下手人はいない。
睨んだところで何も伝わらない。
元より彼女の想いがモンスターに伝わるわけもないが、それでも。
「リヴァイアサン……!」
AC103年2月 第1セクター半壊
死者行方不明者多数。
沿岸に出現したリヴァイアサンに対して一級探索者は即応したが、その侵攻を完全に止めることはできず攻撃を許した。歴史上初めて、リヴァイアサンがセクターに対する直接の攻撃を行った事変でもある。
実際のところ、一級探索者達の尽力のおかげかリヴァイアサンのはなった一撃はセクターに直撃はしていない。商工会本部をかすめた一撃は、そのまま空を突き抜けて天に消えていった。だが、余波のみでセクターは崩壊している。
この件を受けて、商工会会長 田辺長元は正式に発表を行った。
──────
講義の合間にその情報は回ってきた。
「商工会による討伐業務の一部執行の開始、ソレに伴い探索者が請け負うことのできる業務量の低下ぁ!?」
「はへ? ヒロさんどうしたんすか?」
「加速度的に増えていく業務量により探索者にかかる負担を減らすことを主目的とした──って、嘘じゃねえか普通に!」
「落ち着いて! 落ち着いてぇ! ここ大学!」
以前、腐り果てた村を訪れた際に高峰レオが言っていたことを思い出した。
「そもそも商工会の育成のためが先だろうがぁ!」
「ど、どうしちゃったんですか……」
「これ」
「えーっと、ふむふむ──」
読み終わったアリサが一言。
「これ、ヒロさんには関係ないんじゃないですか?」
「え?」
「だってヒロさんのレベルって50だし」
「あ、そっか」
そうじゃん!
「もー……おっちょこちょい!」
「むひゃひゃ、しかひゃねえひゃろ」
そうなると問題はアリサや三船くんだ。
競争が激化するということは、できない奴は弾かれていく。レベルを上げるためにはモンスターと戦うことが実質的に不可欠で、その数が減るということはレベル分配という問題に直面する。
「私はなんとかします! 気合いだけは誰よりもあるんです!」
「おっ!」
いいね〜^^
「むふふ、褒めてもいいんですよ〜?」
「なんとかするのも限界はあるから、考えて結論出なかったらすぐ頼って欲しいかな」
「ガ、ガチアドバイス……でも、そうします! ヒロさんなら最悪は養ってくれますもんね!」
「なんもなくても養うけど」
男だもんげ!
「頼もしー! 抱いて!」
「え? 時間無い……」
今日はこれから出ちゃうんだけど、急ぎでってこと?
「そ、そこは真面目に返さないでくださいよ! 冗談じゃないですか!」
「冗談かよ」
「…………冗談じゃなかったら?」
「え?」
「そ、そんな目で見ないでくだしゃい」
冗談じゃなかったら本気というだけの話なのに、この子は何を言っているのだろうか。でも時間は無い。
「ち、ちなみにどこいくとか……」
「あー……」
「──まさかミツキさんですか?」
「うー」
「そうなんですね?」
「おー」
「ミツキさんの実家ですね?」
「うーん」
「私、ミツキさんのお家に行ったことなかったので着いていきますね」
「講義は?」
「抜けます」
「ええっ」
「なんで驚いてるんです?」
講義を抜けるのは一般的に良くないことだからです。
「この大学で講義を抜けている回数ダントツ1位なのに、そんなことを言う権利が!?」
おや、トゲアリトゲナシトゲトゲくらいのチクチク感だったな。
「よく考えたら、永井教授? がいなくなる前とか先輩講義休みすぎじゃ無いですか? ほぼダンジョンにいたような……レイトくん達のこともあったし」
「あれなあ」
永井先生の時は融通効きまくりだったけど、代わりのシェンさんは金持ち、権威主義みたいなところがあるのでやり辛い。自分が絶対! 金持ち様絶対! 長いものには巻かれる! みたいなね?
良い悪いじゃない。
やり辛いんだ。
「さて、いきましょいきましょ」
「最近は友達関係で揉めてないか?」
「三回告白されました」
「はぁぁん」
「けっこーモテるんです」
なんだあ? ここは高校か?
大学入って2ヶ月で3回ってなんだよ、すげえな。
すげえのか? わからん。俺は大学入ってからビジネス気分になっちゃった。
「ちゃーんと断ってますよ〜?」
挑発的な視線。
どうしてやろうか。
「すんすん…………あ、ちょっと嫉妬してる〜」
「……」
「へっ、あっ、ちょっ」
アリサの腕を掴んだ。なぜそんなことをしたかは俺自身にも分からないような、分かるような。
「あの……ほ、本当にここで……?」
曖昧な感情のままに腕を引き、講堂を出て、駅への道を行く。
「み、道の脇で!? いや、その、それは……ちょっとだけ興味は……」
列車に乗り込み、揺られる間も肩を抱き寄せて離さなかった。
「み、みんな見てるのに……ダメダメアリサ、負けちゃダメ! こんなところでなんて……でも……! ふぅ、ふぅ、落ち着いてアリサ!」
『なんだあそこの2人……列車に乗って何やってんだ……』
目的地に着くとまた徒歩。
手をしっかりと繋ぎ、決して逃さないという気持ちを込めて指を絡ませる。ジワリと沁みてきた汗を手のひらで味わいながらアリサの独り言を聞いた。
「はひゅう……こ、こんなの見られたら優越感で頭おかしくなっちゃうかも! …………あれ? ……え? …………ええっ!?」
到着したのは最強の親父が待つ家。
流石にここに入る時にアリサとモチョモチョしてたら半殺しにされる。レベル50如きで対抗できるわけがないので。
「オジャマシマス」
「おう、いらっしゃい」
威圧感◎
アリサはプルプル涙目で玄関を上がった。
「ちょっとアナタ……ごめんねアリサさん、今ちょっとだけ気が張ってるの」
「キニシテマセン」
「アリサ、怖いから後ろに隠れてようなー?」
「ハイ」
怖かったよな。
モヒカンの一級探索者が殺しに来てるんだから。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない