【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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73_お前、大学辞めろ

 

「ん? おお、どした?」

 

「……」

 

「? …………まあいいか」

 

 コウキさんと話している最中、アリサは唐突に横にやってきた。邪魔をするでも、何か話をするでもなく、横に座って黙りこくっている。ただそこにいたいだけっぽいので話を続けることにした。

 とら尻尾ちゃんがうにゃんにゃんとかまって欲しそうに動くので、後で絶対に相手をすることを心に決めて。

 

「続けてもいいか?」

 

「うん」

 

「…………なんだっけ」

 

「街角先生の話だろ」

 

「ああそうそう、伝言だったな。アイツ……人をパシリに使いやがって」

 

 街角先生is誰かというと、俺が永井さんの代わりに頼りにしている先生だ。本名は知らない。

 第1セクターの街角に住んでるので街角先生って呼んでる。本人からは『人はみんな街角に住んでるだろ!』って突っ込まれるけど、知らないよそんなん。

 

「それで?」

 

「『できた』だってよ。なにが?」

 

「ああ、すごいな」

 

「は? 会話しろ。お前ら、俺のことなんだと思ってんだ? 元一級探索者様だぞ? メッセンジャーとして使うとかマジで、普通なら500万ぐらい請求するんだからな」

 

「へー」

 

「このジジイ……そもそもアイツ何なんだよ! いきなりふらっと現れて、アイツに伝えて欲しいことがあるとか言いやがったんだぞ! お前ら俺のこと舐めすぎだろ!」

 

「はは」

 

「……ところで、できたって何ができたんだよ」

 

「さあ……でも、どれかだろうな」

 

 俺が託した科学知識のどれかが出来たってことなのは間違いない。きっとあの人なら形にしてくれるだろうと信じていたけど、やっぱりやってくれたか。

 何だろう。電池とか作ったのかな。

 出来た、だけ伝言として託してきたってことは自分の目で見に来いってことなんだろう。

 

「行くか、もう一度」

 

「……ヒロさん?」

 

「俺は第1セクターに行く」

 

「大学は?」

 

「大学は……まあ、頑張る」

 

「……私と立場が逆転してるような気がするんですけど」

 

「永井先生の資料は接収されちまったし……アリサとミツキと一緒に時間を過ごす以外の意味もあんまりないんだよ」

 

「研究とかすれば……」

 

「あそこで行われてる研究は基本的には魔素に基づいた、魔素ありきの研究だ」

 

「当たり前じゃないですか?」

 

「当たり前だよ。異能を効率よく発生させるための手法とか、回復薬の効能を増大させる為の材料とか魔石やメタエレメンツからエネルギーを取り出す触媒だとか、この時代にあった研究ばっかだ」

 

「ダメなんです?」

 

「良い、何も間違ってない」

 

「えーっと」

 

「俺が欲しいのは魔素がなくなる環境なの。魔素ありきでものを考える連中とはそもそも研究するべき分野が違うんだよ」

 

「何で大学入ったんですか?」

 

「永井先生がいたからだっちゅーの」

 

「あ、そっか」

 

 そもそも何のためにって話をしたらアリサこそ何のためにって話ではある。結局ずっと理由教えてくれなかったし。

 

「えー……」

 

 なぜかジト目を向けられた。

 

「──人んちで違う女とイチャイチャするたあ度胸あんな」

 

「ウェイッ」

 

 待ってくれ、そうじゃない! 

 どこにそんな要素があったんだ! 

 そもそも何でキレかけてんだ! モヒカンは美人の奥さんがいるんだから良いじゃないか! 

 

「テメェ、ミナに色目使ったらガチで殺すからな」

 

「あなた……」

 

 キュン、じゃないんだよ。ガチで殺されるんだぞ俺が。

 

「ミツキにチクったろ。ウチにまで来てイチャイチャしてたって」

 

「やめろ! 拗れるだろうが! それでミツキ泣いたらどうすんだ!」

 

「泣かねえ、ミツキは強い」

 

「なんだそれ……」

 

 

 ──────

 

 

「意外とコウキさんってフツーですよね」

 

 帰路にて、アリサは失礼ともとれる発言をした。

 

「探索者なんて言っても人間から派生した生き物だから、対応がおかしいなんてことは基本的にない」

 

「でも一級探索者って正気がないんですよね?」

 

「あの人は特別ではあるんだけど……それを差し引いても普段から本当におかしいのは半分くらいらしいからな。まあ会話できるやつも──みたいな」

 

「半分もおかしいんだ……」

 

「レベル60くらいから顕著に人間性が変化してくるって聞いたな」

 

「……これ以上おかしくなったらどうするんですか!?」

 

「え? 今俺の悪口言った?」

 

「レベル53ですよね!?」

 

「うん」

 

「どうしよう、ヒロさんがこれ以上おかしくなったら」

 

「何で同じこと繰り返すの? そんな心配せんでも、おかしくなる兆候があったら気をつけるから」

 

「気を付けるで何とかなるレベルの話なんですか?」

 

「分かんないから気をつけるしかない」

 

「ミツキさんのお父さんに聞けばよかったじゃないですか」

 

「でもほら、それって結構センシティブな問題だから」

 

 精神病の患者に対して、今どんな気持ち? って聞くのと大差ない。普通にやっちゃいけないことだ。

 

「アリサだって他人事じゃないんだからあんまり甘く考えちゃダメだぞ。ただでさえこんな猫耳がついてるんだから」

 

 レベルが低いのにこんな露骨な変異を起こしたってことは、もともと変異しやすい可能性もあると何度も考えた。もちろん感情の強さありきではあるし、極限の飢餓状態と同じレベルの感情を引き出すなんて健全じゃないので、ここでストップしてくれて良い。

 

「やわやわしてる」

 

「ふにゃあ」

 

 フニフニとした感触は、本物の猫と遜色がない。

 本当に謎だ。

 何がどうなったら猫耳が生える? 蛸足とかじゃないだけマシなんだろうけど、猫だから先祖返りですらない。どうなってるんだいニャンコちゃん。

 

「にゃーん」

 

「にゃーお」

 

「! ……にゃにゃにゃにゃにゃ!」

 

 猫パンチを捌きつつ家に着くと、ミツキの靴はあるものの音がない。

 

「ただいま──あれ、電気もついてないな」

 

 アリサはいの一番に寝室へ駆け込んだ。

 

「ミツキいた?」

 

「…………」

 

「あれ、ちょっと……ほい」

 

「わあ〜」

 

 入り口で通せん坊をするアリサを持ち上げると、ベッドにはあどけない表情で眠るミツキが。近付いてもスヤスヤと寝息を立てるばかりで起きる気配はない。

 

「ミツキ、ただいま」

 

 声を掛けてもピクリともしない。

 匂いからして既に夕飯は作り終えていたのだろう。それで食べたら眠くなってしまったとかか? 

 

「ん…………んゆ……」

 

 しかし気配が二つも近くにあるからか、少しの間だけ見つめていたら瞼が重たそうに薄く開いた。

 

「ミツキ、ただいま」

 

「おあえい……ん〜……」

 

「おっと」

 

 寝ぼけているのか、そのまま腕を引っ張って布団の中に引き摺り込もうとしてくる。しかも結構本気で。

 

「ミツキ、俺まだ体汚いから」

 

「いー……」

 

 よくない。

 俺のベッドだぞ。

 

「……お?」

 

 反対側からも腕が引っ張られる。こちらに関しては最早膂力が人間の域を超えているので、順当にいけば綱引きにはならず2人丸ごと掘り起こされるだろう。流石にミツキが怪我する。

 

「アリサ、抑えて抑えて」

 

「にゃあ」

 

「にゃあにゃあ」

 

 猫語じゃないと反応してくれないらしい。

 客観視するとバカみたいな光景だけど、どうやらアリサは猫語にハマってしまったようだ。それなら俺も喜んで対応するしかない。

 お客様センター(三人限定)なのでね。

 

「……なにしてんの」

 

 そんなタイミングでミツキは目を覚ました。寝ぼけ眼を擦りながらでも、俺たちがやっていることの異様さの一片は感じ取っていたらしい。

 

「おはようミツキ」

 

「ざーす」

 

「…………2人とも、なんか変なことしてたよね」

 

 その顔には、疑っていますと文字が書いてあった。

 

「別に」

 

「別にー?」

 

「はあ……帰ってくるの遅いから寝ちゃったよ、ふぁぁ〜」

 

「夕飯食べたのか?」

 

「まだ。アキ達は?」

 

「俺たちもまだ」

 

「じゃあ食べよっふぁ〜」

 

 

 ──────

 

 

「…………」

 

 2人、ベッドにて。

 俺が寝るところなし。

 お風呂から上がったらこうなっていた。

 君たち、いがみ合ったりする割には意外と呼吸が合っているというか……俺が寝る場所ねえんだよなあ。どうしよっかなあ、どっちを寄せよう。真ん中に寝たら2人とも落ちそうだし……流石に三人ドテンと寝転んでも余裕があるほどには広くない。そんなの想定してないし。

 

「んー……」

 

 どちら側に寝るにせよ、何となく角が立つ気がする。

 ミツキの側に寝たらアリサから詰められる。

 アリサの側に寝たらミツキから。

 じゃあソファーで寝るしかないよね。

 

「コマちゃんはしっかりやってっかねえ」

 

 コマちゃんは三船くん達の家にいる。

 襲われたばっかで厳重な警備を敷くのは当然なのだ。

 低レベル探索者だとしたら圧殺できるし、高レベルだったら俺を呼べって言ってるから、万全だ。

 

 ……もしかしてコマちゃんって有能なのでは? 

 

 可愛いし、安上がりだし、最近は中で漏らさないし、戦えるし、可愛いし、知能が高い。

 一家に一台コマちゃんの時代が来たのかもしれない。

 

 くだらないことを考えながら、横たわったソファーから見える空をぼんやりと眺めていた。相変わらず空には雷が満ち、世界がいかに人類に対して厳しいかと言うことがわかる。こんな天気が数ヶ月続くのだ。農耕など望むべくもない。

 

「…………天災か」

 

 街を半壊させた一撃は、災害に名を連ねるものだった。一級探索者を蹴散らすその実力、間違いなく単一の生物としては歴史上最強を名乗るのに相応しい。

 それほどの力があってもやる事が人類への攻撃なのだから、みみっちい野郎だ。

 

 そして、それに準ずる力を持った一級探索者達。リヴァイアサンと真正面から相対して生き残るという彼らもまた、タダの生物ではなくなっているのだろう。

 そこまでになってしまえばもはや、人間らしい感性が失われるのも仕方ない。少し力を込めれば砕けてしまう世界の中で穏やかに過ごす事なも不可能だ。

 

 故に、コウキはよく頑張っている。

 

「愛……だな」

 

 ミナと、そしてミツキに対する愛情が彼を留めているのだ。

 そんな彼が教師に近い位置に腰を据えるというのは、まさに人類全体にとっての僥倖に他ならない。商工会の会長の機敏さ──あるいは運勢がうまく働いたのか。

 

「俺も、そろそろ成果を出せるかね」

 

 そんなわけがないと思いつつ、瞼が勝手に落ちるまで空を眺めていた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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