【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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74_出発するよ?(寝起き)

「んー!」

 

「うー!」

 

 誘拐されてガムテープで口を覆われているわけではない。意味不明な寝相で枕の下に顔が埋もれてしまった2人が、夢の中でもがいていた。そろそろ朝だぞーって起こしにきたらこれだ。

 揃って何やってんの? 

 

「っは!」

 

「はあっ!」

 

 枕をとったらとったで、今度は息も絶え絶えに寝ている。寝苦しかっただけでまだまだ眠れるという事か、じゃあ仕方ないな──とはならないんだよ! 

 

「ほら2人とも、朝だ」

 

「…………すぴぃ」

 

 起こすことは諦め、朝食の準備じゃよ。

 今日は講義が休み。

 つまり第1セクターに行くチャンスということだ! さっさと準備をしてしまおう! 

 

「これとこれ」

 

 なんぼなんでも、半壊している都市に行く以上は多少気を付けなければならない。『僕は金持ちでーす! 遊びに来ましたー!』なんて皆々様にお伝えするような格好ではいけないということだ。

 貞淑で落ち着いた感じでいて探索者だとわかる格好で行く。

 

 準備を秒で終わらせて、再び2人を起こしに行ったら起きていた。起きていたし、すごく嫌そうな顔をしながらお互いを見つめ合っている。

 

「おはよう何してんの」

 

「アキ!」

 

 バビュンと飛びやってきたのはミツキ。

 怒りに震えた拳で俺の脇腹へストレートを捩じ込んだ。それに抗議するよりも先にすぐ様アリサを指差すので、目で追いかけるとアリサもミツキを指差した。

 

「なんで私たちが同じ部屋で寝てるの!」

 

「なんで私たちが同じ部屋にいるんですか!」

 

 それは自分の胸に聞いてほしい。

 

「アキのこと待ってたのに!」

 

「ヒロさんがくると思ったからここで寝たんですよ!」

 

 記憶が飛んでいるようだ。

 確かに酒を飲んでいたから2人ともちょっとだけゆらゆらしていたけど、そんな風に考えてたのか。考えてたのに2人で占領したんですか? 

 

「お前ら2人がベッド占領してるからソファーで寝たんだぞ。責められる筋合いないからな」

 

「起こしてよ!」

 

「そうです! なんで私がミツキさんと寝ないといけないんですか!」

 

「私だってそうだよ!」

 

「……そもそもここはヒロさんのベッドなんですから、ミツキさんがソファーで寝れば良いじゃないですか!」

 

「そんなこと言ったらアリサちゃんだってそうじゃん! そもそも私の方がずっと一緒にいたんだから、一緒に寝るのだって当たり前じゃん! 普通に考えたら年長者に譲るよね! アキ!」

 

「ダラダラ幼馴染の位置に甘えてたくせに偉そーなこと言わないでください。だいたい、年上だからとか年下だからとか関係ないから! そういう傲慢な態度がヒロさんの重荷になってるんですよ! ね、ヒロさん!」

 

 …………知らん! 

 一つだけ言えるのは、枕を殴るのはやめてほしいってことかな。さっきからボフボフボフボフ殴られてて、生地にダメージが入っちゃう。硬めの良い枕なんだから。

 

 ドタバタを乗り越えて、朝の準備を始めた2人には出発を告げた。第1セクターに行くので大人しくししてね。

 

「もう行くんですか!?」

 

「第1セクター、今危ないんじゃないの……?」

 

 各々の反応といった感じだ。

 

「もう行きます。第1セクターは危ないけどダンジョンよりは安全なので大丈夫です」

 

 2人の質問に対して完全な回答をした俺は、満足の笑みを湛えながら家を出ようとした。

 

「ちょっと待って」

 

「?」

 

 パタパタと中に戻ってしまったので言われた通りに待つと、ドタバタと走り回る音の後にワーギャーと騒ぐ声が。不安だ……この2人、果たして大人しくできるのだろうか。

 ミツキも成人して、大人しいだけの時期は終わったような気がする。そろそろ気が強い女に生まれ変わって──いや、ないわ。

 

 ──ガチャリ。

 

 という扉が開く音は雷に消されて聞こえなかったが、視線までかき消されたわけではない。

 現れたのは走行をまといし2人の女戦士──

 

「って俺の鎧じゃねえか!」

 

「重ぃぃ」

 

 ガシャガシャとやかましく音を鳴らしながら歩いてきた2人。そもそも俺の体に合わせて作ってあるものを別人が身につけてまともに動けるわけがない。あまつさえ2人は女だ。胸──つまり乳──すなわちおっぱいがあるのだから、殊更に動き辛い可能性が──と思ったら俺の雄っぱいもそこそこだったことを思い出した。あんまり雌っぱいは関係ないかもしれない。

 

「ねえ、なんでこれこんな動き辛いの……」

 

「ヒロさん……! お、溺れる……!」

 

 2人とも胸当てがずり上がって口元にまで上がってきている。アリサに至っては口が埋もれて苦しんでいた。

 流石に溺れることはない。

 

「2人ともばんざーい」

 

「ばんざーい! ……うひひ! くすぐったい! ひひひ!」

 

「ばんざーい…………ふぅ、重かった」

 

「そりゃ重いでしょ」

 

 モンスターの素材は頑丈だ。頑丈ということはソレなりの重量を持っているのは当然であり、ミツキに至ってはよくここまで歩いてきたなというレベルではある。

 

「何いってんの? 引きずってきてそこで着替えたんだよ」

 

「何をしてんの?」

 

 廊下を見るとタオルが敷いてあった。流石にそのまま引きずってくるなどという暴挙には及ばなかったらしい。

 

「私を誰だと思ってんのさ!」

 

「ミツキちゃんだよ」

 

「そうです!」

 

「…………」

 

「……え、えへ?」

 

「何が目的だ」

 

「なんでちょっとこわい感じ出すの!?」

 

「お前が俺の鎧着るのなんで始めてだろうが。ソレで何もないなんてありえない──お前ら、なんか企んでるな?」

 

 意図が読めない。

 どういう回路が繋がっていけば俺の鎧を持ち出して身につけることになるんだ。

 

「ヒロさん! 白状します!」

 

「はいどうぞ」

 

「着いていきたいです!」

 

「私も!」

 

「…………ちょっと待ってね」

 

 少なくとも治安は良くない。良くないし、そこまで深く確認したわけじゃないけど高位探索者は比較的落ち着いていた。建物の倒壊に巻き込まれたくらいで死ぬわけもない彼らは、多少環境が悪くなったところで心理的衛生度の下落レベルは微々たるもの。一般人──探索者以外の人間が大荒れだった。

 略奪や喧嘩、口に出せないようなことをしようとしている奴も多くいた。

 

「どきどき……」

 

「近いね?」

 

 2人とも、至近距離まで詰め寄ってきて瞳を輝かせていた。何がそんなにワクワクドキドキなのか俺にはさっぱり分からない。

 

「私はお父さんと同じ光景を見たいの」

 

「……!」

 

「お父さん辛そうだった。だから──あれ……でも、なんでだろう…………私がお父さんの娘だからかな……なんで?」

 

「さあな。心の中を完全に言語化できるなら、きっと選択を間違えたりしない」

 

「あんなに悲しそうなお父さん……初めてだったよ」

 

「そうか、じゃあ……そうか……うん、分かった」

 

「ありがと」

 

 ミツキが本気で何かをやりたいというなら、俺は決してそれを邪魔しない。そう決めていた。

 

「アリサは?」

 

「はぅっ!?」

 

「なんであんなことしたんだ?」

 

 流石にアリサまでコウキさんの様子に釣られたとかいう話はありえないので、そこははっきりさせたかった。

 

「い、いや……私は、その……えーと……」

 

 目をぐるぐると回しながら、何かを考える。

 その仕草が意味するところを理解できない人間は社会にはいらない。

 

「危ないんだぞ?」

 

「わ、分かってます…………でも、良いじゃないですか……私だって着いていったって良いじゃないですか! 自由じゃないですか! 一緒にいちゃダメなんですか!」

 

「うお……」

 

「なんですかなんですか! 妹はよくて私はダメってんですか!」

 

「アリサちゃん、わたし妹じゃないよ!? それ茜ちゃん!」

 

「間違えただけです!」

 

「ま、間違えるわけ……」

 

「ヒロさんに聞いてるんです! ……私が幼馴染じゃないからダメなんですか!? それとも、私のことがもう──」

 

「違ぁぁう!!!」

 

「っ……!」

 

「違うから」

 

「……じゃあなんで?」

 

「なんとなく着いて来たいだけなら危ないからやめた方がいいって言いたかっただけだよ」

 

 誤解させてしまったようなので、頭を撫でて気持ちを伝えた。こういうところですれ違いを起こすことほどつまらないことはない。大声は全ての感情をキャンセルできるので、街中でやると白い目で見られる以外は結構いい手だ。

 

「……いいんですか?」

 

「うん、俺はいいよ」

 

「俺はって……ああ」

 

 このナメクジのことね、とでも言いたげな生暖かい目つきで横を見た。

 

「な、なに……? なんでそんな目で見るの……?」

 

「いいえ?」

 

「……三人で行くってこと、だよね?」

 

「はい。コマちゃんがくるなら違いますけど」

 

 今回は来ない。

 なぜならもっと大事な役目があるからだ。

 

「コマちゃんのことペットって言ってますけど、あんまり飼ってる感じは無いですよね」

 

「アキの頼れる相棒って感じ?」

 

「ダンジョンでも、何も言ってないのにコマちゃんと連携してるし……人間よりもよっぽど相性がいいんですか?」

 

 それって間接的に俺がコミュ障って言ってる? 

 

 

 ──────

 

 

 揺られ揺られて、肩揺られ。

 

「んぴぃぃぃ……すぴぃぃぃ……」

 

「ん…………んん……」

 

 両肩に重みを感じながら、枕がわりに時を過ごした。

 

「うわああ……」

 

 反対側の座席では、子供が立って窓外を見ている。遠目に雷竜巻が起きていて気になったのだろう。雲にと追われて常に薄暗いこの季節では、外界におけるわずかな光が灯台のように視線を引き寄せる。

 そして雷竜巻とは、雷系の高レベルモンスターが戦闘時に良く引き起こす現象だ。自然現象としても起きるが、時折見える影の様子からしてやはりモンスターが引き起こしていると考えるのが妥当だろう。

 

「かっけえ…………あ」

 

「…………椅子は他の人も立つから、座ってなきゃダメだぞ」

 

 何気なく振り返ったのだろう。

 薄い表情が凍り付いた。

 すぐに微妙な紅を帯びて、椅子にお行儀よく座り直す。ご両親は寝台に体を横たえているが、彼と俺だけが目を覚ましてしまった。

 俺は単純に疲れていないから眠りが浅かった。

 彼は昼間に寝ていたからだろう。

 

 しかし、一度声をかけてしまったからか。

 チラチラとこちらを見ては気まずそうに姿勢を整え、やがて口を開いた。

 

「……その2人って妹?」

 

「こいつら? うん、妹だよ」

 

「旅行?」

 

「そう」

 

「どっから来たの?」

 

「32セクター」

 

「へー、意外と近いんだ」

 

「君は?」

 

「俺は172セクター」

 

「遠いな」

 

「うん」

 

「寝なくて大丈夫か?」

 

「眠くない」

 

「そうか……ソレなら俺は寝ようかな」

 

「えー! もうちょっとはなそ──」

 

「みんな寝てるから、もうちょっと静かにな?」

 

「……!」

 

 ジェスチャーの意図を汲んで何度も頷くあたり、真っ直ぐでいい子なのが分かる。

 

「どこいくの?」

 

「第1セクター」

 

「本当!?」

 

「しー…………」

 

「あ、うん……なんであそこに行くの……?」

 

「知り合いに呼ばれてるんだよ」

 

「俺もあそこ住んでるの!」

 

「そりゃあ偶然だな」

 

「あのさあのさ、どこら辺に行くの? 俺はじゅーご区画に住んでるんだ! メイはあのでっかいやつの攻撃見えたらしいんだよ! 良いなー、俺も見たかったなー」

 

「メイ?」

 

「おれのおさななじみ! めっちゃ髪長くて、いつも部屋ん中にいるの!」

 

「ほーん……仲良いの?」

 

「そうだよ。でも外で遊ぶのがイヤだっていうのがダメなところ」

 

「一緒に遊びたいもんな」

 

「一緒に行こうって言っても嫌がるし……中で遊ぶ時はいろいろ教えてくれるんだけど」

 

「中でも外でも、一緒に楽しくいられるならソレで良いんじゃないか?」

 

「まあ……でも、うーん」

 

 ──あの人が住んでるのは32に分かれた区画の中の第10区画。その近くに宿があることは把握していたから、そこに泊まろうと考えていた。

 




今日は更新できた、偉い!

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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