【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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76_街角へやってきた

「ここ……?」

 

「なんか悪の巣窟みたい」

 

 着いて早々、2人からの評価は何ともよろしくないものだった。

 

「モクモクしてるし」

 

「くっ……!?」

 

 敷地の周りからえっちらおっちら内観を見ようと頑張っていたけど、流石に目隠しで見えなくされている。分かるのは、建物の上部からわずかに煙が出ているということだ。

 

『諸事情により、常に火を焚いてます!!』

 

 と貼り紙がしてあった。

 しかし漂っている匂いはどう考えても普通の匂いじゃない。化学系の工場で常にするのと同じ類の匂いだ。

 嫌な匂いだけど、死ぬほどでは無い。

 

 アリサは──

 

「く、くちゃい……!」

 

 鼻を摘んでいる。

 耳も折りたたまれて、こんなところには1秒たりとも長くいたくないというのが分かる。

 

「うう〜!」

 

 しかし強い。足踏みを何度もしながらも、俺の服の裾を引っ張って中へ連れ込もうという意思を見せる。

 

「はやく!」

 

「臭いんだろ?」

 

「だから! はやく!」

 

「……じゃあちょっと止めてもらってくるわ」

 

 密閉率の低いこの時代の建物とはいえ、中の匂いはこんな程度じゃないはずだ。既に鼻がへし折れるような思いを味わっているであろうことを考えると、さっさと元凶を断つのが正解だ。

 

「すいませーん!」

 

『──』

 

 気配はあるものの、出てくる様子はない。

 いつもこうだ。

 最初は誰が呼びかけても出て来ずに、ひたすらこもっている。聞こえてるとは言ってたけど、多分嘘だ。

 

「街角先生はいらっしゃいますかー!」

 

『──』

 

「入りまーす!」

 

 仕方ないので勝手に入った。

 廊下には、戸の無い棚のみのラックが設置してある。その棚上には鉱石やら配管を作ろうとして失敗したゴミやらヌルヌルした物やらドラゴンの鱗やら、さまざまなものが載せられていた。出会った当初はゴミ屋敷だったけど、ちゃんと整理することを条件に色々と情報を渡したからコレでもだいぶマシになった。

 ソレでもはみ出てしまうものは仕方ない。

 

「ん……」

 

 棚の端から落ちたのだろう。

 プニプニとした感触のオブジェクトを拾い上げた。

 

「スライムの肉体から作った感じか?」

 

 そもそも下水から生じたと思われるスライムだが、下水から出してしばらく放置すれば匂いは至ってフローラルになる。ソレを置いておくというのは匂いを誤魔化す意味合いがあるのかもしれない。

 おおよそ円筒状。

 加工が施され、円筒の内部自体は空隙が少なく作られている。だが何かを突っ込めばその空隙を押し広げることはできるだろう。

 

「…………」

 

 使用された形跡は見当たらない。随所に置いてあるところからして単純に匂い消しなのかもしれない。

 形に目を瞑れば有用なアイテムと言えた。俺も武具置きの近くにこれ設置しようかな。

 

「先生、いますかー」

 

 ちょくちょく来てはいた。毎回既知を提供してくれるので、親交を深めた意味が大いにあった人物の一人だ。

 その一方で、この人の興味は機械工学や力学、物理挙動などに向いている。俺の目的を達成するための足掛かりとはベクトルが微妙にずれていた。

 しかも機械を使って何かをしたい人じゃなくて、機械を作りたい人だ。

 だからこそ、失礼な話だけどサブプランとして見ていた。趣味仲間というヤツだ。

 

「先生〜……おっ」

 

 扉を開けるとそこにいた。

 白衣の男。

 背中を向けて一心不乱に手元を動かしている。

 

「街角せんせ──」

 

「黙れ! 殺すぞ!」

 

 ガラガラの声で殺害予告をされた。

 では、人に対してそんな物騒な発言をするほど大切なこととは何か。回り込むとペン先が走っていた。

 

「これは……」

 

 設計図──それも初期案としての全体図を書いているようだった。タオルで覆われた頭を掻きむしりながら右手を勢いよく動かす姿は、後ろから見る限りではメカニックというよりは画家の姿に近いような気がした。

 

「人連れてきたんで、工房止めますね」

 

「…………」

 

 コメカミに一つ、血管が浮いた。

 

「初期構想の途中なら今日は予備稼働させてるだけでしょ、また熱入れるのがめんどくさいから」

 

「……!」

 

 歯軋りの音。

 

「鼻がいい子で、化学系の匂いダメなんですよ。もう1人はそこまでですけど、やっぱり臭いって」

 

「──!」

 

「可愛い女の子2人なんですけど」

 

「仕方ないな」

 

 キリッと表情を作ると、ペンを放り投げて工房に向かったので俺も2人を呼びに戻った。

 

「2人とも、そういうわけでこの人が街角先生だ。街角先生、コイツは四門美月。俺の幼馴染だ」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「んで、こっちが関根有紗。鼻が利くのはこのアリサの方だ」

 

「…………」

 

 匂いが止んだので自己紹介ターンに入ったのに、何故か街角先生はシラーっとしていた。発言を促しても白目を剥いたままなのでミツキ達が困惑している。

 

「何してるんすか」

 

「やる気なくなった」

 

「ええ?」

 

「女って言ったのに……」

 

「女じゃないすか」

 

 その発言で2人が顔を顰めている。しかし、ソレを見ても態度を改めずに落胆と失意に満ちた指先を俺に向けた。

 …………俺? 

 

「お前の女じゃん」

 

「へ?」

 

「2人とも、そうなんだろ?」

 

「あ、はい」

 

「はあ……」

 

 何故分かったのだろうか。

 

「分かるに決まってんだろ……女の視線は露骨なんだよ」

 

「そうですかね」

 

「あーあ、工房つけっぱにしとけばよかった」

 

「そんなこと言わないでくださいよ。目の保養にはなるでしょ?」

 

「お前が連れてくる奴らは、みんなツラはいいけど目が好かん」

 

「ああん?」

 

「お前のことちゅきちゅきーってツラしてる奴らばっかで周り固めやがって。気に食わねえ」

 

 口が悪いのもまたこの男の特徴だった。

 

「そんだけイエスマンに囲まれりゃあ、気持ちよく生きてられるんだろうなあ」

 

「でもほら、先生も肯定してくれる人は寄ってくるだろ?」

 

「……ちっ」

 

 嫌なことを思い出したと、ギザ歯を剥き出しにする。

 

「金金金金金金……特許に群がるゴミどもが……」

 

「ボンベは本当に助かりましたよ。あれがなかったら物理的に辿り着けないところもだいぶあったんで」

 

「けっ! 嬉しくねーや!」

 

 しかし、2人に視線を寄せるとジロジロと全身を舐め回すように観察する。

 頭のてっぺんから靴の先まで。果てには後ろに回り込み──パァン! とアリサのケツを叩いた。

 

「ひゃっ!?」

 

 ……えっ? ケツ叩いた? 

 

「良いケツしてんな! ええ!?」

 

 一瞬で鼻の下が伸び切った。

 おいちょっと待て。

 

「こら、なに人の女に手ぇ出してんだ」

 

「ケツ触ったぐらいでケチケチすんな。どうせよろしくやってんだろ? 俺がシコシコ1人でやってる間にもよ」

 

「ソレとこれとは別問題だわ!」

 

 ニヤついた笑みでわきわきと手が動く。

 

「やわっこいケツだっ──おっと」

 

「死ね!」

 

 アリサもアリサで、完全にキレた表情をしている。

 ……まずい! このままだと全部壊れちゃう! 

 

「アリサ! 1発……いや、2発だけな!」

 

 ソレくらいなら許容範囲だろう。

 

「死ぬまで! 殴り抜ける!」

 

「よっ、ほっ、ほいっ」

 

「殴られろ! 逃げるな! このクソジジイ!」

 

 探索者というわけでもないのに、アリサの攻撃を避けている。カラクリはわからないけど、この人は色々おかしいので不思議では無い。

 とはいえ、女から大人しく殴られるのが男というものだし、今回に限って言えば俺も殴りたいのを抑えているのでせめてアシストぐらいは。

 

「素人丸出しのパンチを喰らってやるわけにはいかねえなあ──え?」

 

「良いぞアリサ」

 

 羽交締めにした。ジタバタ暴れる身体を押さえ込むと、ダダダと足音が。

 

「ちょ、おまっ、反則! ずr──はっ!?」

 

 アリサの瞳が煌めく。

 

「しねえええ!」

 

 助走までつけて振りかぶった右拳は、街角先生(すけべオヤジ)の腹に吸い込まれていった。

 

「あっ──」

 

 

 ──────

 

 

「し、死ぬかと思った……」

 

「死ねっ!」

 

「ぐえっ!」

 

 カエルが如く踏み潰された。

 何だろうコレ、暴力はいけない事なんだけど……街角先生がボコされてるのを見るとほっこりする。

 俺もたまにボコされるからかもしれない。親近感ってやつだ。

 

「く、くそっ……遠慮なく殴りやがって……いってえ……」

 

「完全に自業自得なんで、自分で治してくださいね」

 

「ったく……女連れてきたと思ったらコレかよ」

 

「女だろうが男だろうが、セクハラしたら返礼があるもんです」

 

 回復薬を飲み干した後、改めて席に座ると大袈裟に自分を指差した。

 

「俺はそこの知恵袋から街角先生って呼ばれてる。本名を教える気は無いからヨロシク」

 

「ミツキです」

 

「……」

 

 アリサはツンとした顔で挨拶を無視した。

 

「そっちのは四門光輝の娘だよな。パーティーで見たことあるぜ」

 

「えっ!? あ、えとっ、ごめんなさい全然覚えてなくて……」

 

「ダルすぎて隅っこで飯食って帰ったから挨拶もしてない。覚えてなくても気にはしねえよ」

 

「そ、そうですか……」

 

「まさかお前の幼馴染だなんて最初は思わなかったけどな」

 

「最初から分かってたら怖いですけど」

 

「へっ、まあソレは良いや。見にきたんだろ?」

 

「!」

 

「こっちだ」

 

 作業場内にソレらしいものは……逆にソレらしい物しかなくてどれなんだかと期待していたけど、連れて行かれたのは工房だった。よくよく考えると当然の話で、作業場はどちらかといえば理屈をこねるところで、先生が実際に物作りを行うのは工房であることが多い。

 敷地内で別棟として作られているそこに入ると、布で覆われた何かが床に鎮座していた。周囲には実験器具が置いてあるが、今日は使わないので綺麗にしてあるようだ。

 

「コイツだ」

 

「……なんですかこれは」

 

 布で覆われている事もあり、中にあるものが全くわからない。

 

「せっかちなヤツだな相変わらず……予想するとかそういう遊び心はねえのかよ」

 

「レールガン」

 

「知らん! なんだそれは!」

 

「違うか……2人は何だと思う?」

 

 しかし、2人も首を捻るだけ。

 やっと捻り出した答えもドラゴンの首とか彫刻とか掠りもしなさそうなものばかり。

 

「はぁ〜……」

 

 やれやれ、と首を振ると布が大きく取り払われた。

 

「──こ、これは!?」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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