【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「これは!?」
「ふん! 見て驚いたか!」
布をめくって現れたもの。
その正体とは──
「……なんだ?」
「あ?」
「なんだこれ」
機械なのは間違いないけど、見慣れたものではなかった。何だろうコレ。
何かの内燃機関?
あるいは内部機構の一つか?
コレ単体で何かを為せるのだろうか。
受け口が二つあって、ソレを送り込んで何かをするのはわかる。こんな大掛かりである意味がわからない。
何だろう……
「あっ!」
「お、わかったか」
「果汁搾り出し機、ですね?」
「おもんな」
「面白さは求めてねーよ」
「くぅ〜! わかんないかぁ〜! そうかそうか〜!」
「嬉しそうですね」
「いやあ! 多分わかんねえだろうと思ったんだよな! お前の知識の偏りからして魔素関連はあんまりっぽかったからな!」
本当に嬉しそうだった。
本当に性格が悪いのもこの人の特徴だ。永井先生の爪の垢を煎じて飲んでもらいたい。
「なにこれー?」
「あ、おいあんまりあちこち触るんじゃ──」
興味津々で機械を触って撫でて叩くアリサの手が何かの機構に触れ、カチリというスイッチらしき音が鳴った。
「あ、やば──きゃっ!?」
「……アキ?」
聞き慣れた音だった。
何かが作動する為の起こり。
やるなと言われたことをやったアリサへのお仕置きは後でするとして、爆発が起きる可能性を考慮して2人を守る体勢をとった。爆発が本当に起きるかはともかく、起きたら少なくともミツキは死ぬ。
しばらくはその体勢でいたが──
「…………?」
「も、もう……こんなところでやめてよ〜」
「ヒロさん。後で、ね?」
何も起こらん。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
シンプルに街角先生の口から呪詛が垂れ流され始めただけだった。俺を見て、俺の状態を見て死んだ目でひたすら呟いている。
……まさかコレは、人間の悪意を増幅させて魔素を活性化させる装置!?
「ちっ……魔石を分解して物質と融合させる装置だよ! なにが悪意だ! ふざけんなお前!」
「えええ!?」
耳を疑った。
意味が分からなかった。魔石ってのは物理的に強固に結合した結晶だ。変化させるには相当な高熱が必要で、通常の炉ではソレも不可能なので一般に利用されることはない。
しかし、ソレをこんな小型の機械──もちろんソレなりの大きさはあるが、ヒューマンスケール程度の大きさで行えるというのは一体どんなカラクリがあるのか。
「えー? なになに? ねえ、そろそろ離してよ」
「お、おお」
ミツキは腕の中から抜け出すと機械に近付いた。
「……ん? これ動いてなくない?」
「え?」
言われて集中すると、確かになんの駆動音も聞こえてこない。じゃあさっきのスイッチなんだよ。
「お前が動力消せっつったんだろ。今はスイッチ押しても何もならんよ。そもそもなにも素材置いてないのに起動させてもなにか起こるわけないけどな」
「触るなっていうのは?」
「おう、アリサちゃん。自分が丹精込めて作ったものを素人がベタベタ触るのが嬉しいと思うか?」
「…………ごめんなさい」
「そう思うんならケツ──」
「死にたけりゃ続きを言っても良いんだぞ?」
「け、ケツイを見せてくれよな!」
流石に首元に刃物を突きつけられては軽口も消えるようだ。というか、アリサが久々に昔みたいに戻った気がして懐かしいな。
荒れていて欲しいわけじゃないけど、あの時期の生意気な姿も俺は嫌いじゃなかったから何となく嬉しい。
「ヒロさん、魔石って確か加工がほぼ不可能なんじゃ?」
「そうだな。できるのは鍛治師と一部の会社だけだ」
「じゃあこれは?」
「ゲームチェンジャーだ」
「なんですかそれ」
「…………先生、まさかコレを公表するつもりですか」
真意を問うために様子を伺うと、街角先生は頭をトントンと突いていた。
「ソレなんだよなあ」
「流石にあなたはコレがどういうモノかぐらい分かってますよね」
「誰が作ったと思ってんだ。当たり前だろ」
「何でこんなものを見せたんですか?」
「ただの自慢──ってのは冗談で、評価して欲しかったからだ」
「評価? そんなの必要ないでしょう」
これを公表すれば工業に革命が起きる。そこにはもちろん、魔石をこの機械で魔素に分解して物質とくっつけることができるという話が本当であればという但し書きがつくけど。
そんなこと、俺じゃなくても探索者なら誰にだってわかることだ。武器にコレを試して、能力付きの武器にするだろう。
「いいや、そうじゃない。俺はお前に聞いてるんだぜ加賀美明弘」
「…………」
「俺をバカだと思ってんのか? ……まあいいや、今日はそっちの女の子達もいるし勘弁してやる。ソレとは別に話もあるからな」
一度工房から追い出されて宿へ向かった。目星をつけていた宿に入ると、スッカスカ。
本当にスッカスカで、宿の店主からは涙目で泊まってってくれって言われた。
「こんなんじゃあ商売上がったりだよ! あのバケモンのせいで治安も悪くなったし、旅行客なんて1人も来ないし、探索者だってこっちの方には見向きもしない! 前はあんなに……はぁ……向いてないのかな……」
宥めながら部屋を借りた。
3部屋。
「なんで3部屋!? お金もったいないよー! どうせなら広めの部屋一つと狭い部屋で別れようよ!」
「そうですよ! 私はヒロさんと一緒でいいんで、ミツキさんに1人部屋使わせてあげていいですから!」
「いやいや! 私がアキの方行くからアリサちゃんこそ1人部屋使っていいって!」
人と一緒の部屋になることを罰ゲームみたいな捉え方してない? 俺が1人部屋だよねソレだと普通。
性別で分けろよ。
「えーと? ソレでお客さん、結局どうするんです?」
「3部屋で」
そりゃそうでしょ。
せっかく部屋分けられるなら分けちゃったほうがいい。なにせミツキとアリサは同じ部屋で寝て喧嘩しかけていたんだから。他の組み合わせとなると、俺アリサ&ミツキか俺ミツキ&アリサか三人同部屋ということになる。
2人には申し訳ないけど、気が休まる未来が見えなかった。
「えー!」
「ブーブー!」
「ハゲー!」
「ジジー!」
「浮気しょー!」
だまらっしゃい!
ということで各々の部屋に分かれた。鍵だってかけられるんだからコレでいいのです。
「ヒロさーん!」
ものの5分もしないうちにアリサが突撃してきた。
「荷物は片付けた?」
「はい! それよりも〜……あのオッサンのこと!」
「おう」
「まじキモいんですけど……あのオッサンまじキモくないですか!? 人のお尻勝手に触るとかキモすぎ! もーまじキモい!」
「そうだな」
アリサは顔を歪めながら何度もキモいキモいと連呼する。嫌悪感がマックスに至っているのは確定的に明らかだった。
そして、コメントしたら飛び火しそうなので迂闊に触れない恐ろしさ、それが若い女の子の怒りというものである。
正直びっくりした。
「もーほんと、最悪」
でもアリサはもっとびっくりしていたらしい。
確かに嫌だよな……俺は実家に帰ると父さんのケツ揉んだりするけど、ソレとは話が違うもんな。
「感触が残ってて気持ち悪いんです! もー……ううっ! きもちわるい!」
身震いを一つ。あの一瞬で簡易式トラウマを植え付けられてしまったようだ。
「よしよし」
「ふー……()上書きしてください!」
「上書き?」
「お尻!」
「え」
なにを言い出すんだろうこの子は。
上書きってどういう事だ。
難しくてよくわからない。
「お尻上書きしてください!」
「ええ?」
「気持ち悪い感触を消してください! 強めに!」
「…………」
こうなっては仕方ない。
言っている意味は正直よくわからないし、隣にはミツキがいるわけだが──やや血走った目と荒い鼻息を前にして、それを収めろという事も難しい。ここはなるべく穏やかに…………ふ、ふさふさのしっぽだあ!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
-
いる
-
いらない