【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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81_逆年の功

 宿に戻るまでの道は不審者のふの字も無かった。

 それはいいことだ。

 一つモヤモヤが残っていることを除けば、何も悪くない。それを解消しよう。

 

「ごめんな2人とも。カッコ悪いとこ見せて」

 

「なにいきなり……さ、誘ってる?」

 

「なんでだよ! …………はぁ……ミツキの言う通りだ……俺は妥協してた。死力を尽くせば──形振りなんて構わなければ確かにあの子達を救うことはできたんだな」

 

「う、うーん……でもほら! アリサちゃんにも言われたけど私じゃなくてお父さんの力だから…………あはは……」

 

「ミツキ、違うぞ。権力も財力も、虎の威すらも──正しく使うことができたならそれはソイツの力だ。つまりお前の力だ。コウキさんが凄いのは、それはそうだ。だけど……ああやって自分にできることを目一杯していた姿は、すごくカッコよかったぞ」

 

「か、かっこいいなんて言われても嬉しくあっ──」

 

 本当に、俺の予想を超えた力だった。

 それに対して俺ができるのはこれくらいだけど、本当に良いものを見せてもらった。

 

「かっこいいだけじゃない。可愛いし、綺麗だし、素敵だったよ」

 

「ふにゃあ」

 

「うん、凄かった」

 

「ゆん……」

 

 ちなみに忘れてない。この部屋にはもう1人いる。

 

「あの!」

 

「うん?」

 

「にゃあは私のなんですけど!」

 

「え?」

 

「ついでに!」

 

「きゃっ!」

 

 どしんと突き飛ばされた。

 ──ミツキが。

 

「あだーっ!」

 

 腕から綺麗にすっぽ抜けてベッドに倒れ込み、抗議の声を上げる。

 

「な、なにすんだこらあ〜! 私の番でしょ今〜! そもそも、さっきはあんなにお姉ちゃんしゅき! って感じだったのに!」

 

「はあ? そんなこと言ってないですから。そもそもそれとこれとは話が別っつーか……私が始めたことなのに、私をダシにしてミツキさんがくっつく時間あげるわけないじゃないですか!」

 

「幼馴染タイムです〜! 幼馴染以外バリアーです〜!」

 

「はい教え子タイム発動! 教え子以外はヒロさんに近付けませーん!」

 

 二つ同時に使ったらバグって誰も俺に近づけなくなったりしないか? 

 

「私は教え子みたいなものでもあるので、そのバリア効きませーん!」

 

「後輩バリア!」

 

「後輩でもありまーす!」

 

「妹バリア!」

 

「妹みたいなものだしなあ〜」

 

 全部載せやめろ。

 間違ってるわけでもないけど。

 

「落ち着けよ2人とも。妹でも教え子でも娘でも孫でもなんでもいいけど──」

 

「家族系に寄りすぎじゃん……」

 

「ともかく、2人のおかげで子供達が助かった。俺じゃなくて……完全に2人の力だ」

 

 アリサがキッカケを作らなければ、この臆病気味な幼馴染は流石に父親の威を借りてまで商工会にカチコミしようとは思わなかっただろう。

 

「わたしもやるでしょ?」

 

「うん」

 

「えへへ〜……すっごい頑張ったんだから!」

 

「分かってるよ隣にいたんだから」

 

「むふふふ……」

 

 おそらく、向こう数週間はこのことで自慢し続けるのだろう。

 

「ヒロさん……」

 

 私は? みたいな顔で袖を引っ張ってくるアリサは取り敢えず尻尾を撫でておいた。

 

「んひゅぅっ!?」

 

「アリサは尻尾が可愛いな」

 

「しょ、しょんなのかんけいにゃい……」

 

「……俺が何かを言う必要なんてない。あの時、お前が手を伸ばさなきゃミツキも動かなかった。子供達を助けたんだって、胸を張っていいんだよ」

 

 すりすり。

 

「あ……あ…………」

 

「アリサ? 聞いてるか?」

 

「それ……んっ……少し、上……」

 

 それにしても腰の軽いリーダーだった。

 あれだけフットワークが良いと下の人間は大変だな。思い付きでなんでも試しそうだ。表裏一体の人間的特性で、公務員的な職業の人間が持つにはややフリーダムすぎるきらいがある気はする。

 

「それはアキもいっしょじゃ──」

 

「余計なことを言う口はコレか?」

 

「…………そ、そうです」

 

 

 ──────

 

 

 俺は一つ、頼まれごとを引き受けていた。

 

『なるべく海岸の近くでリヴァイアサンの攻撃の残骸が残ってないか探してきてくれ』

 

 リヴァイアサンの放った攻撃は光を撒き散らしながら進んでいったが、その一部が街にも落ちたというのだ。俺も知らない話だった。もう少し聞き込みをすれば拾えていた情報なのかもしれない。

 

「私たちも行くよお!」

 

 朝、疲れているだろう2人を宿に置いて行こうとしたらミツキが張り切って着替えてきた。

 

「なにソレ、山ガール?」

 

「動ける格好!」

 

「危ないかもしれないから来ないで欲しいんだけど……2人で固まってて欲しいっつーか」

 

「そしたら宿でじっとしてなきゃじゃん! 窮屈だし……ソレなら一緒にいたほうが安全だよ!」

 

「……」

 

「それにほら、昨日みたいに何か役に立てるかもしれないじゃん?」

 

「アリサは?」

 

「起こしてくるよ! …………アキのせいなんだからね!」

 

「それはすまそ」

 

 ここは街の中だ。

 街の外やダンジョンと違って、下水を除けば基本的にモンスターはいない。しかし、道を歩いていると不意に聞こえてくるのだ。

 不穏な噂というやつが。

 

「モンスターが街に?」

 

「ほっつき歩いてるゴロツキどもが言っててね。本当かどうかは分かんないけど……もうこんなんじゃおっかなくて外なんか出かけられないね」

 

 先日の商店に立ち寄ると、そんな噂話が立ち上がっていたということを店主のおばさまが教えてくれた。しかし、それをただの噂話と切って捨てるにはコノ世界はあまりにも不思議に満ち溢れている。火のないところに煙は立たないとも言うし、もう少し深掘りがしたい。

 ──街角先生の依頼はもちろん並行して行うぞ。

 なんなら、海岸に向かいながら確かめる。

 

「今日も店を開けたら一瞬で無くなっちまったよ」

 

「繁盛していると考えましょう。マイナスに捉えていては辛くなりますから」

 

「おっ、良いこと言うねえ! あんた結構商売人向いてるんじゃないかい?」

 

「はは、まさか」

 

「今日もまた例の知り合いのところに行くのかい?」

 

「いえ、今日は海岸へ」

 

「海岸? なんだってそんなところへ……」

 

 飛来物の話をした。

 

「…………確かに何かが落ちるのは見たね。だけど、なんでそんなものをあんたが気にするんだい?」

 

「採取するように依頼されているからです」

 

「依頼って……あんた達探索者なのかい!?」

 

「ええ」

 

「私たちは違いますよ? この人だけです」

 

 ネタバレが早い! あとアリサも探索者だからな! 

 

「探索者にしては随分話が出来るじゃないか。今までの姿は無理してたってのかい?」

 

「…………ヒロさんはこれが普通なんです」

 

「そうかい」

 

 アリサのフォローも虚しく、壁が一個出来た気がした。ことさらに隠す気もなかったし、いずれはバレることだ。探索者というだけで嫌うのなら遅かれ早かれこうなっていた。

 そして人様の敷地に侵入しているのは俺ら。

 出て行けというならば従うのが理性ある生き物だ。

 

 直接的な言葉はなかったが、ピリついた場にはいられないと店を出た。

 

「なんか……寂しいですね」

 

「……おお」

 

 かつては強盗に身をやつしていたアリサが、探索者として排外的な目で見られることに寂しさを感じている。感嘆も湧いてくるというものだった。

 

「ヒロさんといると、そういうのを忘れそうになります……」

 

「アキはそこらへんフラットだからね」

 

 俺の世界がこの世界よりもよほど多様性に満ちていたからだろう。無秩序であることが自由であるとは限らないということは十分に分かっていた。法律が守ってくれないならば、人はお互いを監視することで自らの身を守り始めるものだ。

 ──戦わないのかって? 

 誰もが力を振るえるわけじゃない。誰もが力を振るわないといけないのうな環境ならばともかく、そこまで無秩序性に満ちているわけでもない。

 中途半端だからこそ、大きすぎる力を振るう人間は自然と忌避されるのだ。あまつさえ素行の悪い奴らが多いという常識が浸透されていれば、あの反応も仕方ない。

 

 というのは俺が理屈としても感情としても納得できるというだけの話で、アリサはそうじゃない。最近は良い子も良い子で、どれくらい良い子かというと顔を合わせたら毎回尻尾を撫でくりまわしたいくらいにはとても良い子だ。

 ご両親が良い人たちだからだろう。

 

「アキ。聞いてもいーい?」

 

「なんでも」

 

 ここにいる2人に隠すことなんて一つもないからな。

 

「探索者がない世界だと、こういう偏見とかってないの?」

 

「普通にあったよ」

 

「そうなんだ」

 

「向こうだと俺たちみたいな職業はそもそも存在が許されてなくて、ルールでガッチガチに縛られてた。民衆の敵だな」

 

「えー……」

 

「でも、偏見ってわけじゃない。俺たちはモンスター相手がメインだけど、向こうのそういうやつらは弱い人間を搾取することしか考えてなかったからな。こっちで言えば盗賊と暗殺者と探索者を一まとめにしたような奴らだよ」

 

「……こっちの世界の方が良いじゃん」

 

「括りとしての話だからな? さっきも言った通り普通に民衆の敵だから何かやったらすぐに檻に閉じ込められる。というか、盗賊とかモンスターなんかが普通にいるこっちの方が治安は断然悪いぞ。向こうじゃどう足掻いてもマトモな実生活なんて送れないし」

 

「隠れたら良いんじゃないの?」

 

「そういう奴らは顔が地域全体で共有されてるから、どこにいてもすぐバレる」

 

「えー? ……ダンジョンの中でも?」

 

「だからダンジョン無いって。ちなみにこっちと違って、野宿で生活できる人間なんかほぼいないからな」

 

「それは私も出来ないけど……」

 

「今度やるか?」

 

「え! やる!」

 

 何持ってこーかなー! と楽しそうに指折り数え始めたので、その(あいだ)静かにしていたアリサを見ると視線がボンヤリしていた。

 しかし、ボンヤリとしながらも顔はやや横向きになっている。その先には炊き出しを行なっている一団が。

 どう見ても商工会だった上に騒がしい。

 

『だーっ! そんな風にしたら焦げちゃうって! ほんっとうに戦い以外なんも出来ねえんだな! 机の上は汚いし、部屋には下着転がってるし、そんなんだからその歳で彼氏できねえんだよ!』

 

『──はあああああ!? おまっ、お、おまっ……それは言っちゃダメだろ! はあ!? 喧嘩だぞ!』

 

『上等だ! 炊き出しが終わったら稽古つけてくれよ!』

 

『いますぐにでも──』

 

『炊き出しのあtあぁぁぁぁ! それ入れちゃらめぇぇぇぇええ! 風味がああああ! なんでちゃんと落ち着いて見ながらやらないんだよ!』

 

『あわわわ……2人とも落ち着いて……』

 

 喧嘩をしながらも、スイスイと皿によそって並んだ人に手渡していく。受け取った子供は勢いよく口の中にスープを流し込むと、心の底から安堵の顔を浮かべていた。

 

「良かったな」

 

「……あい」

 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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