【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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82_伝説の〇〇!?

 

『まだ引き上がんねえのかー?』

 

『あんなの上がらん、やめだやめ!』

 

 雷季の海は、常に空を覆う雷雲によって白波の絶えぬ海となっている。モンスタ──―リヴァイアサンではない──が出現する可能性があるので商工会による監視が為されているそこは、街中に存在する場所としてはアンダーなどのダンジョンに準ずる危険度を孕んでいる。通常は人が寄りつかないそこに、なんらかの理由で人々が押し寄せていた。

 活気すら見られ、中心近くの暗く沈んだアレはなんだったのかわからなくなるような様相を呈している。

 

 一行はそんな場所に辿り着いた。

 瓦礫、下水破損により現れたスライム、ゴロツキ──その全てを乗り越えての到着。というのも、前二つは自助努力により何とかなるが、アキヒロはともかくアリサとミツキは綺麗なオベべを着ているものだから人の目を引くのだ。

 服だけでは無い。

 顔も綺麗で、若くて、明らかに雰囲気が違う。

 狙ってくださいと言わんばかりだった。

 結果に関しては仔細詳しく語る必要も無いだろう。彼らは服に埃もなく海岸にたどり着いた、それこそが全てなのだから。

 

「はあ……はあ……まさか本当に海岸まで来ることになるなんて……海岸の方って言ってたのに……もう疲れちゃった……」

 

 意外と長い道のりを超えて、ミツキが自らの体力不足を痛感したところでそれに気付いた。

 

「……なにあれ」

 

「なんか……人集りになってますね」

 

 そう、海岸に集まった人々だ。

 口々に何かを喋りながら、その試験がついているのは一点。波を避けるように半同心円状に集まった彼らをかき分けて進む。

 

「これは……!」

 

 クレーターが一つ。

 直径は20m程度で、人集りの一部が列となっている。そして列の先頭にいた男が抜け出ると中心に向けて歩いていった。

 

『やれー!』

 

『今度こそか!?』

 

 なぜ興奮しているのか。

 何が何だかわからぬ一行は、隣にいた少年から抗議された。

 

「ちょっと! 並んでるんだから割り込まないでよ!」

 

「え? あ、ごめん……ねえキミ、並んでるって何に並んでるの?」

 

「何って……アレだよアレ。アンタ達もやりに来たんじゃないの?」

 

「?」

 

「ほら、あそこ」

 

「…………?」

 

 アリサとミツキはイマイチ状況が飲み込めなかった。人混みに紛れて何をしているのかもわからない。

 

「んなっ!?」

 

 しかし、2人と違って身長のあるアキヒロはクレーターの真ん中で行われていることを視認した。信じられないとアリサの目を一度見て、もう一度前に戻す。

 

「アキはなんだか分かるの?」

 

「分かる……あれは……」

 

『────!』

 

 アキヒロの声を遮るように、落胆の声が巻き上がった。

 

「あれは……」

 

 男が中心からどいた。一時的に道が開け、そこに現れたものを見てアリサは呟く。

 

「剣?」

 

 ──白く輝く剣が岩盤に突き刺さっていた。

 

 

 ──────

 

 

「そんなことが……あるのか?」

 

 最後尾に並びながら、アキヒロはぶつぶつと呟く。続々と参列者は柄に手をやって全身の力を込めるが、剣はびくともせずに固まったまま。

 

『うおおお! …………うがあああ!?』

 

 剣そのものではなく異能によって岩を砕くという選択肢を下探索者が拳を叩き付けたが、逆に拳が砕けた。

 

「あんな異能を使える探索者の拳が、地表に近い岩に負けるなんて……」

 

 アリサもその異常さに気が付いた。

 

「なになに? 結局アレはなんなの?」

 

「リヴァイアサンが吐き出したヤツだろうな」

 

「え? ……あ、ああ〜! 街角先生が言ってたのってアレなんだ! てっきりなんかの塊だと思ってたから──ってなんでリヴァイアサンが武器を吐き出すの!?」

 

「探索者のを飲み込んだんだろ」

 

「ゲロってこと?」

 

「言い方言い方」

 

「でも……リヴァイアサンと戦えるのなんて一級探索者達だけだよね。すぐ取りに来ると思うんだけど……?」

 

「どうなんだろうな」

 

 1時間ほど並んで、ようやく順番が回ってきた。

 

「まずは私から!」

 

 アリサは機嫌良さげに尻尾を揺らしながら近付く。

 

『良いケツだあ……』

 

「っ!」

 

『良い目だあ……』

 

『良い女ってヤツだな』

 

『おい……さっき一緒にいたヤツ、こっちめっちゃ見てるぞ』

 

 ──手を出したら真っ直ぐいって右ストレート。手を出したら真っ直ぐいって右ストレート。手を出したら真っ直ぐいって右ストレート。

 

『うん、怖い』

 

『やめとくかあ……』

 

「──よし!」

 

 強く柄を握りしめたアリサは頷くと、全身の力を込めて引き上げる動作に入った。

 

「うぎぎぎぎ!」

 

『いいぞー!』

 

『多分女の子がしちゃいけない顔してるけど頑張れー!』

 

「ふにににに!」

 

『あ、ちょっと動いた!?』

 

「──!」

 

『……いや気のせいだわ!』

 

「ぶはあっ! ……はぁ……はぁ……むり……誰!? 変なこと言ったの!」

 

 次はミツキの番。

 限定的な場ならともかく、このように衆目に晒されるのは堪えるらしい。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、やらなきゃ……! やらなきゃ……!」

 

『おい、なんか震えてんぞあの嬢ちゃん』

 

『かわいそうに……ここは一つ俺が世話見てやるか』

 

『……あ、おい。アレ』

 

『あん? なんだよ、いま俺が……』

 

 ──触れたら殺す。触れたら殺す。触れたら殺す。触れたら殺す。触れたら殺す。

 

『……俺が音頭でも取ってやるか! あ、そーれ! あ、そーれ!』

 

『なんだお前……きも……』

 

 ──お行儀よく見ているだけなんて、やっぱり第1セクターともなるとモラルかしっかりしてるんだな! いやあ、関心関心! 

 

「んああああ!」

 

 懸命に引き抜こうとするミツキの腕は女子と呼ぶに相応しいやわ細さだ。アリサに引き続いてピクリともしない。早々に引き下がった。

 

「あはは! 全然ダメだったー!」

 

「よっしゃ! おいちゃん見せたるか!」

 

 自信満々に腕を見せる。

 

「いけ! ムキムキ!」

 

「その言い方、ダサいからやめてね」

 

『うお、良い身体してんな』

 

『職人とかかね?』

 

『探索者とか向いてそう』

 

『探索者は筋肉とかいらないから……』

 

「…………」

 

 笑顔だが無言のまま近寄ると、まずは他の挑戦者と同じように柄に手を掛けた。

 

『な、なんか覇気が……』

 

「…………ぬっ!」

 

 威勢のいい掛け声と共に渾身の力を込める。

 

『おっ』

 

『なんかいい感じだな』

 

「ぐうっ!」

 

 顔を真っ赤にして引き抜き力を発揮すると、やがてミシミシという音が鳴り出した。

 

『おおっ!?』

 

『抜けるか!?』

 

 ちらほらと端末を向ける者が現れた。

 引き抜いた瞬間を撮ろうという魂胆か。

 

「いけー!」

 

「ヒロさんがんばれー!」

 

「ぬうん!」

 

 ──バツン

 

『!?』

 

「!?」

 

 明らかに剣が抜ける音ではなかった。

 そして、音と同時に何かが宙を舞った。

 

『なんだ!?』

 

『なんか飛んだぞ!』

 

 飛ぶということは、やがて落ちるということ。放物線を描いて足元に転がってきてそれをミツキが拾い上げた。

 

「……靴?」

 

 靴だ。

 どう見ても靴だ。

 靴だが少々様子がおかしかった。

 靴というのは靴底があって、それを布なりで上から覆って形を作っている。だが、ミツキが拾い上げたものは靴底が真っ二つに裂けているのだ。

 

「くんくん……ヒロさんの匂いですね」

 

「え……アリサちゃんアキの足の匂い覚えてるの……?」

 

「そうじゃないです! 普通にヒロさんの匂いがするって話です!」

 

「あ、そ、そういうね……というかアキのってことは……」

 

『アイツ靴なくなってんぞ』

 

『今、何があったんだ?』

 

「…………」

 

 アキヒロは悟ったような顔で立ち尽くしている。もはや柄に手を掛けてもいない。素足で海岸に立つという、そこだけ聞くと何もおかしいことはないがこの状況においては相当な目で見られていた。

 

 

 ──────

 

 

「ダメだったわ」

 

「ダメだったとかそういう話じゃないと思うんだけど……足、だいじょうぶ?」

 

「大丈夫だけど大丈夫じゃないな」

 

「そうだね……はい」

 

「要らないから」

 

「私も要らないよ! 自分で捨ててよ!」

 

 アキヒロの足元に揃えて置かれた一対の靴は、爆裂という表現が相応しい有様だ。足にかぶせるだけならともかく、コレを履いて動くというのは無理も極まるだろう。

 

「なんで靴、飛んできたの?」

 

「ダンジョン行く時用の靴じゃないのに力入れすぎた」

 

「あー……」

 

 ミツキはそこで思い出した。言われてみれば、いつもダンジョンに行く時の靴とは見た目が若干違う。

 

「そっか、ダンジョンに持ってってない靴って簡単に壊れちゃうんだっけ」

 

「まあな」

 

 改めて靴を触ると普通だ。

 何が普通かというと、その頑丈さ。ブニブニとした靴らしい柔らかさで、ミツキが履いているものと大差ない。

 コレがダンジョン用の靴であれば、装着している探索者の動きに耐えられるような強度と柔軟性を持ったスーパーシューズになっている。探索者本人と同様に魔素を吸収した結果であるというのが定説だ。

 

「そういえば、街角先生の依頼ってアレだよね?」

 

「あー……」

 

 依頼内容を思い出す。

 

『リヴァイアサンの一撃から剥離した落下物を採取してきてくれ』

 

 アキヒロは先ほどの感触を改めて思い出した。

 

「…………」

 

 ひ弱な一般人でしかないと我が身に教え込ませるような重さだった。とてもじゃないが、アレをどうにかできるとは思えない。

 

「無理」

 

「無理ですね。あきらめましょう」

 

 アリサも追随する。

 

「あんなに人が集まってるってことは探索者もそれなりに挑んでるはずです。それでダメってことは……また変な話なんでしょうね」

 

「うーん、今度お父さんにやってみてもらおうかな」

 

「……昨日もそうでしたけど、ミツキさんって意外とお父さんの力使うの躊躇しないですよね」

 

「え? だって家族だもん」

 

「でもなんか、そういうすごーい力持ってる時ってあんまり使わないようにするような……イメージですけど」

 

「よくわかんない……高いところにものがあったら背の高い人に取って貰えばいいし、硬くて開けられない瓶があったら力がある人に開けて貰えばいいでしょ? それと一緒だよ?」

 

「──! ────!」

 

「ど、どしたの……?」

 

 それはそうだけど……! と反論をしようとして上手い言葉が出てこないアリサの顔は、百面相とは言わずとも十面相くらいにはなっていた。

 

「アリサちゃん?」

 

「──はぁ……そうですね、私の負けです。煮るなり焼くなり好きにしてくださーい」

 

「煮ないし焼かないよ……」

 

『──!』

 

『あ、お母さん! アレ食べたい!』

 

 周囲には、いつのまに現れたのか屋台も出始めている。商店ではすぐに品切れになるほど買い占めに走るものが現れる一方、この場においては一人一人が今食べたい量を買っていた。

 クレーターでは続々と挑戦者が現れては引き抜くのに失敗している。観衆が沸き立つ様子を微妙な面持ちで眺めるアキヒロに、ミツキは問いかけた。

 

「アレは……何なのかな。知ってるんでしょ?」

 

「知ってるっていうか、似たようなものを聞いたことがあるだけだな。しかも創作の話だし」

 

「ふーん?」

 

「色々種類はあるんだけど……大抵は封印された剣を引き抜いたヤツがその地の王様になるとか、魔王を倒す資格を得るとか、英雄になるとか、そういうのだよ」

 

「へー! 面白いね!」

 

「そうだな……でもまあ、実際は──」

 

『──良いことを聞いた!』

 

「!?」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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