【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
『良いことを聞いた!』
「!?」
いつの間にか剽軽な男が隣に立っていた。
剽軽な、と人間に対して一息に言い切るのは失礼が勝る場合が多いが、その男はまさに剽軽という言葉が相応しい出立だった。三角帽子を被り、人懐こい笑みを浮かべるその男は、自らの腰に手を当てて馴れ馴れしく話しかける、
「やあ、はじめまして!」
「──吟遊詩人、というか……」
「そう! いやあ、最近はネタに尽きることがなくて良い思いをさせてもらっているんだけれどもね! 今日もまたひとつ、良いネタを聞かせてもらった!」
「…………」
「そのネタ、使わせてもらうよ! ……いいよね?」
「どうぞ」
「おや? 意外とすんなりなんだな。初対面なのに……探索者って大抵はお金を……まさか後から!?」
「う、うーん……ツッコミどころが多すぎて……まあいいか。ううんっ! 生憎と起源論者じゃない。人から聞いたものを他の人に聞かせただけの話だからな。それに、こんな程度の話で金なんか取ってたらあっという間に億万長者になっちまう」
「なるほど! そういうことならありがたく! 初対面なのに!」
「良い話を作ってくれると嬉しいかな、うん」
「うわあ! キミ、良い人だな! 初対面なのに!」
「なんなんだよ……」
人混みの中で明らかにこの男は目立っていた。吟遊詩人というのは各地に現れるものだが、根本的に娯楽業である彼らは人の興味関心のもとに存在が成り立っている。民衆がいなければ糧をつなぐことはできないし、逆に人が多ければどこまでも存在を肥大化させるコトができる。
その為に単純な容姿から始まり、服装や仕草の一つ一つまでもが人の目を惹きつける為に洗練されていく。
美醜は関係ない。美しいものはより美しく。醜いものはより醜く。要は目立つということ自体が彼らの仕事内容に含まれるのだ。
──彼の目立ち方は、方向性としては美しさに向いている。
そんな彼には少女たちが羨望の眼差しを向けていた。だが慣れっこというわけなのか、平然と笑みをアキヒロに向ける。
「私はフェイカー! 第1セクターに来るのは久しぶりなんだけど、キミたちはここに住んでるのかな?」
アキヒロはその名乗りを聞いて随分な名前だな、とは思いつつも口には出さない。
「俺たちは旅行だよ」
「へー! じゃあ私と似たようなものだ!」
「ははっ……」
「はははっ! 何にせよ、良いネタをありがとう! 詩ができたら招待するよ!」
「え、いやっ……」
「ふふ、人を招待するのはあまり無いことなんだよ……期待しててネッ!」
「お、おう……時間かかったり?」
「いやいや! 私を何だと思ってるのかな! 一日……いや、二日あれば仕上げられる! つまり明日の夜にはね!」
「キタイシテマス」
「あははっ! では二日後の夜、このお店に来てくれ!」
「…………」
殴り書きされた紙。
それでも字は丁寧で、一芸に特化しているものの強みというものがハッキリと出ていた。
「私行きたーい!」
「わ、私も……」
2人は乗り気だった。
あとはアキヒロ──というか、実際に招待されたのは彼なので彼が行かなかったら彼女らも入れない可能性はある。
「せめてチケットを渡せよ……いやまあ、このサインで分かるんだろうけどさ……」
「アキって本当あーいうの興味無いよね」
「音楽の方向性がちょっとな……別に悪いとは思わないし、たまには面白いけど……それ以上になあ……」
「ギターとか使ってんのアキ以外に見たことないもん」
「そ、それは俺がおかしいんじゃないない! 最近は仲間もできたし!」
「誰?」
「風香ちゃん」
「…………」
ミツキは、露骨に苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「なんだよ……良いだろ別に! 趣味の仲間増やして何が悪いんすか! 部活に来てんのも俺と風香ちゃんだけだし! 良いじゃん!」
「ちゃん付け、ねえ」
「…………」
「前は広瀬さんだったのにねえ?」
「いや、呼び方は関係ないから」
「関係無いなら広瀬さんで良いよね?」
「親友に友達ができたことを喜べよ!」
何だか見苦しい喚き方をしている男を薄目で見る。
「……アリサちゃん、今度部室行こ」
「うん」
──────
「剣が突き刺さってた?」
「多分アレがリヴァイアサンの一撃から流れ落ちたものです。とてもじゃないけど引き抜くなんて無理でしたね」
「…………」
この人、海岸まで行けばすぐに情報掴めただろうに何で自分でしなかったんだ。
「これ作ってたから、外とか全然出てないわ」
「食べ物は?」
「干し肉がいっぱいある」
「ええ……よくそんなので生きてけますね」
干し肉は不味くないけど、同じものだけを食べて生きていくとだんだん心が死んでいく。無頓着だから俺は大丈夫! とか言ってると洒落にならない。
「干し肉食ってるだけで何でそこまで言われにゃならんのだ」
「干し肉しか食ってないからでしょ」
「俺の勝手だろ」
「まあ、はい」
「ん? 待てよ……リヴァイアサンの落とし物は海岸に今もあるんだな?」
「ええ」
「……行ってくる!」
「はあ」
「その間にアレ見とけ!」
アレ、というのは先生が発明した装置のことだろう。
「じゃーまたな! ……あ! 勝手にスイッチ入れんなよ!?」
慌ただしく出ていった。年中引きこもっているくせに走り方が若々しすぎる……
「これ……魔石を分解して魔素を取り出せるんですよね? それでモノとくっつけるって……」
アリサは改めて興味津々だった。
「うん」
「私なりに考えたんですけど、それって魔素溜まりに突っ込むのと同じ状態にするってことですか?」
「そうだな」
「そしたら、私もレベルアップできるってこと──」
「ダメだ」
「…………やっぱり?」
「俺が死ななかったのは俺の肉体が変異しなかったからだ。でも、高濃度の魔素に曝されると普通は肉体が変異する。アリサ、お前はタダでさえ変異しやすいっぽいんだから……バカなこと考えんじゃねえ」
「は、はいっ」
「…………」
この機械は、存在が知られただけで恐ろしいぐらいに熱烈なオファーがやってくるような代物だ。暗殺者や探索者崩れも送り込まれるだろうし、最悪は商工会や鍛治師たちと敵対する可能性もある。まあそれは本当に最悪の可能性だけど、0からいきなりそんな可能性が芽生えてくるのだから恐ろしい話だ。これだから野生の天才ってやつは手に負えない。
「アキ、お父さんにも話してみたら?」
「……そうするか」
しかし、何でもそうだが専門的な知識が無いモノに対して『見る』という行動を取ると、一貫して『見る』以外の成分を含ませることができない。魔素濃度計測器、圧縮弁、熱交換装置? 、圧力調整弁? ぐらいは雰囲気からそうなんじゃないかと思うが全部の構成要素を読み取ることはできないし、これをどう繋ぎ合わせていけばそんな事になるのかが全く想像できない。これだから野生の(ry
「機械ですねー」
そうなのだ。
凄まじい技巧で描かれた絵を見て素人が感じるのは『上手い』『綺麗』『こんなの描けるんだ』ぐらいのもので、そこに無理やり価値を見出そうとすると途端に金の介在する世界になってくる。
それが機械だと『機械だなあ』としかならない。俺も正直、この機械によって起こるだろうオファー合戦の事を除けばアリサと同じくらいの感想でしかない。
3分くらいで機械は見終えた。
「それで、先生には何て言うの? 凄いですねーって?」
「流石にそれは適当すぎる……壊した方がいい? ぐらいかな。俺が言えるのは」
「…………ぐらいって言う割には大袈裟過ぎない?」
「だって、こんなものこの世に存在しても火種にしかならないじゃん。バレたらあの人もこうやって自由気ままに研究なんてできないし、誰が手にするかによっても色々変わるんだからさ」
「……じゃあ壊してもらうの?」
「俺のものじゃないんだからアドバイスしかできないって。結局、決めるのはあの人だよ」
暇なのでラボを色々と見て回ることにした。その中で、以前話していたものをカタチにしたのであろう模型が目に留まった。
ミツキも机の上に置いてあるそれが気になったのか、両手でそっと持ち上げる。犬くらいの大きさはある、かなり力を入れて作られたモノだった。
「……これなに?」
「飛行機のモデルだな」
「飛行機……なんかお父さんが言ってたような」
「どっかのダンジョンに取り込まれてたはずだから、それじゃね?」
「そもそも飛行機って何だっけ」
「空を飛ぶための車」
「……ん?」
「空を飛ぶための車」
「…………ん?」
「耳聞こえてる?」
「聞こえてるよ! 意味がよく分からないだけ!」
そんなこと言われても、これ以上わかりやすい説明とかあるのだろうか。
「車ってこんな形じゃないじゃん!」
「車ってのは便宜上の説明な」
「…………そもそもどうやって飛ぶの?」
「揚力で」
「????」
「ほら、もう分かんないだから大人しく納得しとけよ。人間はこれに乗って空を飛べるの! はい、おしまい!」
「むきー!」
揚力なんて概念は置いてきた!
いらねえんだそんな概念! 飛行機なんかあっても広い飛行場がないと発着ができないし、製造工場なんて作ったらダンジョン化するし、作って飛んだとしてもどうせドラゴンに落とされるだけなんだ!
俺も飛行機が飛んでる原理は分かるけど、それを実現するためのエンジンとか内部機構とかはさっぱりだ。先生は天才だけど、天才が時間をかけて改良していったものを実用化できる程に仕上げるのは流石に無理。
──人類が飛行機で空を自在に飛べる時代は百年前に終わったんだ!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない