【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「──それで?」
「あ、帰ってたんですね」
「俺も試してきたぜ。ありゃあ確かにリヴァイアサンがやったって考えるのが自然だろうな」
「でしょ?」
「ああ。……そんで?」
答えてやるよ。
お望み通りなあ!
「この機械、ぶっ壊しません?」
「お脳みそをどこかに置いてきてらっしゃる?」
むしろどこかから持ってきてるんだよなあ……
「俺の大事な子猫ちゃんをぶっ壊そうだなんて、とんでもないやつだなお前! なあ、アリサちゃん!」
「は? 知らないけど」
「え、冷たい……」
アリサは街角先生に対しての態度を完全に決めていた。残念でもなく当然だな。前歯と肋骨と鎖骨叩き折られなかっただけ有情だ。
「と、とにかく! 壊すのはナシだ!」
それも分かってた。
これを使って金儲けをしたいとかそういう人ではないのは分かってるけど、壊せるかというとまた別問題だからな。
でも、これを持っていることのリスクは理解しているはずだ。
「そりゃあ分かってるけどよ……お前から見てどれくらいの危険度なんだ?」
「最悪の兵器になりかねないので今すぐ壊して欲しいです」
「へ、兵器? いや、何の話──」
「これの原理を利用すれば魔石を大量に集積して一箇所で魔素を解き放つことができるでしょう」
「…………それは……流石に俺も……想定外だ……」
今、列車や車の燃料に使われているメタエレメンツとは比較にならないほどの魔素が魔石には含まれている。あちらは主に鉱物と結合したモノであるのに対して、こちらは超高純度の魔素そのものが結晶化しているのだ。そんなものを大量に、一箇所で解放すれば即座にダンジョン化が始まるだろう。そうでなくともその場に高レベルのモンスターが出現する可能性もある。
「これは一般に公表されてはいけないものです。されるとしたら、状況が整わないと」
「うーん……それってどれくらいかかるんだ?」
「知りませんよそんなの。そもそも大事なのは期間じゃなくて状況です。この機械を使ってできることを一種に絞って、それだけを公表しつつ内容が外部に漏れないようにできるっていうね」
「……俺だけじゃあ無理じゃん」
「はい、無理です。なので壊しましょう」
「壊す方向に持ってこうとすんな!」
「どうせ再現できるんでしょ? 設計図もあるんだろうから。それだけ保管しておけばいいじゃないですか」
「そういう問題じゃねーから! 俺が汗かきながら必死こいて拵えたのに、そんな一言でナキモノにしようとすんじゃねえ!」
そう言われても、これを評価しろと言ったのだから素直に述べているだけだ。気に入らないとか壊したいみたいな破壊欲が先に来ているわけじゃなくて、シンプルに壊した方が世のためになるよねって思ってます。
「とにかく! 壊すのはナシ!」
「じゃあこのまま放置ですか?」
「作ったら必ず誰かに渡さなきゃいけないってこともねえだろ」
その通りだが、一般論を当てはめられるのは一般的な事物に限るという前提を忘れた物言いだった。
「人類には四十年くらい早い気がします」
「微妙だな……」
「四十年も経てば、衰退するか進歩するかのどちらかの結果は出ますから」
「俺とお前が生きてりゃ進められるだろ」
「でも人類の倫理観は追い付かない。何の意味もないことが繰り返されるだけです」
「……随分と人類を下に見てるんだな」
「俺もそのうちの1人ですから、下も何も無いですよ。文明が進めば大人しく享受するだけです」
「矛盾してるぞ」
「それが人間です。そして俺は人間です」
我ながらめんどくさいというのは分かってる。だけど、この人のしようとしていることが人類には早すぎるというのは、仮にこの場にいるのが俺じゃない他の現代人だとしても同じ感想を抱いただろう。
人類には適した文明の段階というものがある。
これほど工業的に完成された機械が、この時代のこの世界にあっていいわけがないのだ。俺は知識を伝えはしたが、その中の要素からこれ程の物を作るのはやり過ぎだ。
「お前は、やっぱり…………」
「俺の事なんてのはどうでもいいですね」
「…………まあいい。これをどうするか決めるのは俺だ」
「その通りです」
結局こうなる。
これ以上同じ話をしても意味はない。例の芳香剤? の話へとシフトチェンジした。
「これ、うちにも一つ欲しいですね」
「ああそれか。知り合いに頼まれて作ったんだよ」
「へー」
「…………」
「…………」
「お前、分かってんな?」
「さあ」
「こっちこい」
肩をふん掴まれて、隣の部屋へ連れて行かれた。
「お前女いるんだからあんなのいらねえだろ!」
「いや、普通に消臭剤として……」
「ああムカつく! その余裕がムカつく! いつかこうなるだろうと思っていたことが実現しているのがムカつく!」
「……
「わからいでか。初対面時からいつかこうなるだろうってな」
「…………」
初対面か。
「懐かしいぜ。とんでもない化け物を──おっと、すまん。厄ネタ──これもダメか。トラブルをひっ抱えて歩いてんだからな」
あまりにも失礼すぎるが、それを大きく否定できないほどにはあの時の俺──俺たちは大問題を抱えていた。
「まさか高校入ってすぐのガキがあんなことしようだなんて、普通は思わねえからな」
「必要なことでした」
「ああそうだな」
何度思い返しても絶望的な綱渡りで、何度思い返しても必要なことだった。
「けっ、俺の機械はぶっ壊そうとするくせによ。冷てえやろうだ」
頷こうとした瞬間だった。
「──違います!」
「違うよ!」
「うお!?」
扉から2人が転がり込んできた。
聞き耳を立てていたようだ。
「ヒロさんは冷たい人間じゃありません! 焼肉が食べた過ぎて先を見過ぎで人の心があんまり見えてないだけです!」
「そうだよ! 朴念仁で鈍くて何にも気付かなくて何でも知ったふりになってるだけだから!」
むしろ、熱いのはこの2人だった。
「貴方がヒロさんとどんな関係か知りませんが! ヒロさんを貶す権利はありません!」
「…………おい、このメス2匹をどうにかしろ。発情期のクッセェ匂いぷんぷん漂わせながら口開いてたら擁護にもなんねえよ」
「んなっ!?」
「あと、内緒話してるところに堂々と突っ込んでくるな」
「ケツ触っといて人に発情期とかいう権利あるわけねえだろ!」
「俺がケツを触るのは女のケツが好きだからで、発情してるわけじゃない。これは普通のことだ」
「……ヒロさん!」
がなりたてるアリサにも冷静に返す暴論は、暴論すぎて隙がなかった。
「取り敢えず、盗み聞きはしちゃダメだぞ?」
「ヒロさん!? そいつの味方するんですか!?」
「正しさは揺るがないからな」
個人の主義主張に関わらずぶれないもの。
それが正しさだ──という話は置いといて。
「君たち、俺の事結構ボロクソに言うんだね」
街角先生はアレを擁護とか言ってたけど、俺からしてみれば普通にバカにされた気分だ。
「……というか、マジで出ていって欲しいんだが。真面目な話だ」
オ◯ホの話が真面目なのは、実際正しい。
揺るがないね。
「聞こえてきたんだからね! 初対面がどうとか!」
ほんの数年前の話だ。
まだ俺が探索者ですらなかった時のこと。
高一の夏休みにロイスと出会い、懐かれて、そこから少ししてソフィアとも出会った。
「そういえば、ロイス君とかソフィアちゃんと出会った時の話ってあんまり聞いた事なかったかも……」
「言ってなかったからな」
「お父さんとお母さんが怒ってたのは覚えてるけど……実際何やってたの?」
答えていいものか。
アレは極めて秘匿性の高い問題だ。
この場にいる2人は信頼しているが、それでもおいそれと漏らせるものでもない。
「おせーてよー」
「待て待て──ん?」
電話がかかってきた。
誰かと思えば──
「ソフィア、どうした?」
「ソフィアちゃん!? むぐ……」
「静かに」
このタイミングでとは、あまりにもあまりにな──しかし全く用事が思いつかない。
まさか、また身体に異変が?
色々と考えたが、どれもしっくりこない。
ソフィアがゆっくりと息を呑む音が聞こえ、言葉が続く。正直なところ、その内容を予想することすら俺にはできていなかった。
『お二人なら……話しても大丈夫ですよ』
「お、お前、何でそれ……!?」
『うふふ、やっと一本取れました』
「…………そういうことか」
『あら、冷たいですね。こわーい』
「知ってるだろ?」
俺が神様を嫌いって事は、もちろんソフィアの知るところだ。
『ええ、知っていますよ。だからこそ……会長にはピッタリですね』
「???」
意味深すぎて意味がわからない。
こんな物言いをする子だっただろうか。それに、なぜこのタイミングなんだ。
『ふふ……困惑してて草、というやつです』
「お、お前なあ……」
そういう言葉の使い方を教えたのは間違いだったか。
『会長、言いたいことはそれだけです』
「そうか……分かった」
『ロイス君はどうします?』
「あいつ何してんの?」
『えっと……
「うん? じゃれてる?」
『はい、ちょっと……きゃっ!? ……もう……』
「キリマース」
『うふふ、失礼しまーす』
なんというか、爆発しろとでも言ってやるべきだったのかもしれない。
「ソフィアちゃん? 何でこのタイミングで?」
「まあ……なんだ……2人には教えておかないといけないことがあるってことだ」
「何を?」
「とても大事な事を」
日向は知ってるからな、うん。
仲間外れってわけじゃない。
……早苗ちゃんにはまた今度ね。
次話からぬるっとソフィア編入ります。
すまんの。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない