【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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2_ホンマごめん

「う、動かない?」

 

「あっはっは! お嬢ちゃん、なーに言ってんの! 焼いたら死ぬに決まってるでしょ!」

 

「でもモンスターは炎でも死なないっておばあさまが……」

 

「コレはただのネズミモドキだよ。モンスターっつっても大したもんじゃない」

 

 ネズミモドキというのはネズミに擬態したサソリだ。大きさもネズミ程度で大した脅威ではない。住み着くところはネズミと違って土中であり、人間の生存権に出てくることは稀なため害獣とは見られていない。

 俺も何度か食べたことはある。

 

「ここだとネズミモドキなんて食べられるのうちだけだからね」

 

「コユキちゃんは食べたことある?」

 

 そう尋ねると、フルフルと懸命に首を横に振った。やはり金持ちはネズミだのサソリだのを食べることなどしないらしい。

 サソリだし擬態している相手もネズミということで、お足の程はという疑問はある。しかし実際食べてみるとあまり悪くない味だ。巣にいた奴ら全部茹でて持ち帰ったことだってある。茜には泣かれたけど、父さんと母さんは喜んでいた。

 

「コレたべよっか」

 

「ひええ…………ぴえええ……!」

 

 串に刺された焼き身を突いて、ピクンと動くと怯えて俺の後ろに隠れる。突いたら動くのは当然なのだが、見るのも触れるのも初めてのよく分からない生き物にビビり散らかして正常な判断ができないようだ。

 

「はい、どうぞ」

 

「…………」

 

 2本買ったうちの1本を差し出すと、恐る恐る親指と人差し指で串を摘んで持つ。口を一文字に引き結んでジッと見つめるのは、本当に食べられるのかどうかを内心で葛藤しているのかもしれない。というかしてるところ。

 

「いっちゃえいっちゃえ。まずは一口、食べてみれば美味しいから!」

 

 手本を見せるというわけじゃないけど、まずは俺が一口いただいた。口に入れるとまず、濃いめのソースの味が広がる。ウスターソースに近いけど、比べるともう少し甘みが足されているような風味だ。サソリということで外骨格があるが、商品に選ぶのは脱皮直後の柔らかい個体だけらしい。俺は硬いやつを茹でて食べたけど、こういう食べ方もあるのか。

 

「硬いやつは身が少し緩いんだよ。脱皮途中の方が肉で形を保とうとしてて身が締まってるんだ」

 

 雑学を聞き流しつつ、殻を歯で潰し裂く。口の中に、独特な良くない風味が広がった。土の風味が少し混ざっているんだな。だけど、殻を裂けばそこには剥き身がある。舌先に乗ったプリプリの肉から味蕾を通して伝わってくるのは、仄かに塩味の効いた弾力のある味わい。あまり美味しくないボタンエビというのが感想として湧き上がってくる。うん、いつも通りだ。

 焼いて食べたのは久しぶりだけど、やっぱり茹でた方が雑味が飛んで味としては悪くない。これからも捕まえた時は茹でて食べよう。

 

「おいしい?」

 

「美味しいよ」

 

「…………あむっ!」

 

 ようやくコユキちゃんも決心がついたようで、腹の後ろを口に入れた。後腹部の先に内蔵されている毒は、食べると1時間ほどして嘔吐が止まらなくなるので取り除かれている。独特の苦味は酒に合うらしいが、体がバカみたいに強い探索者以外は食べられないのだ。

 腹部は節が多く、自由に動かすために胸部と比べて柔らかいのが特徴だ。とはいえ、脱皮途中であれば胸部だろうが腹部だろうが大差ない。

 

「……んんっ!?」

 

 柔らかな殻を口の中でちぎったのか、目を見開いた。

 

「に、にが……」

 

 うへえという顔で舌を大きく突き出す。載っている身は小さく、お嬢様らしい食べっぷりだということがうかがえた。

 

「にがひ」

 

「おっ? 嬢ちゃんは苦いの苦手か?」

 

「おいひくなひ」

 

 舌を出したままヒロホロと喋る。どこかに捨てたいが、一度口に入れたものを吐き出すということに対する抵抗感があるのだろう。

 

「ほら、これ」

 

「んー……」

 

 包み紙を差し出すと、後ろを向いて音がしないように口から出した。

 

「まだ口の中にがいよ……おいしくないじゃん!」

 

「ごめんごめん、残りは俺が食べるから。お詫びに次は甘いものでもたべよっか」

 

「甘いもの!? 食べる!」

 

 立派なレディーに振る舞うには少々趣味がよろしくなかったようなので、相応しいものを。

 

「あはは!」

 

 それにしても、コレほどに楽しそうなのは予想外だ。楽しんでくれるのはコチラとしても悪い気になるわけはない。しかし、そこまで楽しいものだろうか。

 

「楽しい?」

 

「うん! ……あ、これなに!?」

 

「なんだろう。おばあさん、コレなんですか」

 

 コユキちゃんが目をつけたのは緑色の飲み物だ。抹茶のような濁り方をしているそれからは、甘い匂いが漂ってくる。暖簾を出しているのはシワの多い老婆だ。

 

「コイツはアルバレムの薬湯だよ。川底に生えるアルバレム苔を潰して煎じたものさ。飲めば疲れ目に効くけど……あんた達にゃまだ要らないね」

 

 生前の俺に足りなかったものがここにあったらしい。それにしても、川底に潜るだけの元気がこの人にあるとは……やはり異世界の人間は不思議だ。

 

「そんな顔するもんじゃないよ。探索者に取ってきてもらったに決まってるだろう?」

 

「失礼しました」

 

「昔は自分で取りに行ったけどね。うちで扱ってるのはコレだけじゃないし、全部取りに行ってたらとても時間なんて足りないんだ」

 

 話してみると、回復薬やら幻惑薬なんかも扱っているらしい。探索者も頻繁に入り口から店の中に入っていく。中では探索者が誰かと話している。チラリと見えた声の主の姿は、齢20ほどの青年だった。

 

「あれは孫だよ。店を継いでくれるって言うんだ」

 

「そうですか」

 

「アンタ達は? 兄弟かい?」

 

「そう見えますか?」

 

「見えないこともないね。まあ、そう答えるってことは違うんだろうけど」

 

 コユキちゃんはもらったデンプン飴を舐めている。

 

「んふふ〜」

 

 置いてある長椅子から脚を垂らし、機嫌ゆさげに頭を揺らしている。どうやらお気に召したようだ。

 

「俺はここに自分探しに来たんですけど、あの子とはさっき出会ったんです」

 

「自分探しぃ? なんだいそのチンケな趣味は……もう少し有意義なことに時間を使うとかないのかい? 今はちゃんと学校があるんだからそこに通うとかあるんだろう?」

 

「学校じゃ金の稼ぎ方なんて教えてくれませんから」

 

「尚の事、こんなところでノンビリ自分探ししてる暇なんかないんじゃないのかい?」

 

「すべてはなるようになるだけですから」

 

「なんだい、悟ったようなこと言って」

 

 俺が努力しても限界がある。人間の肉体は十数時間動かせば自然と眠くなるようにできている。その時間をどれだけ効率よく動かしたところで、俺には社会の歯車になる以上の才能がなかった。

 すでに証明されたコトだからこそ、サラリーマンとして働くことに意味がないのは分かっている。

 

 だから、俺の常識に則った規律や規範を超えたところに答えを探す必要があった。まさに自分探しというのが相応しいだろう。

 

「ねえ、そろそろいこ!」

 

「はいよ。それじゃ、また」

 

 着いていくと、お高い服屋に押し込まれた。

 

「いちめーごしょーたーい!」

 

「おお! 毎度ご贔屓にしてくださりありがと………………???」

 

 店員が困惑の目で俺を見ていた。

 コユキちゃんへの恭しい態度から考えると、彼女は何度も訪れているのかもしれない。今日も家族と来たのかと思って丁重に挨拶したら知らんガキがいて困惑、というところだろうか。

 

「……いらっしゃいませ!」

 

 色々言いたいことがあっただろうというのを飲み込んだ! でも、ちょっと間が長かったな。今のは普通に悟られるレベルで空気に出ていた。

 

「申し訳ない。この子が連れてきてくれただけで、私も何が何だかわかってないんです」

 

「そう……ですか」

 

「荒らす気はないので、適当に付き合っていただければ」

 

「では──コチラであればお客様のサイズにあったものがございます」

 

「ほう」

 

 紳士服ですか。

 久しぶりに見ましたね。

 うちの父親ときたらスーツなんて買おうものならどこかから墜落してきたアメーバ型モンスターにぐっちょんぐちょんにされて服だけ溶かされますからね。母さんが膝から崩れ落ちてましたよ。

 

「より身体にあったものをという事であれば──」

 

「ねー! こっちきてー!」

 

「すいません、失礼しますね」

 

 丁寧に案内してくれてるのにホンマごめん、呼び出しだわ。

 

「どした?」

 

「私がしょーかいする!」

 

「お! そっか! 何を紹介してくれるんだ?」

 

「これ!」

 

「──!」

 

 絢爛豪華な宝石がショーケースに収められていた。どうやら彼女が要望して出してもらったものらしい。

 その値段は、いずれも牛肉と同じだけのもの。これを子供ながらに引き出せる彼女の家の財力というものが末恐ろしい。もしかしたら四門家に並ぶのかも。

 

「魔石だよ!」

 

「魔石……そうか、ただの宝石じゃないのか」

 

「うん! 探索者の人たちが、えっと? ダンジョン? で取ってきたんだって!」

 

 そうだ。この世界に存在するのは既存の元素だけじゃない。侵襲した新たな法則にして、物質を丸ごと侵食する魔素があるのだ。そんな魔素が固まったものがコレ。

 ノーブルオパールのような虹色の煌めきを讃えたものや、ピジョンブラッドが如き純赤が空気すら燃やしそうな──本当に燃えそうな熱を感じる。それぞれが特殊な容器に収められ、それでも隠しきれぬ威容はすべてダンジョンから齎されたものだという。

 

「うちにも一つあるよ! おとーさまがおかーさまにあげた指輪!」

 

「何色?」

 

「うんとね、水色! 念じるとバリアー? が貼られるの! しんそーでとれたんだって! お母さん、いつも自慢してるよ!」

 

 それはいわゆるアイテムに分類されるものではなかろうか──しかもグレードとしては最高位に位置する。回復薬を代表に、通常生活で使うにはあまりにも効能が大き過ぎるものがある。回復薬はそれこそ一般生活にまで染み込んでいるが、一滴でドラゴンすら殺すことが可能だという毒や、池の水全部抜いてみた! が出来るスポンジ、飲めば溶岩の中ですら溶けずに活動することができる丸薬、土に埋めるとドラゴンの攻撃に耐える即席のシェルターができる種子など、日常で絶対に使わないだろうというようなものが沢山ある。

 コウキさんも多くのアイテムを保有していて、引退した今も丁寧に磨いているとか。

 

「コユキちゃん、外ではあんまりその話しちゃダメだよ?」

 

「? ……うん!」

 

「良い子だ」

 

「私いい子?」

 

「うん、いい子」

 

「わーい!」

 

「よしよし」

 

「あひひっ!」

 

 だから……そんな目で見ないでくれよ? 

 俺はあくまでこの子に着いてきただけなんだから。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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