【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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4_おじいちゃんの思考<<実体験

 

 宝石は定義が分かりやすいようで曖昧だ。

 明確にこれが宝石だとあげることは勿論できるが、一つの言葉で具体的に説明しようとすると包括的な言葉になる。

 即ち──

 

「綺麗だろう?」

 

 露店を広げて座り込む男は、見窄らしい風貌だが確かな目利きをしているらしい。ご婦人たちが集まって、口々にどれが良いだのと話している。

 俺も一つ見せてもらおうと横から顔を覗き込ませると、卵状の繭がまばゆい光を放っていた──いや違う。これはアレだ、ジオードだ。

 凸凹とした表面を見て、うーんこれは宝石! と初見で思う人間はいないだろう。しかし、尋常ではない光を放っていればどうか。誰だって目を引かれる。

 

「なんだ、興味あんのか?」

 

「ちょっとだけ」

 

「コイツだろ?」

 

 ヒョイと持ち上げたジオードは、空中に掲げるとそれだけで光の色合いが変わった。更に、放たれた光が水球を通り抜けるとプリズム効果によって虹色に分かれていく。

 

「きゃあ〜! すごいすごい! 買うわ!」

 

 即金で1千万出すのやめてもらって良いか? 

 

「ジロさんまたね〜!」

 

「はいよ」

 

 今日のお仕事はおしまい! と露店を片付けていく。傍に佇む探索者のおかげで金を盗もうなんて輩もいなかった。

 

「人気者は辛いねえ」

 

 そう言いながらも、金を数える顔には笑みが絶えない。

 世の中には金を集めることが何よりも大好きな人間がいる。彼もその類なのかもしれない。

 

「坊主、お前ももう帰んな。今日は店じまいだ」

 

「……」

 

 年寄りだ。

 つまり昔からの伝手があって、そこを源泉として今も宝石商の1人としてやっているのだ。再現性はあるだろう。

 ただ、再現するにはやはり探索者の力が欠かせない。あのように中から強烈な光を放つ石というのは本来存在しないはずだ。それが算出するとしたら、魔素が染み込むダンジョンの深層。

 つまり、それなりのレベルを持った──少なくとも50以上はある探索者から買い取るなりしているのだ。

 

「……厳しいか」

 

 俺の持つ知識で釣れるのは、突飛な話が好きな吟遊詩人や科学者、そして子供だ。頭が悪くて力至上主義の彼らにその価値は伝わらない。まさに宝の持ち腐れ、プランとして扱うには俺自身に価値がなさすぎた。

 

「じゃあ次だな」

 

 無理なら仕方ない。

 次へ移ろう。

 

「服……」

 

 やって来たのは、ニコニコと微笑む店員が待ち受ける服屋の並び。当然、誰でも入れるわけではない。服は高いのだ。そして格式が求められる。

 金持ちは店に(はい)れて、お買い物庶民は(はい)れないという差別化を図ることにより、半貴族的な思想を持っている金持ちたちに対するブランディングを行なっているからだ。

 

「ほえー……!」

 

 入り口から中の様子を伺うのは俺ばかりではない。一般家庭出身だろう子供たちも目を輝かせて──特に女の子は強く──絢爛豪華な世界への入り口に興味津々といった様子だ。

 

『──』

 

 しかし店員はそんな彼女たちに対して冷ややかな視線を向けている。あの笑顔はお客様──金持ち様へのものだからだ。昨日コユキちゃんに連れられていったあの店も、俺が1人で入るのは不可能だろう。そういった意味では昨日あの子と出会ったのは幸運だった。

 

「中間層が狙い目だな」

 

 だけど……ここからアパレルブランドを立ち上げて大儲け……? 

 

 この世界の一般的な服の好みは第一期、あるいは俺の前世における常識と若干ずれている。そこのギャップが良い具合に作用する可能性というのは十分にあり得る。

 運次第でしかないからおそらく成功するんだろうけど、なんかロマンが無いな。

 面白みがないと言い換えても良い。先ほどの露店のおっちゃんと違って心惹かれる職業ではなかった。

 

「次行くか」

 

 食料品──

 

「なし、次」

 

 武具──

 

「なし、次」

 

 加工会社──

 

「なし、次」

 

 列車業──

 

「なし、次」

 

 半ば分かっていたことだ。

 どんな世界であってもソレが人間の世界であるならば、築かれる社会のあり方というのはある程度の範囲内に収まる。

 

「うーん……」

 

 困ったな。第一セクターに来たけど、今の所俺のお望みの仕事はないようだ。半分くらい分かった上ではあったけど、やっぱり世の中に発生する仕事は限定的でしかないんだな。

 アイテムショップや探索者が公然といるのは前世と大きく異なるけど、もう少し大まかな分類をすれば小売店、猟◯会となる。

 

「金ってのはやっぱり、金があるやつのところに集まるもんだよなあ」

 

 やはり、そう都合よく金を稼げるわけはない。

 拡張性の大きい仕事をしたいが、そうすると行き着くのは経営者ということになる。

 

「虚しい」

 

 ならばどうするんだ。

 俺は…………

 

「いや、やめよう」

 

 決めていたことじゃないか。

 今回のはあくまで下見──様子見のようなものだ。一度見たくらいで何かを決めつけられると思ってはいけない。俺のような凡俗は特に、物事を見抜く心の眼など持ち合わせていない。

 

 1人で考えるからこうなるんだ。こんな時は────! 

 

『なにー?』

 

 コウキさんに買ってもらった携帯端末の出番だ! 

 

『あれ? アキー?』

 

「よう」

 

『よう! ……どうしたの?』

 

「ちょっと声が聞きたくなった」

 

『えっ…………えっ!?』

 

「今は何してんだ?」

 

『──』

 

「ミツキ?」

 

『あ、う、ううん! なんでもないよ!? 今……い、いま、いま、いまは……お昼寝!』

 

「……あんま寝てばっかだと牛になっちゃうぞ?」

 

『別にいーじゃん! 私がどんだけ寝てもアキにはカンケーないし! そもそも牛になるってなんなの!』

 

「せっかく休みなんだから、友達見つけて出かけるとか……あっ! き、きりやがった……自分で言い出したことだろ……」

 

 高校に入る時は『新しく友達をつくります!』なんて目標を立てていたから見直したのに……少し経ったらこれだ。そりゃあ小学校では最初揶揄われたりして嫌な思いをしただろうけど……俺の見立てでは、あの頃の嫌な気持ちはだいぶ薄まっていると思う。だって普通に昔話とかするし……あれ、またかかってきた。

 

「はい」

 

『いーい! 私に友だちの話はしないでね! そうじゃないと切っちゃうから! ね!』

 

『ソーダヨ!』

 

「…………お前どこいんの?」

 

『どこでしょう!』

 

『オヤ、アキヒロトハナシテイルノカイ?』

 

「……なんで俺んちにいんの?」

 

『あ! ズル!』

 

 ズルいも何も、そっち側から情報提供しといて何いってんだ……

 

『ミツキチャン、チョットコッチテツダッテクレル?』

 

『あ、うん! アキ、またね!』

 

「え? お前昼寝してたんじゃないの? なんでウチに──き、きりやがった……」

 

 謎すぎる。

 どういうこと? 

 普通に嘘をつかえるようになったってこと? 

 意味のない嘘をつくのは女の子の特権ってこと? 

 

 あのタイミングで昼寝などという嘘をつく理由がわからなくて道のど真ん中で少しの間立ち尽くしていたが、水球が移動してきて肩に触れたため正気に戻ることができた。

 

「うん……まあ、いいか」

 

 意味のない嘘だろうがある嘘だろうが、ミツキがつく嘘に悪い嘘があるわけがない。今度にでも理由を聞けばいいのだ。天邪鬼気質なところがあるウチの娘がその質問に答えてくれるかは別として。

 

 切り替えていきまっしょい! というわけで、探してばかりじゃ逃げられるばかりというジンクスに則りブラブラすることにした。

 それも、そんじょそこらのブラブラじゃない。

 本当に何も考えず、目についた路地裏にまず入ってみよー! というレベルだ。

 きっと、俺の直感力がどこかへ導いてくれるだろう! 

 いざ、町ブラ! 

 

「ふむふむ、ふむふむ、ふむふむ」

 

 路地裏に入るというのは言葉のアヤである。まずは町そのものを楽しんだ。先程までは観察するということに注力していたので、感情を行動に添えるということをある程度削ぎ落としていたからだ。

 

「ほおほお!」

 

 お仕事的な話を抜きにして町を見れば、ここはとても良いところだ。

 大衆酒場をいくつか訪れて軽食をとってみたが、どこも繁盛している。酒場が多いということはそれだけ探索者が多いということで、それに付随して必要とされる建物も多くなる。賭博場や風俗もそこかしこに見られ、ネオン街と商店街を掛け合わせたような雰囲気だ。お高い店というやつとは区画が別なので、目的を異にするモノ同士の動線が被ることもない。

 まあそれは単純にブランディングの要素が大きいのかもしれないけど、メリハリの効いた都市であるのは間違いなかった。

 

「子供も多いな」

 

 若い夫婦が多いという証拠であり、この都市はまだまだ伸びていく途中ということを示唆してもいる。

 

「わー! 水だ水!」

 

「濡れたー!?」

 

「えいっ!」

 

 子供は水で遊ぶのが大好きだ。川があれば川で、プールがあればプールで、そして水球があれば水球で遊ぶ。一度発生した水球は体積の問題もあってなかなか消えない。バシャバシャと水を撒き散らしながら駆け回る子供達を、親御さんや通りすがりの人間が優しく見つめている。

 そんな柔和な空気の中で、何かが背筋を撫でた気がした。

 

「──っ!?」

 

 振り向いても至近には誰もいない。俺はこの世界に第六感、あるいはそれに近い能力があることを知っているけど、俺自身に備わっているとは微塵も思っていない。つまりこれは物理的な現象なのだ。何もなくても背筋が震えることはあるけど、あれとは少し違った。

 その元凶は何かと思考を巡らせようとして──やめた。

 俺程度が考えても仕方ない。バカというのは考えたがるものだが、体験しなければいけないのだと先程考えたばかり──これも考えた末の結論かあ……

 

「どこだ……」

 

 呟きが聞こえたのか、隣にいたおばさんがギョッとした顔で俺のことを見た。それを無視して顔を左右に振る。しばらく監視カメラのような動きで辺りを観察すると、自然と眼が引き寄せられる場所があった。

 

「…………路地裏、か」

 

 まさか、本当に路地裏に向かうことになるとは思わなかった。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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