【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
コユキちゃんの部屋に案内された。
「い、いらっしゃい……」
教育係のシエラやソフィア達が置いてけぼりだが良いのだろうか。金持ちだから良いのかもしれない。
「おお〜、女の子の部屋だ」
「…………そーお?」
扉を開けると、1人で済むにしては少々広いような気がする部屋があった。内装は薄桃色がよく目につくのはコユキちゃんの趣味かな。
廊下には絵画などが飾ってあったけどこの部屋にはそういう芸術的な要素は見当たらない。
あと、いい匂いがする。
「お? ……フェイルスシリーズか」
「あっ!」
どこかの詩人が書いた小説。
探索者の雄大で活力に満ち溢れた探索が一人称視点で綴られていた。少し言い回しや地の文が大仰なのは著者の趣味だ。それもまた味で、この世界にしてはなかなか面白い読み物だった。
「とりゃぁっ!」
──パラパラとページをめくっていたら横から掻っ攫われた。トンビでも彷徨いていたのかと思えば、コユキちゃんが必死な顔で胸元に抱きしめている。
「ちょっと?」
「だ、だめ!」
「なんで? 良いじゃん面白いし」
とある村で生まれた少年フェイルスが、7つの橋を渡った先にある楽園を目指す物語。村での仕事だけでは満足できなくなり、幼馴染のミネアと共に村を飛び出して第一セクターで探索者となった少年は、多くの苦難に見舞われることになった。ある夜、突然にしていなくなった幼馴染を探すと不審な人物達に誘拐されていたことが判明し、手がかりを追っていくうちに闇の組織との抗争に巻き込まれて行く。
「お父様は……詩人の言うことなんて何にも当てにならないって……だから、話を聞いちゃダメだって……」
「それはそう」
「! ……あ、アキヒロも同じこと言うの!?」
「お父さんの気持ちは分かるよ」
「じゃあ、なに!?」
「吟遊詩人達の話を聞くのは、確かに暇つぶしにはなる。探索者や商人のめくるめく冒険や夢物語は、辛い現実から一時でも心を逃がしてくれるからな」
「でしょ!?」
「でも、中には子供を誑かしていやらしいことを働く奴だっている。コユキちゃんのお父さんはきっと、そういうのを知ってるんだよ」
「いやら──そ、そんなの聞いたことないもん!」
「俺は見たことあるよ」
「え……」
「幼馴染が手を引かれて連れてかれそうになってな……いや、一瞬だけ目を離した途端だったから呆れたわ」
「……どうなったの?」
「もちろん頑張って取り戻したさ」
「!?」
その時に切り付けられた傷跡は今でも残っている。
「もちろん、その本がダメなんて言ってないよ? 俺も少しだけ読んだことはあるからな」
「…………」
「どこまで読んだの?」
「え? ……えっ、と……」
「俺はフェイルスが夢を諦めないところが好きかな。村長に否定されても、街の人に笑われても、7つの橋があると信じて足を止めない……その姿を想像すると俺も負けてられないなって気分になるんだ」
「………えー? フェイルスはなんかよく分かんなくて……私はミネアの方が好き」
「ミネアはとりあえず着いてきてるだけじゃん」
「むっ!ミネアはフェイルスと一緒にいたいんでしょー! 読んでてわかんないの!? あんなにちゃんと描かれてるじゃん!」
「フェイルスは周囲を巻き込んで
「もー! 女の子のこと何にもわかってないじゃん!」
談義に勤しんだ。
──────
「あ、おばあさま!」
「廊下まで話し声が聞こえておりましたよ」
話をしていると時間というのはあっという間に過ぎ去るもので、いつの間にか昼時になっていた。
「準備ができております」
「いこ! アキヒロ!」
しかし、俺はまだ荷物を下ろしていなかった。床には下ろしているけど、コユキちゃんの部屋に置きっぱというのも変な話だ。
「あの……荷物はどうすれば?」
「こちらに」
ネルさんくらいの青年が荷物を受け取ってくれた。どうやら別の部屋に運んでくれるらしい。
「2人とも何してたんだ?」
「こっちのセリフだけど」
「俺は──うぎっ」
ツン、と脇腹に鋭く鈍い衝撃が走った。
衝撃の元を見れば、有明の月の如く鋭くなった目が睨んでいる。そういえばコユキちゃんは本を読まれていることをあんまり人に知られたくなさそうだったな。
「そ、そうだな……俺は……秘密の話をしてた! ネルさん達は?」
「私たちはいろいろ」
「色々?」
「そっ、色々」
「……おお! 服装が変わってますね!」
「気付くのおっそ」
ラフなバギーパンツスタイルだったのが、いつの間にか可愛い系に変わっていた。
「アハ体験だな!」
「はあ?」
「いやあ、コユキちゃんとのおしゃべりが楽しくて気付きませんでしたよ!」
「頭使ってる?」
しかしソフィアの薄氷色のドレスには度肝を抜かれた。あんまりにも似合い過ぎてて、お姫様と勘違いされてもおかしくない。
「お、見惚れてる」
「ははは! バレたか! でもネルさんも可愛いですよ!」
「……はあ」
「なんで着替えたんですか?」
「なんか、ご当主様とちゃんと話すのに私たちの服だとダメなんだって……私の服じゃ安っぽいんだってさ〜」
「へー」
俺は?
「カガミくんは意外とカッチリしてるし……なんで貧乏なのに服はきっちりしてるの? 貧乏なのに」
「2回言う必要ないよね」
「私だって色々考えてやってんのにさあ……」
「落ち込まないでくださいよ。ほら……干し肉食べます?」
「いらないっ!」
ペチンと肩に一撃。
差し出した干し肉をはたき落とす愚行は選ばなかった。
「今から美味しいご飯が待ってるの!」
「たくましい」
なんだかんだで楽しそうなネルさんと違って、ソフィアは少し難しい顔をしている。
「ソフィア? どうかしたか?」
「フワフワしてて……よくわからないんです」
「よく分からない?」
よく分からないという発言こそ、よく分からない話だった。
「色々あり過ぎて……」
「あー、なるほどね」
現状に心が追い付いていないと、そういう気分になる事はよくある。
「暇だな」
「え?」
「時間があると人間ってのはとにかく気になった事を考えがちだからな、仕方ない」
「……そうなのかな」
「とりあえず昼飯食ってから……うん、そうだよな」
さっき、なんで夕飯から先に聞かれたんだ……?
「……ぅっ?」
「あぶなっ」
あまり着慣れていないためか、ソフィアはドレスを踏ん付けてすっ転びそうになっていた。勢いよく花瓶に突っ込む寸前でなんとか受け止めたけど、本当にドレスとか着る必要あった?
「ご、ごめんなさい……」
「ちょっと歩くの早過ぎたな、こっちこそごめん」
「……あんまり着慣れてないんです、こういうの」
「着慣れてる方が一般的じゃないから気にしなくていいよ。いや本当に」
ドレスを着慣れている奴は身近にいるけど、着ていく場所が場所だからか別人格みたいになる。つっても親父の後ろにくっついて微笑むのが仕事らしいから、いざ話せって言われたらダメダメなんだろうな。
可愛過ぎて食べたい。
「アキヒロー! 私のことを変だって言ったなー!」
ちょっと馴れ馴れしくなった少女が突撃してきた。
いいよいいよ、そういうのでいいよ〜。
「昼ごはん何?」
「シチューの包み焼き!」
パイ生地で包んで焼く感じか。
──────
「……あ」
「お姉ちゃんもお昼ご飯?」
「…………なんでいるの?」
吹雪ちゃんは
何せ、俺と目を合わせた瞬間から嫌そうな表情を隠しもしないんだから。
「吹雪様も、そろそろ一般の方と知り合う機会があるべきだと思っていたところです」
「別に……こんな人たちと話したところで何も変わらないよ。どうせ今日以降は人生交わらないんだし」
「吹雪様」
「あの服だってウチのだし……なんのために呼んだの? お父さんのお妾さんでも作るの?」
うおっ、すっげえヘイトスピーチだ! 金持ち特有のナチュラル見下しには参っちゃうねこりゃあ!
「ちっ……」
「ネルさん落ち着いて〜」
「もう帰りたくなってきたんだけど」
「いけるいける! ネルさんならいけるから! 帰らないで一緒にご飯食べよう! な!? せっかく美味しいご飯が食べられるんだからさ!」
も〜、すぐ拗ねちゃうんだから!
「なんで招待された先でガキに悪態つかれなきゃいけないわけ? 気分悪……偶々金持ちの家に生まれただけのクセに、よくもまああそこまで威張れるよね」
拗ねるどころじゃない!?
さっきは俺にごめんなさいしろとか言ってたくせに!
「それはそれ、これはこれじゃん」
良い言葉だ! 本当に!
「私あの子と喋りたくないから任せるね」
ご飯だって言ってるのに初っ端から雰囲気が悪くてソフィアとコユキちゃんがオロオロしてるよ。シエラは吹雪ちゃんを軽く嗜めるくらいで、それ以降は壁際で石像みたいに固まってるし……ここは俺が一つ、やってやるしかないか……!
「えー、この度はこのような場を開いていただき──」
「カガミくん、ステイ」
「ネルさん! 場の空気を盛り上げようと俺はね!」
「…………ん」
「ん? ──あ」
人差し指の差した先。廊下につながる扉から光が漏れ出ていた。
入ってくるのは女性が2人。
1人は三歩後ろに控え、もう1人は穏やかな笑みを湛えて先に歩みを進めた。黒髪で、どこかの姉妹とよく似た目鼻立ちの──
「楽しそうな声が聞こえてきましたわ」
座ろっか!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない