【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
部屋に入ると、ネルさんが何故かシエラに泣きついていた。
「もっどもっでぎでえええ!」
「ほら、お眠りなさい」
「やらああああ! おざげのみだいいいい!」
「そう言わないで、一旦寝なさいもう……まだお昼なのに困った子ねえ」
「……今、わらひのことめんどくさいっていっら?」
「言ってませんよ……ああ、カガミさん!」
見つかった。
シエラは嬉々として俺の背中を押し、ネルさんの前に立たされた。
「なんとかしていただけるかしら?」
「なんかとするっつっても腕が……」
「え?」
シエラはネルさんの看病をしていたから知らないの無理ない。だけど、この腕じゃあ何をするのも不自由で、言われたことすら熟せそうにはなかった。
説明すると、得心がいったと何度も頷く。
「それでこちらにいらっしゃったのですね。私はてっきり……」
「え? なんですか?」
「なんでも」
「…………え?」
メイドさんを見ると、照れくさそうに頬を描いていた。キミは本当に関係ないよね。
「回復薬でしたらご自由にどうぞ。こちらの不手際で負傷したのですから……本来は先に言い出すべきことでした。申し訳ございません」
「いえ、それよりもネルさん見ていてあげてください」
「……何というか、歳の割には随分と落ち着いてらっしゃいますよね。先ほどから思っていましたが」
「歳の割にはヤンチャな方だと自覚してます」
「……ある意味で、でしょう?」
「いえ、本来の意味で」
「?」
とりあえず回復薬を受け取ることはできた。
「メイドさん、お願いします」
「はい」
左手で掴めば飲めないことはないけど、腕にかけようと思ったら流石に厳しいのでお願いすることにした。腕にかけたら全ての液が経皮吸収されるわけではなく、ぼたぼたと下に落ちていく。
「土なら多少溢れても大丈夫でしょ」
「はい!」
「……くっ」
「ひっ」
鋭い痛みが腕を襲った。
回復薬をかけたことによって腕が治っていく代償だ。
「い、痛いですか? それならゆっくり……」
「ゆ、ゆっくりやると痛みが引き伸ばされるから一気に!」
流石に痛みを長々と味わっていたい気質ではないので、チャチャっと済ませてもらった。
「はぁ〜……まだ治んねえ」
「結構酷かったんですね……」
「レベル45のモンスターの皮を簡単にぶっ壊せるほどの威力だったからな」
「……怖くないんですか?」
「え?」
「その……あの女の子のこと……」
メイドがするには出過ぎた質問で、仮に友達がするにしても心が随分と離れた質問だった。メイドであると言っても、まだ若く、そして経験も浅い。心中に収めておくべきそれをわざわざ口に出してしまったのは、俺に対して多少は心を開いてくれているからということにしよう。
「怖いなんて感情を抱いたことはないかな」
「どうしてですか?」
「出会って数日だもの」
「これから怖いって思うってことですか?」
「まだ起きてない事を否定するのは無理だけど……怖いって思うことは多分ないかな」
「なんでですか?」
「はは…………良い学者になりそうだ」
質問が好きなのだろう。
そこに悪意は感じず、純粋な疑問に満ちた視線がこちらを向いていた。
「あ──す、すみません! 質問ばっかりで!」
「いいよ。でも……ソフィアに質問するのはやめてあげてくれ」
「なんでですか? ……あ、いやちがくて……!」
「質問するのがクセになってるんだな」
「はい……」
回復薬をぶっかけた後は暫くのんびりしていたんだけど、当主代理に再び呼び出された。
「怪我を負っているのにすぐに呼び立てて申し訳ありません」
俺のような小僧に対して、随分と下に出るものだ。顎で使われる可能性すら考えていたってのに。
「彼女の異能のことでひとつ相談がしたいの」
「まずは話を聞いてからということで……」
「──そういうところよ」
「は──」
「あなた……不自然なほど形式に慣れているわ。貧乏というのは建前なのかしら?」
しまった。本職の相手に中途半端なビジネス精神を提示したのがよろしくなかったか。しかしこんなときのことも考えている。
さすがアキヒロくん。
「実は幼馴染が大金持ちで、そこからいろいろ学んだんですよね」
「大金持ちなら私が知っている相手かもしれないわね」
「知らない人の方が少ないでしょうね」
「そんなに? 誰かしら……あ! 言わないでちょうだい! 自分で当てたいから!」
あーでもないこーでもないと悩んだ挙句に彼女が提示した答えは──
「一ツ橋さん!」
「違います」
誰ですかヒトツバシさんって……フタツボシでもミツバでもないですから。
「えー……じゃあヨツカド家?」
「うーん」
そこで当たるのかよ。知らない人の方が少ないって言っても、本当に当ててくるとは思わないじゃん。
「誰かしら……もう本当に分からないわ。直感的にここら辺以外だと思いつかないし……」
人間ってのは大抵同レベル帯の収入の人間と同じところらへんで生活したがるから、金持ちの世界ってのは自然―のは嗅覚が優れていると言わざるを得ない。
「教えてちょうだい!」
「個人情報なので残念ながら」
情報社会だったら速攻で調べ上げられていたんだろうけど、インターネットが貧弱の貧弱でよかった。金持ちパワーで家まで張り付かれたらどうしようもない。やはり権力か……
「はぁ……まあそうよね」
「そうわよ」
「んぶっ……! ちょ、っと! んふふふふふ!」
お上品な笑い方だこと。
「──まあいいわ。んふっ…………あなたの振る舞いはそうなのね」
「ええ」
「そしたら本題なのだけれど……彼女にしばらく協力してもらいたいのよね」
「それは……うーん……俺じゃなくてソフィア本人に頼んでください」
「んむぅっ! 浅いわよ!」
「!?」
「ソフィアさんに聞けと言いつつ、なんだかんだであなたが決めるんでしょう? それなら最初からあなたに聞いた方が早いじゃない!」
人のことを何だと思っているんだ。ソフィアは俺の奴隷でも部下でも子分でも何でもないんだぞ。
「あなたは良い人なのでしょうけれど…………この世で一番タチの悪い男だわ」
人のことを何だと(以下略
「本当は気付いているクセに、決定権という最も責任の重い部分だけは彼女に押し付ける。彼女の決定によるものだと、彼女自身に思わせるために」
「…………それが?」
「納得させることを放棄しているわね?」
「他人を言葉だけで心の底から納得させるなんてことはできませんから。それならまずは動いて先に道を歩いてみせた方が、選びやすいでしょう」
「…………参ったわ。その通りね」
「そもそも俺がしているのは、彼女に責任を押し付けてやるって話じゃなくてですね……大事な話をするならせめて彼女を同席させろってことですよ」
「はぁーい……って、言葉で私を納得させているじゃない!」
ソフィアは部屋で1人、ベッド端に座っていた。部屋に入った瞬間はどことなく寂しそうだったのが、扉が開く音に反応してこちらを見て強張りが和らいだような気がする。そんな彼女に雪さんは協力の話を打診した。アイテムの譲渡や金の話をしたが──
「協力……でも、また誰かを凍らせたら……次こそ……」
「そこを何とかするのはこちらの仕事ですわ。あなたには何の責任も発生しません」
「…………ごめんなさい」
「そう──仕方ないわね」
協力はナシ。
また振り出しに戻るようなものだけど、コウキさんと連絡が取れたら何かわかるかもしれない。学校? ああ、アイツはもう死んだよ。休学するかもって連絡はしてあるから問題ない。ミツキからの鬼電も学校前や終わりの時間にちょくちょく来るけど、俺の学歴よりもこっちの方が流石にね?
「それなら、せめて私たちのアイテムの実験でも見ていってちょうだい」
「え?」
「一回とはいえ手伝ってもらったんだから、それくらいはいいでしょ? ねっ?」
企業の裏を覗き見ることができる──これが仮に本当のビジネスであれば、相当に関係値を築いていないと有り得ないことだ。破格と言ってもいい。
しかし、ソフィアにはその意味はうまく伝わっていないだろう。
「……?」
なぜ、手伝ってあげたのに|もう一個追加しなければならないのか《ワザワザ興味無いものを見なければいけないのか》と首を傾げていた。これは言い方の問題でもある。
「あ、あら……探索者であれば誰でも飛び付いてくるのに……」
「ええと……」
「見るくらいなら良いんじゃないか?」
ちなみにこれは納得がどうとかじゃなく俺が見たいからです。
「じゃ、じゃあそうします」
ソフィアもよく分かっていないのか、とりあえず賛同してくれた。
「流石に明日以降の話ですよね?」
「そうわよ!」
「早速使いこなすとは……中々やりますね」
「ふふ! まだまだ若いもの! ……ちなみに今のは若い子の間で流行ってるのよね?」
「いえ、俺が適当に使ってるだけです」
「え…………?」
若さってなんだろうね。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない