【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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20_朝の準備

「ああ……みんなも連れてきたかったな……」

 

 イブルナイトローズの庭木の迷路内に足を踏み入れた俺の周囲は、薔薇のシャンデリアから漏れる光で穏やかなライトアップとなっていた。こんなのを見られるなら家族を連れてきても良かったかもしれない。もちろん予算は無視しての話だけど。

 

「──こんなの、見慣れればただの花でしょ」

 

「はえ?」

 

 なんと、足音すら立てずに吹雪ちゃんが付いてきていた。

 

「変なことしないか、一応監視」

 

「さいですか」

 

 彼女も暇だから出てきただけってことだ。

 

「……本当に花見るだけなの?」

 

「花を見たいわけじゃないけど……今は花だな。ほら、光が霧で乱反射して綺麗だろ。吹雪ちゃんはそういうのわかんない?」

 

「わかるけど興味ないだけ」

 

「ははっ」

 

「……なに?」

 

 一言で矛盾しているということに気づいていないのか、それとも深いところでは分かった上で無視しているのか。彼女をメイドさんのように従えてしばらく空と花を観察していたら、飽きたのかタンタンと足踏みを始めた。

 

「ねえ、いつまで見てるの? っていうか空向いて何してんの?」

 

「月を見ていた」

 

「……は?」

 

「見えないか? 雲の向こうに黄色く輝く月の姿が」

 

「見えるわけないじゃん、霧があるんだから有視界距離なんてせいぜい数十mでしょ」

 

「その奥にあるのさ」

 

「そもそも月の色は紫だよ」

 

「俺には見えるんだ。空に浮かぶ黄色い月がな」

 

「危ない薬とかやってない?」

 

「ふっ……本は読まなくて良いのか?」

 

「気分じゃない」

 

「なんの本なんだ」

 

「教えない」

 

「学校には行ってるのか?」

 

「あんなのバカが行くところじゃん」

 

「そうか? 俺みたいなのもいるぞ」

 

「合ってるじゃん」

 

「はっはっは!」

 

「な、なに?」

 

「良いツッコミするなと思って」

 

 頭を使わずに反射で会話をしていたら、自然と頭の機能が低下してきた。だんだんとぼんやりとしていく視界と意識。猛烈な眠気が襲ってきた。

 

「ふぁ〜……じゃあ、寝るから」

 

「…………」

 

 金持ちというのはどいつもこいつも素晴らしい庭を持っているものだな。

 

 

 ──────

 

 

「ん……」

 

 目を覚ますと、素晴らしく寝心地の良いベッドの上でした。やっぱ野宿ってクソなんだ……硬いし、体にフィットしないし、寒いし、虫がいるし、金がかからないこと以外に良いことが何にもない。

 

「くぁ……!」

 

 伸びを一つしてから起き上がった。広いベッドで寝るなんていつぶりだろうな。リアルにチビの時以来じゃないか? 家にあるのは大きいベッドじゃないけど、俺がガキで小さいから相対的に広かった。

 

「はぁ……お目覚めのチューでも欲しいわ」

 

「え……?」

 

「!?」

 

 すごくビックリした。

 ビックリして余韻の眠気がどっかにいった。

 

「なんでいるの……?」

 

「あ、朝なのでお越しに来たんですけど……すごくよく眠っていたので……」

 

 どういうこと? 

 これ俺がおかしいの? 

 寝ぼけてて彼女が言ってることうまく理解できないだけ? 

 

 朝だから起こしに来たっていうのは、まあ分かる。いや、正直よく分からないけどメイドさんだからそういう仕事もあるのかな、と受け止められる。よく眠っていたから待機したのは何? 

 

「起こしたら悪いかなって……」

 

 男の子の部屋に朝来るのはタブーだってメイドさんは学ばないのか? 俺も若いから元気になってますよ、布団で隠されてますけど。

 

「こうして起きたから、とりあえず大丈夫だよ」

 

「じゃあ外で待っておきますね」

 

「なんか悪いね」

 

「いえ〜……お目覚めのチュー……」

 

 掘り返すのやめよっか。

 

「おはよ」

 

「ネルさん、おはよう」

 

「……うわ、なんか男の子だ」

 

「男の子ですけど」

 

「寝起きはすっごい男の子」

 

「いつもは?」

 

「目つきの鋭い男の子」

 

 何が違うんですかねそれは。

 

「ぐっすり眠れました?」

 

「それ私のセリフ」

 

「俺はぐっすりでしたよ」

 

「私は部屋に戻ったら一瞬で意識無くなっちゃった。そこに戻るまでもあんまり記憶ない」

 

「ご飯食べてる時は楽しそうでしたね」

 

「今も楽しみ!」

 

「……胃もたれとかしてないんです?」

 

「ねえ、私のことおばさんだと思ってない?」

 

「あんだけ食べたら若くてももたれるでしょ」

 

「……実はちょっとだけね? でも、食欲はあるよ」

 

 可愛い。

 

「ソフィアは……きた」

 

 よかったよかった、俺の心配は杞憂だったみたいだ。今日は……今日こそぐっすり眠れるかな。

 

「おはようソフィア」

 

「ソフィアちゃんおはよ」

 

「おはようございます」

 

「ソフィアちゃんはちゃんと寝られた?」

 

「──はい」

 

「? ……とりあえず朝ごはんだし食べよっか!」

 

 ユキさんは深夜まで会議だったらしく、まだ寝ているようだ。コユキちゃんは既に隣にいる。フブキちゃんは1人で部屋で食べるらしい。

 

「ねむーい……」

 

「ほら、そんな姿勢だとご飯食べられないぞ」

 

「お嬢様?」

 

「やー……」

 

 すかさずインターセプトしたシエラが椅子の後ろから圧をかけているが、眠気が勝るのか俺の腰にしがみついて離れない。金持ちらしくサラサラの髪を撫でていると本当に寝落ちしそうだったので肩を押して椅子にまっすぐ座らせた。

 

「ほーら、シエラおばあちゃまが後ろから見てるぞー」

 

「…………加賀美様?」

 

「ほら! 見られてるぞ!」

 

「うあ〜」

 

 頭が据わっていない。肩を揺らすとガックンガックンと揺れるので怖すぎてやめた。

 

「コユキちゃん、ご飯だぞ」

 

「加賀美様、あまり甘やかしすぎるとお嬢様がダメになってしまうのですが」

 

「女の子は少し甘やかしすぎるくらいがちょうど良いんです」

 

「一般家庭はそうかもしれませんが、ここは深山家ですので……」

 

 あんまりやり過ぎるとまた怖いお父様の襲撃があるかもしれないのでほどほどにした。コユキちゃんは相変わらずフニュフニュ言ってるけど、そのうち起きるだろ。

 今日はシェフが俺の舌にも合うように作ってくれるっぽい雰囲気あったので楽しみだ。

 

「いただきます」

 

「…………?」

 

「……加賀美さん?」

 

「アキヒロどしたの?」

 

 テンションが上がっていたのと朝ということで、いただきますをほぼ初対面の人間に披露してしまった。お陰で室内がハテナの嵐だ。

 

「あー……俺んちではこういう風習があんのよ。ご飯を食べるときは手を合わせて、食材の元になった生き物たちに感謝を込めていただきますっていうね」

 

「ふーん」

 

「そうなんですね」

 

「え、じゃあ私もいただきますした方がいい!?」

 

 コユキちゃんだけ若干乗り気だった。

 スルーして欲しいかな、どちらかというと。

 

「変な目で見られること多いから、コユキちゃんはやらない方がいいよ」

 

「いただきます!」

 

 いただきますの手というか、等価交換する時の手だった。

 

 

 ──────

 

 

「昨日は結局半分くらいこの家にいたから、今日は外をまた探そっか」

 

「うい〜」

 

「なんか雑じゃない?」

 

「長丁場になりそうなんで、気を張っても意味ないかなと」

 

「私一応お仕事あるんだけど……長丁場ってどれくらい?」

 

「このままのペースだと一生かかりそうじゃないかなあと、ふんわり思ってたり」

 

「ちょっと待って……キミ、本気でそれ言ってる?」

 

「甘くなさそうじゃないですか。俺は探索者じゃないんで詳しくないですけど、レベル45って相当なモンスターですよね? その素材がぶっ飛んだんですから」

 

「…………ふぇ?」

 

「あ、そっか。酔っ払ってましたもんね」

 

「な、なになにどういうこと? 何がぶっ飛んだって?」

 

 ソフィアの話をしている最中、顔が青ざめたり赤くなったりで忙しそうにしていたが、聴き終えると絞り出すようにして同意した。

 

「それは……長丁場になりそう……!」

 

「……ごめんなさい」

 

「あ、ち、ちがうよ。ソフィアちゃんに文句が言いたいわけじゃ……」

 

「…………」

 

 気まずい雰囲気を漂わせる女子2人は時間に任せるとして、どこに行こうかしら。

 

「アキヒロみっけ!」

 

「お、コユキちゃん」

 

「どこか行くの?」

 

「ちょっと街の様子見てくる」

 

「ふーん……帰ってくるよね?」

 

「たぶん」

 

「絶対!」

 

「じゃあ絶対」

 

 そもそも荷物を部屋に置いているので、戻ってこないわけがない。戻ってこないとしたら死んだか誘拐されたかのどちらかである。

 

「はー、背中が軽いこと!」

 

「ずっと荷物背負ってましたもんね」

 

「野宿用の荷物がほとんどだったけどな」

 

「加賀美さんは、元々なんの目的でここに来たんですか?」

 

「金を稼ぐためのヒントを探しに来た」

 

「お金を稼ぐヒント……?」

 

「俺、めっちゃお金が必要なんだよ。どうすれば集まるかなーって」

 

「お金が必要……何にですか?」

 

「俺の夢」

 

「──加賀美さんの、夢」

 

 思案気味に顔を俯かせたソフィアと対照的に、ネルさんはハッキリと口を開いた。

 

「加賀美くん、夢とか持ってたんだ」

 

「はい?」

 

「冷めてそうだから夢とかないのかなって」

 

「──」

 

 あまりに失礼すぎて一瞬反論ができなかった。

 

「冷めてないし、夢も普通に持ってます。情熱に満ち溢れてるんですよ──若いんでね!」

 

「…………」

 

 なんでそんな嫌な顔するんだ! 事実じゃないか! 若いのは事実じゃないか! 

 

「何でかわかんないけど寒々しい」

 

 これから街角探訪なのになんでそんなテンション下がるようなこと言うの……なあソフィア、もっと楽しくなるようなこと言ってくれた方がいいよな? 

 

「あ、はい」

 

「そういうのやめなー?」

 

 うーんバラバラ。このまとまりのない集団で本当に何とかなるのか……いや、何とかする! 

 

「さあ! いくぞ!」

 

「ちょくちょくテンションが異常に高くなるのは何かの病気(アレ)なの?」

 

 聞こえてるからね? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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