【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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22_適応力◯

「あー! いた!」

 

「ただいまミツキ」

 

「んぐっ……ご、誤魔化されないよ! ちゃんと説明してよね! こんなところにわざわざ来たんだから何かあるんでしょ! そもそもソフィアってだ……れ…………?」

 

「この子がソフィア。ソフィア・エメリッヒだ」

 

「女だー!?」

 

「そりゃ女だろ」

 

「ありえないよ!」

 

 名前からして女なのは明らかなのに何を言っているんだ……

 

「おかしい!」

 

 こんなに元気な姿を見たのは一緒に服を買いに行った時以来──つまり1ヶ月ぶりぐらいだ。しかし元気は元気でも負の元気。ソフィアの事をジロジロと見て、値踏みしているような失礼な視線を向けている。

 

「あ、あの……?」

 

「…………」

 

「あの……アキヒロさん……」

 

「アキ……ヒロ……さん……!?」

 

 困って俺に助けを求めてきたソフィアの発言を耳にして、まるで電気ショックを喰らったかのように顔をひくつかせている。挨拶もしてないのに本当にどうしちゃったんだよ。

 

「ミツキ、少し落ち着け」

 

「はっ!? ……こ、これが落ち着いていられますか!? いいえ!」

 

「落ち着いていられます」

 

「こんなのおかしいよ……」

 

 何を言ってるのかさっぱり分からないミツキは、やがてソフィアが初対面ということに気付いて背中に隠れてしまった。お前……

 

 ソフィアとミツキの顔合わせは、お世辞にも良いものとは言えなかった。連れてきた場所が学校終わりの高校の近くというのもあまり良くなかったのかもしれない。

 家だったらもう少し落ち着いていたかな。いいえ。

 

「ふしゃあああ!」

 

「ミツキ」

 

「っ……こ、この歩く擬似餌!」

 

「おいこら、語呂も悪いぞ」

 

「……か、かえれー! アキは渡さないぞ!」

 

「おい」

 

「いきなりやってきて泥棒しようなんてアキが許しても私が──あにゃああああ!」

 

 喚き散らしてうるさいので団子にした。

 団子を抱えてソフィアに紹介する。

 

「ごめんソフィア、こいつ人見知りなんだ」

 

「は、はあ……」

 

「名前は四門美月。大金持ちだ」

 

「幼馴染さん、なんですよね?」

 

「うん」

 

「…………面白い方ですね」

 

「まあな。それと……生まれた時から暴走した異能を持ってる」

 

「!」

 

「この髪色」

 

「えんじ色?」

 

「そうだな。これが日によってドブ色になったり鼠色になったり鈍色になったりする」

 

「…………」

 

 しょぼい、と思っているのが顔に出ていた。それもその筈、ソフィアの異能に比べたら実害は驚くほどに小さい。しかし、生まれた時から異能を持っている人間を俺は2人しか知らなかった。

 

「ソフィア、もしかしたらコイツの親父に聞けば何かわかるかもしれない」

 

「親父って……あの時の髪型がすごい人ですよね?」

 

「!」

 

 ミツキが勢いよく顔を生やした。

 

「お父さんと会ったの!?」

 

「ああ、第1セクターでな」

 

「ちゃんと伝えてくれたんだ……ちょっとだけ見直したかも……あ、あとさ……」

 

「おう」

 

「その……」

 

「おん?」

 

「……や、やっぱ何でもない」

 

 モゾモゾと腕の中で動いて体勢を変えると、これで良しと言わんばかりにお姫様抱っこの状態になった。

 

「むふ〜」

 

「ソフィアいるんだけど」

 

「いーもん」

 

「……ソフィア、ウチに行こうか」

 

「!?」

 

 ウチに連れて行くと聞いてから、またこの幼馴染は俺に向かって狼だとか連れ込み宿だとかボロ宿に人なんか泊まれないとか、散々にこき下ろしてくれやがった。煩いので置いて帰ろうかとも思ったが、気配を察して泣きそうになっていたので流石に出来なかったよ。じゃあ実家に送り届けるか……というのも出来なくて、連れてかなきゃ襲われたと叫ぶだなんて言いやがった。

 かつてと比べて肉体が大分曲線的かつ肉感的になってきたこの少女が襲われたなどと叫べば、本当に俺が襲ったと勘違いされかねない。目付きが鋭い、と高校では言われることも多いので俺の初対面の印象は良くないのだ。

 

 

 ──────

 

 

「ソフィア・エメリッヒって言います! よろしくお願いします!」

 

「僕は加賀美エリック。ソフィアくん、コウキくんから話は聞いているよ。まさか観光先でそんな事になっていたなんてね……ウチは狭いし汚いと思うけど歓迎するよ」

 

「は、はい!」

 

 父さんは特に動揺する事なく受け入れた。まあこの人はそういうところがある。何が起きても基本的にブレないから、柱としてはバッチリだ。大黒は付かない。

 

「本当に連れてきたの!? ウチに!?」

 

「あ、あの……」

 

「ああ、ごめんね騒がしくて……びっくりしちゃって! うちのバカ息子が何か失礼な事してない? 目を離したらすぐに突飛もない事をするし、エメリッヒさんも巻き込まれたんでしょ?」

 

「そういうわけでは……」

 

「いいのいいの! 分かってるから!」

 

 信用のしの字も無いよね。

 

「アキの実績だよ完全に」

 

「余計なことを言う口はこれか〜?」

 

「やめへよぉ」

 

「…………」

 

「むへー……おかえしだ!」

 

「あ、この!」

 

 背中にしがみついたミツキを何とか剥がそうと頑張っていたらアカネがやってきた。

 

「……はじめまして」

 

「あ、初めまして……」

 

「……それじゃあ」

 

「う、うん」

 

 ぎこちなっ! 

 いや、でも偉いぞ! ちゃんと挨拶できたんだからな! 

 

「アカネ」

 

「……」

 

「いいね!」

 

「はぁ……」

 

「!?」

 

 とりあえず荷物を置いて、さあ次だという段階になって問題が一つ判明した。

 

「ソフィアの身体に合う下着が……母さんのしかねえ……!」

 

「うう……」

 

 ソフィアの胸はすでにある程度育っている。これは別にジロジロ見ているとかそういうことじゃなくて普通に見てればわかることなので、決してセクハラには該当しません。肌につけるモノを選ぶのはデリケートな問題だからこそ積極的に議論するべきであり、快適に過ごすためにも避ける事は間違っている。

 

 だから……そこで腹を殴るのは違うと思うんだ。

 

「ミツキ、やめて?」

 

「ふん、ふん、ふん、ふん」

 

 1発1発に意識を込め、腹を突き破らんと渾身の力を込めて放たれる一撃。いくら彼女が細腕で、俺が鍛えているとはいっても鳩尾などに入ればノックダウンもあり得る。

 

「ミツキ」

 

「…………ばか」

 

 今度は動かなくなってしまった。

 

「仲、いいんですね」

 

「小学校からの付き合いだからな」

 

 背中を撫でると、拒絶するように手を払われた。ソフィアが来てからちょっと様子がおかしい気がする。あれだ、幼馴染を取られたと思って不安になってるんだな。そんなわけないのに。

 

「この世界で一番仲がいいのはミツキだよ」

 

「そ、そうなんですね」

 

 引かれてしまった。

 何でわざわざ口に出したんだろうと思っているのかもしれないが、そうでもしないとお姫様が機嫌を直してくれないんだから仕方ない。

 

「どうしようかな……」

 

 今日はとりあえず母さんの服を着てもらうとして……明日以降が問題だ。

 

「あの、わたし別に気にしないですよ」

 

「うーん……あ、そうだ。ミツキのでいいじゃん」

 

 胸の大きさはちょっとアレだけど身長は大して違わないし、どうせウチに置いてあるんだから活用させてもらおう。

 

「やだー!」

 

「お前は俺の着てればいいだろ」

 

「! …………え、ええ〜……いや、でもぉ……」

 

「前は散々着てたんだから今更だろ」

 

「小学生の時の話でしょ!」

 

 川で水遊びなどするときは大抵着替えを忘れるので、俺の服を貸していた。男なんざ上裸で十分だ。

 

「良いだろ? ソフィアは困ってるんだよ、助けてやろうぜ」

 

「…………しょうがないなあ」

 

「はい、ありがとうございまーす」

 

「あー! 騙したな!」

 

「何を騙したんだよ」

 

「それは…………あれ?」

 

 ほいでミツキは今日もうちに泊まってくんかい? 

 

「え? うん」

 

「…………」

 

 狭くね? 

 俺の部屋で寝るにしても2人が限界だぞ。

 

「ソフィアちゃんはアカネちゃんの部屋でいいんじゃない?」

 

「私、どこでも大丈夫です。でも……アカネちゃんはいいんですか?」

 

 それは聞かないと。

 

「──ヤダ」

 

 けんもほろろ。

 

「そこを何とか……」

 

「お兄ちゃんが勝手に連れてきて、なんで私が譲らないといけないの?」

 

「人助けだからお願いだよ」

 

「…………助けたいと思ったのお兄ちゃんなんでしょ?」

 

「まあ……そうだなあ……」

 

 母さんも加勢してくれた──が、あまり良くない雰囲気だ。

 

「アカネ、泊めてあげなさい」

 

「ちっ」

 

「アカネ!」

 

「いっつもそうだよね! お兄ちゃんばっかり贔屓してさ!」

 

「贔屓とかじゃないでしょ! 困ってる人がいるのに何で自分ばっかりなの!」

 

「っさい!」

 

 扉はピシャリと閉められた。

 

「…………はあ」

 

 こうなるのは分かっていた。

 一応聞いてみただけだ。

 

「母さん、俺が悪いよ実際」

 

「…………」

 

「アカネにキツく当たるのはやめてくれ。思春期ってのは誰だってこうなるんだ。母さんだってそうだったろ?」

 

「……アンタはどの立場で言ってるわけ? よく分かんないんだけど」

 

「ソフィアはミツキと一緒に俺の部屋で寝させるよ。それでいいだろ?」

 

「自分はどうなのよ」

 

「俺はテントで」

 

「……じゃあ、代わりにお父さん外で寝かせるからアンタは中で寝なさい」

 

「そういうの良いから」

 

 夫婦は仲良く同じ部屋で寝てください。

 

「──やっと寝たか」

 

 家のすぐそばで野宿というのは体験がなかったけど、なかなか悪くないかもしれない。弾ける火の粉が霧と相殺して水蒸気を散らすのはいつまでも見ていられる。

 先ほどまで家から漏れていたわずかな明かりが消えたので、おそらく全員が寝たのだろう。

 

「アキ……?」

 

 全然寝ていなかった。

 

「寝られないのか?」

 

「うん」

 

 何とも白々しい顔だった。

 来る気満々だったもんな。

 

「なにしてるの?」

 

「火を見てた」

 

「……なんで?」

 

「暇つぶし」

 

「ふーん」

 

 興味なさげに腰を下ろしたかと思えば、ちょこんと丸太に腰掛けて木の枝で焚き火を突く。ミツキが着ているやや大きめのシャツは左肩にかかるようにして乗っかっている。ともすればドギマギさせられそうな風体になっていた。

 

「懐かしいなあ……」

 

「そうだな」

 

「昔はこうやって外で焚き火したよね」

 

「コウキさんの持ってきたお菓子焼いて食ったな」

 

「そう!」

 

 楽しそうな顔をするミツキに、しかし言わなければならないことがある。

 

「ミツキ」

 

「は──」

 

「真面目な話なんだけど、いいか?」

 

「──こ、このタイミングで……!?」

 

「え? まあ……そうだな」

 

「ちょ、ちょっと待って……」

 

 前髪が気になるのか整え始めたミツキを待つと、やがてOKサインが。

 

「どぞっ」

 

「……そんな身構えなくても良いけど」

 

「そ、そうかな……?」

 

「おう」

 

「っ!」

 

「……明日学校行った後、お前んち行っていい?」

 

「……………………は?」

 

「いや、だから明日お前の家に──」

 

「はぁぁぁぁぁ〜……」

 

「ダメか?」

 

「良いけどさあ……はぁ……」

 

「ダメならダメって言ってくれよ」

 

「良いって」

 

 それなら何がそんなにダメなのか教えて欲しい。こっちだっていきなりだってのは分かってるんだから。

 

「そもそも、来たければ勝手に来ればいいじゃん」

 

「俺1人じゃねえから」

 

「…………あの子、可愛いよね」

 

「ああ!」

 

「…………」

 

「もちろんミツキの方が可愛いぞ」

 

「……そんなとってつけたように言われても嬉しくないもん」

 

「口、ニヤケてんぞ」

 

「──!」

 

「いてっ」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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