【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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24_俺の幼馴染のパパは凄いんだよお?

 

「カガミくんは放課後、先生のところに来てください」

 

「はい」

 

 早く帰りたかったのに……

 

「かわいそーw」

 

「一緒に来てくれるのか」

 

「んなわけ」

 

 俺のクラスメイトは冷たい。友達なら一緒に怒られてくれても良いだろうに、全く興味なく教室を出て行った。しかしこれも一般的な価値観に照らし合わせれば当然の罰というやつなので、甘んじて受け入れるしかないのだ。ミツキのお手本としてな。

 

「……一緒に来なくて良いのに」

 

「いいの」

 

「関係ないのが来たら先生困惑すると思うんだけど……」

 

「いいの!」

 

 俺がいない1週間の間に友達とか作ってたかな、なんてちょっと期待したりしたけどやっぱり俺の幼馴染は変わらなかった。でもこのまま成長していったらいつのまにか俺の知らないところで友達を作って、彼氏を作って、結婚して……いくんだろうなあ。

 寂しいなあコウキさん。

 なんで俺は幼馴染の父親の視点を同時に味わってるんだろうなあ。あんたより辛いよ俺。

 

 しかし、寂しいものは寂しいのでミツキと手を繋ごうと手を伸ばし、指先に触れた。

 

「ひゃっ!」

 

 払われた。

 

「泣いてもいい?」

 

「し、知らないよ! ……なんでこんなところで手繋ごうとするの! アキのせいだからね! 変な声出ちゃったの」

 

「いや……俺は手を繋ぎたかっただけで……」

 

「だから! 幼馴染はそんなことしないって!」

 

「!? ──な、何があったんだミツキ!」

 

「へぇっ」

 

「この間まで手繋いでたじゃないか! なんでいきなり……」

 

「そ、そんなの中学校の頃でしょ!」

 

「だからこの間じゃ……」

 

「数ヶ月前のことはこの間って言わないの!」

 

「かっ……! ぁっ……!?」

 

 数ヶ月前のことはこの間と言わない──なんという時間感覚! これが若さか!? ……いいや、そんなわけはない。若さとはすなわち脳の柔軟性! 俺の脳みその若さならばミツキと同じように感じられるはずだ! 

 感じろ! 

 ダメっ感じちゃうんって言ってみろ! 

 

「んんっ!」

 

「はっ!?」

 

「待ってたのに何してんの?それと……四門さんは早く帰りなさいね?」

 

「先生、数ヶ月前はこの間ですよね」

 

「え? うん」

 

 ふぅ、落ち着いた。

 

「──何か心配事でもあるの?」

 

 俺を面談室に連れ込むなりそんなことを言い出した。なんだろうこれは。昼間はスルーしたと思ったけど、どうやらそうではなかったようだ。

 

「また学校が始まって間もないのに……」

 

「誤解です。俺は旅行が好きなんです」

 

「そんなわけないでしょ、貧乏なのに」

 

 俺じゃなかったら憤慨して飛び出すような物言いが飛び出した。それからも、やれ子供が1人で列車に乗るなだのもしも列車が襲われたらどうするだの、4千年前に通り過ぎたような話をいつまでも聞かせて来る。

 

「モンスターがいなくても探索者に襲われるかもしれないし、そもそもそうやってお金を無駄に使ってるから貧乏なんじゃないの?」

 

 あまりにも突発的に飛び出した、ごく自然な見下し。

 

 危うい。

 それが感想だった。

 彼女は暴言を吐いたらお返しに殴り殺されるという場面を見たことがないのだろう。教職につけるという事はこの世界において上位の教養があり、良き親と良き友に恵まれ、道をブレる事なく走り抜けて来た幸運を持っている。

 それ故に想像ができないーーまあ、馴染み深い日本人の性質と同じだ。

 

「そういう態度で望んでくるなら、それ相応の覚悟を持っているという事ですね?」

 

「え?」

 

「あなたがどれほど素晴らしい教師か、コウキさんに伝えておきますよ。娘を預けるに値する尊敬すべき教師だと、ね」

 

「──!」

 

「失礼します」

 

「あ…………ま、待って!」

 

 声を無視してドアノブに手をかけると、勢いよく駆け寄ってくる足音が聞こえた。

 

「ごめんなさい! 本当に、そんなつもりじゃなかったの!」

 

「つもりがなくても不快だったので」

 

「っ……な、なんでもするわ。だから!」

 

「──なーんて冗談ですよ! いくら娘の幼馴染だからって、コウキさんはそんな事じゃ動きませんから!」

 

「…………じょ、冗談になってないわよ!」

 

「ええ、ええ、そうでしょうね」

 

「何が楽しいの! な、なんなのよあんた!」

 

「いやいや、貧乏なもんで発想が貧弱で申し訳ないです。もう少しお金を持ってたら思考が届いたのかもなあ」

 

「…………!」

 

「じゃ、そういうことで」

 

 ミツキにあんな態度取ったらそれこそ冗談じゃ済まさないけどな。今回は画面端に追い詰めるまでで許してやる。

 

 

 ──────

 

 

「結構話してたけど、何話してたの?」

 

 わざわざ近くで待っててくれた可愛い幼馴染と帰路を歩む。一緒に帰るのは、今となっては『習慣だから』に尽きるが元々は安全確保のためっていう側面が大きかった。

 

「ミツキの可愛さを語ってた」

 

「はぁぁ!?」

 

「少しずつ布教していこうと思っ──」

 

「ばか! もう知らない!」

 

 ズンズンと突き進むミツキに冗談だと理解させるのに1時間ほどかかり、可愛いと言ったのも冗談だという勘違いを解くのにさらに1時間かかった。おかげで家に送り届けて帰ったらもう遅い時間ですた。

 慣れない事はするもんじゃないよ本当。

 

「ただいま」

 

「遅い!」

 

 仁王立ちマミーブチギレ。

 

「ミツキのご機嫌をとるのに時間かかったんだよ」

 

「大抵あんたが悪いでしょ!」

 

「大抵であって今回もそうとは限らないでしょうが!」

 

「あんたが逆ギレする時はほぼあんたが悪い時でしょ!」

 

「まだ1%の可能性が残ってるでしょ!」

 

「言い訳すんな!」

 

「ぐ……ぐえ……」

 

 締まりがいい、とか冗談言ってる場合じゃなく締まっていた。母は強しってそういう──

 

「──の…………あの……大丈夫ですか?」

 

 玄関で数分気絶していたらしい俺を心配して、ソフィアがやってきた。視界が真っ白に染まったよね。まさか冗談じゃなく絞め落とされるとは思わなかった。あの小慣れた感じ、父さんも何回かくらってるな? 

 

 それにしても……この、なんとも食欲をそそる香り。

 

「料理してたのか」

 

「何かできることはないかと思って……」

 

「そか」

 

「……ごめんなさい、私じゃ大したもの作れなくて」

 

 置かれたのは小鳥サイズの夕食。

 とても気まずそうにしているが、そのサイズの原因はわかっていた。

 

「シンプルにうちが貧乏なのが悪いから、今からなんとかする」

 

「え? 今からって……」

 

 爺さんは山へ芝刈りに──ってわけじゃないけど、食材が足りないので夜の野原に出た。そして何故かソフィアが付いてきた。

 本当になんでかよくわからない。

 止めたのに言うこと聞かないんだもん。

 

「ほ、本当に大丈夫なのかな……大丈夫……大丈夫……!」

 

 本当になんでついてきたの? 

 

「ソフィア、ナイフの握り方ちょっとおかしいから」

 

「あ、は、はいっ」

 

 俺が何をするかと言えば、野を歩く獣の首を掻き切って食材にするのだ。両親と妹と客人が食べた後に残されている雀の涙のような食材ーーしかも明日だって朝飯や昼飯を食べないといけないんだから、食材の確保は急務。

 

「ひゃんっ」

 空は厚い雲に覆われ、霧によって常に水分を与えられた足元はドロドロだ。そんなところを歩くものだからソフィアは10分も経たないうちにすっ転んで可哀想な見た目になってしまった。

 顔についた泥を小川で落とさせると、しょぼんと眉も落ちていく。ついでに肩も落ちて、このまま地面に沈んでしまいそうな雰囲気ってところか。

 

「ソフィア……やっぱ帰る?」

 

「…………邪魔、ですよね」

 

「そうだな。ついてくるなら最低限のスキルは身につけてほしいってのが正直なところで……2人とも危ないからな?」

 

「ま、学びます」

 

「おう」

 

「でも……だからこそ今日は──っ!?」

 

 夜間というのは獣が動き出す時間と考えられがちだが、実際のところそういうわけでもない。夏でもなければ昼だって活発に動く。だからといって、夜はいないのかと問われればそれに対する答えはNoになる。

 それぞれの季節に対応して特化したモンスターというのが存在し、季節の中であればダンジョン以外においても観測される。

 

「…………!?」

 

「落ち着け……!」

 

 腕の中で暴れそうになったソフィアを全力で持ち上げた。

 

 アクフレ

 霧をかき分け、透明な体をゆったりと地面に這わせることが特徴的なモンスター。見た目的には巨大な水餅と言ってもおかしくないが、その生態がやばすぎる。肉体の端っこでも動物の肉体に触れれば、ゲル状の肉体が即座に纏わりついて内部に取り込む。取り込まれた生物は当然窒息死するわけだが……その後は透明な肉体の中でゆっくりと消化されていくので、中の諸々が丸見えになるのだ。消化されない金属類だけは肉体から排出され、落とし物として商工会に届けられることになる。

 

 一般的な感覚器官と呼ばれるものはもちあわせていないので声を出しても問題ないが、地面の振動などは感じている。見かけたら慎重に動かなければならない。ゲル状といっても敵性状態になれば肉体の硬さを変幻自在に操って動き回るので、ただの刃物では攻撃を通す事はできない。肉体の中心にある魔石を砕けば倒せるが、少なくともこんなナイフでは届かないし硬質化した肉体も抜けない。

 

「ソフィア、動いちゃダメだぞ」

 

「──ヒッ!」

 

 喉元から抜け出多様な声が漏れるのも仕方ない。アクフレの体内に残された憐れな骸が、こちらを向いていたのだから。

 まだ身体には肉も中途半端についている。

 その残滓から考えるに女性のようだ。

 中に取り残されているモノはやはり金属類が主だけど、その中には生体由来だろうに全く溶ける事なく残っている布もある。

 

「探索者か……」

 

 起承転結は読めないが、とにかくあのモンスターとの生存競争に負けたのだろう。

 

「アレは食べられないからスルーするぞ」

 

「!」

 

 そんなの言われるまでもないと無言で激しく首肯するので、立ってやり過ごすことを決めた時だった。

 

『────ォォォオ!』

 

 それは、唐突に現れた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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