【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「俺たちじゃ相手にすらならねえな」
「周りの分裂体なら何とかいけるんじゃねえか?」
「どうするんだよ、グリフィンとアクフレキングが両方こっちきたら!」
「そしたら普通に死ぬだけなんだから、考える必要ねえだろ! だからアクフレ処理すんぞって言ってんだ!」
結論。
このセクターにいる人員ではグリフィン、それと巨大化したアクフレ──便宜上アクフレキングと名付けられた──を倒すことはできない。
故にやるべきことは、アクフレキングから分裂した小型を掃討すること。
「どうすんだ? 早く仕事にしてくんねえと俺たちも動けねえぞ」
『今やってますから!』
探索者は受付嬢にそんな雑な言葉を投げた。実際のところ仕事として受注しなくても探索者であれば、それがあまりに逸脱した行為でない限り、自由にモンスターを討伐することはできる。
だが、積極的にそれを行うことには何の意味もない。依頼として受けたものに比べれば貰える金は微々たるものだからだ。
「カリカリしてんなあ……彼氏が冷たいって言ってもんな」
「なー」
「俺たちならそんな思いさせないのにな」
「なー」
「今度呑みに誘ってみるか」
「なー」
『行きません!』
「冷てえな」
「なー」
受付台で必死に依頼書を作成している。本来ならば後方担当がいるはずなのだが、夜なので彼女がやるしかないのだ。
「あーもう……! めんどくさい……!」
半ギレで書いていた。
「はい! これ! 受けて!」
「んー? ……まあ、こんなもんか?」
「グリフィンとか倒せなんて書いてないんだから、それで我慢して!」
「へーい」
夜中とはいえ、このタイミングで起きている探索者にとってはまだまだ活動時間の範疇だ。ダメなやつは帰ったか床で潰れている。
「アクフレの討伐ね……」
2級相当のモンスターが2体いて、そちらは倒す必要はない。
しかし取り巻きの3級相当モンスターは数が多く、分裂合体を可能とする。触れればまとわりつき、攻撃系の異能を持っていなければそのまま溺死する可能性もあるときた。
「ひーふーみー……数足りるか?」
3級相当のモンスターを舐めてはいけない。レベル21〜40というのは探索者のボリュームゾーンであり、多くの探索者にとっては死力を尽くして戦うべきモンスターだ。この場にいるのもほとんどは3級探索者で、2級も僅かながら──1級は当然いない。
「アクフレ……やったことねえよ、おい」
「俺もねえよ。どうやって倒すんだあれ」
「…………おーい! 受けるにしたって俺たち戦ったことねえや!」
アクフレというのは2年の中で一つの季節にしか現れないモンスターだ。霧の時期が嫌で活動していない探索者がいれば、あんな無味なモンスターには興味ないとして関わってこなかった探索者もいる。造詣からして下水に住まうスライムと似通っているため、下品な臭いを思い出させるから嫌いという意見も多い。
「適当に行くか?」
「知らねえぞグリフィンにやられても」
「俺が本気だろうが何だろうが、グリフィンに勝てるわけねえじゃん」
「グリフィン以外にやられんぞ」
「それもそうか」
街に程近い場所にて明確な脅威が暴れているのにも関わらず、彼らにそれほどの焦りはなかった。それは、こういった状況に慣れているということが一つ。そしてもう一つ──
「…………」
3人組の探索者がのんびりと酒を煽っていた。他の探索者達が準備を進める中でも構わずの態度。すでに卓上には依頼書が置かれていて、サインまで書いてあるというのに。
「ウルフさん! 準備してくださーい!」
受付嬢も痺れを切らして手を叩きつけた。
「ほーら! 先越されちゃいますよ!」
「…………はぁ……俺が遅れるって?」
「かもです!」
「何度言ったらわかるんだか……証明してやるよ、俺がこの町で一番速いって」
帷子の擦れる音。
立ち上がった男は武器を手に取る。
「俺がグリフィン倒してやるから──身体洗って待ってろよ?」
「あはは〜、小型を討伐してくださーい」
気障ったらしく、というか性欲を隠しもせずに受付嬢の身体をガン見する。そんな視線に対し、慣れているのかスススとカウンターの後ろへ退避すると、代わりに出てきたおっさんにバトンタッチした。
「身体、洗っとくぞ」
「お前じゃねえよ!」
「いいから行ってこい。ガキンチョ」
「チッ、いつまでガキ扱いだ……もう40超えてんだよ!」
「40超えてるくせに10代を口説くな」
「いい女を口説かねえとかチンコついてる意味ねえだろ」
「行け」
「…………待ってろよ!」
彼こそが第36セクターの最高戦力だった。
コモンドラゴンをはじめとして2級モンスターの討伐経験も豊富。古参として長くこのセクターを引っ張ってきた。
扱う巨大な剣は、シンプルながら十分な威力で甲羅だろうが鱗だろうが構わず破壊する。
「……あいつ、私たちのこと置いて行きやがった」
「いつものことだろ」
「そうだな……」
そそっかしいところを除けば一応尊敬の目を集めてはいた。しかし、商工会の見立てをもう一度。
──このセクターにいる人員ではあの二体を討伐することはできない。
──────
「う…………」
目を覚ますと朝だった。
俺の昨日の記憶はソフィアの背中からバッタを取ったところで終わってるんだが、間違いないか?
間違いあるな。
普通に家だし。
「つーか時間いつだ……」
遅刻とかそういうことにはならなかった。これも日頃の習慣のおかげだが、とんでもなく眠い。平均的な睡眠時間は前の世界よりよほど長いけど、時間が欠ければ当然朝はきつい。
俺、きつい。
「はぁ……飯食うか」
すでに母さんは起きて朝ごはんを作っていた。
「おはよう」
「よく起きれたわね」
「まあ眠いけどな」
「疲れてるんでしょ? 座っといて」
やけに優しい。
何だこの嫌な予感は。
「はい、朝ごはん食べなさい」
何だこの肉は。
昨日俺が腹を空かしていたのは何だったんだ。
確かに食べるものは無かったはずなのに、誰が用意したんだ。父さんか? 普通に美味そうだぞ。
…………まさか夢か!?
空腹を拗らせすぎて死にそうになった俺の脳みそが最後に見せている幸せな夢なのか!?
お、起きろ俺! このままじゃ死ぬぞ!
「何してんの、早く食べなさい」
「くっ……!」
「……年頃?」
しかし腹は減っているので勝手に手が伸びる。なんてママならないんだろう、身体ってのは。
「ちゃんと鳥だ……」
「だから鳥だって」
「父さんが取ってきたの?」
「は?」
そんな冷たい目を子供に向ける親がいるか。
「あの子が取ってきてくれたんでしょ。何バカなこと言ってんのよ」
「あの子……ソフィア?」
そうでなければミツキとアカネのどちらかだ。
いや、温室育ちの2人じゃ無理だけども……
「そう、氷で取ったって……あんたもその場にいたんでしょ? まだ寝ぼけてんの?」
「寝ぼけてはいるけど……俺も一緒にいたのか?」
「……本当に大丈夫? 学校休む?」
「いや、学校は行くけど…………そういえばグリフィンは?」
「え? ぐりふぃん?」
「昨日は確か……グリフィンに邪魔されて肉が取れなかったんだった」
あのグリフィンと巨大アクフレがいなくならないと列車も動かし辛いんじゃないか? 商工会は動いたのか? だから静かなのか?
…………ダメだ、昨晩のことがあまり思い出せない。
「第1セクターでなんかしてたから疲れが溜まってたんじゃないの?」
「ああ……そうかな……」
「というか……ミツキちゃんに刺されても知らないよ私。あんな綺麗な子を連れ帰ってきてさ……コウキさんもお冠なんじゃないの?」
「そうだ。コウキさんにも話しとかねえと……」
「あとさ、アンタなら分かるよね? うちの家計状況」
「……そこに関しては申し訳も立ちません。まことにすいまめん」
「あの子に関しては自分で責任持つんだよ。いつも自分で言ってんだからさ、責任責任って」
「もちろんでごぜえます!」
平伏するしかなかった。そんなわけはないけど、ソフィアのことを受け入れてもらえなかったらだいぶ辛かった。ソフィアだって俺と2人で野宿は嫌だろうしな。
…………いや、待てよ? ウチだっていつまでも、あるいはいつでも置いておけるわけじゃない。母さんお父さんがイチャイチャしてるところに突入したら気まずいし、クソ貧乏だから昨晩みたいに食料不足に陥ることもある。
そもそも、安定性を考えると加賀美家はこの世で最低レベルの──それは言い過ぎか。ともかく安定性は低い。
別の、何か別の策が……俺の米粒みたいな人脈で──
「そうか!」
「はあ……またなんか思い付いてるよ……帰ってきたばかりなのに……」
俺のパーフェクトな頭脳が弾き出した答えを検算するため、急いで端末を取り出した。コウキ? いや、あのモヒカンは後でいいでしょ。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない