【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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39_盗み聞き

「何話してるのかな……」

 

 ヒロさんが行ってしまってから、お菓子を食べたり端末をいじったりしていた。

 だけど、どうにも集中できない。

 下でお母さんたちとヒロさんが話しているという事実が、頭にこびりついて離れない。

 水に落とした墨のように、だんだんと広がって誤魔化しが効かなくなった。

 

「これ……」

 

 ヒロさんが持ってきてくれたプレゼント。

 机の上に置いてある包みは細長い。

 何が入っているのかな。

 食べ物かな。

 それともアクセサリーかな。

 見たくて、ほんの少しだけ見たくない。

 

 でも、一人で開けるのは何か違う気がした。

 ちゃんと手渡しで貰いたい。

 少しだけ不安そうなヒロさんの顔を見ながら包みを解きたい。

 ……この場にいたら、気になって何にも手につかないや。

 

「下、いこ」

 

 こっそりと扉を開けて、差し足抜き足で階段を降りる。

 流石に中に入るのは躊躇われたから、扉に耳を当てた。

 聞こえてくるのは、穏やかな話し声。

 

『──サさんは変わりました』

 

『それは……うん、そうだね。アリサはとても良い子になった』

 

『違います』

 

『え?』

 

『人類は、努力に裏打ちされた才能の生き物だ』

 

『……何の話かしら』

 

『聞いてください。人は、才能が無ければ努力しても意味が無い』

 

『あの子には才能が無い、と?』

 

『……才能が、無かった』

 

『無かった?』

 

『本来あり得ない事ですが、異能とは後天的な才能に他ならない。遺伝子が全く関係しない、人類の新たな形──受け売りだけど、ニュータイプと呼んでも良い』

 

『そう、なのかい?』

 

『俺はそれを思い知らされました。アリサさんは既に、かつての彼女よりも上位の存在になっている』

 

『アリサは……大丈夫なの?』

 

『生物として格が変わったというだけの話で、彼女という人格がどうにかなったわけではありません』

 

『再生能力だったね』

 

『ヒーリングファクター、俺はそう呼んでいます……付け加えるなら、あの耳や尻尾も異能の一種と言って良いでしょう』

 

『聞いて良いのかわからないんだけど……先生、君の異能は──』

 

『いえ、俺は異能を持っていません』

 

『そうなのかい?』

 

『はい』

 

『何か条件が?』

 

『あるとしたら、俺には絶対に持ち得ないものだと思います』

 

『それは?』

 

『申し訳ない、言えません』

 

『……そう、なのね』

 

 ヒロさんが持っていなくて私が持っているもの……何も思いつかなかった。

 だけど、次にヒロさんが言った事は聞き捨てならなかった。

 

『それは置いといて、異能を手に入れたからと言って探索者の仕事が劇的に安全になるわけじゃない。いつだって、アリサさんにはやめる選択肢が──』

 

「──そんな事ないっす!」

 

「アリサ!?」

 

 聞いていられなくて、ドアを押し開けた。

 ヒロさんが驚いていたのは、私がおとなしく上で一人遊びでもしていると思ったんだろう。

 そうは問屋が卸さない。

 

「勝手に私のことを決めないでください!」

 

「……」

 

「私は辞めたいなんて考えてません!」

 

 確かに、モンスターと戦うのは怖い。

 腕が当たったら痺れるし、攻撃を受け止められたら本当に恐ろしくて動けなくなる。

 だけど……少しずつだけど、前に進んでいるんだ。

 私だって、成長してるんだ。

 なのに、ヒロさんがあんな事を言うなんて、悲しかった。見守ってくれていると思っていたのに。

 

 …………ん? 

 何でヒロさんはそんな顔をして……

 

「アリサ、俺はお前に辞めて欲しいわけじゃない」

 

「へ?」

 

「探索者としてどうなのか聞かれたから答えていただけだよ」

 

「あ……そ、そうなんすね……」

 

 二人の視線が痛い。

 

「どうします? 続けます?」

 

「いや……今ので大体わかったから大丈夫だ」

 

「うん、これからもよろしくね加賀美くん」

 

「……ははっ! お腹減ったんで昼ご飯いただいても良いですかね!」

 

「あら、じゃあ準備しちゃおうかしらね。アリサ、手伝いなさい」

 

「……はーい」

 

「あなたもね」

 

「お、おう」

 

「加賀美くんは座っててね〜」

 

「はーい」

 

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