【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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31_コミュニケーションin train

「ああ、素晴らしき旅かな……長らく我々は第36セクターという辺境の地にて燻っていたが、遂に再び動き出す時がやってきたのだ……!」

 

 その旅、すぐに終わりますよ。

 

「何を言う! 俺たちの旅は終わらない! なにせ道を歩む者を見つけたのだからな! ここより先、我々はキミに同行して運命の詩を世界に広げるのだ!」

 

「おいウルフ。お前だけ盛り上がってるけど、そこのガキはすぐ帰るって言ってんだぞ?」

 

「ええいうるさい! そんな細かいことをいちいち気にするんじゃない! 大事なのは、この若人が俺の詩になるということだ!」

 

 勝手に決められててほんまひで。

 

「俺の事は別にいいですけど、俺の家族とかのことは絶対に話に組み込まないでくださいよ。迷惑なんで」

 

「お前、自分だけならいいのか?」

 

「こうなったのも何かの縁でしょうから」

 

「適応早……」

 

 こちとら異世界きとんねん。

 

「それにしても、これはどこに向かってるんだ?」

 

 アオキ何某がしゃべった。

 喋る時も兜脱がないんかい。

 

「コイツはちょっと訳ありでな。顔は隠してんだ」

 

「へー……」

 

「そんでどこ向かってんだよ」

 

「それは着いてからのお楽しみということで……それよりもお三方の馴れ初めを聞かせてくださいよ」

 

「は、はあ? 私たちの出会いとか……」

 

「う、うむ! ……っ」

 

 御三方っつってんのに馴れ初めって単語だけでチラチラ見合い始めた。その視線に含まれているものの意味を分からない俺ではないぞ! 堂々とした笑顔ながら、やや照れくさそうにしているウルフの態度からしても明らかだ! 気まずいな! 

 

「──そいつらはともかく、俺はそこの優男の護衛だ」

 

 探索者が護衛? 

 

「元だけどな。いつの間にか肩くらいまで追いつかれちまった」

 

「ふはは! 俺の精強さにひれ伏すがいい!」

 

「調子に乗りやすいやつだが、根は悪いやつじゃない……それでも今回のは予想外だ」

 

 恐らく長年の付き合いであろうアオキから見ても、うら若き少年にストーカー気味についてくるというのは異常行動だったようだ。

 

「何をお前に見たのか……」

 

 ずんぐりと立ち上がったアオキは詰め寄ってきた。兜越しに光る目は、何かを測ろうとしているのかもしれない。

 

「さっぱり分からん」

 

「こういう、誰かについてくるのは珍しいんですか」

 

「ああ、基本的にはあいつの気の向くままについて行くのが俺たちのスタンスだ。おかげでクソみたいなところに踏み込まにゃならんこともあるが……決めなくていいのは楽だな」

 

 答えとしてはややズレていたけど、ひとつ感心したこともあった。

 

「へえ、完成されてますね」

 

「──よくわかってるな」

 

「はい?」

 

「自分で決めることもできない腰抜けと雌犬だなんてよく言われるもんだぞ」

 

「……あ、そういうね」

 

「まあ当然の言われようだがな。俺も昔のパーティーでは何でも自分で決めてたし、そうしない奴がいたら詰ってただろうよ」

 

 極めてまともに会話ができる人間だった。

 ウルフは前提からして狂っているし、ルクレシアも言葉遣いの荒々しさが止まることを知らない。やっぱアオキなんだよなあ……それにしてもあの2人、いつまでもモジモジしやがって。

 

「あの2人はコレですか」

 

「…………がはは! そうだな、コレだ! つっても……いまだにガキみてえなピュアっピュアなやりとりしやがってよ。やることやってるくせに気持ち悪いったらありゃしねえ」

 

「へえ」

 

 青春を感じると口元がニチャアってなる。

 

「お、好きものだなお前。そうなんだよ、あいつら片方は40超えてるおっさんで片方は40手前のババアのくせにまだ手繋ぐだけで照れてやがるんだ。ウルフに関してはそもそも女好きのくせに、ルクレシアにだけはあんな調子でな」

 

「微笑ましいですね」

 

 見た目さえ若ければそれで良いのだ。

 人間は見た目が全てだからな。

 

「何だ何だ、最近のガキは進んでんのか? それともお前アレか、女漁りが趣味か」

 

「いえ、童貞です」

 

「はあ? ……耳年増なだけか」

 

「そうですね」

 

「…………その目的地とやらは街なんだよな? そしたら良い店探そうぜ。お前にも奢ってやるよ」

 

「いやいや、そういうのは……浮気になっちゃうんで」

 

「あ? …………ああ、なんだよウルフと一緒か」

 

「え?」

 

「あいつも許嫁がいたらしいからな──っと、余計な話だったか」

 

『…………』

 

 男女仲良くちんまりと並んで座っていたウルフがこちらを睨んでいた。しかし誤解だ。

 

「俺、許嫁なんていませんよ」

 

 いるのは嫁だ。

 

「じゃあ何に対して、誰に対しての浮気なんだよ」

 

「っすww」

 

「腹立つな……童貞なんざさっさと捨てちまえ。女と違って価値ねえんだから」

 

「いやあ……どうなんでしょうね」

 

「そうやって余裕ぶってられるのも若いうちだけだぞ。歳食って童貞だとコンプレックス拗らせて風俗狂いになるからな」

 

「あー……」

 

 遠い記憶に何かヒットするものがあったような…………確かにいたな、後輩で週3風俗行ってる奴。

 

「つーわけで、童貞を──」

 

「いや、今回は真面目な要件なのでまた今度で」

 

「お、おう……なんかすまん」

 

「誘いは嬉しいですけどね……つーか、そんなことしたら俺殺されるかもしれないんで実際行けないかも」

 

「やっぱりいるのか? 女が」

 

「女もいるし男もいるし……」

 

「お前やっぱり男もいけるのか」

 

「……もう隠さずに言っちゃいますけど、幼馴染と幼馴染の父親です。父親に殺されます」

 

 あと、仮に──本当に仮の話で俺が風俗言ったとして、ミツキにバレたらきっと死ぬほど蔑んだ目で見られるだろう。それに、目もそうだしコレまでとは関係が変わってしまうと思う。そんなの耐えられない。

 絶対無理。

 

「ふーん……じゃあ結局許嫁と似たようなもんか」

 

「妹みたいな感じです」

 

「はいはい、その手の話は酒場で一万回聞いてるから」

 

「いや、マジなんですけど……」

 

 ミツキに魅力がないとかそんな話ではない。なんなら風呂上がりの髪のしっとりとした触り心地とか、だらしない格好で寝転がって足をバタバタさせてる時に不意に見える鼠蹊部の陰影とか、肩を抱き寄せるとガチガチに固まるところとかめっちゃエロいし愛おしい。それはそれとして孫くらいの年齢の子に手を出すのは頭おかしいし、そもそも既婚者なのでそういう風にはならないだけの話だ。

 

「そうだな……20になるまで耐えられたら俺の全財産くれてやるよ」

 

「お、言いましたね」

 

「ああ、ちなみに20ってのはどっちの年齢もな」

 

「余裕ですから」

 

 ふん、相当な自信があるようだが挑んだ相手が悪かったな。

 

「でも結構時間空いちゃうから忘れそうなんだよな……ちなみに俺が負けたら何をすれば?」

 

「え? じゃあ強くなって俺と戦え」

 

「無茶振りすぎでしょ…………レベルいくつですか」

 

「53」

 

「やば……」

 

 端的に言って化け物だ。1級探索者には届かなくても、人類の防壁の一角を担うに相応しい実力を備えているのは間違いない。

 

「モンスターと戦うのが好きでな。戦い続けてたらいつの間にかこうなってた」

 

「……レベル高い人って若いって聞きますけど、あの2人ももしかして?」

 

「ああ、もちろん。俺よか低いけどな」

 

「すごいですね……ちなみに牛って食べたことあります?」

 

「うし? …………ああ〜……なんか一回だけあるな。あいつがどっかのパーティーに呼ばれたときについでに俺も食べた。それがどうした?」

 

「どんな部位でした?」

 

「はあん? どんなって……あんま覚えてねえなあ。食べたっつっても確か薄切りだったし……というかそれがどうしたんだよ」

 

「いやあ……」

 

 2級探索者でも基本的には手が届かないか……そうなると、やっぱり金銭的な面でも1級探索者(コウキさん)は規格外なんだな。

 

「食べたいのか? そんな美味いもんでもなかったと思うぞ。覚えてないんだから」

 

 そりゃあこの世界の食材に比べたらインパクトは薄いでしょうよ。でもそれが良いんじゃん。

 

「内臓は食べました?」

 

「内臓て……2級探索者は動物の内臓まで食う、なんて与太話を信じてるわけじゃねえだろうな」

 

「違いますよ。牛は内臓も美味しいんです」

 

「…………お前適当なこと言ってだまくらかそうってんじゃねえだろうな」

 

「あー勿体無い……せっかく金持ってるだろうに、内臓の美味しさ知らないなんて……」

 

「いや食ったことないだろ」

 

「はぁーあ……」

 

「おいウルフ! こいつぶっ飛ばしても良いか!」

 

『何を言っているんだ!?』

 

「くそ、ムカつく……なるほど…………お前、ほんっとうに俺たちのことなんとも思ってねえな」

 

「少なくとも、暴力で人を従わせる人間には慣れてますね」

 

「そんな事したことねえわ! 一緒にすんな!」

 

「勿論分かります。俺も人を選んでますから」

 

「…………ああもう良い! 俺は寝る!」

 

 武器を抱きしめて沈黙したアオキ。

 唐突の切り替えもできるのが探索者として上り詰めた所以か──しかし、そうなると俺には話し相手がいなくなった。あの2人は静かにイチャイチャしてるし……

 

 その時、ふと思い出した。

 

「もしもし」

 

『夜だよお!?』

 

「声が聞きたくなった」

 

『! …………このっ……も知らずに……!』

 

「ん?」

 

 うるさ過ぎるのか、あるいはダンジョンが近くにでもあるのかうまく聞き取れん。まあ4Gとか存在しないから仕方ない。

 

『ば、ばーか! ばーかばーか! ばーか!』

 

「…………」

 

 壊れた。

 端末が壊れたのかミツキが壊れたのか分からんぞコレ。

 

「おーい」

 

『なに!』

 

「お……」

 

「幼馴染を放ってまたもや旅行に出かけたアキヒロくん! なんですか!」

 

「……今度一緒に旅行に行こうな」

 

「…………いー!」

 

 切れた。

 何やねんこいつ。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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