【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「その魚は……厨房でなんかしてもらう?」
「炭火焼きがいいかな」
「よくわかんねえけど、こっち!」
荷物を背負ったまま裏口から厨房に上がると料理人たちが談笑しているところだった。
「…………」
勤め先の社長の息子さんが友達を連れてくるというクソみたいな場面だけど、すぐに笑顔で応対してくれたぜ。魚を手渡して炭火焼きでお願いしたいと伝えれば、少しあって仕舞われていた炭を持ち出して準備が始まった。
「アキヒロくん! 料理は任せて母さんたちが待ってるぜ!」
「え」
「ほら! いくぞいくぞ!」
「あー……すいません、お願いします」
唐突な持ち込みで普通に申し訳ないので見ていようと思ったらロイスが強く腕を引くので流石に離れた。正直気まずいから助かるけど、それはそれとしてやっぱり申し訳ない。
「いっぱい準備してあるからさ! とにかく食べようぜ!」
「…………その前に、ちょっと話が」
「へ?」
何かというと、ウルフたちのことだ。当初連絡した時は俺1人だよ〜みたいなこと言ってたのにいざ来てみたら3人くっついてきてしまった。ロイスのお父さんには伝えてあるけど、改めて言わないとな。
「あの人達ですか……?」
「そう」
「なんで着いてきたんですか?」
「それが分かんねえんだよな」
「ま、まあウチに入って来れるんだから危ない人たちじゃないんだろうけど……アキヒロくんからなんか変な香りでも漂ってるんじゃないの?」
「え…………臭い?」
「そうじゃないよ!」
あーだのこーだのとロイスが訳のわからないことを言っている間に三人はこちらに向かってきた。話も聞こえていたようだ。
「変な香りに引き寄せられてってのはあながち間違いじゃねえぞ。うちのリーダーが直感で見つけたわけだしな…………それにしてもこんなところと繋がりがありやがるなんて、マジで変な野郎だな」
「……」
やっぱりそうなんだ、みたいな顔をするな。
「えっとー……一応うちは霊領なんで、2級探索者っつってもあんまり好き勝手やられると神罰が……」
「俺も流石に霊領で無茶をしようとは思わん! 君の一族が治めているのであれば極力従おう! あまり無茶なことを言うようであれば考えるがな!」
「い、いやいや! そういう変な商売みたいなことしてないっすから! 常識的なことしか言わないです!」
本当にかー? 山で見つけた子犬を神からの贈り物とか言って崇めてたりするのにかー? 可愛いから持って帰ろうとしたら泣きそうな顔で止めたりするのにかー?
「あれは……あれはいいんだよ!」
あまりにも恣意的解釈すぎるだろ。
「うちのお山にいたんだからいいでしょ! ……アキヒロ君だって納得してたじゃん!」
「僕の家は普通ですよ〜みたいな顔してるから……冗談だって」
「ふんっ……」
「まあ、アレです。神様の姿を見たい! とか言って山に走り出したりしなきゃなんもないと思いますよ」
「…………というか神様とは関係なく山は危ないので入らないでください」
俺は自由に入って自由に歩き回れるけど、それ以外の人が入ったらダメって言ってたな。まっくろくろすけがなんかダメだとか。なんだろうねアレ。
煤もつかないしよくわかんないんだよ。
「アキヒロくんはほら……アレだし」
「アレってなんだ」
「……へ、変態ってこと!」
「!?」
まずい、この流れは……!
「ほら、やっぱりそうなんだって……だから言っただろ私」
「ううむ、最早否定する材料よりも肯定する材料の方が多くなってしまったな……状況証拠だけとはいえ、ここまで多くのものが集まるようでは……」
「あいつ、ガチのマジで男でもいけるのか……」
三人が顔を突き合わせて、俺のことを遠いものでも見るかのような目付きで見ていた。
「──ロイス!」
「はいっ!?」
「俺は変態じゃ…………もうこの際、変態でも良い! だけど変態って言っても、ロイスには変なことしてないよな!?」
「う、うーん……してない、かなあ……」
「なん……だと……!?」
俺は変態だった……?
──────
「加賀美さま、ようこそおいでくださいました」
「あの……俺みたいな歳が十いくつのガキに対して頭を下げるのはやめて下さい、本当に。ロイス君も見てますし……子供を助けるのは当然ですから。あの時ロイス君を助けられたのは偶々俺があそこにいたからで、あのモヤモヤ? もよくわかんないウチに消えただけだって話はしたじゃないですか」
「…………だからこそ、なのですよ」
参った。
前回この屋敷を去る時も恭しくて、その時は礼儀のなっている人達だと思ったもんだけど……まさかここまでカチカチに来られるとは想像もしていなかった。
「おいおい、なんだこりゃ。大の大人が揃いも揃って頭下げて……お前、本当にナニモンだ? この質問、何度すりゃ良い?」
そりゃそうなりますて。
「と、とにかく! 秋川さん、頭をあげて下さい。気持ちは十分に受け取りましたから」
「……」
「あー……ほら、俺のことは親しみを込めて明宏君とでも呼んでくださいよ! ロイスくんと俺は友達なんだからそれくらいが普通じゃないですか?」
俺は何を言っているんだろうね。
「加賀美さま、まずは昼餉を召し上がって下さい」
要求はガンスルーされた。
俺の言葉よりも自分たちの気持ちが上回ったらしい。とても複雑な気分だ。
というか、向こうもどんな気分なんだよ。ガキに対してこんな大奥みたいな感じで頭下げて……まあ正直、頭を下げられていることに関してそこまでイヤだとか恥ずかしいとかはない。
だけど、ロイスに対して距離ができそうでイヤなんだ。せっかく仲良くなれたのに、親の接し方を見てコイツまで変に畏まったりされたら俺はとても悲しい。
「アキヒロくん、やっぱりすごいね……!」
ロイスが純粋でよかった……!
「ふむ……神の領域で良き日々を送る人々と、人々を束ねる神職。そしてそんな彼らを傅かせる謎の客人か。興味深い」
ウルフは芸術家らしく、起きる出来事全てが詩の材料にしか見えないっぽい。
「して、御仁。私たちも同席して良かったものだろうか」
「ええ、あなた方に悪意が無いことはわかっておりますゆえ」
「では遠慮なく」
悪意が無い→わかる。
悪意が無いから同席しても良い→分からない。
やっぱ金持ちの考えることって俺みたいな貧民には理解できねえな。
「アキヒロくん、これ食べる?」
「お? おお、食べる」
ロイスは俺の隣だ。
もしくは俺がロイスの隣なのかもしれない。
人の家に食べに来ると、その家族が普段座ってる席とかコップとか気になるんだよな。
「はいコレも!」
「ありがとう」
ロイスは甲斐甲斐しく大皿から取り分けてくれる。ありがたいんだけど、俺の食べるペースとかあんまり考えてないのかたくさん取ってくれるので大皿がもう一つできたみたいな感じになった。
「ロイスもちゃんと食べなきゃダメだぞ? 具体的にはコレを半分くらい食べてくれると助かる」
「えー? でもアキヒロくんならコレくらい食べられるでしょ」
「食べられるけど、こんな食べたら胃がもたれて夜に何も入らなくなるから……」
「父さんみたいなこと言うね」
そうなんだ。
金持ちでも胃はもたれるんだな。
「なら俺が食ってやるよ。ちょうど腹も減ってるしな」
ヒョイと一つ肉のかけらを摘んで持っていたのはアオキだった。相変わらず兜はつけたままで……本当に訳ありなんだな。
「あ! それアキヒロくんのやつだぞ!」
「そいつが食えねえってんだから誰かがくうひかへえふぁろ」
「飲み込むな! 出せ!」
「いいふぇほ」
え?
「いや、出さないでいいですよ」
そもそも仮にアオキがそれを吐き出したとて他の人食べられないじゃん。俺が食べるの? おっさんの咀嚼物を? それなんて地獄?
「どうせ席も隣なんだし、分けて食べましょうよ」
「おう──あ」
「だめー!」
ロイスが大皿を抱え上げてしまった。
細腕で持ち上げるには限界近い重量なのか、フラフラとした足取りで見てて怖い。秋川さんも不安そうにしている。
「ちょいちょいちょい。皿落ちちゃうって」
「これはアキヒロくんの!」
「そんな食べられないって」
「アキヒロくんなら食べられるから!」
どういう意味でそれ言ってんだよ。
無茶振りを超えた無茶振りだろ。
しかも善意だし。
「じゃあロイスでもいいから一緒に食べようぜ」
「…………」
「ほら、危ないから持つぞ」
ストンと腰を下ろしたロイスと俺の間に皿を置く。ロイス本人はブスッとした顔で、本当に俺に食べさせたかっだというのが伝わってきた。
ロイスが俺の胃袋破壊系男子だったという衝撃の事実はともかく、食事自体は非常に美味しそうなので召し上がりたい。
「俺は?」
「アオキさんはそっちの皿から取って下さい」
「分けて食べようって話どこ行ったんだよ」
「いや……歳考えて下さいよ」
あと顔も。
輝けるイケメンの卵と兜を装着したままのおっさんとか比べるまでもないでしょ。
「うま〜」
「なかなかの美味だな……ルクレシア、お前もコレくらい作れるようにならないとダメだぞ」
「私の飯に文句あんならお前が作りゃいいだろうが!」
「俺に料理などできるわけないだろう。お前を信頼して任せているんだ」
「……ふん」
ちょっっっっっろ。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない