【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「さて……本題に入りましょう。困っていることがあるというの聞いていますが、具体的にはどのようなご用件で」
「知恵をお借りしたいことが一つございます」
「知恵? ……確かに我々は神に仕えるものとして、その領域に関することは多少知り及んでいますが……貴方がわざわざ聞くようなことは何も──」
「俺のことを何と勘違いしているのか分かりませんが……見た目通りの知識しか持っていないのであまり過大に見られても困ってしまいますね」
応接室にてご当主と対面していた。不思議なことは、こういう時というのは大抵が一対一であるにも関わらず周囲に人間がいることだ。
ロイスはまだいい。秋川家の一員であり、真面目な場に同席するというのはなんらおかしいことではないのだから。
しかし、おそらくは秋川家に準じて神に仕えているのであろう神職の面々までこの場に立ち会うというのは……少々大げさが過ぎる。そんなことを気にしては話も進まないし、こちらが頼む立場なので下げてくれとも言えないから放置してはいるけど。
「とある女の子がいます」
「……」
一旦そこで区切ると、続きを言っても良いとご当主が眉毛を上げたので続きを話した。
「名前はソフィア・エメリッヒ。歳はロイスと同じで15。つい最近第1セクターに行く機会があって、その流れで出会いました」
「……つまり、その子のことで?」
「はい」
「どんな事ですか」
どう伝えるかは決めていた。
ストレートだ。
「彼女は生まれ付き冷気を操る異能を持っているようなんですけど、その異能が暴走しています。そのせいで身体から溢れる冷気に自分の身すら蝕まれていて…………おそらく、そう長い事は保たないでしょう」
「…………」
「俺が彼女を見つけた時、路地裏の誰もいない場所で凍り付いていました。異能という事で、いわゆるアイテムが何か役立たないかと深山商会を頼ってはみたもののコレといった成果はなく……」
「深山商会を!? それは……いや、しかしダメだったと。なるほど」
深山商会という名前を出した時の反応は正に、あそこを訪れたのが正解だったということの裏付けに他ならなかった。探索者方面の知識、もう少しつけたほうがいいのかもしれない。
「アキヒロくん、その子は今……?」
「俺の家に預けてある。こっちに連れてくるには少しな」
「……そんなに悪いの?」
「いいや、連れてくるための金が無い」
「あっ……ご、ごめん」
「はっ、別に謝る必要ないだろ」
「……」
「気にすんなって」
年頃らしくナイーブな一面をあからさまに見せるけど、中学ではとんでもなく明るいという話だからな。やっぱ家は特別か。
「それで、俺が来たのは……厚かましい話ですけど、異能を抑える特殊なアイテムなんかに覚えがないかを聞きたかったんです」
「そういう事でしたか……ですが、それこそ端末越しでも話はできましたよ?」
「それは……ご迷惑だったら申し訳ありません」
「ああいえ! 迷惑だなんてことはとても!」
迷惑になってないことはない。なにせ昼飯の準備までしてもらった上、関係者一同揃い踏みで話を聞かせることになっているのだから。いくらなんでも時間取りすぎだろ。
「単純に気になっただけですよ。私共はむしろ、加賀美さまに来ていただいて嬉しいと思っております」
「そう言っていただけるとありがたいです」
「ですが…………そういったアイテムや神器に覚えはありませんね。ここまで来ていただいたのに申し訳ない」
「いえ……」
あっさりと期待は覆された。
しかし、もともと期待半分ではあった。あまりそう都合よく話も進まないだろうという予感もしていた。彼らが申し訳なさを感じる必要性は全くない。
それにもかかわらず一様に眉を下げている様子を見るに、相当好いてもらっているようだ。それこそ分不相応なほど。
何故ここまで──確かに総代一家の息子は助けたが、それだけだ。ただそれだけで、彼らが俺に対してそこまで好感度を上げるということは信じられない。
カルト宗教染みているとさえ感じてしまう。
その好意を利用している分際で何をほざいているのかと言われてもおかしくないが、一体何が彼らをそうさせているのか──それはとても気になることだった。
──────
「うーん……」
「どした?」
湯船に並んで浸かっていると、ロイスが腕を曲げていた。二の腕には全く力瘤ができず、その身を見ても子供らしい体型で力強いという印象は受けない。
「アキヒロくん、一つしか違わないのにすごい筋肉だなって……」
「そうだろう?」
「近っ」
そうなのだ。
俺は筋トレを頑張っているのだ。
「ロイス、お前も筋トレに興味が湧いてきたのか?」
「……ま、まあちょっとだけ?」
「まずは腕立て伏せからがいい。1日10回から始めよう」
「え……」
「健全な魂は健全な肉体に宿る。お前も身体を鍛えれば、お父さんの後を継ぐときに役立つぞ」
「…………」
「ん?」
何か様子が……まさか。
「ロイス、この家の後は継ぎたくないのか?」
「……うん」
「なんで?」
「だって……ここから出られないし」
「大抵の大人は同じ街から出ないで仕事してるよ。そもそも今だってそんな外に出ることないんじゃないか?」
「…………でも……みんなは出ようと思えば出られるけど、父さんはいつも神様神様で好きに出られないんだもん。俺だって父さんの後を継いだらそうなっちゃうじゃん」
「……」
「俺も……アキヒロくんみたいに色んな場所に行ってみたい」
「俺みたいに?」
「第1セクターとか……行って、みたいなあって……」
顔をお湯に沈めてブクブクと泡を漏らす。
本心からの言葉なのだろう。
「俺もそこまでたくさんの街に行ったことがあるわけじゃないけど……この街がロイスには合ってると思うよ」
「…………第1セクターって、どんな場所?」
「……のぼせちゃうからな、うん。お風呂出てから話そうか」
「! ──あがろう! すぐあがろう! ほら、あがろう!」
「おいおい……」
「おもっ! ねえ行こうよ!」
待ちきれないのかグイグイと腕を引っ張るので、もう少し浸かっていたかった気持ちをグッと堪えて湯船から出た。
「良いお湯だった」
「身体拭いて! はやく!」
「そんな急いでも数分しか変わらんて……わぷ」
「はーやーく!」
投げつけられたバスタオルで水分を拭き取り、用意されていた寝巻きを身につけた。
「おおー、似合ってる」
「ふっ」
「じゃあ話してよ!」
「廊下で話すのは少し味気ないな……」
「もー! どこでも良いだろそんなの! じゃあ部屋!?」
「お前元気だなあこんな夜なのに……せっかく縁側があるんだから使わせてもらいますか」
「えんがわ〜? 寝っ転がりながらでよくねえ?」
「雰囲気で話すのが好きなんだよ」
「カッコつけじゃん……」
「男はカッコよくてなんぼだぞ」
「えー?」
何故イケメンのくせにそんな当たり前の真理を分かっていないんだ此奴は……
「学校では告白とかされてないのか? されるだろ、カッコいいんだし」
「……そんな話どうでも良いから!」
「はいはい」
選んだのは裏庭に面した箇所。
足を下ろす。巨大な新樹と、それを囲うような煌めく石の数々が見えぬ星空を補っているかのようにそこにあった。
「おお!」
暖色光は霧に乱反射して周囲そのものを優しく照らしている。前回は泊まっていかなかったから、こんな綺麗な景色があるなんて知らなかった。
「綺麗だな!」
「別に」
「見慣れてたか」
「そりゃあこの家で生まれたんだし……こんなの普通だよ──っひひひひ! や、やめてよ!」
生意気な事を言う小童の脇腹を思う存分くすぐってから、使用人が持ってきてくれた飲み物を一口飲んだ。
「うん、美味しい」
「はぁ……はぁ……お、おいし……じゃね……だろ…………」
「第1セクターだったな」
「!」
「俺があそこに行った理由は、金を稼ぎたかったからなんだよ」
「お金?」
「ここらへんでカネ、ヒト、モノが一番集まるのがどこかって言えば間違いなく第一セクターだろ? だから、良い金の稼ぎ方とか知ってる人いないかなって」
「えーなんかやだー……」
「ヤダってなんだよ」
「なんかあ……お金のことめっちゃ考えてるじゃん」
「おい、いきなり蛙化すんな」
「蛙化? なにそれ」
「…………好きな人に対して、好きであることによって頭の中で思い描いていた理想の姿が、何かの拍子に現実的な人間であることを直視してしまって萎えること、かな」
「よくわかんね。続き話して」
「えーと……第1セクターはとにかく店が多かったな。特に宝飾店とか服屋が他のセクターに比べると多かった。服装のバリエーションも段違いで、俺たちが今着てるような服はきてるやつなんて1人もいない」
「どんなの着てるの?」
「それは言葉じゃ表現難しいかな……」
「じゃあ他は?」
「他……ああそうだ。屋台が毎日そこらへんで開いてたな」
「屋台ってお祭りの時にあるもんじゃないの?」
「お祭りとかあるんだ……まあ基本的にその通りだけど、やっぱ都会は別だな」
「ふーん……」
ソフィアの話もした。
聞いている間、これまでとは違って姿勢を正すとマジメ腐った顔で聞いていた。同い年の子が大変な目に遭っているということで思うことがあるのかもしれない。最近自分も危ない目にあったばかりだということも関係しているだろう。
「──だから、助けるためには色んな力と知識と知恵が必要なんだ。それと金と運」
「…………」
「何か小さなことでも良いから、異能を抑制することに関する情報があれば教えて欲しい」
「……アキヒロくんってさ」
「うん」
「ヒーローなの?」
「ええ……」
メチャクチャな事を言い出した。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない