【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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35_うちの子にします

 

「ヒーローとか……やめろよそういうの」

 

「だって人助けばっかしてるし……」

 

「してないしてない。勘違いだから」

 

 本当にたまたま時期が重なってしまったってだけで、人を助けたがりなわけじゃない。そもそも打算もあるからな。

 

「人を助けるのを生業としている、みたいなの全然ないからな?」

 

 そんな暇もない。

 

「ふーん……まあ良いけどさ。アキヒロくんって学校どうしてんの?」

 

「休んでるけど」

 

「……不登校?」

 

「行くときは行ってるからそこまでセンシティブな話じゃないな。学校にいるよりも別の場所に行った方が得られるものが多いってだけ」

 

「お父さんとかに何か言われないの?」

 

「言われないな」

 

「えーいいなー」

 

「良いも悪いもないだろ」

 

「だって好きにやっても文句言われないんでしょ?」

 

「まあ……そこに関してはうちの親が変わってるってところが大きいかな」

 

「アキヒロくんよりも?」

 

「おお」

 

「……どんな人たちなのか、スッゲー気になる」

 

「見た目は普通だな。母さんもまあ……クセはあるけど普通っちゃあ普通だ。父さんが異常者だな」

 

「え……」

 

「ぼく普通ですよーみたいな顔しといて一番やらかすの父さんだから。おかげでうちは貧乏だ」

 

 あの人があんなにトラブル体質じゃなければ加賀美家ももう少しまともな衣食住生活を送っていたのだろう。しかしトラブル体質に文句を言っても何も解決しないというのが非常に厄介で、加賀美エリックに何を注文したところで結果に影響は無いのだ。

 

 人死がまだ出ていないのが救いと言ったところか。だけど、過去に何かがあったためか本人の左半身には障害がある。左脚が痺れているため常に引きずるようにして歩いているし、左頬は爛れていてうまく頬が上がらない。

 

 それを父さん自身から語らないということはそういう事なので俺も聞かない。だけど、そのせいで狩りなんかは結局俺がメインでやってるな。終わった後の処理は割と任せることが多いけど……俺が息子じゃなかったらマジで茜は餓死してたと思うので2人には感謝してほしい。

 

「そんなやばいの? 殴られたりしない?」

 

「そういうヤバさじゃないな」

 

「怖くなってきた……」

 

「まあ普通に会う分にはマトモだから、あんま気にしなくて良いぞ。一緒に暮らすってなった時に初めてわかるタイプの欠点だよアレ」

 

「…………アキヒロくん、ウチに住む?」

 

「なんでだよ」

 

「なんか大変そうだし」

 

「大変……確かにそうだけど、なんだかんだで楽しいぞ? 普通に生きてたら聞かないような話が聞けるからな」

 

「アキヒロくんもそうだと思うけど。普通に生きてたらウチの山を走り回ろうとしないし、第1セクターで路地裏を探検しようとはならないもん」

 

「それはほら……趣味だから」

 

 学校生活はね、スパイスみたいなもんですよ。懐かしいけど……懐かしいだけで、あんまり行ってももう良いやってなっちゃう。小学校だな。小学校が一番楽しかった。

 生々しさがないというか、みんな勉強とか将来とかそういう煩わしいことを気にすることなく鼻ほじったりウンコ咎めたりミツキの髪色を弄ったりとかしてたからな。

 もちろんミツキの件はやめさせたけど。

 

「俺もアキヒロ君と同じ中学校行きたかったなー」

 

「ロイスが通うような学校じゃなかったけどな」

 

 貧乏人が通う学校なんで、さもありなんといった感じだった。小学校も同じだけど純粋な分まだマシだったか。

 

「えー、でもアキヒロくんと一緒に授業受けてたら楽しそうじゃん」

 

「そもそも学年が違うだろ」

 

「そこはこう……うまいこと」

 

「なんだそりゃ。というか第1セクターの話はもう良いのかよ」

 

「話聞くよりも、実際に行きたいなって……」

 

「そっか。まあ行く機会もどっかであるだろ」

 

「一緒に行こうよ」

 

「タイミングが合えば良いけど……今はちょっとな」

 

 あんまり遊興気分でいるわけにもいかないし、なんかよくわからんやつらもくっついて来てるし、ソフィアが今も苦しんでるはずだ。

 

「あれ?」

 

「ん? ……あの犬じゃん」

 

 神樹の裏から回り込むようにして、例の子犬が現れた。見た目は完全にスコティッシュテリアなので、全く神社らしくない。しば犬とかの方がそれっぽい雰囲気出てるよな。

 

 そんで、子犬はじっとコチラを見てはいるものの近付いてこようとはしていない。なので、手招きをした。

 

「な、なんでかみさむにあにゅにゅにゅ……」

 

「なになになになに」

 

 ロイスがいきなりぶっ壊れた。

 怖すぎる。

 神とか言ってた? 

 

「ロイスどうした。神様が何?」

 

「……言ってない」

 

「へ?」

 

「神様なんて言ってない!」

 

「お、おう……じゃあなんて言ったんだ?」

 

「…………か……」

 

「か?」

 

「か…………こ、こま様!」

 

「はい?」

 

「コマ様って呼んだんだよ!」

 

「あの子犬の名前か?」

 

「…………そうだよ!」

 

「何怒ってんだよ……」

 

「怒ってない!」

 

 こんな綺麗な『怒ってない!』があるだろうか。しかし突いてもさらに機嫌が悪くなるだけだという人類の叡智に従い、イジるのはやめておくことにした。

 

「クンクン」

 

 手招きに従って近づいて来た子犬は少し離れた場所で立ち止まった。目を細めたり身をかがめたり鼻を鳴らしたりしていたが、やがて怖い人じゃないってわかってくれたのかさらに近づいて来た。

 

「ヒンヒン」

 

「おっ、良い子だな〜」

 

「ヒン」

 

 可愛らしい鳴き声を発する子犬を抱き上げると、ぺろぺろと顎筋を舐められた。

 

「よちよちよちよち! おー可愛いなあ相変わらず!」

 

「…………」

 

「ロイスも普段世話とかしてんのか?」

 

「……世話!? 世話って……そ、そんなのできるわけないじゃん!」

 

「ええ……」

 

 お坊ちゃんには犬の世話は無理ということだろうか。そんな難しいことじゃないのに……ご飯とトイレと歯磨きさえ気をつければ20くらいまで長生きするぞ。

 …………この世界だと獣医なんていないからそこまでは無理か。

 

「じゃあ誰が世話してんの?」

 

「いやいや世話なんか誰も出来ないよ……」

 

「はあ!?」

 

「畏れ多いし……」

 

「ええ!?」

 

 この家、なんか変! 

 

「ーーコマちゃんは俺が持って帰ります」

 

「えあ!?」

 

「だって誰も世話してないんだろ?」

 

「い、いやそうだけど、する必要無いっていうか……」

 

「んなわけねえだろ……犬だぞ。家畜化された狼の末裔だぞ。ちゃんと世話してくれるって信じてるから任せたのに、放置してんだったら俺が明日連れて帰るからな」

 

「あうああ……」

 

 食い扶持に関しては、スコティッシュテリアって多分狩猟犬だし教えれば狩りも覚えてくれるっしょ。むしろ楽になるかも? 

 

「……と、父さんに聞いてもらわないとわかんない」

 

「でもお父さんも世話してないんだろ? じゃあダメじゃん」

 

「うう……」

 

 動物虐待は許しません。

 児童虐待も許しません。

 イジメも許しません。

 

「まあ、一応話は通しとくよ」

 

「…………」

 

 

 ──────

 

 

「うーん……」

 

 寝苦しさに目を覚ませば、ロイスが横向きに俺の腹の上に乗っかっていた。寝相いとわろし。

 すでに小鳥がちゅんちゅんしている。どこかから良い匂いも漂って来ている。調理中か、それともすでに食卓に並べられているのか。

 

「──お」

 

「よう」

 

 ロイスを押し除けて廊下に出るとルクレシアが待っていた。化粧も無しに綺麗な見た目だけどアラフォーなのだそうだ。コウキさんがレベル80オーバーでアレだし、やっぱ探索者ってわけえよな。

 

「朝、はええんだな」

 

「まあそれなりに、朝早くないと色々準備が終わりませんから」

 

「…………」

 

「あの……?」

 

 どこか気まずそうに腕を掴んでいる。

 

「悪かったな」

 

「おっそ」

 

「……」

 

「その謝罪するくらいなら最初からリーダー止めればよかったのでは?」

 

「…………」

 

「──というのは正論なんですけど、この際とことん付き合ってもらおうかなって」

 

「おえ?」

 

「まあそちらのリーダーの関心が尽きるまでの話でしょうけど、2級探索者がいればある程度の障害は無視して進めそうじゃないですか」

 

「お──」

 

「どうせウルフさんは気まぐれな方なんでしょうから、それならこっちも思う存分手伝ってもらいたいです」

 

「…………」

 

 面食らったというように目をパチクリさせるルクレシアはやがて、仕方ないと眉を八の字にした。

 

「お前、やっぱり面白えやつだな」

 

「ウルフさんほどじゃないですけど」

 

「同じくらいだよ、バカ」

 

 まあ! 聞きました奥さん! バカですってよ! 

 

「あー……と、よ」

 

「?」

 

「ん」

 

「……お」

 

 差し出された掌は、武器を扱っている人間とは思えないほど柔らかい。武器を振るう程度ではタコなどできないということだろうか。

 

「よろしくな」

 

「よろしくお願いします。ところでウルフさんは昨日も詩を作ってたんですか?」

 

「…………ソ、ソンナカンジ」

 

「ん? …………あ、あー! すいません! そういう……あははー! 秋川さんに挨拶して来ますねー!」

 

「くっ……!」

 

 想像通り、秋川さんは既に起きていた。

 

「──コマ様を持って帰る?」

 

「ええ、ワンチャンの世話を誰もしてないと聞いたので」

 

「コマ様……ワンちゃんの世話……? …………はっ!?」

 

 妙な反応は無視して、ロイスに話したことをもう一度伝えると大慌てで拒絶された。

 

「さ、流石にそれは許せない! どうか待ってください!」

 

「ええ? でも散歩もご飯もやってないんでしょう? 外に放し飼いの方が良くないと思うんですけど」

 

 許すとか許さないとか……そんなに可愛いならちゃんとお世話するのが飼い主の義務というものじゃなかろうか。

 

「可愛い……確かに可愛いですが、そういう話とも少し違うというか……わ、わかるでしょう!?」

 

 なぜ俺が同意を求められるのか。

 俺から振った話なのに。

 

「と、ともかくかみさむぐぐぐぐ」

 

 怖いんだが、この一家。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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