【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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38_塩の実、みーっけ

「塩の実……見たことないよ俺」

 

「じゃあロイスが行ったことないところ探さなきゃな」

 

「えー、でも俺もどっち行ってどっち行ってないとか全然覚えてないんだけど……来るたびに生えてる木違うし」

 

「そりゃあ山だからな。木くらい生えてんだろ」

 

そうは言っても手掛かりがなければ探索だってうまいこといかない。霧でヌタヌタじゃないのが救い、ぐらいの道を歩くとちょくちょく小動物が駆けていくが、一向に塩の実は見つからない。

 

山道なんて初見で覚えるもんでもないので、とりあえす川から離れすぎないように進んだ。近すぎると鉄砲水で沈むし、遠すぎると位置を見失う。俺一人ならある程度好き勝手できるけど、お坊ちゃん連れてってなるとそうもいかねんだ。

 

「はぁ……ひぃ……」

 

しかもロイスが大して体力無かった。

 

「なんで……つか……はぁ……そんな……スタミナ……」

 

「帰るか」

 

「………はぁ……はぁ……」

 

「一旦休んでからな」

 

「うん……」

 

背中さすったら汗びっしょり。

汗冷えするから脱がしたわ。

 

「川で水浴びて来い」

 

「はぁーい」

 

「俺も入ろ」

 

微妙に温い川に入ると汗を清水が綺麗に流していく。

 

「なあ、全然冷たくないよなこの川」

 

「だって神様の土地だもん」

 

「全部それで納得すると思ったら大間違いだからな?」

 

「実際そうだし」

 

しばらく川面に浮かんでいたら汗も引いた。ロイスも俺もフルチンだったので、誰かに見られていたら水死体と思われていただろう。

 

「うはあ、服まだちょっと湿ってる」

 

「歩いてるうちに乾くって」

 

「うーん……きもちわる」

 

川を上っただけになってしまった。

魚も取らず、実も手に入らず、何をしてるんだと若干正気に戻りつつ下っていくと雷のような音が鳴った気がした。

 

「なんか音が……」

 

ロイスも聞こえたらしい。

少し考えた。

 

川で雷のような音が聞こえる。

一番わかりやすいのは雷だ。

川上で雲が発生して雷が鳴ったというのは十分にあり得るだろう。なにせ雷のような音なんだから。

次はモンスター。

遠吠えや異能の発動音の可能性がある。通常の生物の常識に収まらない彼らなら、雷に匹敵するような音を発生させることだってできるだろう。

 

しかし自分でそんなことを考えながらどちらもしっくりこない。というよりも、俺はこの現象を知っているような気がした。

 

「なんだったっけ……」

 

「――う、うわわわ」

 

「お?」

 

「うわっ!」

 

ロイスがすっ転んだ。

せっかく乾きかけだった服がまーたびしょ濡れになっちまったよ。

 

「大丈夫か?ちゃんと足元見ろよ?」

 

「ち、ちがうよ!なんかいきなり水が足元まで!」

 

「え?………あ………あ!」

 

「わっ!な、なに!?」

 

大急ぎで離れた。

ロイスの困惑する声が聞こえたけどガン無視で、3〜40mは離れた。

 

「ふぅ……危なかったな」

 

「………」

 

振り返ると、さっきまで俺たちがいた場所は水の中だった。上流でたくさん雨が降った時はこうなるもんだけど、そういうことなのだろうか。鉄砲水を体験した経験はそれこそ一度や二度じゃないけど流石に久しぶりすぎて思い出せなかった。

 

「霧季でも雨降るんだな」

 

「………」

 

「まあ焦ってもしょうがねえや。増水しようがなんだろうが下れば帰れる。どうせ俺たちあの川から離れてねえんだし」

 

そんなことを言っていた時期が、俺にもありました。

 

「おっかしーなー、全然つかねえぞ」

 

「………」

 

「なあロイス、俺たちこっちから来たよな?」

 

俺は方向音痴じゃない。時間と太陽の方向で大体わかるし、太陽が出てないこの時期でもある程度マッピングできるという自身はある。だというのに、俺はどうして霧の中で1時間も歩いているんだろうね。

 

「川を下ってきただけだぞ」

 

濃い霧に巻かれて間違えた川を進んでいたりするんだろうか。あり得ない話じゃない。

 

「……神隠しかも」

 

「おお、神隠しか」

 

「やっぱりあいつを連れてきたのがダメだったんだ……神様が怒ってるんだ……!」

 

「落ち着けって」

 

「な、なんで落ち着いてられるんだよ!俺たち見捨てられちゃったんだぞ!」

 

「まだなんもわかんねえだろ」

 

「父さんはよく言ってるんだ!良い子じゃないと神様は味方してくれないって!……勝手に入ったから怒ってるんだよ!」

 

主張がめちゃくちゃだ。

良い子じゃなかったのはアオキだし、秋川さんからちゃんと良いよって言ってもらって入ってるんだから勝手に入ってないし……いや、そこはわかんねえか。

 

「はぁ……もう死ぬんだ俺たち…………はっ!?」

 

「おや」

 

「あ、あああああれって……」

 

「そうだな。モヤだな」

 

「あわあわあわあわあわあわあわわわわ」

 

「あぶなっ!いきなり走り出そうとすんな!」

 

「ひい!」

 

「もういいから!……はい!ほら、消えた!」

 

手に触れたらパッと消えるこのモヤ。

空中でウネウネと蠢くこいつらのことをロイスはたいそう恐れている。初遭遇時はちょうど襲われて漏らしてるところだった。なんだろうね、第二期の人類特有の生理的嫌悪感を刺激されるのかもしれない。

 

「はぁぁ……」

 

「座っても何も解決しないぞ」

 

どうしてこうなってしまったんだ。

俺はただ、魚を食べたかっただけなのに。

……料理人とロイスのせいじゃねえか!

 

『お前達が俺の魚食べるからこうなったんだぞ!』

 

映画だったらこんな風にキレ散らかしてロイスを酷い目に遭わせてるのかもしれない。とてもお間抜けだが、それに見合うだけの目には遭ってると思う。

 

「な?お父さん達心配してるから早く帰ろうぜ」

 

「………うん」

 

 

――――――

 

 

「塩の実だ……」

 

「おお!お手柄だな!」

 

「嬉しくないよ……」

 

1日が経ちました。

俺たちはどうやら神隠しにあったようです。

流石に半日使って山を下り続けたのに帰れないのはおかしい。この山の麓は街に綺麗に繋がっているはずだからな。

 

ソフィアを助けるために来たはずなのに、何をお間抜けな事してるんだと正直自分自身に腹が立ってはいる。しかしそんなお間抜けで死んでしまうのはさらに情けないのでさっさと抜け出したい。

 

「だからロイス、打開策を考えてくれ」

 

「そんなこと言われても……」

 

神様の考えることなんて俺たち凡人にはわかりやしない。

なのでこうして焚き火を死ぬ気でつけるのが精一杯だ。

 

「このジメジメしてる中でよく火つけられたよね……」

 

「気合いってやつだな」

 

火を焚いたということは調理が可能ということだ。

魚を釣ろう。

 

「無理だよこれ……めっちゃ濁ってて魚なんて見えないもん」

 

流石に鉄砲水の後は清水でさえも茶色くなってしまうようだ。適当な枝に蜘蛛の糸と蔦で虫をくっつけてみたけど、それを活かす場面がない。ただ虫さんがぷらぷらしているだけになってしまった。

 

「網でも作るか?ばちゃーんって投げ込めば……いや、石とかに引っかかるだけか」

 

「………」

 

流石にそこまでする気にはならなかった。腹は減ってるが、魚がダメなら木の実を取ればいいじゃない。

いいじゃない……

 

「なんで塩の実しかねえんだ」

 

「……」

 

「さっきは全然なかったのに変なとこだな」 

 

探せど探せど水は濁ってるし塩の実しか見つからないし、しまいにゃ水分不足で死ぬぞ。火だって燃えさしは持ってきたけど霧のせいで次にちゃんと燃え上がらせられるか微妙なところだ。中が乾いてるキノコでもあればいいんだけど。ちなみにキノコで火を付けたことはない。

 

「ねえ……俺たちここで死ぬのかな……」

 

「死なねえって。死ぬとしても多分俺だけだ」

 

「なんで?」

 

「だって俺よそ者だし」

 

――不可解だ。

全てが不可解だ。

迷い込んで脱出できないということが不可解なこと以上に、それにロイスが巻き込まれているというのが不可解だった。だって『秋川』だぞ?

神様の土地をしっかりと治めて、なんとかってお役目も果たしている。ちゃんと像まで立てて神様を祀って信仰を集める一端を担ってるのに、その役目を継ぐであろう息子が囚われちゃった。

なんぞこれ。

 

だからこそ、ここから先はホラー展開で俺だけ死ぬということが普通にありそうでいやすぐる。

 

「あーあ、ロイスを逃して俺だけ死ぬのかなー」

 

「ええっ!?そうなの!?」

 

「わからない。助けてくれ」

 

「助けるって言っても何すれば……」

 

「祈っといて」

 

神様なら祈れば聞いてくれるだろ。

 

「神様……!」

 

膝をつくとぎゅぅぅと目を瞑って祈りだした。

5分くらい経つとコマちゃんがやってきた。

 

「おいおい、祈りパワーすげえな」

 

「!――か、かみゅん!」

 

安心したのかロイスは訳のわからないことを宣いながらコマちゃんに抱きついた。

 

「どうやってきたんだ、おまえさん」

 

「ひん」

 

「ふむ……」

 

やってきた方向。

もしかしたらそちらへ逆行すれば戻れるのかもしれない。

 

「こっち行ってみるか」

 

「ひん?……ひん!」

 

「……こっち?」

 

コマちゃんはひゃんひゃんと可愛らしい鳴き声で俺の前に立ちはだかると、違う方向を必死に指し示した。このタイミングで現れたので流石についていくしかない。

 

「あひぃ」

 

安心しすぎて腰の抜けたロイスを担ぎ上げ、先導のつもりか短っけえ足をちょこちょこ動かして先を進むコマちゃんを頼りに木々の間を進んだ。

 

 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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