【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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4_ハラハラ

「うう……」

 

 今、私がこうしている間にもアキがモンスターに食べられているかもしれない。

 泣き叫んで、助けを求めているかもしれない。

 でも、私には何もできない。それが悔しい。

 心を落ち着かせようとソファーでクッションを抱いていたけど、結局立ち上がって、キッチンで冷蔵庫の中を見たりお皿を見たり。

 

「あああ……大丈夫かなぁ……」

 

「ミツキちゃんは心配性よねえ」

 

「だってえ……」

 

 そんな事をしていたら、アキのお母さんがやってきた。

 アキの部屋だし、いつもの事だ。

 いつも、こうして不安になっている私はおかしいのかな。

 

「ほら、座りなさい」

 

 ダイニングのテーブルに向かい合って座る。

 

「大丈夫よ、あの子はおかしいから」

 

「おかしいからって……」

 

 アキのご両親は放任主義というか、アキに干渉しない。

 私の親とは真逆だ。

 あの変人っぷりも、こんなご両親だから成り立っているのかな。

 でも、親からおかしいと言われる息子って……

 

「探索者の適性があるなんて、おかしい以外の何者でもでしょ」

 

「ま、まあそうかもだけど……」

 

「あの子も、真面目にしてれば優秀なのにねえ」

 

「それは本当にそう」

 

 アキは国立の大学に通っている。

 学費が安いからだそうだけど──このご時世、大学に通うのは高い学力が無いと無理だ。

 そんな大学に通って何をしたいのかと思えば……牛肉を安く仕入れる方法だとか、牛を安く飼う方法だとか、ダンジョンの生き物の生態だとか、そんなことばかり図書館で調べている。

 ……あ、一応私も同じ大学に入ったからね。

 

「牛肉を安く仕入れる方法なんて無いっつーの!」

 

「あはは……」

 

「自分の金で通っているから私たちも何も言わないけどね? 才能が勿体無いわあ」

 

 アキが牛肉に執着しているのは昔からだ。

 私と出会う前から、牛肉がご飯の献立に含まれていないことに文句を言っていたって。

 そして何を見ても、楽しみこそすれど、そういう事もあるって驚きはしないんだとか。

 ……頭のネジが数本は外れてる。

 

「ネジ? 全部外れてるでしょ」

 

 実のお母さんから、この言われよう。

 

「でも、あれよね。あの子は手がかからないわね」

 

「茜ちゃんは元気だもんね」

 

「兄妹であそこまで違うのも珍しい……わよね?」

 

「うん」

 

 何を言われずとも家事を手伝うし、妹の癇癪に付き合うし、勉強だって当然のように毎日やる。

 そして、ダンジョンにも潜る。

 

「茜ちゃんが普通なんだと思う」

 

「そうよねえ」

 

 肘をついて、外を見るアキのお母さん。

 私のマンションが見えている。

 

「こんな良い子を放ってダンジョンにとか……クズね、クズ」

 

「そ、そんな、クズとか言わないであげて……」

 

「はぁ……ダメだこりゃ」

 

「なにが?」

 

「思春期の子供ってチョロいなって」

 

「……確かにそうかも?」

 

 みんな、年齢が上がるにつれてアキの凄さに気付いた。

 小学校でもモテて、中学校でもモテて、高校でもモテた。

 でも、本人はずっと牛肉のことを見ていた。

 そういうのはもう満足してるんだって。

 満足って何? 

 

「そうね……あの子、そういうのに興味あるのかしら」

 

 幼馴染の母親と話すことじゃ無いのかもしれないけど、本当に疑問ではあった。

 

「ミツキちゃんが可愛すぎて他の子が見えてないのかもね」

 

「…………」

 

 何て返せば良いのか分からない。

 アキが、私に対してそんな目を向けてきたことは一度も無いから。

 少なくとも私はそう思う。

 

「そんな顔しないの」

 

「あ、うん……」

 

「あのね、ミツキちゃんがいるから明宏は人間のままなのよ」

 

「え?」

 

「きっと、ミツキちゃんがいなかったらモンスターになっちゃうわ」

 

「そうなのかな」

 

「そうよ。さて、掃除は……必要無いし、ご飯でも作りますかね」

 

「あ、私もやる」

 

「んふふ、ありがと」

 

 私が楔。

 そんな事、考えた事もなかった。

 でも……そうだと嬉しいな。

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