【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「聞いたことないか? 一級探索者はまともじゃないって」
「ある……と思いますけど、みんながみんなそうってじゃないんじゃないですか?」
「そういう甘っちょろい意見があるのもわかるけどね、こればっかりは体験しないとわかんないよ」
「…………気が触れてるって、具体的にどんな感じなんですか?」
「1級探索者ってのは、ただひたすら自分の思いを貫き通したやつらなんだよ。だから、基本的に自分の興味のあることにしか目を向けないし、そうじゃないことに目を向けたとしても一瞬で興味がなくなる」
「でも、あの人はそんなふうに思えませんでしたよ」
ウルフと2人で街を歩くコウキは、確かにその威圧感で視線を集めてはいるが至って正気。どこもおかしな振る舞いをしているようには思えない。
「あれは特別な例なんだよ。あれを1級探索者基準として見始めたらおかしなことになるから、例外として見ないとダメ」
しかし、ソフィアとて1級探索者という言葉にそこまで馴染みがあるわけではないので、他の例を想像しろと言われても難しい。せめて具体例があればといったところか。
「1級探索者に会えたとしても、何聞いたって答えなんか返ってこない。だからウルフにとってはチャンスなんだよ」
「ーー話が通じるから!」
「そうゆーこと」
「……どこに行くんでしょうか」
「うん、つけてみようか」
「えっ」
「なんか嫌な予感もするし」
「嫌な予感?」
よくわからなかったが、彼女が言うのであればそうなのかもしれないとソフィアは納得した。ソフィアみたいな素人に尾行なんて、そもそも足音を消すことすらできないということでルクレシアの背に乗る。やや離れた場所だが、話は細々と聞こえてきた。
「──あの少年は、どうしてあそこまでしてあの少女を助けようとするのだろうか」
「ふん、知ったことか。あいつの考えてることなんか、いちいち追ったって意味ねえんだよ」
2人の話題は加賀美明宏へと移行していた。
共通の話題が薄いというのもあるだろう。
「その発言……やはり過去にもいろいろあったということだな?」
「そりゃあ色々あったよ、色々な」
ソフィアはそれを聞いて理解が及んだことがあった。今回の件は彼の感情のみに基づいた突発的な事じゃなく、性質に基づいていることだったのだ。
自分のことを助けた──それ自体にはもちろん感謝しているが、あまりにも場慣れしているように感じた。過去に何度も同じようなことやっているのであればそれは納得だ。
「つっても、ここまで大げさな話になってんのは初めてだと思うぜ。しっかりしてるって言ってもガキだから、解決できる物事のサイズにも限界があるしな」
「どういうことだ?」
「基本的に自分が背負えるギリギリのところまでしかあいつは挑まねえ。本能的にか考えてるかはわかんねぇけど、ギリギリを攻めるのが得意なんだよ」
「では、今回の件についても彼自身で解決できると?」
「知らねーって。俺は預言者とかじゃねーんだよ。コレまでがそうだったから今回もそうだとは限らねえしな」
ソフィアたちは顔を見合わせた。
とても興味深い話だ。
あの少年は、自分が解決できる結果のところを攻めるのが得意だと。
そしてコウキの口ぶりからして実際にそれらを解決してきたのだ。
であれば──
「明るい話、みたいだな」
「はいっ! …………」
ソフィアにとっても喜ばしい話だった。しかし、同時に思ってしまう。これまで見捨てた人もいたということだろうか、と。
助かる見込みがないのであれば、切り捨てられてしまうのだろうか。
助けられた分際で思うことじゃないかもしれないけど、それをかわいそうだと思ってしまう自分をソフィアは自覚した。
「もしや、アキヒロ少年は彼女の問題を解決する糸口を既に掴んでいるのか……?」
「そこら辺は直接聞けって」
「……謎は深まるばかり、か」
「俺だって付き合いあるけどあいつが何考えてるか未だにわかんねぇからな。ミツキは多少わかってるっぽいけど」
と真面目そうな話をしていた2人だが、だんだんと周囲の様子が変わってくる。比較的人の集まっていたエリアから、少し混み入り、人通りも少ないエリアにやってきた。繁華街(当社比)の騒音レベルと比べるとだいぶ静かだ。
「ここら辺、静かですね」
「……」
「ルクレシアさん?」
「ん、ああ……」
先ほどまでは楽しそうな笑みが横顔に見えた。
それが一転して面白くなさそうに二人の背中を睨んでいる。
「どうしたんですか?」
二級探索者の嗅覚がなければ気づけない何かに気づいてしまったのかもしれない。自分もそれを確認したいとソフィアは周囲に視線を向けてみた。
「……探索者?」
すれ違う人の装いを見ると、ボディーアーマーや武器を身に付けているものが多い。男2人、男3人が下卑た笑い声を上げながら歩いている。女のみと言うのは見られなかった。
そしてウルフとコウキも、同じ方向に歩いていく。
これは一体どういうことだろう。
ソフィアの疑問に答えるように、その建物は姿を表した。
「ここに来るのは久しぶりだな」
「結婚してるという話だものな」
「…………」
「しかし!今宵はそんなこと忘れて楽しもうじゃないか。どうやら、我々に対して門戸を大きく広げてくれているようだからな!はーっはっは!」
『いらっしゃ〜い!』
「な?」
「……仕方ないな、これは仕方ない。だって店の前まで来ちゃったから、うん、仕方ないな」
「そうだ!」
楽しそうだ。
実に楽しそうだ。
どんな店かは看板を読まなくとも一瞬で理解できる。
「あわわ……あ、アレって……」
「付いてくよ」
「えええ……!?」
「ここまで来て逃すわけにはいかない……!」
強固な信念を発露させるルクレシアと違い、ソフィアは乗り気ではない。そもそも男が行くところという程度の認識はある上に、あの二人がそこに行こうが──気持ち悪さはあるけれども、直接的には関係ないのだから。
今この場で声を掛ければいいんじゃ……なんて事も思い付いただけで口にはしなかった。
「ソフィア、アンタはここで帰ってもいいよ。私は……逃がさない!」
「ふええ……」
なんだか視界がぐるぐると回り始めたような気がするソフィアは、自らに起きている変化に気付けなかった。
「──冷気!」
「はっ!?」
動揺の為か。
抑えていたはずの冷気が漏れ出していた。
そして──
「意外と……尾行がうめえな」
一人の男が二人の横に現れていた。
つられるようにもう1人も気付く。
「なっ!? ル、ルクレシア!? 何故ここに!」
「…………何故ここに?」
「あ、いやっ」
明らかな失言。
ウルフは慌てたように口を抑えた。
先ほどの明々朗々とした笑顔はどこへいったのか、浮気の場面を目撃されたような情けない狼狽だ。
「これは……そう! 付き合いだ! 我々の仲を深めようと……そういうことだ!」
「だったら、そこら辺の飲み屋でいいよなぁ?」
「それはぁ…………どう思う?」
黙りこくっていたコウキに次のカードが渡された。
どんな手札を切るかによってこの後の何かが変わる。そんな予感が場に満ちた。
「……俺はこいつに誘われただけだ。お前が言った通り、最初は飲み屋で話すつもりだったぜ」
切り捨てた。
「んなっ!?あ、あまりにも早すぎる! ……はっ!?」
「おい……ウルフ、今のは本当か?」
「ヒェッ」
首元にまで詰め寄ってきた仲間の顔。
見慣れているはずのそれに明らかに怯えた表情。
自業自得ではあっても、哀れみを誘った。
「ーーあいたたたたた! 耳を! 俺の耳を引っ張るな! ちぎれる!」
「だまれ」
ウルフはそのまま引き摺られていった。
「あー……」
「…………」
気まずい。
取り残されたソフィアは、隣に立つモヒカンの男をチラリと横目で見た。すでに視線を自分に向けていたことに気づくと、慌てて逸らす。
シンプルに怖いし、先ほどのやりとりを見ていたので気まずいしで目を合わせたいとは思えなかった。
「……なんかわりいな、変なの見せちまって」
「…………あ」
なんと返せばいいのかわからず、小さく頷くことしかできなかった。そしてここからどうしよう、というところで思い出す。
1人、まだ見ていない人がいる。
親交を深めようという考えでいくつかのグループに分かれたのにどこに行ったのだろう。
ロイス、アオキはチラッと見た。
コウキ、ウルフは今見た。
ソフィア、ルクレシアは自分たち。
では、
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない