【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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41_尻尾ピーン

「ヒロさん」

 

「はい」

 

「ヒロさん」

 

「はい」

 

 今、正座をしています。

 全く訳がわかりません。

 何が彼女の逆鱗に触れたのでしょうか。

 とても怖いです。

 

 ……でも、ちょっとだけ悲しそうな顔をさせてしまった。

 

「ヒロさん」

 

「あの……」

 

「ヒロさん」

 

「……はい……」

 

 いつも呼ばれているのと同じ呼び方なのに、何故こうも違いが出てくるのでしょうか。

 尻尾も耳もツンとしています。

 こんな姿、見たことありません。

 全面的に俺が悪いのは百も承知ですが、理由を教えて欲しいです。

 わからないんです。

 いや、本当に。

 

「なんで正座をしているか分かりますか?」

 

「わかりません……」

 

「今、なんで考えずに答えたんすか?」

 

「ごめんなさい……」

 

「…………ヒロさんは、私が男の人と遊びに行って朝帰って来たらどう思いますか?」

 

「成長したなって」

 

「……あとは?」

 

「嫌だなって」

 

 正直、嫌すぎです。

 三重(さんじゅう)の意味くらいで。

 

「──そ、そうですよね!?」

 

「はい」

 

「ヒロさんでもそれくらいは思いますよね!?」

 

「え、はい」

 

 なんか馬鹿にされてる? 

 

「そしたら、私がどう思ったかわかりますよね!?」

 

 分かんないけど、文脈的には……

 

「すごい嫌?」

 

「……なんで分かるのに、あんなこと言ったんですか?」

 

 どの事だろう。

 このままだと致命的なすれ違いが起きる気がする。

 言葉を──紡がなければ。

 

「アリサ……俺は正直、どれが嫌だったのか分からない」

 

「なんっ…………はぁ…………アイツって、ミツキさんです……よね……?」

 

 瞳が揺れている。

 でも……なんで? 

 俺がミツキと幼馴染だということなんて知っているだろうに。

 

「そうだよ」

 

「…………よかった」

 

「?」

 

「ミツキさん以外だったら、立ち直れなかったっす……」

 

「以外って、変なこと言うな。俺の本性を知っても関わり続けるのはお前とかミツキ、秋川、深山、ヒナタ、コウキさん──」

 

「多いっす」

 

「いや、でもほら……膝枕する相手に限ってはアリサとミツキとアカネしかいないから」

 

「…………」

 

「うん? どうした?」

 

 床の上で正座。

 そんな俺の前に、アリサもストンと腰を下ろした。

 もちろん座布団を敷いて。

 

 少しだけ、俯いている。

 恐る恐ると表情を確かめると、唇をかみしめているのだけは分かった。

 我慢強い子供が泣き出す寸前のような。

 そんな雰囲気を纏っている。

 

 膝上で強く握りしめた拳はスカートに板根のような皺を生み、何某か良くない感情を抱いているのは明らかだ。

 俺がもっと察しが良ければ、これを見ただけで最適な反応を返せるんだろうに。

 

 アリサは、途切れ途切れに意思を吐露した。

 

「…………その……わがままだって……分かってるんすけど……前から……思ってて…………」

 

「うん」

 

「そりゃあ……ミツキさんの方が……わた……私より、付き合い長いし……仲も良いのは、分かってますよ……」

 

「そんな事は──」

 

「いいんす……分かってますから…………でも……一応…………一応っすよ? ……私もほら、女? じゃないすか」

 

「一応ではないけど、うん」

 

「あと…………今、ヒロさんがいるのは私の部屋? みたいな?」

 

「う、うん」

 

「それで…………お、おお女の子と一緒にいる時に、別の女の子の名前を出すのって……一般的によくないじゃないすか! あくまで一般的に!」

 

「…………」

 

「あ、別にミツキさんの名前出すななんて言ってないすよ!? だって幼馴染っすもん、名前ぐらい出ますよね! あはは……」

 

「…………」

 

「……ごめんなさい、本当は嫌です」

 

 垂れ耳ちゃんと垂れ尻尾ちゃんも、同じことを言っているようだった。

 

「私といる時に別の人の話を出されると……モヤッとするんっす」

 

「そっ……か……」

 

「でも、あの、ほんと、ただのワガママなんで…………ごめんなさい」

 

 アリサがペコリと頭を下げた。

 胸が痛い。

 そんな事で頭を下げさせた自分が恥ずかしい。

 そんなしょぼくれた顔しないでくれ。

 なんとかしなきゃって使命感が胸に湧き上がってくるから。

 

「わかった、アリサと二人きりの時は他の人の話はなるべくしないよ」

 

 耳が少しだけ、ほんの少しだけ上向いた。

 

「ミツキさんの話も……」

 

「わ、分かった、なるべくしない」

 

 尻尾ちゃんがソワっとした。

 

「……膝枕も、して欲しいっす」

 

「お、おう」

 

 皺が緩んだ。

 

「プレゼント……そろそろ渡して欲しいっす」

 

「この後ちゃんと渡すから」

 

 尻尾ちゃんがヌヌヌって立ち上がり始めた。

 

「ミツキさんの……次とかでも良いんで……あの……」

 

「ミツキ?」

 

「や、やっぱりなんでもないっす……!」

 

「そ、そうか」

 

 なんの話? 

 ミツキの次ってなんだ? 

 俺の頭じゃ理解しきれなかったぞ。

 アリサの声が小さくてちゃんと聞き取れなかったのかもしれないけど……

 

「あと……」

 

「え」

 

 ま、まだある!? 

 俺を混乱の渦に叩き落としても、まだ足りない!? 

 これが現代っ子!? 

 100年後の高校生って実はこんな感じ!? 

 俺ってこんな子達の生徒会長やってたの!? 

 凄いな俺! 

 よく生徒会長になれたな! 

 

「これからも、ずっと……一緒に探索者のお仕事したいっす……」

 

「あ──」

 

「ワガママ……すよね……」

 

 ここまで図太く要求しといて、いきなりシオシオすんな。

 

「ほら、小指出して」

 

「え?」

 

 ちっせぇ小指だな。

 

「ゆーびきーりげんまん嘘ついたら針千本のーます、ゆびきった!」

 

「な、なんすか……これ」

 

「約束のおまじないだ」

 

「──っ! じゃ、じゃあ!」

 

「よく分かんねえところもあったけど……俺はアリサの先生だからな」

 

「〜〜〜〜〜〜っ!!!」

 

 あぁすんごいねぇ〜。

 尻尾がビンビンだ。

 若さだなあ。

 ……のわっ!? 

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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