【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
ロイスが提案した名案(自称)。
その詳細とは……!
「コマちゃんに街中を歩いてもらって、みんなに募金してもらおう!」
空は寒々しく、濃い霧が世界を覆っていく。人の気配すら飲み込む強大な摂理が大地を揺るがし、そこに住まう者たちを恐怖に陥れようと──
「いやいやいやいや、なんでみんなそっぽ向くんだよ」
「すまん、何言ってるか分かんなかったわ」
「なんで!?」
やっぱり宗教にのめり込んでるやつはだめだな。
金持ちらしく帝王学でも学んでて人心掌握で何とかしてくれるのかと思ったら、コマちゃんがそこら辺をうろつくだけでお金が集まるとか……期待して損した。
「な、なんでだよ! みんなコマちゃん大好きだろ!」
「まずお前は、ここが第一セクターってことを思い出せ」
「? ……うん、知ってるよ」
「ここにいる人たちはな、そもそもコマちゃんのことなんて知らないぞ」
「何言ってんの!?」
こっちのセリフだ。
なんだこれ。
いつものワールドギャップかと思ったけど、他のみんながスンとしてる。シンプルにロイスがおかしいだけだ。
「ソフィア……?」
「うーん……あはは」
「……ア、アオキさん?」
「全部そいつが言ってくれた通りだ」
「う……」
「う?」
「嘘だ!」
まさかの、現実を認めないモードに入った。
コマちゃんのことを知らない人間で溢れた世界なんて、想像もしたことがなかったようだ。あまりにも極端すぎる田舎っぺ思考。
「よかったな、このタイミングで勘違い直せて」
「うう…………っ! コマちゃん……!」
足元にすり寄ってきたコマちゃんを、壊れ物に触れるような繊細な腕回しで抱きしめた。そんなロイスに対してソフィア達は生暖かい視線を向けている。
「……あれ、じゃあお金どうすんの?」
「はぁ……」
これが振り出しに戻るってやつですか?
考えてたのはコッチでバイトしながら捜索を進めてくってことだけど、それでも最初は荷物を置く場所が必要だ。どこか良い場所……ネルさんもあんまり迷惑かけたくないからなあ。
「い、いざとなったらみんなで野宿しましょう!」
「なぜ私たちもみんなに含まれてるんだ……?」
別にそんなつもりはないけど、探索者なら野宿も慣れてるだろ。2週間や3週間外で寝泊まりしたところで何の問題もない。
「いや、俺は普通に宿に泊まりたいんだけど……」
「それなら2人は一緒に泊まらせてやってください。お邪魔にならない程度で」
「安宿ぐらいなら教えてやれるけどよ」
「充分です。そうだよなロイス」
「え? 何で俺?」
この中で1番生ぬるい生活してたやつに聞かないで誰に聞くんだよ……ロイスは一応お金持ってきてるし──どれくらいかは知らないけど──ソフィアと同部屋で泊まれば安く済むだろ。
「へぇぇっ!?」
「なっ……なっ……わ、わたっ」
良い反応だ。
「お前は?」
俺にそんな金があると思っているのだろうか。お金は浮けば浮くほど良い。良い宿に泊まれば銀貨、安い宿に泊まれば銅貨、泊まらなければタダだ。
最高だね。
幸いなことに、最初に第一セクターに来たときのキャンプ地は覚えてる。今回もあそこをベースとして使えば、あとは毎日の集合場所を決めておくだけで何の問題もない。
「アホか」
「いてっ」
殴られましたよ!
今、アオキに殴られました!
これは重大な事件じゃないですか!
探索者が一般人に暴力を振るいました!
こんなことが許されて良いのでしょうか!
「人聞きの悪い……馬鹿ガキに説教するのは大人の役目だろ」
「えーっと……暴言も追加と」
「そいつら2人だけで宿に泊まってたらすぐ襲われるだろうが。そんなこと考えたらすぐわかんだろ」
「え?」
ちょっと何言ってるかわかんないです。だって、俺は1人でどっかに泊まってる時襲われたことないですからね。
確かにミツキはよく襲われるけど、あれは一級探索者の娘っていうバリューがあるからと、特徴的な髪色がこれ見よがしに晒されているからでしかない。
この2人の特徴的な部分が何かと言えば、ひとえに顔の良さだ。俺が変態おじさんだったら確かに襲うかもしれないけど……
「全部わかってんじゃねーか」
「ええ? でも俺は──」
「お前の話してねーだろ。大体なぁ、お前みたいなムキムキで目がパキってるやつを誰が襲うんだよ」
「パ、パキッとらんわい!」
その言い分だと俺が不審者みたいだ。
……確かにモチベーションは高いけども!
「そもそも、普段の振る舞いからして半分ぐらい不審者だけどな」
「……ふ、ふん……俺はネガティブトークには屈しませんから……」
「言ってろ」
俺に対する熱い風評被害はそのうち解くとして、結局のところの問題は別にある。
ロイスがソフィアの分まで出すのはまあ良いとして、俺は絶対年下には奢られないって決めてるから自分で出したい。でも宿代は使いたくない。でもアオキの言葉を蔑ろにして後悔もしたくない。
くそっ、余計なこと教えてくれやがって……ありがとよ!
もちろん皮肉だ。
──────
「あ? だからこいつら泊めろって言ってるだけだろ」
「だからね、宿が埋まってるって話を……」
「嘘こけ、あそこの3部屋空いてるじゃねーか。誤魔化しても分かるんだからな」
「…………」
「馴染みの探索者でもいるんなら俺が話しつけてきてやるよ。教えろ」
アオキ、強い。
グイグイと宿の店主に詰め寄り、反論を許さずに話を進めていく。このアグレッシブさならインドでも上手くやっていけるに違いない。インドはいいぞ。よくない。
「話を作るだけならウルフの方が上手いけど、こういうアドリブオンリーのやつはアオキなんだよな。圧あるし」
多分だけど、圧が半分以上の要素を占めてると思う。
「おら、いつまで黙ってんだ。客が聞いてんだぞ? 答えるのが店員のやることだろうが」
うーん、よくない。
「アオキさん、そこまでで」
「あ?」
「俺にまで凄まれても困ります──じゃなくて……そこまで詰めても泊まれないって言ってるんだから無理なんでしょ。次行きましょうよ」
「黙れ、もう少しでいけるんだよ」
「いやいや無理がありますって」
「……なあ!? いけるよなあ!?」
「ひぇっ」
結局、助けを求める目をしている店主を援護することはできなかった。コレで俺も蛮族の仲間入りってわけだ。
つっても、折れた方が悪いからもう気にしてないけど。いくら力を振り翳して押してこようが、探索者として活動する以上、商工会の持つ頚城から逃れることはできない。
耐えればよかったものを探索者の持つプレッシャーとかいうやつに負けてしまったのだから、俺も知らんという話ですわ。
「ひゃん」
「お前……ロイスの部屋行かないのかー?」
「ひゃん」
「よしよし」
抱き上げると尻尾を揺らす。
子犬を連れてきて大丈夫か、正直なところめちゃくちゃ不安だったけど──
「お利口さんだなぁ」
「ひゃん」
片手に収まるサイズだ。
飛び出してしまったとしても移動できる範囲なんて限られているけど、毛並みもツヤッツヤで可愛い顔立ちの犬を見たら売って金にしようと思う輩が湧くだろう。
「逃げたら怖い人に捕まって食べられちゃうから、大人しくするんだぞー」
「ひゃん! ……はっ、はっ、はっ」
「ん?」
何か、挙動がおかしかった。
バタついていた尻尾が丸まり、四肢に力が籠っていく。コレは……この感じは……
「…………!」
「ちょ、まっ──」
まさか部屋に入ってすぐこうなるとは思わないじゃん……
「なーんだ、アキヒロくんもお世話の仕方よく分かってないんじゃん」
「赤ちゃんのおしっこのコントロールなんかできるわけねえだろ!」
バレないように片付けていたのに、案の定コマちゃんの様子を見にきたコマちゃん好き好きマニアのロイスに見つかった。くそう、隠滅がもう少しで完了したのに……
「だからリードがいるって言ってんのによ……ロイス、あっちではコマちゃんのおしっこ家の中でさせてたのか? 散歩は?」
「いやいや、知らないよ」
てんで役に立たない。
何も言わないでいてくれた方がまだマシというものだ。おしっこの後片付けも全然手伝ってくんねえしよ。
「だって……流石におしっこは触れないよ、俺も」
「じゃあなにか? おしっこを触るのは俺みたいな下人の仕事だってのか?」
「そうは言ってないけど」
「言っとくけどな、コマちゃんがお前の部屋に泊まろうとって思ったらコレされるのお前なんだからな?」
「…………そしたらアキヒロくん呼んでいい?」
「ダメ」
「で、でもあれでしょ? コマちゃんはアキヒロくんの部屋泊まるんでしょ?」
「まあな」
「…………枕持ってきていい?」
「は?」
「ほ、ほら、アキヒロくんも寂しいっしょ?」
こいつ……!
下の世話だけ俺に押し付けてコマちゃんを堪能しようとしてやがる……!
「お前も手伝うんだぞ!」
「えー……」
えーじゃない!
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない