【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「なあなあ」
「ん?」
「アキヒロくんってあの幼馴染の人のこと、好きなんだよね?」
「そうだけど」
「…………」
「?」
「なんか反応がつまんない……」
「明日だってやることあるんだかららもう寝ろよ」
「せっかく泊まりなんだからさ、話そうよ」
「何話すんだよ……」
「面白い話してよ」
「おおう、無茶振り」
「これまで助けた人の話とか聞きたいな」
「1番ないだろ」
「えー?」
「その人のプライバシーもあるし、俺が恥ずかしい」
ロイスの俺に対する視線が少しばかりキラキラしすぎてる。俺はお前が思うような人じゃないと思うよ……というか懐かしいな、寝る前のこの無駄に小刻みのやりとり。
ミツキも寝る前はそれはそれは饒舌だった。今日はこんなことがあったって、俺もその場に一緒にいたのに言ってくるんだから。
「最初に助けたのって誰?」
「意味わからん……そんなの覚えてないって」
「嘘だぁ、絶対覚えてるでしょ」
「…………もう寝るぞ」
「おしえろ〜」
「だるいだるい」
「……へへっ」
「?」
「なんかさ、俺一人っ子だからこういうの初めてだ」
次に言うセリフは、なんとなく読めた気がした。
「お兄ちゃんってこんな感じなのかな……って……い、いや! 別にアキヒロくんにお兄ちゃんになって欲しいとか思ってないから!」
「ははは!」
「な、なんで笑うんだよ!」
「いいや?」
一人っ子の言うセリフってのは、みんな似てるもんだな──って、あれ……この感覚……
「むにゅ……」
コマちゃんがじっと目を開いていた。
「ま、まずい!」
「え、なに? なに?」
「うんこしたそう!」
「え!」
おしっこならともかく、うんこはまずい! この時間帯に洗濯掃除なんかする気にならないし、どうにか──窓があるじゃないか!
「コマちゃん! あとちょっとだけ待って!」
「アキヒロくん……!?」
踏ん張りが始まる直前にコマちゃんを抱えて窓から飛び出した。ここはビルの高層階ではないので、落ちても死にましぇん。なんなら、窓下に張り出た屋根部分があることは把握していた。地上までは約3m。平常時なら縁を掴んで安全に降りるところだけど、今は緊急時だ。
そのまま飛び降りた。
「──うぎいっ!」
終わってる猿みたいな声が出た。
足裏から伝わってくる衝撃がくるぶし、ふくらはぎ、膝裏を伝ってのどまで上がってきたせいだ。その痛みで一瞬忘我の時間ができたけど、すぐに取り戻した。
「ほら、コマちゃん」
「…………!」
お尻を落とすと、ミリリリと小さなフンコロを生産した。
「ふんす……!」
「ダメダメダメダメ」
満足気にウンコを食べようとするので、慌てて持ち上げた。こういうのもあるから目が離せないんだ。というか、神獣がウンコを食うな。せめてロイスとかに食わせとけ。
ふと、上の方から小声が聞こえてくる。
「あ、あきひろくーん……!」
「ロイス」
「大丈夫ー……?」
「大丈夫、今戻る」
夜は静かにするというくらいのことはロイスにも分かるらしい。そうだね、うるさいのはダメだからね。
「あん? なんでお前いま入口から来たんだ?」
「ここ通ってないよな」
宿には酒場がつきものだ。夜遅くまでうるさくするのが御法度という妙にモラルの高い常識はあるけど、そんなものを守っている奴を見たことはない。
部屋にいても聞こえてくるほど、ガヤガヤと楽しそうに客たちが酒を飲んでいる。まぁこんなところに泊まる客層が品性なんてものを備えているわけがないので、俺みたいな控えめの性格かロイスみたいに子供でもないと、静かに夜を過ごそうとは思わないだろう。
そんな酒場でアオキとルクレシアが酒を飲んでいた。
正直な話、酒を飲んでるとかそういうことよりも、この二人が二人だけで成立するということに驚いた。
「お前どうやって外出た?」
「窓から」
「ま ど か ら」
「コマちゃんがベッドでうんこしそうになったんで、しょうがなくです。そんな目で見ないでください」
そういえば話聞いてなかったけど、なんでここにいるんだ? いい宿に泊まるみたいな話してなかったっけ?
「部屋が空いたってんでな、俺たちもこっちに泊まることにしたんだ」
「何か文句あっか?」
「いえ、なにも。それじゃ失礼します」
「おいおい、こんな時にきたんだから──やってけよ」
「…………」
深夜テンションだろうか、その誘惑にぐらっときた。だけど俺は我慢のできる男だ。
俺にはわかる。1口飲んでしまえば最後、次から次へと押し寄せるおかわりで、血液がアルコールに一変してしまうだろう。そうなったらどうなると思う?
『なんか臭い』
こう言われるのが見えてるオチだ。
それに、この肉体はまだ育ち切ってない。祝いの機会にちょっとだけ飲むならともかく、常飲してたらただでさえ小さいの脳みそがさらに小さくなっちゃうよ。
「遠慮しときまーす」
「ノリ悪いなお前」
アルハラを華麗に躱した俺は無事、他の誰にも絡まれることなく部屋に帰ってきた──ら、ソフィアの部屋の前に誰かがいた。おっさんだ。今まさに扉を開けようとしている。
ソフィアの知り合いかな。
「……んなわけあるか」
「っ!?」
「おっさん、俺の友達に用があるなら俺から伝えとくよぉん?」
「んだてめえ゛んっ」
「今なら大チャンス、怪我しないで帰れるかもしれません!」
「いででででで! は、はなせ! はなせよ!」
「酔ってるのか何なのか知らねえけど、探索者でもねぇのに可愛い子の部屋に忍び込もうたあ大した度胸だ」
「はなせつって──んぶぉっ!」
サメは敏感な鼻を殴られると感覚が狂っておとなしくなるらしいけど、鼻殴られたらどんな生き物だっておかしくなっちゃうと思う。
実際、廊下は静かになった。
「アオキさん、アオキさん」
「あ? ……うおっ!?」
「ちょっと不埒者がいたので──」
「やるかやらないかで言えばやると思ってたけど、お前……やっちまったんだな。わかったぜ、手伝えばいいんだな」
「死んでないですから」
「冗談だよ、じょーだん! なははははは! そいつはこっちでなんとかしといてやる!」
目は笑ってなかった。
特にルクレシアの。
というかルクレシアが一言も喋らない。
酔うと黙るタイプか。
──────
「な、なんかバタバタしてたけど……大丈夫だったの?」
「酔っ払いが暴れてただけだから大丈夫」
「そうなんだ、よかった」
呑気なもんだ。
……呑気…………ソフィアも部屋に呼んだ方がいいのかしら。
知らない男が入ってくる可能性がある部屋と、知ってる男が既に入っている部屋。どっちの方が女子的にはいいんだろ。
「ソフィア大丈夫かな」
「コマちゃん置いてくるか?」
この体熱ならば、ソフィアの身体が冷えてても温めてくれるだろう。犬は基本的に人間よりも暑がりだし、ちょうどいいかもしれない。
「…………うん」
「じゃあ、はい」
「え?」
「え、じゃなくて。置いてきてくれよ」
「いやいやいや! 俺、男だよ!?」
「俺もそうだけど」
「せめてアキヒロくんが行った方がいいって!」
「ロイス、お前の方がソフィアと相性良さそうなんだよ。だから……頼んだ」
「だ、ダメだって! 女の子の部屋に入るなんて!」
「それは俺たちが決めることじゃなくてソフィアが決めることだから大丈夫だよ」
「なにが!?」
何故ノックするという選択肢がないのか。
このうるさささならばまだ寝てない可能性だって全然ある──のに?
『あ、あの……』
逆にノックされたのは俺たちだった。
「ソフィア?」
『うん、ロイスくんまだ起きてたんだ』
「ちょっと待ってな、今開けるから」
『はい』
急いで扉を開けたロイスは、もうなんか思春期真っ盛りって感じだ。嬉しそうにしやがって……このオスガキめ。
「ど、どした? こんな夜に」
「あはは……ほら、ちょっと騒がしいから眠れなくて」
「そ、そか。俺たちもそんな感じだったんだ。ねえアキヒロくん」
ぐぅ。
「寝てる……!? いや、今まで起きてたんだけど……」
「疲れてたのかもね」
「…………そ、それでどうしたんだ?」
「うん…………いや、誤魔化すのはやめるね。さっきの話聞こえてて……コマちゃんお借りできないかなって」
「え、あ、おう。いいよ」
薄目に見えるソフィアは、いつもの服よりも薄めの生地で作られた寝巻きを着ていた。あんなのどこにあったん?
「……そ、それ、そんな服持ってたんだな」
ロイスも同じことを思ったらしい。
口に出してくれてありがとね。
「…………」
「はっ!? ──い、いや、別に変なとこ見てないから!」
「……あぅ」
はやく寝ろよこいつら。
コマちゃんもしらけた目で見てるぞ。ソフィアに抱きしめられてても全然嬉しそうじゃないぞ。
「……少し、話さない?」
「え──」
「あ、変な意味じゃなくて……ほら、この間の懇親会? の続き」
「あ、ああ〜! いや、でも夜だから寝ないとなんじゃ……アキヒロくんも寝てるし」
ソウダヨ
「……ちょっとだけ、ダメ?」
「ぐっ! …………ちょ、ちょっとだけなら」
なかなか面白い展開になってまいりました。
しかし彼らはどこで語らうつもりなのだろうか。部屋ならいいけど、下の酒場で話すつもりなら危機感が足りないと言わざるを得ない。
今日はアオキ達がいるからいいけどな。
というか、もっと面白いことになりそうで寝てる場合じゃねえ! でも今、身体を起こしたら空気がバラバラに砕け散りそうだからなんもできないぞ……
「酒場はまだやってるだろうけど……というかうるさいから絶対やってるけど……危ないって言われてるし、私の部屋かロイスくんの部屋ならどう、かな」
「えっと……それじゃあ……ど、どうする?」
お前ら波長合いすぎでは?
この後何がおっぱじまるの?
気になって、二人が部屋出て行っても絶対寝れんよ俺……
普通に5分くらいで寝た。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない