【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「燃えてるんですけど!?」
「燃えてるなあ……」
「霧の季節でも火事って起こるんですね」
呑気と思うなかれ。
俺たちに何ができるわけもない──事もないけど、大事は避けたいのだ。
「私──」
「ソフィア、絶対に冷気で消そうとするんじゃないぞ」
「えっ」
「絶対にだ」
強大な探索者の異能をかき消すほどの力ならば、家事を消すことだってたやすいはずだ。きっとすぐに問題を解決できるだろう。そんな力を使えば別の問題も立ち上がるけど。
「じゃ、じゃあ見てるだけですか?」
「俺たちの仕事じゃないってだけ」
こうしている間にも職員たちが集まってきた。周囲に住んでいる人々も消火の為に動き回り、ほどなくして火事はおさまった。
「な?」
「でも、だいぶ焼けちゃいましたね……」
ソフィアの言う通り、出火元の建物は半分が黒焦げになっている。触れた霧は蒸気となってあたりを漂い、消火直後、残っている輻射熱によって一時的に気温が上がっているような気がした。
「住んでた人は大丈夫なのかな」
「さすがに逃げてるだろ」
ここが研究所なのは間違いない。
というか逃げていてくれないと困る。せっかく相談をしに来たのに誰もいませんでしたじゃお話にならないからな。
「どうかな……それっぽい人いるかな」
白衣、あれは研究者らしき格好をしている人間は野次馬の中にはいない。というか、仮にいたらもう少しわかりやすいだろう。
不在時の出火という線もあり得た。
「──あれ、あの人ちょっと様子が」
「ん?」
1人だけ、野次馬に紛れて何かをメモしている男がいた。熱心な様子だ。
頻繁に焼け跡を見ては、手元に目を戻す。それが気になった。
「どうも」
「…………」
「もしかして、あなたがあの研究所の──」
「忙しいから話しかけるな」
「失礼」
どうやら、何かしら今じゃないとできないことをやっているらしい。彼が手を動かすのを止めたタイミングを見計らって再度話しかけた。
「どうも」
「さっきのガキか。何の用だ?」
ぶっきらぼうな口調で、俺のことなんか構わずに研究所へ戻るために足を動かしている。白衣ではなく普通の麻の服を着ているあたり、そういう文化はないようだ。初めて知った。
しかし全く足を止めない。
このままだと建物内に突入して話をぶった斬られてしまいそうだったので、一番効果がありそうな話にした。
「四門光輝からあなたのことを聞いてやってきました」
「…………なんだと?」
「おお、ちゃんと知り合いなんだ」
「……嘘か? 嘘だったら偉いことになるけどいいんだな? その四門光輝が直々にやってくる可能性もあるぞ?」
「本当ですよ。別に呼んでもらっても構いません、ハッタリとかじゃなくてちゃんと俺も知り合いなんで」
「……こんなガキがぁ? いや、まさか……お前探索者か?」
「いえ、違います」
高レベルの探索者だから見た目が若く見えるだけ──という結論に持っていこうとしたのかもしれない。
残念ながらピチピチの16歳だ。
「俺は加賀美明宏。とある問題を解決して欲しくてやってきました」
「突然やってきて解決してほしいなんて、随分な話だな」
「わかってます。でも、今のところ他に道がないんです」
「……そもそも俺が何を研究してるか知ってんのか?」
「知りません、でもコウキさんからは特殊なアイテムを研究してるって……もしかしたらそれが今回の解決の鍵になるかもしれないと思ったんです」
「はっ! くだらん! 実にくだらねえな! その事情とやらが何かは知らんけど、不確かな情報を頼りにこんなところまでやってくるなんて……ありえない行動力だな! 俺なら何を研究してるかくらいの具体的なことは聞くけどな!」
「…………」
「気に入った、ついてこい」
「!」
「色々と気になる事もあるからな」
──────
煤けた匂いが充満した空間。
その中心地に彼は近付いていた。つまり、彼の後ろに続く俺たちも含めて発火地点に近づいているってことだ。ソフィアとロイスは不安をごまかしきれないのか、それぞれが俺の腕を掴んで離さない。おかげで、何が起きても俺は対処できないよコレ。
「まさかこんなガキのお友達がいるなんてビックリだ」
予想は外れ、匂いの中心に行く事はなかった。いくつか椅子が用意された部屋だ。
カップが1つ置いてある。中身はコーヒー、カフェイン中毒だろうか。
「どういう関係だ?」
座った俺たちに対して、口を開いて1発目の質問がこれだった。
「一級探索者と知り合いになるガキってなんだ? お前はアイツの何だ? 弟子か? それとも親戚か?」
「俺はミツキの幼馴染です」
「ミツキ……娘か。その幼馴染が俺のところにやってくるってことは何かあったのか? ……いや、それならアイツが直接やってくるか……いや──」
いや、いや、と理由を思い付いては否定する。
どこまでも理屈屋のようだ。
「この子です」
ソフィアの手首を握って、手を掲げさせた。
「──なんだコイツ!?」
「わかりますか?」
「…………わかるぞ! 制御できてない異能か! まさかアイツの娘以外にもそんな奴がいたなんてな!」
漏れる冷気を見て、一瞬で状況を理解した。どれだけの知能なのかはわからないけど、凄まじい洞察力なのは間違いない。
「これが用件、つまりここにやってきた理由ってことは……これをなんとかしろってんだな?!」
「そこまでは。何か手がかりがないかいろいろ探してるだけです」
「むかつくぜ。確かに今の俺じゃあ抑える程度の事しかできねぇな」
「!?」
「なにもできないと思ったか? これでもいろいろ調べてんだぜ」
抑える。
深山商会の力をもってしても大した策を打てなかったというのに、こんなポンと解決策が見つかって良いのだろうか。
「ちなみにそれってどんな……アイテムなんです?」
「飲み物だ」
「飲み物」
「ヒグライの骨髄を砕いてペースト状にしたものに、飲みやすいようウメウズキの実とかを混ぜて水で薄めた。俺だけの特製ドリンクだ」
「はあ」
正直、知らん素材の名前ばっかりだった。
骨髄を砕いて──というところですでにゲテモノ感がすごいけど、常人に飲めるのかしら。ソフィアはスッポンの血とか生で飲めるタイプ?
「無理……かもです」
「飲めば身体が熱くなるぞ。俺は冷水に浸かってないと耐えられなかったし、空気にさらしてた耳はこの通りだ」
焼け爛れた耳を見せてくる。
火事の火傷かと思ったらそんなことだったらしい。
「そういえばあの火事は何なんですか?」
薬が漏れて燃えたとかだろうか。
「知らん、誰かに放火された」
「ええ……」
「俺の研究を狙ってる奴はたくさんいるんだよ」
「こわっ」
そんなのでよく研究続けられるな。
「とっ捕まえようとしたんだけど逃げられた。ありゃ探索者だな」
「火事よりも直接襲撃した方がいいだろそれなら……」
探索者なら普通に縊り殺せるはずなのにそんな遠回りなことをする理由は、商工会に目をつけられたくないからか?
「商工会に言えばいいんじゃないですか?」
「だってアイツらもすぐ人の成果持って行こうとするじゃん。証拠だとか言って」
「あー……」
概ね俺と同じ理由で信用できないということだ。
「さて、飲むか? どれくらいの冷気かによって変わるけど、抑えられると思うぞ。……コウキレベルの異能なら無理だな」
超高レベルの探索者の異能がどれほどのものか知らないので、何とも言えない。ルクレシアの異能とは拮抗してたけど、レベルが数十離れているコウキとは比較にならないだろう。
「どうする?」
「あ、うーん……飲んでみよう、かな?」
「じゃあ少しだけください。飲む量によって変わるんでしょう?」
「おう」
何とも突然に湧いてきた光明。
飛び付かない手はないかと思われたが、ふと冷静になった。
「あの……」
「あ?」
「お代はどうすれば?」
「お代、ああ……どうせ払えねえんだろうから良いよ別に」
「え!?」
ちょっと信じられない程のお人よしがここにいた。
モンスターの素材なんて買おうとしたら、云十万で済めば良い方だ。それを使った薬なんてもはやどれだけ金を積めば手が届くか。それをホイホイと使わせてくれるなんて怪しい。
「タイム! ちょっと相談させてください!」
「どうぞ」
まずは相談だ!
よく考えたら、ここまで話がとんとん拍子に進みすぎてるのもおかしいぞ!
腰痛でなかなか執筆に集中できないメウ…
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない