【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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56_お前が言うな

 

「変な薬を飲んだら雨が降った? ……何故そんなことをしたんだ?」

 

 マジレスやめてください。

 

「普通に考えて、私たちが起きるの待ってからいけば良くね? なんで危ない道を進もうとしてんだ」

 

 だからマジレスやめてください。

 

「ソフィア、体調崩さないといいけどな……」

 

「体も拭いたんだろ? 大丈夫だって」

 

「…………え?」

 

「ん? ……あんなに体濡れてるのに拭いてあげなかったの?」

 

「む、無理に決まってんだろ! 何言ってんだよ!」

 

「……まじで濡れたまま放置?」

 

 拭いてきてなーって任せたはずなんだけど。

 いやに出てくるの早いと思ったら……さすがに無理か。

 

「ルクレシアさんすみません、ソフィアの身体が濡れてるんで拭いてきてあげてください。……ちなみにですけどルクレシアさんって女の子のことが性的に好きとかないですよね?」

 

「お前ぶっ殺すぞ!? なわけねーだろ馬鹿か!」

 

「あ、じゃあなんでもないですー」

 

「何なんだ! お前何なんだよ!」

 

「ぐえええ!!!」

 

 こ、この揺れの大きさはマグニチュード10.5! 

 

「だぁれが女のことを好きな異常者だってぇ!? 考えるだけならともかく、この私に向かってそんな口を──」

 

「ちょっ、それ以上揺らしたらアキヒロくん死んじゃう!」

 

「死ねば良いだろうが!」

 

「駄目だって!」

 

 女だろうが男だろうが、その子を性的な目で見れるやつが裸を容易に観察できる状況にするのはダメだよね……ってだけの話なのに何でそんな激しく否定するんだ! 

 別にルクレシアが女を好きでも俺はどうでも良いのに! 

 のに! 

 

「てめぇ……!」

 

「ストップストップ! アキヒロくんもいきなり変なこと言わないでよ! なんでこのブチギレてる顔見てそんなこと言えるの!」

 

「キレてねえ!」

 

「キレてはいるでしょ……」

 

 図星ってことかい? 

 

「おう、コイツ本当に殺して良いか?」

 

「ダメだって!」

 

 ロイスが俺を守ってくれている……! 

 今ならきっと何をしても庇ってくれるに違いない。

 

「アキヒロくんも変なこと言ってないで!」

 

「はーい」

 

 探しにきてくれりゃ良いのにとは思ったけど、二級探索者といえど広い街の中で俺たち3人を手がかりなしで見つけるのは無理か。

 コウキさんぐらいだよなそんなのができるの。

 

「そのマチカド先生とやらは──ていうか、それ名前なのか?」

 

「いや、アキヒロくんがいきなり呼び出したから俺たちもそう呼んでるだけで……名前は知らないや」

 

「意味がわからないだろ……」

 

 自己紹介するタイミングがなかったというと嘘になるけど、名乗らねえんだもん。

 適当に呼ぶしかないじゃん? 

 

「その先生様が作った薬をよくも飲む気になったな。初対面だろ?」

 

「だってほら、コウキさんが教えてくれた相手だし腕は信用できますよそりゃあ」

 

「……そりゃそうか」

 

「今更ですけど、ルクレシアさんはそういう研究者とか縁はないですか?」

 

 もう第一セクターまで来てるのに今更聞いてもという話だけど……一応ね、一応。

 あんまり期待はしてない。

 

「ないない。コイツはなんか知ってるかもしれねえけど、私の記憶の限りじゃそんなこと覚えてないな」

 

「なんだ!? 俺の話か!?」

 

「研究者の知り合いとかいねえかってよ」

 

「何故今……いや、君はアレだな。割と思いつきで物事を進めていくタイプだな。もう少し計画性を持って……」

 

 それなら教えてくださいよ。何も情報がない中でソフィアの異能を抑え込む為に何をすれば良いかを。この場で。

 今すぐはちょっと、とかやめてよね。俺だってウルフたちと同じくらい何も分かってないながらで頑張ってるんだから。

 

「よく考えたら俺も思いつきで動くことは多かったな! うん!」

 

 見るからにそうだよね。

 

「さて、ソフィアが起きるまでの間に何をしようかね。リーダー」

 

「リーダーはやめて欲しいです」

 

「なんでだ?」

 

「いやほら、この集団のリーダーだって思われるの嫌だなって」

 

「謙虚なのかと思ったらまったく違う理由だとぉ!?」

 

 二級探索者と異能暴走者と金持ちと貧乏と犬(神獣)。

 コレほぼサーカスというか見せ物小屋だよね? 

 そこでリーダーやってるなんて言ったら世間様から一体どんな目で見られるやら分かったもんじゃない。

 

「……そ、それの筆頭が何を言っているのだというツッコミ待ちなのか? さすがに突っ込んでやらないぞ」

 

「いやいや……俺はただ単純に嫌だなって」

 

「本当にイヤそうだな貴様!?」

 

「言ってるじゃないですか、嫌だって」

 

 まともな組織や会社ならともかく、こういう風に悪目立ちすると途端に動きづらくなる。個人個人としては彼らのことをもちろん好ましいと思ってはいるけど、集団として見たとき、あまりにも社会から外れている。

 俺もそこまで若くない。

 溢れ物であることや1匹狼であることに何の憧れもない。慎ましく、それでいて自分のやりたいようにやれるのが1番良い。そのためには、やっぱり清楚なやつだと思われてた方が得なんだよね。

 

「嫌だも何も、さっきから言ってるだろう! 貴様は自ら嵐として凡俗の日常をかきみだそうとしているのだぞ!?」

 

「いやぁ……そこまででは……」

 

 ロイスや母さんをこの騒動に触れさせてしまったのは、確かに嵐もとい荒らしと呼ばれるに足る失態なのかもしれない。だけど、嵐っていうのはもっと……思いつかないけど、俺みたいなのじゃないのは確かだ。

 ──なあロイス! 

 

「うぇぇ!? お、俺に聞くの!?」

 

「ブァカめ! この場においては、そこにいるガキこそ最もよくお前を理解しているだろう! 頭は回るようだが、ここ1番の人選はできないらしい!」

 

 そんなわけない!!! 

 ロイスは俺の味方だ!!! 

 

「う、うーん……なんて純粋な目……言っちゃって良いのかな……」

 

「さぁ! 言ってやれ! お前こそ、この場において最も秩序を掻き乱す存在に他ならないと! 魔王にして烈風、自分が災害であることを認識しろと!」

 

「そ、そこまでは思ってないけど……」

 

 思ってないって言った! 思ってないって言った! 

 俺の勝ち! 

 なんで負けたか明日まで考えといてください! 

 

「んなっ!? ロイス、裏切るのか!? それともこの頓珍漢が本当にマトモだと思っているのか!」

 

 きの字扱いするのやめてもらってもいいですか? 

 普通に傷つくんで。

 あと、裏切られる立場は俺ね。

 アンタじゃなくて。

 

「言っとくけどさ、6対1だからな?」

 

「姐さん!?」

 

「誰がアネさんだ」

 

 俺が気づかないうちに、ロイスがルクレシアの隣に行っていた。ついでにコマちゃんも。

 世界大戦ということだろうか。

 

 俺対ロイス、アオキ、ルクレシア、ウルフ&コマちゃん

 

 ……5人じゃねえか! 

 勝手にソフィアを頭数に入れるのは反則だろ! 

 

「意外とソフィアってシビアだからなぁ……普通にこっちきそう」

 

 なんでソフィアを助けるために行動しているはずの俺がソフィアにすら敵対されるわけ? 

 

「敵対じゃないって! 事実だって!」

 

 たとえ言葉だとしても、殴ることは愛情じゃないんだよ? 

 

 

 ──────

 

 

「ん、んん……」

 

 淡い眠気を押し除けて瞼を半分開けると、綺麗な人がいた。アキヒロさんの地元で出会った探索者で、強い人たち。

 そして、可愛い人。

 

「おはよう」

 

「…………ルクレシアさん?」

 

 頭がぼんやりとしたまま、最後まで瞼を持ち上げた。

 

「お寝坊さんだな」

 

「えっと……あっ! 確か薬を飲んだら雨が……アレ? 私どこ?」

 

「宿だよ、寝ぼけてんの?」

 

 最後の記憶。

 ロイス君の背中、あったかかったなあ……じゃなくて──よくわからない研究所? っていう場所でよく分からない男の人が作ったよく分からない薬を飲んだ。

 体が熱くなって、熱くなって、どんどん熱くなって、寒さなんてないくらいに熱くなってもまだまだ体が温まっていった。

 堪え切れないないほどの熱が怖くなって、そしたら体を掻き分けるようにして冷たいのが出てきた。

 

 そこから、何故か分からないけど……高揚する気持ちが全部の思いを塗り潰すくらいに溢れてきて、ああなっちゃった。

 

「失敗しちゃったあ……」

 

「あいつはそうは思ってないみたいだったけどね」

 

「え?」

 

「大きな進歩だって、言ってたよ」

 

「大きな進歩……?」

 

「大方こう言いたいんだろ。暴走でもなんでも、ソフィアの異能を抑えられる薬が1つでも見つかったんだからいいことだって」

 

「……ポジティブ、ですね」

 

「ちょっと能天気だよな」

 

 ちょっとで済ませていいのかな。

 あんな風になったのは初めてだった。今思い出しても、あの時の自分が本当に自分の意思ではしゃいでいたのかわからない。

 

「まあ、いいんじゃね? 何もないよりは全然」

 

「はい──あ」

 

 小さく、それでも誰かに聞かれたいとは思わない音がお腹の中から出てきた。

 

「もう昼は過ぎてるからな。ほら、食べに行くぞ」

 

「?」

 

「ごはん!」

 

「あ! はい!」

 

 酒場は、昼間なのに整った賑やかさだった。

 その役目を担っているのが──

 

『──ああ! 我が宿敵よ! 獣の如く荒み切った瞳を輝かせてどうしようというのだ! ……まさか敵うとは思うまい? ──今にも弾けそうな空気! かつて兄弟と呼び合った二人の志はもはや! 空の果てと地の底ほどにも遠くなってしまった! 故にこそ抜かれた2振りの剣! 愛した師より教わった技をお互いに向けんと駆け出した!』

 

 寝ている自分を見ててくれた女性(ルクレシア)が、出会い、その嫌なところを見ても一緒にいようと思った男の人が口を大きく開けていた。

 普段の酒場ではがなり立てることしかしない探索者達も、この時ばかりは固唾を飲んで傾聴している。

 この世界で最も娯楽らしい娯楽。

 吟遊詩人が、吟遊詩人としてそこにいた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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