【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
『一雫の輝きが水たまりを揺らす。額から流れ落ちるのは……どちらが命を散らしてもおかしくないからか……同じ女を愛した2人が、その剣を――割り込んだ少女は叫んだ!時を止める声、それは……心よりの願い。少女が信じる者たちが、かつて彼ら自身が愛した者のために争う。それはもはや愛では無い。妄執こそが、彼らの間に巨大な地烈を生み出した。それこそが……師が恐れたことだった!――ならばこそ!少女は、新たな愛で彼らの溝を埋めるのだ!』
「………」
『だが、届くのか?愛を超えて、腐り果てたその思いは愛で救えるのか?永きを超え、燻り続けた果てに頂で愛間見えた彼らに止まる選択肢はあるのか?――"もう"――"もう遅いんだ"自らを慕う少女を前に、少年は口を開いた。それは終わりの言葉。振り切り、さらに先へ進むための別れの言葉……!どうしようもなく溢れ出る涙を拭うことなく、脳裏に焼きついた彼女の姿に奮い立つ!』
「んぐ……これは小鳥の素焼きか……」
『振り翳された破滅と栄光が群青の光を散らした!泣き崩れた少女を尻目にして、もはや止まることなどできない!振り切った彼らに出来ることは――』
「お、ソフィア。こっちこっち」
「アキヒロさん……!よくそんな呑気にご飯食べられますね……!」
ルクレシアは後方彼女面でウルフの朗唱を楽しんでいる。酒場にいる誰もが彼の言葉に釘付けだった。
モグモグと口を動かしているのはアキヒロだけ。
時折、ウルフの方を振り向いては大きく見開いた目で詩を楽しむ。満足げではあった。しかし、他の者のように忘我という領域には達していない。
「なんだかすごいですね」
「あぁ……これが本物の吟遊詩人なんだな」
「ルクレシアさんが惹かれた理由もわかります」
「えー、すご」
心ここにあらず。
どこまでも目の前の食事に注がれた視線が表すこと。耳からの情報と舌からの情報で取捨選択を行った結果、彼は舌を選んでいた。
「……何か、冷めてません?」
「ん?もぐもぐ……そんなことないぞ、ちゃんと楽しんでる。ほら、耳も聞こえるしな」
「………」
意外だった。
ソフィアのイメージ上のアキヒロと言えば、面白いことにすぐに飛びついていきそうなものだ。興味のあることに――
「あんまり興味ないんですか?」
「いやいや。こういう民俗的な音楽も発祥はまた別なんだろうけど少し発展すれば娯楽だよね、うん。いい暇つぶしになるから嫌いじゃないよ」
「なんだかごまかそうとしてません?」
「はっはっは……もぐもぐも――」
「食べるの一旦やめましょう?」
しょぼくれた猿のような表情で食事を一旦置くと、両肘を机に乗せた。どこか胡乱な要素を含んだ眼がソフィアをくまなく観察していく。
「っ!」
なんとなくの悪寒に、自らの身を抱きすくめた。
「おっとごめん」
そういう意味じゃない、と軽いジェスチャーで弁明を済ませ、改めて口を開く。
「調子はどうだ?寝てすっきりしたか?」
「はい、バッチリです」
「ふぅ……」
その言葉を聞いて、重いため息が吐き出る。良い反応が返ってくると思っていただけに、ソフィアの視線はさまよった。
肝心の男は顎に手をやり、しばしの沈黙にふけっている。質問するだけして後は放置と、なかなか鬼畜な癖を後悔しているのか。
そうではない。
「ソフィア、溜まっ……言い方に気を付けよう………異能の様子はどうだ?力が溜まっている感じみたいなのはあるのか?感じ取れるのか?」
「はい」
体の内側で何かが常に囁いている。
比喩じゃない。
何か……誰かが、常にささやき声を彼女の脳みそに届けていた。押さえ込めているうちは、さらさらと流れるせせらぎのような心地よさすら覚えるのに、暴れ出すと脳を圧迫しそうなほどに巨大な圧が臓腑から飛び出そうとする。
――そういえば、これは彼に話したことがなかった。
「誰かが、ささやいている……?」
困惑も無理ない。
初めて聞く話。
体の内側で誰かが囁くなんて、理解し難いことだろう。ソフィアは言っても無駄だとわかっていた。
わかったつもりだった。
「いわゆる幻覚……それとも魔素的な――つまり脳みそで何かが起こっているからじゃなくて、形而上学的な現象が起きているのか?」
「幻覚と魔素が引き起こすことに、何か違いがあるんですか?」
「ある――けど、それを説明できるほど俺は脳みそに詳しくないんだ。そういうことがあるってのだけは感覚的に理解してるだけ――」
おおっ!と群衆がどよめく。
また一つ、男の話の段階が進んだようだ。
『拳を握りしめた童が流星を呼び寄せる!刹那、煌めきを散らす光が雲を切り裂いた!――"見事"――噴き出した赤の眩しさに惹かれて、少女は再び駆け出した。膝から崩れ落ちる男。どちらが生き残るかなど、何の意味もない結果でしかなかった。ただ、思いを貫き通すことができれば……それで師は報われる。彼らはそう信じているのだ。命よりも大事なものを守り抜くためにこそ、彼らは命を賭けることができるのだ。かつて命を賭けられなかった臆病者達だからこそ――捨てるべき時に命を捨てることができなかった裏切り者たちだからこそ、お互いを切り捨てることでしか思いを晴らすことはできなかった』
「ふむ……」
『辿り着いた少女は、振り切ってしまった男の姿を見た。血染めの服。切り刻まれた胸当て。震える腕でそれでも握り締めた形見は、ひどい刃毀れを起こしていた。――"触れてくれるな、これは俺たちだけの話なんだ"――少女は懇願する。膝に手を当て立ち上がった男は、揺れる体で少年の元へ向かうのみ……そうだ。これが最後だ。俺たちの話はこれで終わりだ。……もはや言葉を持てぬ少女は祈るしかなかった。どうか――』
「この味、この匂い……まさかこれは紫蘇ジュース……!?」
い い か げ ん に し ろ
「――うおお!?な、なんだあ!?」
詰め寄る人波。
一瞬にして、フラストレーションの元が囲まれた。
「てめえ!いつまで飯食ってんだあ!うるせえんだよ!聞こえねえだろうが!」
「ええ!?いや、お腹空いてるんだけど……」
「今そんなのどうでもいいだろー!」
「……まさか映画館でポップコーン食べるときに音が気になるアレ!?でもそんな注意なかったじゃん!俺の方が先に飯食ってたじゃん!撮影もしてないじゃん!」
「何言ってんのかわかんねえよ!というかいつまで飯食ってんだっつってんだろ!なんで話し始めて今になってまだ飯食ってんだよ!遅すぎだろ食うの!」
「ご飯を食べる時は、ちゃんと噛んで味合わないと!顎も鍛えられるし、何より、ご飯をゆっくり食べられるのは幸せの塊ですからねえ!」
「何だコイツ!?」
広がっていく動揺。
思っていたよりもやばい奴だった。二十数名にガンをつけられても全く動じていない。
「アキヒロさん?」
「ソフィア、どうおも――」
「部屋に帰ってください」
「アッ、ハイ」
――――――
「なんだいなんだい、みんなしてさ……けっ」
完全なる自業自得にも関わらず、少年の顔に謝意は塵ほども感じられなかった。そうでなければ、あんな環境で堂々と飯にありつくこともなかっただろう。
「………」
ピースが繋がっていく。
「……コマちゃん、こっち来たんか」
「ひん」
「お前はほんとに良い子だなぁ……俺と違って」
「ひん」
「食べるか?」
「ひゃん!」
「おお……芸も覚えさせなきゃな」
内なる囁き。
記憶喪失。
彼らとの出会い。
アキヒロの脳味噌の中に、嫌な予感が隙間風となって吹き込んでくる。
「なんだろうな……この感じ……」
気を紛らわすように、子犬を撫でた。
「もうちょい食べるか?まだたくさん――」
大きく扉を叩く音。
誰かが外で喚いている。
一人じゃない。二人、三人、聞き慣れた声が混じって、最後に扉が勢いよく開け放たれた。
「ちょっと待って……!」
ソフィアの制止すら気にせず、1人の少女が入ってきた。
我、肩で風を切らんとした佇まいでアキヒロの前に仁王立ち。ベッドに腰掛けていたアキヒロは面食らって立ち上がる。
「何でここに?」
「たまたま」
「な、なるほど……何か用があるんだよね?」
「………」
「フブキちゃん?」
「ちゃん付けしないで」
「おっと……フブキ?」
「馴れ馴れしい」
「……ミヤマさん?」
「まあ、いいや」
街をぶらぶらとしていた彼女の耳に入ったのは、ウルフの詩だった。気になって顔を出すとそこにはソフィアがいた。つまり、例の奴もいるだろうということで来てみたのだとか。
例の奴とはアキヒロに他ならない。
「俺に会いに来たの?」
「コユキがうるさいから」
ぶっきらぼうに、心底から鬱陶しそうに、彼女はそう言った。
――――――
「えーと、コユキちゃんが会いたいって言ってるってことでOK?」
「はぁ……だからそう言ってるじゃん。何度も言わせないで」
言ってたかどうか怪しいところではあったが、そこに突っかかっていたら話が進まないと理解して距離を詰めた。
「な、なに?」
「行こう」
「……準備がいいんだね」
「違う。準備するものがないからいつでもいけるんだ」
「………ドヤ顔で言うことじゃないよね」
ソフィアも起きた。
全員無事。
ウルフは……楽しそうだから放っておいても良い!
あ、でも気をつけることもあるか。
「まあいいや!行こう!」
「暑苦しい……」
流石に2回目じゃ道も覚えてなかった。
第一セクターだけ広いねん。
「いらっしゃいだわ〜」
そんな挨拶は無い。
何だいらっしゃいだわって。
動揺して顔に出ちゃったよ。
「前回は濃さで負けちゃったから、今回は対策を練っておいたのだわ!」
対策……?俺って、〜だわ!で対策されるタイプの人間だったの……?
確かに動揺してるか……
「さあ、入って欲しいのだわ!」
うう……成人女性が変な言葉遣いしてるのキツいよお……
「あら?フブキがどうして貴方達と一緒にいるのかしら?………あらら!随分人数が増えたわね!」
ルクレシア、アオキ、コマちゃんが来たから前回のちょうど倍だ。
「お友達?」
「左からビジネスパートナー、ビジネスパートナー、ペットです」
「ビジネスパートナーとペットの皆さんなのね!お名前を伺って良いかしら?」
コマちゃんは尻尾フリフリだけど、2人からは戸惑いが感じられる。よっぽど『だわ』が効いたんだな。
「お初にお目にかかります、お二方。私は深山雪、深山商会の副会長を務めております」
「俺は二級探索者のアオキだ」
「私はルクレシア」
「聞いたことがあるわ!確かルクレシアさんは強力な攻撃系の異能を持っていらしたわね!」
「お、おお……」
「アオキさんは技量が高い探索者だから、あまり私たちの商会とは縁が無かったわね。でもお会いできて光栄だわ!」
「……俺たちのことを知ってたのか」
「勿論よ!」
なんと、副社長ともなれば二級探索者は覚えているものらしい。正直……敗北感です。
「早く中進んで」
「……そうね!上がってちょうだい!」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない