【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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「俺が嘘っぱち……まあ、ある意味合ってるな」

 

「!」

 

少女から放たれた暴言はしみじみと認められた。

様子のおかしい令嬢を気遣って近づこうとしてきたメイドたちを右手で制し、少年は薄く目を閉じる。

目の前にいる泣きそうな女の子を見定めようとしていた。

 

「……」

 

対する吹雪の胸中は穏やかではなかった。

特別な人間が自分を見ている。自分の心の奥底で覗かれているような気分で、今すぐにも逃げ出したかった。

それでも逃げなかったのは、これまで自分が築いてきたものに対する矜持か。それとも足がすくんでいたのか。

本人にもわからなかった。

 

「俺は……」

 

「っ!」

 

「……いや、そうだな。それがいい、そうしよう」

 

1人で納得して、乗り気になっていく。

吹雪の嫌な予感をそのままに彼は口を開いた。

 

「俺たちはもう少し話すべきだな」

 

「――話すことなんかない!」

 

それこそ願い下げだ。

目の前にいるのは自らの価値観と対極に位置する存在。それと対話してしまえば――これまでに話を盗み聞きしていた事実を棚の上に置くとしても、ちゃんと目を見て話し合ってしまえば、自分の基礎である何かが崩れてしまいそうな気がした。

恐怖じゃない、そう自分へ言い聞かせて目に力を込める。

 

「ふぅ……鳴かぬなら……か」

 

少し口を開いただけでグンと距離を詰めてくる。物理的じゃないその挙動に対して、思わず後ずさりをした。

 

「気づいてるか?俺たちは今、膠着状態だ。会話しないし、何かを一緒にすることもない。だけど一緒にいる。お互いを知るためのコトが何もできない……詰みだ」

 

「知りたくなんかない!」

 

「そうか……でも、俺は君のことが知りたい」

 

「っ………来ないで!」

 

「ぐぅ……冷や汗が出るな。ここがスクランブル交差点の真ん中だったらと思うと……ううっ!恐ろしや恐ろしや!なんなら、メイドさん達の視線だって怖いぜ――というのは置いといて、1つ確認したいことがある」

 

「し、知らない!」

 

「とても大事なことだ。俺の人生に関わるほどに……あるいは世界の成り立ちに関わるほどに」

 

そんな重要なことを、こんな人間が知っているはず――

 

「君は、俺がどんな人間かを理解しているのか?」

 

「!」

 

「その反応……メンタリストなら読み解けたのかな」

 

思わず心臓に手を当てた。

目の前にいるはずの彼の顔が真っ黒な何かで覆われている気がして、不安だった。

 

「嘘か……嘘……そうだな、嘘かもな」

 

「そ、そう!全部嘘!アンタなんて嘘なんだ!」

 

「……嘘だったらよかったのかなあ」

 

「アンタみたいなのが、いるわけない!」

 

「………」

 

メイドが露骨に集まってきた。

庭で言い争っていれば、誰にだって聞こえるのだから仕方ない。それが、品行方正なお嬢様であればなおさら注目の的にだってなる。

 

「化けの皮――じゃないな、その恐怖こそが本当の君だ。……俺は余計なことをしてしまったのかもしれない」

 

「本当の……?」

 

「大事にする気はなかったんだけど、みんなこっち来ちゃった。ソフィアたちもだな」

 

アキヒロが手を振ると、彼の仲間は怪訝な顔をした。

 

「……なかなかノリが悪くてな、良い仲間なんだ」

 

「意味わかんない」

 

「俺と同じ意見を持った人間は、同じ道を歩く意味がない」

 

「………ただ、肯定感が高まるだけ」

 

「そう!そうなんだ!同じ志を持った人間を見つける事自体はとても嬉しいことだけど、道が確立されてないなら、みんなで違う方向を向いた方が効率がいいんだよ!いやあ、やっぱ金持ちは分かってるなあ!」

 

「褒められても嬉しくない」

 

本当に嬉しくない褒められ方だった。

 

「そんな訳だからさ………これ何の話だっけ。俺、何しようとしてたのか忘れちゃったよ」

 

「知らない」

 

「ああ、そうだ。言いたいことがあったんだ」

 

「な、なに」

 

「姉妹喧嘩はほどほどにな!」

 

「――」

 

プツンと。

その爽やか(能天気)な笑顔を見た瞬間に、吹雪の中で何かが切れた音がした。

 

「わあ!?」

 

喧嘩なんてしたことない。

どうやって腕を振れば良いかすら分からない。

それでも遮二無二突っ込んだ。

 

「お、お嬢様!?」

 

「アキヒロくんが襲われてる」

 

「襲われてるっていうか……なんか、可愛い?」

 

人の目だって集まってる。

何をしてるんだと冷静に諫める自分がいる。

だけど抑えきれなかった。

なんでだろう。

いつもは抑えられるのに。

 

「あのガキがボコボコにされるのかと思ったが……ちっとばかし残念だな」

 

「趣味わるっ」

 

「あんなクソ生意気なガキ、1度ぐらい痛い目見りゃいいんだよ」

 

わけもわからずに腕を振りまわす少女。

参ったとばかりに両手をあげて受け入れる少年。

メイド達は顔を見合わせながら、手を出すべきかどうか迷っていた。先程の様子からして、あの少年が即座に危険な存在と判断することはできない。むしろ、どう考えても、会話のどの部分を切り取っても、今の状況を考えても、吹雪の方がよほど止めるべき相手だった。

 

しかし、吹雪が癇癪を起こすのははじめてのことだ。困惑でどうするべきか止まってしまうのも無理は無い。

そんな場所へ、さらなる混沌の種がやってきた。

 

「あらあらあらあら!騒がしいじゃない!どうしたのどうしたの〜!………本当にどうしたの!?」

 

姉妹の母、深山雪だ。

書斎で仕事をしていたが、あまりに騒がしいので出てきたところ、こんな事になっている。ツッコミどころが多すぎて普段の口調が崩れていた。

 

「なぜ誰も止めないのかしら!?フィニス!?」

 

フィニスと呼ばれた、一際恰幅の良いメイドが慌てて2人の元へ駆けた。

 

「お嬢様?……お嬢様!淑女がそんなことをなさるものではありませんよ!」

 

「っ!!!」

 

「あ、あららら……」

 

ますます激しさを増すばかり。

規律の整っていない体の動きは、赤ん坊が駄々を捏ねているようにすら見える。

 

「加賀美様、痛くないのですか?」

 

「さすがにですかね……」

 

体格の差は明らかだった。

 

 

――――――

 

 

「何してたの?また置いていかれたのかと思ったら、なんで庭であの子に殴られてんの?」

 

「……黙秘します」

 

「!」

 

赤の瞳がひらめきで光った。

 

「好きなんだ!」

 

「………ふっ」

 

「は、鼻で笑うなぁ!」

 

「彼女の名前は深山吹雪。深山家の長女らしい」

 

「へぇー、それが?」

 

「…………お前は強い子だ。でも、誰もがお前みたいになれる訳じゃない」

 

「は、はぁ?何だよいきなり……」

 

途端に静かになったロイス。

肩を叩けば小さく震えた。

 

「ロイス」

 

うつむいた顔を覗き込む。少しだけ尖った口先がまず見える。覗かれまいと逸らす視線が逃げ場を失うまで追いかけ、やっと目を合わせた。

それも少しの間だけ。一瞬交錯した視線はすぐに外れた。紅潮した頬と長い睫毛、これだけ近くに寄っても出てくる感想は綺麗だの一言だけ。

 

「な、なんだよぉ……」

 

「ストレスに耐えられるかどうかは環境が左右する……そして、環境をどう受け取るかは自分次第だ。ロイス、お前はあの環境でよくまっすぐに育ったもんだよ」

 

「やめろよ……人に聞かれたら恥ずかしいだろ……」

 

「……ロイス、吹雪ちゃんのことを少し気にかけてやってくれ」

 

「……何の話?」

 

「………ちゃんと挨拶しに行くか」

 

ロイスの質問に答えることなく、アキヒロはその場を去った。

 

「あー、もう……難しいよ……アキヒロくんについていくの……」

 

「………」

 

「――うわっ!?わっ、わっ、わああああ!………?」

 

ソフィアが影から見ていた。

驚きで椅子ごと倒れそうになったが、不安定な姿勢のまま最後まで倒れることなく固定される。

 

「……おお」

 

氷の支柱が生えていた。

制御できないと言う割には繊細な技を披露したソフィアだが、なぜかそばに寄ってこない。

 

「ソフィア?」

 

「じーっ……」

 

「そ、ソフィア?」

 

「じ〜〜……」

 

「来ないなら……こっちから行ってやる!」

 

「!」

 

唐突に始まった鬼ごっこ。

体力のないもやし同士で、場所は人様の敷地内。

何をしているのかと叱られても仕方のないことだが、咎める者はいなかった。

 

「あっちもこっちも何かやってんなぁ……」

 

「子供なんてそんなんだろ」

 

「ガキが何か言ってらあ」  

 

「うっせ!くそじじい!」

 

「お、この部屋か。聞こえる聞こえる」

 

アオキが開けた扉。

既に話が始まっていた。

 

「――その研究者とは、こういう方ではありませんか?」

 

「……ええ、その人です」

 

「やはり……」

 

「お知り合い?」

 

「……以前、私達は共に働いていました。ですが、ある事がキッカケで彼だけが1人、離れて行ったのですわ」

 

「音楽性の違いみたいなものですか」

 

「音楽は関係ないですけれど……そうですわね、やりたい事があまりにも普通で嫌になったと仰っていました」

 

「……音楽性の違いだな」

 

「何故、彼の研究所へ?」

 

「知り合いの紹介です」

 

「彼を紹介してくれる知り合い?どんな知り合いかしらその方は」

 

「それは置いといて……2人が来ましたね」

 

「あら!」

 

なんとも白々しい。

 

「俺たちゃ何で呼ばれたんだ?」

 

「お客様を手ずからもてなすのが礼儀ですわ」

 

「……こんな悠長にやってて良いのか?次、ソフィアが爆発したら大丈夫な保証なんてどこにもねえだろ」

 

「大事なのは、ソフィアが心の平静を保つことです。先を急げば急ぐほど、焦りがソフィアに伝播する。ソフィアが焦れば、それだけ暴走のリスクが高まる。それならいっそ、なるようになれってやるしかないんですよね」

 

何の確証もない答えだ。

ソフィアの暴走は心の平穏が乱れた時という話すら、厳密に検証を行ったわけではない。

それでも――

 

「リーダーが言うなら従うしかねえな」

 

「それマジでやめろ。……そもそもあなたたちのリーダーはウルフさんでしょ」

 

「パーティーのはな?でも、俺たち全員のリーダーは誰かっつったら……やっぱりお前だろ」

 

それを聞いて、なおのこと嫌な顔をしたが否定は無かった。

 

「アキヒロくんがリーダーなのね、やっぱり」

 

「勝手に言われてるだけです」

 

「……ソフィアさんはどうなの?」

 

「間違いなく、状況は進行してます」

 

「あまり猶予はないってことね……何かアテは?」

 

「一応あります。でも、こちらから干渉して早めることは難しいかも?」

 

「どうして?話して何とかなるなら話せば良いじゃない――あっ」

 

「ん?」

 

「ネルさんね?!」

 

「!」

 

探索者2人は、何のことやらと顔を見合わせた。

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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