【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
貰ったものを手に乗せて。
ヒロさんの言葉もどこか遠くに聞こえ。
目が離せない。
とても綺麗な指輪だった。
私みたいな小娘が持つにはあまりにも上等な。
こんなものを渡されて、嬉しくない筈がない。
こんなものを、何でもない人に渡す筈がない。
それはつまり、ヒロさんが私のことをそれだけ大切に思ってくれているってことで……
「アリサ〜?」
「タ、タイム……」
「タイム?」
「タイムで……」
口が緩んでしまいそう。
そんな顔を見られたくなかった。
部屋を出る。
顔を洗って、熱を冷ましたい。
そんな気分だった。
「ア、アリサ……それ、お前……」
「あらあらあらあらあらあらあら」
最悪だ。
父さん達がいた。
見られた。
そこに後ろから扉の開く音が聞こえた。
「アリサ〜どうしたん──あれ、ご両親もお揃いで……お二人はお出かけですか?」
「先生、タイムで」
「またタイム!?」
お父さんお母さんと、リビングで。
指輪を、2人は触らないという条件で見せた。
当然だ。
これは私のものなのだから。
「……あーもう、これはそういうことなのか?」
「分からない……私には加賀美君がわからないわ」
「俺だってわからないよ」
「彼のスタンスは先生と生徒が近いと思ってたんだけど」
「俺は兄妹だとばかり」
2人はなんか言ってるけど、私はとにかくこの指輪を眺めていたかった。
口元が緩むのを、必死に手で抑える。
「ああ見ろ、あんな幸せそうで」
「そうね……」
「とりあえずアリサ、一旦先生も連れてきてもらえるか?」
ヒロさんは部屋で、ベッドに座っていた。
その姿を見ただけでお腹が熱くなったけど、何とか堪えた。
堪えて飛びついた。
腕を抱きしめて、リビングまで連れて行く。
「先生、これは一体?」
「ダンジョンでやっていくにあたって有効な機能を備えたリングです」
「いやでも、こんな綺麗な……」
「いくらなのかしら」
あまりにも不粋で、少しイラッとした。
お母さんは何を考えているんだろう。
「値段はあんまり気にしないでもらえると……」
「いや無理だろ、流石に」
「無理ですか」
「無理ね」
隣でぶら下がっている手に尻尾を巻きつけた。
今回は意識して。
ヒロさんも軽く握り返してくれて、ほのかな快感が伝わってくる。
「……まあ大体150万くらいですね」
「────」
「あ、あら……」
2人とも絶句してしまった。
かくいう私も、びっくりして顔を見た。
ヒロさんへのお礼で呼んだのに、返せるものが何もないや。
……何故か、ヒロさんはしたり顔をしている。
「変な意味は無いので、心配しなくても大丈夫です」
「……というと?」
「まず、ダンジョンの中に入るのは命懸けです。そこで活動するためには、さまざまな装備を使わなければならない」
「聞いたことはある」
「中にいるのは通常の猛獣がお話にならないような怪物達。そんな彼らと相対する為の装備は、金額も跳ね上がります」
「それで?」
「150万は、そこまで高く無いです」
「……こればっかりは専門家に言われてしまうとどうにもならないな」
「で、でも、指輪じゃなくても良かったんじゃない? ほら、武器とか……」
「武器を選ぶなら本人を同席させます。今回はプレゼントなんで、アリサさんがまだ持っていなくて、あってもそこまで邪魔にならないものを選びました」
「じゃ、じゃあ変な意味が無いというのは……」
「俺も、一般的に指輪を贈る意味を知らないわけじゃありません。ただ、今回に関しては婚約がどうのとか、結婚がどうのとか、受け取ったからどうのとかは全く無いです。安心してください!」
親指を立てるヒロさん。
お父さんとお母さんはコイツ何言ってんだ、みたいな顔をしていた。
「──うへへ……へへ……」
ヒロさんが帰った後、ベッドの上で転がりながら指輪を眺める。
見ているだけで時間が矢のように過ぎ去っていく感覚だった。
──指輪。
「嵌めちゃおうかな」
部屋の扉を開け、誰もいないことを改めて確認する。
ベッドに改めて正座し、震える手で薬指に嵌めた。
ぴったりのサイズ、いつの間に測ったんだろう。
「……でへへへへへ」
こんな綺麗なの、貰っちゃった。
ミツキさんに自慢しちゃおっかな。
「いひひ……ふひっ、ふっ……ふぅっ……ふぅっ……」
なんか、お腹熱くなってきたな……
嬉しいな……ヒロさんは今、何してるかな……
声、聞きたいな……そうだっ。
『──もしもし、どうした?』
「うひひ、ヒロさんコレッ」
『あ、指に嵌めてくれたんだ』
「ちょっと恥ずかしいっすけど……ど、どうすか?」
自分の方にカメラを向けて、ピースサインをしてみた。
『あははっ、可愛いぞ』
「えへへへへ、大事にします!」
『そうしてくれると嬉しいな、あと、もう夜だからそろそろ寝るんだぞ?』
「はいっ!」
話せば収まるかなって思ったけど、そうじゃなかった。
通話が切れた後も、お腹が熱い。
疼いて、切なくて、どうしようもない。
「はぁっ、はぁっ、ふぅっ……」
『可愛いぞ』
『一緒にいたいのは同じだから』
ヒロさんの声が頭の中で何度もリフレインして、止まない。
「ヒロさん……ヒロさん……」
抱きしめてくれた時、至近距離で鼻を抜けていったヒロさんの濃い匂い、がっしりした腕。
「あっ……ぅっ……ヒロ、さんっ……」
尻尾を擦られた時の、あの感じ。
握られた場所。
「……っ……ここ……んぅっ……」
熱が、収まらなかった。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない