【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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「──ん?」

 

 ソフィアは唐突に目を覚ました。とても穏やかな眠りだった。起きると暖かな香りが鼻腔をくすぐるのは、隣に子犬がいるからだ。

 ーー胸に手を当てる。

 

「……うん」

 

 何かが強く鼓動している。

 心臓ではない、また別の何かだ。

 自分と共に生きてきたものであり、自分を苦しめるもの。そして家族とのつながりを示すもの。

 囁いているようにすら感じる。

 

「お父さん、お母さん……」

 

 呼ばれている。

 海の割れ目の奥底で、2人が待っている。

 だから彼女は、あの邪悪な洞窟に向かわなければならない。コマちゃんを抱きしめても、その不安は消えたりしなかった。

 

『──』

 

「うん?」

 

 少し、外が騒がしいような気がした。

 目を向ければ、緑の半透明なガラスの向こう側に見覚えのある姿が。正面から向かい合って、彼が何かを言っている。

 

「……」

 

 なんて言っているのかが気になって、少しだけ窓を押し開けた。

 

「──です」

 

「…………」

 

「────ださい」

 

「……うんっ」

 

 霧のせいか。

 彼女自身の聴力が低いのか。

 何を話しているのか、結局聞き取ることができなかった。それでも、その話が悪い話じゃないというのは見ているだけでわかった。

 もう一つ気になったのは、彼が身に付けている鎧。コユキの父親が立ち上げた店から色々と借りるという話は聞いていたが、それにしても随分なモノを装着している。

 装飾も、普段はシンプルな服装の彼にしてはゴテゴテとしていた。

 

「──あ」

 

 視線に気づいた2人は、顔がはっきりと見える距離までやってきた。近づきすぎると今度は一階の庇で見えなくなってしまうが、この距離であれば声もしっかりと聞こえる。

 

「それが鎧ですか?」

 

「そう! ところてソフィア、ロイスと飯は食べたか?」

 

「はい。今は…………椅子で寝てます」

 

「ベッドで寝れば良いだろ……」

 

「気持ちよさそうに寝ているので……」

 

「そうか!じゃあ、悪いんだけど荷物運ぶ手伝いしてくんねえ?」

 

 昼食を食べたあと、ロイスとソフィアはしばらくの間話していたが、どちらからともなく眠気に負けたのだ。しかし、アキヒロが帰ってきたとなれば一旦起こすのが正解だろう。

 

「んしょ」

 

 立ち上がる。

 コマちゃんを抱きしめる。

 コマちゃんがいなければ今の自分の状態を保つことはできなかった。もっと早い段階で崩壊し、街の一部、あるいは街そのものを破壊していただろう。

 

「ロイス君? 起きよ?」

 

 小さく上下するロイスの肩に手を置く。ぴくりと震えるが、それだけで起きるはずもなかった。何せ、いよいよダンジョンに突入だ。

 多くの苦難が待ち受けているとわかっていて落ち着いて探せる人間というの少ない。準備をするか、覚悟を決めていつも通りに過ごすかを比較して、今回のロイスは後者選んだのだ。それでも夜は目が火照って眠れなかったとか。

 

「ロイスくーん……」

 

「っ……!?」

 

 ロイスの身体がいきなり大きく揺れ、驚いた眼差しでソフィアのことを見る。ソフィアは思わず手を引っ込めたが、ロイスが何を言うか待った。

 

「──アキヒロくんは!?」

 

「え?」

 

「…………あ、ごめん」

 

「夢?」

 

「…………」

 

 どこか落ち込んでいるようなしおらしい表情と態度。見た目の明るさに反して、彼は意外と繊細だった。

 

「アキヒロ君が1人で……いや、まあ夢だよな」

 

「あ、そうそう。加賀美さんが戻ってきたんです」

 

「──そーゆうことですわ」

 

「!」

 

 コンコンと、扉を開けたままノックしているアキヒロは、いつのまに部屋に入ってきたのか──なんて問う必要もない。

 アイテムの力を使ったに決まっているのだ。

 

「……やっぱり見えてるんだな?さっきも会話できて驚いたんだよ」

 

「よくわからないけど、一度触った人とかには見えるみたいな?」

 

「そんな話聞いてないですけどね……本当はもっと近付く予定だったのに、ちょっと残念だな」

 

「……ソフィアちゃんは良いけど、ロイス君も寝ちゃってたの? 子供が真っ昼間から寝るなんて、あんまりよくないよ?」

 

「まあまあ、そこは俺の指示ですから」

 

「ふーん……」

 

 人工が足りているので、一瞬だけ建物裏に荷台ごと隠していたアイテムを全員で持ち込んだ。それを床に並べるとソフィアは興味津々で覗き込む。見て、触って、もう一度見て、眼に近づけて、遠ざけて、顔を顰める。

 

「これ、本当に私も身につけるんですか?」

 

「そりゃそうっしょ」

 

「……」

 

「どした」

 

 可愛くない。

 まるで可愛くない。

 これを着て人前に出るくらいなら半袖半ズボンの方がマシなのではというほどゴツい。仮にも女であるソフィアとしては、こんなセンスの無いモノを着るのは勘弁願いたいというのが本音だった。

 

「見た目とか……もうちょっと可愛いの……」

 

「え? 可愛いじゃん、ソフィアのやつ白くて」

 

「……」

 

 色だけだ。

 形は全員ほぼ変わらない。

 ソフィアのは確かに2人に比べると造形の違いがよくわかるが、それはあくまで女性用の形をしているからでしかない。

 そもそも、白が可愛いという色彩感覚はどうなのか。

 アキヒロの鎧がドブのような緑であることと比べているのか。

 

「ちゃんとソフィアの身体のサイズにあってるから、大丈夫だぞ」

 

 心配するところもおかしい。

 深山商会にて採寸をしたからサイズのことは気にしていなかった。借りる立場だから口には出さなかったが、なるべく可愛いのを頼むべきだったのか。

 ソフィアは鎧を装着している自分を想像した。

 

『──モンスターをぶち殺します!』

 

 こんな感じで戦わないといけないのかもしれない。

 

 

 ──────

 

 

「おっ……見た目が良いと何でも許されるな」

 

 部屋にやってきたルクレシアが目にしたのは、白い胴鎧を胸に当てたは良いものの、どうやってつけるか分からずにクルクルと回るソフィアの姿。

 アイテム類が届いたということで、鎧の着方やら使い方を最終確認するためだ。そのレベルの人間を一級ダンジョンに連れていくという事も含めて、バディのようなものを組む事にしている。

 

「ルクレシアさん……これ、どうやって着ければ良いんですか? 紐……ですよね?」

 

「…………!」

 

「え?」

 

 だらんと下がったら紐を手に取っただけで、ルクレシアの目の色が変わった。

 

「これ……ドラゴンの髭で作ってあるな」

 

「そういうのわかるんですか?」

 

「2本で対になってて細かく棘がカエシになってる。触ると熱いのもそうだ」

 

「ほえー? ……だから手が痛かったの!?」

 

「とりあえず紐結ぶぞ」

 

「は、はい」

 

 背中で動くルクレシアからの合図を待つと、ソワソワし出す暇すらなく終わった。流石に何十年も続けてきただけはあるか、とソフィアも感心だ。

 

「何十年は言い過ぎだろ」

 

「意外と……軽い?」

 

 トタトタと部屋の中で足踏みを始めたソフィアは、身体にかかる重みをそう評した。ドラゴンの素材は鉄より頑丈だということは聞いたことがあったので、その重さも相応なものかと勝手にイメージしていたのだが、拍子抜けしている。

 

「そりゃあアイツがイイもん借りただけだろ。ドラゴンの鱗は本来重いぞ。お前みたいなのじゃあ、この鎧だって着られないぐらいには」

 

 鱗を重ねたスケイルメイルと呼ばれる分類のものだ。

 オーソドックスだが手間の分が上乗せされるし、手入れにも一枚素材のものよりも時間がかかる。

 メンテナンスが鱗を入れ替えるだけで済むというのはセールスポイントとしてよく聞く話だった。

 

「…………良い音」

 

 跳ねると、時折シャランという涼しい音が聞こえる。浮いた鱗が別の鱗に当たって出ている音のようだ。ソフィアは顔を綻ばせたが、ルクレシアは対照的な顔をする。

 

「音なんか鳴らすなよ……ったく、どこだ……」

 

 探して見つけたのは脇腹の一枚。

 紐が一本(ほど)けかけていたのだ。

 

「ほれ」

 

「ありがとうございます」

 

「……不良品じゃねえだろうな」

 

「ええ? 良い音でしたよ?」

 

「ダンジョンで音なんか鳴らしてどうすんだよ。居場所に気づいてくださいって言ってるようなもんだぞ」

 

「……確かに!」

 

「不安だ……」

 

 ソフィアの元にはルクレシア、ロイスの元にはアオキ、アキヒロの元にはウルフだ。

 

「見た目が良いとやっぱ何でも似合うもんだな……」

 

「へへっ、そうっすか?」

 

「調子乗んな」

 

「いてっ……重いんだよな……」

 

 フルアーマーになったロイスは、やはり身体にかかる重さから愚痴が漏れる。ソフィアと腕相撲で良い勝負をするという、野山のそばで生活しているにしてはあまりにもしょぼい身体能力が良い味を出していた。

 

「ソフィアは楽しそうに着てるっぽいぞ」

 

「……聞こえるんすか?」

 

「ああ、まあ聞こうと思えばな」

 

 普段から聞いているわけではないと弁明をするも、ロイスの顔に浮かんでいる引き気味の感情は晴れない。羨ましいよりも先に心配が出てくるのはこの少年の良いところだった。

 

「お前、何ならあれだ。重量軽減のアイテムを一個借りろ」

 

「え? う、うーん……」

 

 今から自分で深山商会に行ってアイテムを貸してくださいと言うのはあまりにもハードルが高かった。

 どうやってアキヒロが借りたのかはわからない。何かまたすごいことをやったに違いないと、そちらのハードルも上げていた。

 

「ちげえよ、アイツからだ」

 

 親指で指すのは隣。

 アキヒロが今、鎧を身につけている最中のはずだ。

 

「もう一個って……でも、そんなことしたらアキヒロ君が重くなっちゃうじゃん」

 

「聞くだけならタダだろ」

 

「……確かに!」

 

「…………アイツら何してんだ?」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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