【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】   作:goldMg

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76_俺だってやるんだい!

「……慣れているな?」

 

「いやいや……」

 

「…………いや、やはり慣れている。教え甲斐がなくてつまらんな! まさか自分で装着できるとは!」

 

「紐結ぶくらいで褒められたの久しぶりだな、おい……」

 

 防具の紐を結ぶことは義務教育ではない。

 家庭科もない。

 兜、胴鎧など防具の紐を結ぶということの難易度は意外と高いのだ。

 

「他の2人はなんだかんだで楽しんでいるというのに……アキヒロ、君は何というかつまらないな!」

 

「本人を目の前にして言うことですか? それ」

 

「君自身は面白い要素しかないのに……いや、だからこそか! 子供らしさはどこかに置いてきてしまったのだな!」

 

「俺のどこが子供らしさのない人生終わりかけのジジイって!?」

 

「言ってないが、そんなこと」

 

 完全に鎧を着込んだ状態で地団駄を踏んでいる。

 軽々しい動きだ。

 

「ふむ」

 

 ウルフはあくまで冷静に顎へ手をやった。

 

「どうだ? 動けるか?」

 

「…………ふう、とりあえずアイテムの効果は効いてるようで……半日くらいは動けると思います」

 

「おお」

 

 想像以上に動ける。

 ウルフやルクレシアは数日ぶっ通しで動くことが可能だが、アイテム頼りとはいえ一般人が鎧を着て半日もの間動くことができるのは驚嘆に値した。

 

「プラスマイナスでちょうど0ぐらいなんですよね。これは重量軽減の効果と見ていいんですか」

 

「…………」

 

 プラスマイナス0であれば、他の2人も同じアイテムを与えられている以上、動くことができる時間は何も身に付けていない時と同じと言うことになる。だが、隣室から聞こえてくる赤髪の少年の声からして、そこまでの余裕はないようだ。

 

「おそらく筋力向上だろう」

 

「へー! なんだ! 深山商会って見る目あるんだ!」

 

「……珍しいアイテムだ。普通の探索者であれば使う意味は無いに等しいが、キミのように奇特な人間だとしっかり効果が出るようだな」

 

「確かに……ガリヒョロの人間が筋力向上なんかしたって意味ないですもんね」

 

「酒場では言い方に気をつけた方がいい」

 

「野獣の檻にぶち込まれたら、流石に相手の目を見るような事はしませんよ」

 

 低級のダンジョンであれば確実に無傷で攻略することができる。少なくとも防御面に関しては万全──とも言えないのが何とも悩ましいところだ。だが、竜種を超えるような強大なモンスターの素材は流通量が極めて少ないという事情がある。

 基本的には倒した探索者がくまなく素材を利用する。残った部分が売られるという感じだが、良い部分は当然使われているので、比較的良くない部分が流通することになる。

 

「たったこれだけの期間に我々と同等の防具を揃えることは、我々自身であっても難しい。それを成し遂げたのだから、ある意味ではキミも既に2級探索者になる資格があると呼べるのかも……」

 

「トンデモ理論ですね」

 

「いいや、とんでもない事など無いさ。誇るべきだ、アキヒロ」

 

「でも、実際は食料なんかも持ってかないといけないからなあ……」

 

「そこはこちらで準備した」

 

「えっ?」

 

「待っていろ!」

 

 そう言って飛び出した。

 まさか自室に置いていたのか? と立って待っていたが、20回ほど足の位置を変えてもまだ戻ってこない。

 

「?」

 

 ヘルムを脱いで廊下に顔を出したが、まだ戻ってくる気配はない。さらに一つ上のフロアに彼の部屋があるが、足音の響き方からは彼じゃない。

 

「え、もしかして外?」

 

 窓を開けると霧が風に乗って部屋に流れ込む。

 先ほどまでは薄霧で視界も十分に確保できたが、今ではかろうじて庭の茶色が見える程度しかない。どこにいるとか、誰が来るとか、そういうのは読み取り不可能だ。

 仕方がないのでロイスの部屋を訪ねるが、アオキは詳細を知らないようだ。ソフィアの部屋をノックしたら着替え中とのこと。

 

「まさかこの段階でいなくなるとかないよな? 仲間を置いて」

 

 ここまで来て失踪されると、計画が要からゴロンゴロンと転がり崩れていく。アキヒロ達も何もしないわけじゃないが、ダンジョンにおいてはズブの素人と言ってもいい。メンタル的な話ではなく、実務的に3人が役立つ事など一つもない。

 そしてリーダーであるウルフがいなくなれば、残りの2人も自然と解散するだろう。そうなれば本当に3人だけで行かないといけない。アキヒロをして、それは絶望的だと考えていた。

 

「んな事あるわけねえだろ」

 

「アオキさん」

 

「こそこそ動いてるのは見てたからな。多分どっかの商店で準備してたんだろ」

 

「なるほど」

 

 そういう事であれば落ち着いて待つのが吉。

 鎧は一旦脱ぎ、目を閉じて過去に意識を飛ばした。

 世界が砕け散る前。

 幸せな物語へ。

 

「──おい」

 

「!」

 

 しかし、気がつけばウルフは戻ってきていた。

 呆れたような顔で、呼びかけに答えなかった事を揶揄する。

 

「まさか呼びかけるまで気付かないとは思わなかったぞ。意外と音に鈍感なのか?」

 

「ちょっと瞑想してたんです」

 

「瞑想か、だとしたら随分と深い集中力だ」

 

 寝たきりの人間にとって、スマホですら扱うのは億劫になる。本体を持つのすら辛い上、強い光を見れば頭痛がするのだ。できることと言えば過去を思い返すことだけだった。

 

「前からやってるんですよ」

 

「慣れてるということか。ますます面白い」

 

 何度も頷く。

 思考のピッケルを携えてアキヒロという金脈を掘るのが楽しくて仕方ないのだろう。作っているという詩はどれほどなのか、本人も流石に興味が湧いてきた。

 

「ふむ……まあ気持ちは分かる。自分がどれだけ優美にか描かれているのかと気になるのだろう」

 

「いや──」

 

「まあ待て。いいか? 吟ずるに値する詩とは単なる説明であってはならない。その時に起きた出来事をただ述べるだけのものを詩とは呼ばない。素材の味を活かしつつ、ある程度は人の心に伝わるものでなければならないのだ」

 

「はあ。感動させるってことですかね」

 

「陳腐な表現をしおってからに……アキヒロ、キミの物語はなんとも腹立たしい」

 

「?」

 

「弄りがない」

 

「そんなつまらんですか……そうすか……」

 

 アキヒロは自分の生活が人から見た時に面白いかどうかなど考えたことはなかったが、まさかこうも悪し様に言われるとも考えていなかった。普通ぐらいだろうな〜という予測を完全に覆された形だ。

 

 だが、少し判断が早かった。

 

「素材の味が良すぎると余計なものを入れる隙が無い。腹立たしいことにな」

 

「…………?」

 

「なぜ次から次へとやらかすことができるのか、是非ともその秘訣を教えて欲しいものだ」

 

「あ、褒めてます?」

 

「1連の流れ全てにおいて、異質さを感じずにはいられない。何があったら深山商会の会長を説き伏せられる?」

 

「そこはほら、加賀美家直伝の……」

 

「無いだろうそんなもの」

 

「あったらどうします?」

 

「どうもしないが」

 

 持ってきたのは荷台。

 アキヒロが防具類を運ぶのに用いたものと同程度だ。廊下をしっかりとガッツリと占領している。

 

「荷台、中に入れちゃっていいんすか」

 

「むしろ外に放置する方が良くないと思うんだが」

 

「廊下、人が通りません?」

 

「だからなんだという話だ」

 

「…………これ、なんです?」

 

「ふふ……1ヶ月分の食料だ!」

 

 干した肉! 

 干した魚! 

 葉物の塩漬け! 

 干した芋! 

 干した香辛料! 

 

 荷台からは美味しそうな匂いがダダ漏れだった。

 

「乾物ばっかだあ……」

 

「何だ、文句があるのか?」

 

「ないですよ? でも、うちにはおぼっちゃまがいるもんで。耐えられるかなあという」

 

「そんな軟弱なのかロイスは」

 

 軟弱かと聞かれれば、そうではないが体は貧弱だ。

 それに、軟弱かどうかと毎日同じ食事に耐えられるかどうかは関係ない。日常レベルがどの程度か、という話でしかないのだ。

 

「そもそも泣き言を言う暇があるかな?」

 

「それはそう。でも泣き言を言う暇がないってことは明らかに疲労してるって事なんで……休憩タイミングですね。俺は自己申告できますけど、子供(ソフィア達)は無理しちゃうところもあると思うんで」

 

「バディーとかいうのを組ませたのはそういう意味もあるのか」

 

「そういう意味しかないですかね……2人の前では言いませんでしたけど」

 

 貧弱な体つきの2人だがやる気は十分だ。

 小さい頃から入ってはいけない、近付いてはいけないと言い聞かせられただろう。そんなダンジョンの中で最も危険なモノに挑もうというのだから。

 それはそれとして、少しでも無理をすれば命を落とす。危険性があるとかではなく、間違いなく。

 

「だから、観察眼がミリ単位の皆さんにお力を貸していただければと」

 

「言われずとも気には留めるつもりだったが……注視するほどではなかったか」

 

「……うおっ、こんな高そうな果実まで。よく集めたな……」

 

「…………」

 

 どこかソワソワとしている。

 

「どうやって手に入れたんです?」

 

「そうか! 聞きたいかあ!」

 

「うおっ」

 

「これはな、また別の商会で集めてきたものだ! 私の詩の中に載せる事を条件に格安でな!」

 

「おー」

 

「ふふふ……どうだ! すごいだろう!」

 

「凄いです」

 

「…………つまらーん!」

 

「なんですかなんですか」

 

「素直すぎてつまらーん!」

 

「んな事言われても……ちゃんと凄いと思ってますよ?」

 

 詩で稼ぐ。

 顔の良さありきとは言っても、なかなか出来ることではない。況してや、それを担保に格安で仕入れるなどほんの一握りの者にしかできないだろう……と、ここまでに気付くべきことが一つ。

 それよりも不思議な方法で稼ぎ出してきたヤツがウルフの目の前にいるので、功績が霞んでいた。

 

「なぜ二級探索者である俺が、こんな目付きが鋭いだけの少年に負けなければならんのだ!」

 

「言い方言い方、俺ここにいるよー。というか俺のことそう思ってたのね」

 

「だってそうだろう! キミの見た目の中で目立つところといえば、体付きと目付きしかない!」

 

「それってほぼ全てなのでは」

 

「顔は目以外にもパーツがあるだろう!」

 

「考え方にもよるかな、と」

 

お前の顔の事(そんな事)はどうでもいいのだ! 問題は……かなり大事な要素としてサプライズしようとしていたのに、途中から霞む事が明らかになってしまった事だ……」

 

「でもほら、ソフィアはちゃんと驚いてくれますよ。それよりも気になってるのは、この山盛りの飯をどう持ってくのかって話でっせ」

 

 軽トラに積んだってはみ出そうな量だ。

 本当にこんな量いるのかという話だが……いるのだろう、プロがそう判断したのだから。

 

「それはもちろん、君たちに持ってもらう」

 

「ですよね」

 

「ああ、我々も余裕がない。格下ならともかく、食料を背負った状態で同格や格上に面したくないからな」

 

「…………」

 

 じゃあ、どうやって持つのん。

 そんな疑問に答えるようにウルフは背中に隠していた物を取り出した。

 一つのリュックだ。

 

「それは?」

 

「これに全部詰める」

 

「!?」

 

登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か

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