【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
こういう時に思うのは、ここまで読んでくださる方にどれだけ支えてもらっているかという事です。いつも感想や高評価をいただき、次の文字を織り出す一助とさせていただいております。皆様の期待に応えるために書いている側面もあります。
低評価入れる奴は敵です。
あとマンガ化します。
詳細は多分まだ先ですけど、みなさまありがとうございます。
「ここは……」
椅子に座っていた。
先ほど眠りについたはずのベッドではない。
見回しても宿がどこにもない。
第一セクターすらも。
ただ、広い平原に1人置き去りにされていた。
「──ああ、なるほど」
夢だ。
久しぶりに見たから忘れていたようだ。
「進むか……」
俺がこの夢を何度も見る事。
それ自体は別におかしな事じゃない。
もちろん普通では無いけど……夢が過去の記憶から構成されている以上、脳みそでなく魂に保管されているのであろう
おかしな事。
この夢には終わりがない、あるいは途轍もなく永い主観的時間の中に存在する。
最初の1〜2回目はそれに気付かず、永遠に椅子に座って待っていた。いくら夢っつってもこりゃあ長いぞ〜って思うまでにどれだけ待ったかすらわからない。
何せ夢だ。
人生そのものが夢みたいなのに、その中でまた意味わからん夢なんて見させられてみろ。訳のわからなさでどうすればいいのか途方に暮れたぞ。
それで、椅子から立ち上がってひたすら道を進むんだ。夢にありがちな、進もうとしても足が上手く動かせないなんて事はなかった。俺はちゃんと、自分の意思で前に進む事ができる。
夢だから疲れもない。
ただ、進むか進まないかだけだ。
途中で立ち止まってもいいけど、結局進まなきゃ目は覚めない。
ちなみにどれくらい進めばいいか、定量的に測れた事はない。時計もないし、疲労がないってのが大きいかな。
「変だな」
太陽は太陽としてそこにある。
昼の夜の概念がしっかりと存在するのがまたいやらしくて、寝っ転がって目を瞑る事だってできる。だからなんだって話ですよ。
そんな事よりも……
「うーむ、雪!」
何故雪が降るのか。
原理としては雲の中でできた氷の結晶がどんどんくっついて──というアレだが、夢の中で雪が降ったのは初めてだ。
「もっと整理してる感のある夢ならまだ納得できるんだけど……他のみんなもこういう夢って見るのかねえ」
独り言に答える人間もいない。
自分自身でも良いから誰か現れてくれれば退屈凌ぎには成るはずなんだけど、本当に誰も来ない。
「あーあ、ミツキがいれば一緒にのんびり出来るのにな」
誰の目も気にせず可愛がりたい。
夢から醒めたら輝ける谷に行かないといけないので、ここに来てくれればいいのに。そうすれば、抱きしめている最中にコウキさんに邪魔をされる事もない。
なんて、エッチな男子の妄想みたいなことを考えている間にも景色は移ろいゆく。
太陽が流れ、月が空に座す。
季節の関係ない世界で俺はただ足を動かすだけ。
夢を覚ますために夢の中で必死に歩き続けるなんて、ほぼ労働みたいなもんだ。
「──ん」
白い炎。
秋川さん──ロイスの親父さん達が見せてくれた、浄化の炎? とかいうやつに良く似た炎が立っている。
基本的には直近の出来事の方が夢の中に出てきやすい。
「人間は出て来ねえんだもんな……」
足裏には時折小石を踏みつける感触があるものの、それで怪我をすることはない。立ち止まって見るとしっかり土で汚れているけれど。
「明日は大事な日なんだから、あんまり長いのはやめてくれよー」
起きろ起きろ都祈りながら歩き続けると、やがて荒々しく波立つ海辺に辿り着いた。
これはアレだ。最近の記憶だな。
海には飽きるほど行った事があるけど、あんなに豊かで寂しいのは初めてだった。
「ふぅ……」
浜辺に腰を下ろすと、柔らかく細かい砂が布越しに感じられた。ここは夢の中だけど、現実にある第一セクターの砂浜が出来たのは人々が近寄らなかったおかげだと考えると皮肉だ。
「砂浜でも醒めないか……」
初めての場所にいるって事はだいぶ進んでいるって事だろう。それでも目が醒めないのは、どこそこに行けって言われてるようなもんだ。
「意外と長かったんだよなあ……船使ったし」
結局、自力で行ったのはみんなと一緒の1回目だけ。
1人で行くのはコレが初めてか?
グネグネと、記憶によって構成された不安定な道を行く。船から見た景色をもとに構成されているはずだ。そりゃあ安定感なんて無い。でも道自体がなくなる事はなくて、疲れ知らずの脚でどこまでも進んだ。
「──ふう、2日もかかるなんて」
実際のところ、こんなに時間が掛かるわけはない。俺の中で心理的な負担としてコレぐらいというのが可視化された結果──だろう。
夢の中での事にこうして理屈をつけて結論として置きたくなるのは、あまりにも暇だからだ。
もう少し退屈凌ぎになるものが手の中にあれば話は変わってくる。
「輝ける谷……」
こうして見ると、やっぱり恐ろしい。
世界にいきなり現れる巨大な下り坂。
海をすら割って突き抜ける様は、ダンジョンなんて言葉で一括りにして良いのか分からないほどだ。それこそ神様の棲家である霊領だって言われても信じてしまうだろう。
だけど、そうじゃない。
ソフィアを呼ぶ声。
彼女の父親が失踪した事。
それら全てを引き起こしている魔窟だ。
「……」
一歩、ダンジョンに足を踏み入れてみようか。
現実では入り口に当たる部分を外から眺めるばかりだったけど、夢の中なら何をしても怪我しない。
「あああ……」
そうは問屋が卸さねえ! と視界が光に満ちた。
──────
「寝てねえ」
目が覚めると、ちゃーんとベッドの上だった。
お布団被ってるし体から疲労感は取り除かれている。でも、そうじゃないんだ。寝るってそういう事じゃないんだ。
レム睡眠とノンレム睡眠がなんかこーしてあーしてちゃんと脳みそが休まる事が寝るって事なんだ。
目もパッチリで眠気は1ミリもない。でも、そうじゃないんだ。
俺はぐっすり寝たかったんだ。
夢の中で歩き続けるなんてのは人生に一回だけあるなら面白ネタとして持って置けるけど、何度もやらされるとただの義務なんだ。義務歩きなんだ。
「……起きるか」
文句言ったところで始まらない。
全部世界が悪いのでそのうちなんとかしてやる。でも、今日は運命の日だ。
身体を起こし、伸びをして、脚をベッドの端から下ろす。階下では動き回っている音がかすかに聞こえる。店主か酔っ払いのどちらかだろう。
早い時間って事でロイスとソフィアは慣れていない。起こさないと。
「──はえーな」
アオキさんがいた。どうやら酒場に向かっている途中だったようだ。景気付けの──ということかしら。
「ソフィア達を起こさないと行けないんで」
「母ちゃんみてえだなマジで」
「ウルフさん達は?」
「ルクレシアはまだ寝てるんじゃねえか。ウルフが起こすだろ」
「あー……」
「なんだかんだであいつらも緊張してんだろ」
そんなものだろうか。
「まあ、起こすなら好きにしろ。俺は先に飯だ」
言われずとも起こす気だ。
まずはロイスから。
そう思って部屋に入ると、顔だけ出してスヤスヤと寝ている。
「ん……んん……」
頬を突いても目を覚さない。
起きるまでやろうかと一瞬だけ悩んだけど、それで待っているのは不機嫌になる未来だ。初日から不和の種なんか作るもんじゃない。
そっと布団を剥がして、寒さで起きるように仕向けた。
「──早いですね」
それはこちらのセリフと言うべきか。
すでに起きているとは思わなかった。
なんだかんだで2人の起きる時間は子供らしい。
放っておけばいつまでも寝てましう。
親元から離れているからだろう。
だからこそ、ソフィアが目を覚まして準備を始めているのは意外と言えば意外だった。
「その……緊張しちゃってたのか目が醒めちゃって」
そうだ。
あの妙ちきりんな夢を見たせいで忘れてたけど、ダンジョンに行こうとしているのに緊張しないわけがない。コマちゃんがいたとしても、そこは変わらない。ややデリカシーに欠けた話をしてしまった。
「あ、でも大丈夫です。早めに寝たから何も問題ありません」
「コマちゃんはちゃんといてくれたか?」
「起きた時はいませんでした」
なんとまあ。
しかし、布団の中を覗いてもコマちゃんの姿はない。
呼びかけても出て来ない。
本当にどこかに行ってしまったのだ。
これまではつきっきりで一緒に寝てくれていたのに、このタイミングでとは幸先が悪い。
そんなことを考えていたからだろうか。
扉がノックされた。
俺とソフィアだけがいる部屋。
わざわざノックをして入ってくるのは──
「あ、2人とも」
ロイスだ。
あの3人はノックとかしなさそうだから、なんとなくわかってた。
「ロイス君、コマちゃんって」
「うん」
扉を肩で押して入ってくると、腕の中にコマちゃんがすっぽりとおさまっていた。どうやら昨晩はロイスの部屋に行っていたらしい。
「なんでか知らないけど、俺の部屋きてたみたい」
「ひゃん」
無邪気な瞳で俺たちのことを見ている。
何かを感じ取ったのかもしれない。
そうでもなきゃ、わざわざ部屋移動をするとも考えられない。
ともあれ全員起きたので準備だ。
3人でダベるために早起きしたわけじゃない。
「……」
2人の表情は、起きて間もないにも関わらず既に強張っていた。
「──よし、うん、OK」
鎧を着込んだ。
荷台を持っていくわけには行かない。
それに、ダンジョンでは相当な長時間着ていなければならないことが想定される。宿からダンジョンの入り口までぐらいなんでもないと思わなきゃ。
「やっぱり外すと変わるな」
重量軽減を一つ、ロイスに貸している。
ずしりと肩に沈む鎧の重みが、当初よりも明らかに感じられた。つっても舐めるなよ? まだまだいける。
「ごめんねアキヒロくん」
「気にすんなよ。それよりも、本当に大丈夫なんだな?」
「うん」
本当はロイスを連れていくべきじゃないってのは分かってる。でも、コマちゃんも付いてきて欲しそうにするので仕方ないことなんだ。
その代わりに、俺の命に替えてでも無事に返すことを秋川さんに約束した。
「おーおー、3人揃うと本当に新人探索者みてえだな」
「ふははは! ルクレシアにもあんな時代があった!」
「私だけかよ!」
「だが、そうだろう?」
「……ちっ」
朝なので静かにしてください。
「そうだな。すぐ出発しよう」
ソフィアを見つけた時ら何も変わらず、世界は霧に包まれている。それに、今日は特に霧が濃い。
死地へ向かう俺たちを覆い隠すベールのようだ。
誰ともすれ違うことがないのは、目立たないという点ではいいことだけど……どうにも気分は良くなかった。
「探索者がいると違うな」
1人散歩の時と同じルートなのに、スラムの人間達は誰も近づこうとしない。姿すら見せない。強者の気配を敏感に感じ取って隠れているのだろう。
荒れた道を進むと、やっぱりそこには寂しげな海が黒く待ち構えていた。夜、さらに霧に覆われて濃くなった宵闇は海を一層不気味に演出している。ソフィアとロイスは健気にも、なるべく海に近付かないようにしているように見えた。
道のりは平坦だが穏やかではない。
暗くて、半分が霧に包まれて、半分は黒波が押し寄せ、最中に低く震えるような声や高く切り裂くような声、何十人もの人間がそれぞれ別の苦しみを味わっているような声が聞こえてくる。
夜闇の向こう側、海中には想像すら超えるよう悍ましい怪物が待っているのだと思わされる。
そんな道のりは夜が明けるまで続いた。
「……まさか本当に挑む事になるなんてな」
一行の前に佇む『谷』は、どこまでも続いていく。この旅路は終わらないとでも言うのか。アキヒロですらも谷の奥の奥を睨みつけ、そこに潜む魔物を見出そうとしていた。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない