【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
「本当にその子の話を信じるの? 話っていうか指差しだけど……」
「信じる」
「なんで? だって……ウルフさんの故郷を滅ぼしたんじゃ……」
「ロイス」
「っ」
「ウルフさんの話は事実だと思う。あの人の過去にローブを被った人間たちが関わっているのは疑ってない」
「で、でしょ?」
「でも、ロープを纏っている人間が全員そうだとは限らない。金髪とか銀髪の人間が全員破壊的な活動を行なっているとも限らない。ソフィアがそんな事してるなんて思えないだろ?」
「当たり前だろ!」
「そうだな。だから……全てに疑いの目を向けるのはやめろ」
「でも、アキヒロくんが見た子はその仲間なんだろ!」
「かもな」
「やっぱり信じるのは変だって!」
「……」
「だろ?」
何をアキヒロが理屈付けようと、故郷を滅ぼした人間の仲間の言うことを聞かなければならないウルフの気持ちを思えばこそ、ロイスは抗議を止めるつもりはなかった。
感情の問題なのだ。
「見ろ」
しかし、アキヒロは霧立つ赤の壁を指差す。
青から赤へ切り替わった、灼熱の壁だ。
この男はあくまで理屈の話を止めるつもりはなかったのだ。
「時間がない」
「……」
「俺たちは、もっと状況が悪くなると想定して動かなきゃいけない」
「たとえば?」
「息ができなくなる」
「そっ……れは……」
ないとは言えない。
なにせ、空が逆さになったのだ。
天地がひっくり返ってもという逃げは、このダンジョンでは通用しない表現に成り下がった。
「俺たちは全てに賭けないといけない。進路も、休憩も、モンスターとの戦闘も、それ以外のすべての環境において……あの3人すら通用しなくなる時が、きっともうすぐやってくる。それが致命的になる前に……俺たちは何かをしなきゃいけないんだ」
「なにかって……」
「わからない。どうやったらソフィアが治るのか、ソフィアのお父さんなら知ってるのか、そんなことすら俺たちは知らないんだ。だから、何かをしなきゃいけない」
「…………」
「人ごとじゃないぞ。真っ先に死ぬとしたら俺たち3人の誰かなんだ」
「……っ」
首筋から全身に広がった身震い。
ロイスはココに至って漸く、自分がどれだけ恐ろしいことをしているかに認識が追いついた。
そう、ここは一級ダンジョン『輝ける谷』。
神に仕える一族であるロイスをして、諍いを起こしたいとは思わない探索者。更に彼らの頂点である一級探索者が全力で挑むことを求められる場所だ。
竜がいる?
情報がない?
安全に眠られる場所を探すのが大変?
そういう問題ではない。
天が裂け、地が割れ、鉄の雨が降り、時の流れが早まり、世界の裏側にすら到達し得る場所。
街を築こうとすればグリーンウィンドが押し寄せるとすら言われている、旧世界と文明進歩の否定墓地。
こうして息をして目を開けているのが不思議なのだ。
「ロイス……生きて出たいなら、俺たちは一刻も早く進まないといけない。その為には、危険なことだってやる覚悟が必要なんだ」
「そう……だよね……」
「さあ、行くぞ」
説得を完了したと見て、待っていたアオキの元へ。
ウルフは機嫌悪く目を瞑っている。ロイスの言う通り、怨敵の指示のもとに行動をするというのは業腹なのだ。それでも、イタズラに場をかき乱すことをする気はないらしい。
リーダーとして別方向に行くことを決めることをできるにもかかわらずこの選択を取ったというのは、彼が復讐の鬼ではないということを保証するものか。
「不吉な色だぜ、目に悪い」
「……お願いします」
「一つずつ移動じゃ効率が悪い。しばらく進んでから下ろすぞ」
「はい」
仮に日を追うごとに状況が悪くなるならば、1日で進む量を増やさなければ環境のみで殺されることになるだろう。そもそも、この木達がいつまであるかだって分からないのだ。
──────
「──ウルフ!」
「ああ!」
『キィィィィン!』
ジェット機のような鳴き声と共に突っ込んできた鳥の群れは次々と木に穴を開ける。このままではアキヒロ達が一時的に落下を凌ぐ場所すらなくなってしまうだろう。
しかも──
「か、かたい……!?」
閃く剣の峰。
すれ違いざまに8度切りつけたが、鳩ほどの大きさの肉体に起きた変化は羽が一枚抜けるだけだった。
「間違いない! 俺たちは……自己のレベルを超えるところに辿り着いている!」
「2日目だぞ……!」
「……仕方ない、無理やり破壊する!」
アキヒロは見た、ウルフの手にした剣に光が集まっていくのを。だが移動優先の為、足止め要員のウルフにモンスターが集中したところで視界が遮られ、何かを解き放つ音と、数瞬のちの衝撃だけを感じ取ることができた。
「いよいよだ!」
「どうやらそうみたいですね」
「気ぃ入れてけよ! ここからはバディーだなんだって言ってる場合じゃねぇ! お前があの2人の面倒を見ろ!」
「はい──抜けっ!?」
突然に視界が開けた。
森が終わったのだ。
そして上下が反転する感覚。
アオキは頭から落ちそうになってなんとか留まり、状況を確認する。
突入したのは一面が水晶に覆われた地帯。
上下反転は元に戻り、重力は下向きになった。
そして、至る所にはその水晶を身に纏った竜がいた。
一頭がこちらに顔を──
「──うおあああああ!!」
『…………』
絶叫。
背中にアキヒロがいることなど気にしない超加速が、ドラゴン達の間に躍り出た2人の姿を掻き消えさせた。もちろんドラゴン──殊更に卵を抱いているメスを守るオスドラゴンは、叫び声そのものには反応してのっそりと体を起こすが、首を回して近くには何もいないことを確認すると再び寝そべる。
「あっ……がっ……おぼっ……!」
「ぐぅぅ……く、くそっ……! 内臓が……!」
2人はドラゴンの目の届かぬ浮遊岩の上、息も絶え絶えに倒れている。
音を超えたことによる衝撃波とGがまともに体を貫いたアキヒロは、その感覚からおそらく内臓がダメージを受けており、震える手で回復薬を取り出していた。すでに血反吐を吐き戻している。
その犯人であるアオキは顔から首から手から、冷や汗が止まらずに悶えている。
どちらも満身創痍だ。
「かはっ……ああ……はぁ…………はぁぁ……」
先に良くなったのはアキヒロだ。
薬の力で肉体の変調を整えることには成功した。
そうなると残されるのはアオキ。
自らの移動能力によって大きなダメージを負ったのかとアキヒロは様子を見るが、何もおかしなところはない。そもそも、防具やアイテムありきとはいえ一般人であるアキヒロが死なない程度の衝撃で探索者がどうにかなるわけはない。
では、その原因はなんなのか。
アキヒロはハッキリと目にした。
「これは……魔素が集まっているのか……?」
紫に輝く細かな粒子が、彼の肉体に集まっていく。粒子は蛍が舞うようにふわりふわりと、それでいて確実にアオキの肉体に取り込まれる。
「アオキさん……?」
「ぐっ……! がっ……!」
半ば気絶に近い。
苦しみ、悶える彼は、アキヒロをこの場所まで連れてきたのがもはや奇跡だったのではと思えるほどに弱々しく見えた。
「ロイス……ソフィア……みんな……」
先ほどの光景。
アオキが戻ってこないことを不思議に思ってルクレシア達が突入して仕舞えば大変なことになる。アオキには早く目覚めて情報を提供してもらわなければいけないが、これでは難しいだろう。
「ここを……降りていくのはちょっと……難しいな」
アオキの力で一息に数百mを上昇した。
ソレを自力で降りるとなれば一気にというわけにはいかない。2人が乗っているのと同じく空中を漂う岩目掛けてダイブし、少しずつ下を目指すしかないのだ。
しかもアキヒロには上に戻る手段がない。
故に、正気であれば慎重に手段を選ばなければならない。
「──よいしょ」
「うぐ……」
慎重に?
ゆっくりと?
そんな余裕はないとロイスに説明したのは誰だ。
リスクを背負え。
まず行動しろ。
目的を履き違えるな。
安心安全ピクニックを楽しみたいんじゃない。
「まずはアレだな」
ゆっくりと近付いてくる岩。
クリスタルが生えている。
地下には巨大なクリスタルの鍾乳洞があるというのは映画の話だけでなく本当だったのだ。その事実に多少の興奮を覚えつつ、生身であれば絶対に降りない距離を飛び降りた。
「っ……」
1秒半の浮遊感。
足から砕け散らないことを祈りながら接地。
「……おお」
なんと、膝に対する負荷はほとんど感じずにしっかりと踏み締めた。足裏を恐る恐る見るがなんともない。
なんなら岩にも欠けは見られない。
「なんだこいつら……」
深層の物質。
探索者用の防具。
アイテムで底上げされた肉体。
全てが直感に反する挙動を起こしていた。
それでも、10m強の自由落下で肉体が四散しないと分かったのはいいことだ。
「よし、いくぞ」
一度に10m降りたとしても、数十回の落下を行う必要がある。来た方向は覚えている。そちらへ向けて近付きつつ、背負っているアオキの様子を伺った。
「大丈夫ですか」
「はぁ……ぐ……う……」
本来なら移動は控えて安静にさせておくべきという様子だ。アキヒロも鎧を着ていなければ、集束する魔素によって何かしらの影響を受けていたやもしれない。
「まあ安心してくださいよ、俺が──」
「ドラゴンには……み、みつかる、な……」
「…………」
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない