【マンガ化】焼肉スコスコスコティッシュフォールド【進行中】 作:goldMg
次の日、また病院に来た。
方目さんも端っこにいる。
「改めて──俺は加賀美明宏だ、よろしく」
「三船……黎人です……」
「なら、三船君って呼んでも?」
「……」
少年は小さく頷いたので、早速話を進める。
「三船君、取り敢えずリンゴを持ってきたんだけど、いま食べるか?」
「……リンゴって……美味しいんですか?」
「美味しいぞ、それにリンゴ一個で医者いらずなんて言われたりもしたもんだ」
高かった。
もはや見舞いに気軽く持って来れるようなもんじゃなくて参ったねこりゃ。
リンゴ以外にコレってものが見つからなかったから買ったけども。
まあ、子供のためなら良いよな。
「じゃあ……その……いただきます」
「あぁちょっと待って、切ってからな」
「…………」
ナイフを持ってきていたので、8分の1ぐらいにカットして種を除く。
ついでにうさちゃんの形にして出した。
「俺が子供の頃は、病気した時なんか母親がこうやってリンゴをカットしてくれたりしたよ」
「そうなんですね」
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……」
三船君は恐る恐ると一個をフォークで刺し、シャクシャクと音を立てながらリンゴを咀嚼した。
お上品に口元を押さえながら食べているところを見ると、微笑ましいな、なんて場違いな感想が出てくる。
「美味しい、ですね」
「だろ?」
「はい」
少しだけ口元が緩んだ気がする。
うん、美味しいものを食べると心に余裕ができるよな。
ほんの少しでしかないけど、それで良いんだ。
……チラチラ視界に入り込んでくる人がいますね。
「わ、私も食べてみたいなー、なんて」
「…………」
「あはは……」
こいつ……仕事しろよ。
「リ、リンゴなんて私のお給料じゃ買う気にならないんだもん!」
「三船くん、どうする?」
「加賀美、さん、が買ってきたものなので……僕に決める権利は……」
「そっか……」
「お願いします! 加賀美君!」
「じゃあ、はい」
五月蝿いので、一欠片だけ渡した。
「わーい!」
「ごめん三船君、この人ちょっと変だから……」
「い、いえ」
「方目さん、そっちで静かにしてて下さい」
「はーい」
小股で隅っこに走っていくと、今度こそ静かになった。
俺も少しだけ食べたかったので、一欠片つまんだ。
部屋にはシャクシャクとリンゴを齧る音だけが響く。
大学が終わってから来たから、外はもう真っ暗だ。
「残りは冷蔵庫に入れておくから、後で食べてな」
「ありがとうございます」
リンゴを食べ終えると、途端に表情が暗くなる。
時折、顔を歪めて左肩を押さえたかと思えば拳を強く握りしめたり。
そこに対しては言及する気はない。
「さて、今日も短いけどコレくらいにしようかな」
あんまり長くいても気まずいだろうしな。
「またな」
「あ、はい」
部屋から出ると、方目さんがついてきた。
「アレだね、結構短く終わらせるんだね」
「俺はカウンセラーじゃないですから、長くいても良くなるわけじゃない」
「ほむほむ」
「ていうか、リンゴくらい自分で買って下さいよ」
「ごめんって〜……」
「見舞いの品を食べるなんて、普通あり得ないでしょ」
「うぅ……ひどいよ! 私たち、結構長い付き合いだと思ってたのに!」
「そう思うなら、尚の事ですけど?」
「関根さんにはあんなに甘いのに……」
「あなたは関根有紗ですか?」
「はい!」
「もういいです…………そういえば」
「なに?」
「冷蔵庫に何も入ってなかったんですけど、ご両親は? 流石にお見舞いにはきてますよね」
「いないよ」
「あぁ……」
「……反応うすいね?」
「1割くらい、予想してたことではあったんで」
「そっか」
「一応の確認ですけど、探索者ですか?」
「ええ」
死亡率ダントツトップで、即稼げるランキングトップの職業。
そりゃあ人だってバタバタ死ぬ。
今回はたまたま未成年がその憂き目に遭っただけで、成人がそういう目に遭ってる事の方が余程多い。
三船君は不幸にも、親御さんがそういう方達だったんだろう。
親がそんな目に遭っても探索者になろうと思えるのが凄いが……金が無かったのかもしれない。
「孤児と孤児が集まってパーティー結成、って事ですかね」
「大体そんな感じ」
「……なるほどね」
社会の規範から溢れた──あるいは溢れそうになっていた子らが、必死にしがみつくための受け皿。
だからアリサの話を引き合いに出したってわけか。
登場したキャラクター等の名簿的なものは必要か否か
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いる
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いらない